△Atlan-Der Einsame der Zeit アトラン―時の外にひとり立つ者
アルコン人アトランは、時の外にひとり立つ者――精神集合体〈それ〉から細胞活性装置を貸与された不死者。
アトランは1万年前にテラで船を失い、文明が宇宙への足がかりをつかむまでそこですごした。
アトランは、失われたアルコン技術により〈付帯脳〉活性化をうけたひとりでもある。〈付帯脳〉は、意識の表層が忘れさっていく詳細な記憶を管理する、もうひとりのアトラン。
西暦(AD)2114年にアトランが創設したUSO――星際連合――は、独自の艦隊とスペシャリストとよばれる工作員の部隊をかかえる強大な星間機構。人類の委託をうけて[A1] 、銀河系の秩序を守るもの。
2406年、太陽系帝国がアンドロメダ銀河の島の王たちとの戦いに総力をあげる中、USOは銀河系内の諸問題をになうことになった。
最大の脅威、秘密組織〈コンドス・ヴァサク〉との戦いの先鋒として投入されたのが、ふたりのテラナー、ロナルド・テケナーとシンクレア・マーロウト・ケノン。コンドス・ヴァサクとの戦いと前後して、ケノンは全身をサイボーグ化することになる重傷を負い、テケナーは細胞活性装置を手に入れる。
2840年、ふたりは星の放浪者オタックとなのる老人にであう。やがて、最後の島の王ファクターXIIIが銀河系を危機におとしいれたとき、オタックはUSOの長アトランに救いの手をさしのべる。
アトランは、驚愕する――オタックは、アトランの養父ファルトゥローン。
ファルトゥローンは、胸にさげるオミルゴス・クリスタルの力で、いくつもの時間平面を歩いてきた放浪者だという。
アトランは、アルコン人の大帝国の皇帝ゴノツァル七世の一子として生まれた。
父の異母弟オルバナショルが両親を暗殺し皇位をうばったとき、当時4歳のアトランを救出し、〈付帯脳〉活性の資格がえられる18歳までわが子として育てたのがファルトゥローン。
アトランは、オルバナショル三世の追跡をのがれてアルコン人の大帝国の辺境をさまよううち、マイクロ宇宙からこの宇宙に侵攻しようとするヴァルガン人のプロジェクトにまきこまれる。
アトランは、ヴァルガン人イシュタールと同盟をむすび、危機を回避した……。
西暦2844年、1万年前のヴァルガン人の遺産に起因する事件がおこる。
惑星アルコンVに遺されたヴァルガン人のドリーム・マシーンを用いて逃走する首謀者。ケノンもまた、ドリーム・マシーンを用いて追う。
そして、ケノンは自分がオルバナショル三世の統治時代にいることを知る。
ドリーム・マシーンがもたらす夢は、すなわち、異なる時間平面への旅。
一方、USOの長アトランのもとには、失踪したケノンとは逆の道をたどってカパトがあらわれる。時間の放浪者カパトは、イシュタールとアトランの息子。
母のもとにアトランをつれもどすためにきたというカパトに、アトランは首を横にふる――わたしは人類の委託をうけたUSOのアトランなのだ、と……。
1万年の過去で、ケノンはアルコン人の大帝国秘密情報局にもぐりこむ。
王位簒奪者オルバナショル三世と大帝国の明日をになう若き日のアトラン[A2] 、さらに、アンドロメダ銀河からこの銀河に移住してきたマークスの三つ巴の戦いのなかで、ケノンはアルコン人の大帝国とアトランを救う。そして、本来あるべき時代にもどるため、ドリーム・マシーンを探索する。
アトランがオルバナショル三世をたおしたとき、ケノンはアルコンIIIの地下でドリーム・マシーンを発見する。
そして、いま一組の、時をさまよう者たちがいる。
若き日のアトランの同盟者アルゴンキン・ヤタとアンリュタは、危機に瀕したアトランを救うべく、太古の遺産〈時間カプセル〉を作動させる。制御をなくしたアルゴンキン・ヤタを救助したのは、テラナーの船……。
