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以下は、Zaubermond 社のページから引用した33巻のプロローグ。
33巻からは、天使ナサニエルをめぐる新サイクルが展開するという。
戦慄は新たな名を得た――まばゆい炎の柱が天上を煌々と照らし、荒ぶる地獄の中に存在するものすべてを消し去った、まさにその瞬間に。轟く雷鳴が、二都市への神罰を告げる声のように咆哮する。はかりしれぬ規模の圧力波がこれにつづき、建物も人間も等しくわしづかみにすると、須臾の間に原子の粒にまですりつぶしてしまった。誰ひとり、何一つとして、破滅をもたらす始源の力にあらがうことはかなわなかった。
廃墟の上空を、分厚い塵雲が覆いつくした。そこから残骸の破片がこぼれおちて、干からびた粘土質の大地に無慈悲に穴をうがった。燃えかすと灰とが、そぼふる雨のように、いまや漆黒の空からふりそそぎ、破壊のわざがおこなわれた周囲の砂がちな平野を、災いを告げる暗色の外套のようにとりかこんだ。灰がふれた大地には、二度とふたたび生命の生じることはない。二度とふたたび、汚れし水の領域に人の踏みいることがあってはならない。
耳をつんざく爆発と、まばゆい光とが、両都市でいとなまれていた幾多の場面をたちどころに凍りつかせ、それから巨大なハンマーの一撃によって破壊したのだ。
大地をもゆるがした雷鳴が鳴りやんだ。奇妙に不自然な静謐がひろがった――音の欠如以上のものを秘めた静けさが。
それは死の静寂。
がれきのはざまに、動くものとてない。風はそよとも吹かない。これっぽっちの物音すら聞こえない。まるで世界のこの場所が、存在それ自体、息をつめたまま吐き出すことを忘れてしまったかのようだ。偶然通りすぎる旅人は、あるいはこの場所に気づくことすらないかもしれない。いってみれば、もはやこの世界に属さない、把握しがたき手段で破りとられた場所だからだ――人間の悟性を超越した力によって。理解しようと試みることすら狂気をもたらしかねなかった。
滅びのわざからはるかな高み、現実における断裂から離れたところに、ひとにぎりのぼんやりした姿がただよい、おのが行為の効果を観察していた。その形は空にかかる雲の輪郭と混じりあい、また、かれらは人間の目には映るものではなかった。
〈使命は果たされた!〉浮遊するものたちの意識で、ひとつの思考が響きわたった。
〈主の御意志は満たされたり!〉声なきコーラスが囁きかえした。
精霊たちは、大きさと密度で他のすべてを凌駕する一体のまわりに集った。色彩と形のことなる壁が、その周囲にできあがった。
〈父なる主にご報告を。ソドムとゴモラにありしデーモンの徒党は滅ぼされたり、と――すべての、闇につきしたがう悪しき人間たちごと〉
語りかけられた精霊が、一切なにごとも口にせずに消えうせた。他のものたちは、依然として巨大な廃墟の上空にとどまり、恐怖の場所を静かな悲しみ――それぞれが、それぞれなりに――とともにみつめていた。きょう、ここで死なねばならなかった人間たちは、デーモンの暗躍の犠牲となったのだ。つまるところ、かれらに罪はなく、デーモンに惑わされて黒い所業におよんだだけなのだ。だが、主は力ある御言葉をくだされた。ソドムとゴモラのすべてのものが死なねばならない、と。デーモンも、デーモンにつかれるものも、人間も、皆等しく。
そうして、かくそれは果たされたのである。精霊たちは両都市を跡形もなく破壊し、善良なるロトとその家族をのぞいては、誰ひとり逃れることはかなわなかった。これからの数百年、滅びの地には住むものとてなかろう。この場所は、すべての人間に対して、闇のものとかかわることへの警告の碑となるのだ。
〈わが方に損害はあるか?〉精霊たちの指揮官が、精神を介して仲間たちに問いかけた。
〈われらが下界へ死を送り出す直前に、暗黒の輩に攻撃を受けたものが一名。炎の中で死亡したもようです〉
凶報をうけ、光の存在中最大のものが、陰鬱な、嘆きのグレーへと色彩を変えた。だが、デーモンとの戦いで生命をうしなった精霊はこれが最初なわけではない。この仮借なき善と悪とのいくさにおいては、光につかえるものも、闇の信奉者ども同様、おのが生命を賭けざるをえないのだ。
〈誰だ?〉それでも、指揮官は訊ねた。
〈ナサニエルです!〉他の霊たちが哀しげに応じた。
〈かれの名を称え、われらが記憶にとどめおかん〉
光放つものたちは荒野の上空から消え去った。おのが属する高次界へと舞い戻ったのだ。その誰ひとりとして、予想だにしなかった。かれらの兄弟のひとりの死が、遠い未来に黙示録的な効果をおよぼそうなどとは。あたかも、デーモンたちが滅びの直前に矛先を逆むけ、長い視野に立った、身の毛もよだつ復讐劇を織りなしたかのようだった。
はるか未来に訪れるべき戦慄の名こそは、ナサニエルなのだ!
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