西暦2648年のテラで発見された、太古の石版〈パルラクシュント〉。ひろがる終末の噂。シュプールをたどるUSOスペシャリストは、数万年を地球ですごした男ラザモンにたどりつく。
ラザモンの故郷は、数万年周期で惑星をめぐり破壊をもたらす陸塊〈次元エレベータ〉。かつてアトランティス大陸があった海域に、〈次元エレベータ〉――新アトランティス[A3] ――が実体化する。
〈次元エレベータ〉は、潜入したアトランとラザモンとともに消えた。
アルゴンキン・ヤタは、〈時間カプセル〉でアトランを追う。ドリーム・マシーンによってアトランを求めるケノンも、また〈次元エレベータ〉に実体化する。
〈次元エレベータ〉が起点、暗黒銀河に帰還したとき、アトランは宇宙規模の戦いにまきこまれたことを知る。
コスモクラートは、太古、この宇宙に生命と知性を播種する〈力強き者〉たちの組織をおいた。播かれた知性はやがて超知性体に進化し、さらに、この宇宙にエネルギーをもたらす物質の泉を形成する。コスモクラートとは、物質の泉の彼岸にある進化の頂点。
太古、〈力強き者〉たちの組織のひとつが、芽生えた知性に文明をもたらすために次元エレベータ・システムを建設した。当時の暗黒銀河には、〈力強き者〉イェフェナスに育まれ、おなじ名を冠する超知性体がいた。
いつの時代にか、超知性体イェフェナスはポジティヴとネガティヴの二体に分極し、不幸にしてネガティヴなイェフェナスが勝利をおさめた。ネガティヴな超知性体は〈闇の伯父〉と称し、〈甥〉の称号をあたえたネガティヴな生命たちをつかって暗黒銀河を支配する。闇の伯父は、かけつけた力強き者イェフェナスにさえ勝利し、次元エレベータを潜在的な敵、ポジティヴな知性種族の進化をさまたげる目的に転用したという。
アトランは、〈力強き者〉イェフェナスの精神を封印する〈パルラクシュント〉の断片をかきあつめ、復活したイェフェナスが闇の伯父に勝利するのを見た。
だが、地球にもどるアトランの記憶はうすれはじめる……。
高次の力が、アトランの記憶をブロックした。 だが、やがて、コスモクラートは銀河系の運命に深くかかわりはじめる。
西暦3456年、超知性体〈それ〉が、イェフェナスとおなじように二体に分極する。ポジティヴな〈それ〉の勝利。〈反それ〉はコスモクラートによって〈無名ゾーン〉に幽閉される。
太陽系帝国とUSOの崩壊、〈公会議〉による銀河系の支配と解放、遠距離宇宙船《ソル》と《バジス》による長い旅をへて、西暦3587年、ついにアトランは〈物質の泉〉にたどりつく。アトランは人類の代表として、コスモクラートにまみえるために、〈物質の泉〉を抜けた……。
ここにおよび、コスモクラートはアトランを駒とした作戦を実行にうつす。
西暦3791年、《ソル》とともに自由に生きることを選んだ人類が、宇宙空間を漂流するアトランを救出する。
アトランには200年間の記憶がない。ただ、故郷の銀河系と〈それ〉を守るため、超知性体セト・アポフィスと戦う使命だけを、おぼえている。
アトランは《ソル》とともに探究の旅にたつ[A4] 。
セト・アポフィスの鏡像〈ヒドゥンX〉を倒し、〈ヒドゥンX〉を生みだした〈反それ〉の計画を阻止し、無名ゾーンからこの宇宙をおびやかす脅威を除く。その旅のなかで、《ソル》は、超存在ヴェベキングとチャイブレインにいくども助けられる。
200年前、アトランは、〈物質の泉〉の彼此両岸のはざまの〈無名ゾーン〉で、〈反それ〉をはじめとするネガティヴな流刑囚たちとであっていた。ヴェベキングとは、アトランが〈付帯脳〉の力を借りて〈反それ〉から分離させたポジティヴな成分。チャイブレインは、その過程で生まれ、アトランとヴェベキングの成分をあわせもつという。
ヴェベキングと〈反それ〉の合体。新しい超存在の誕生を助け、チャイブレインに別れを告げて、《ソル》とアトランは、セト・アポフィスとの戦いにのぞんだ。
試練を切り抜けたアトランはコスモクラートに認められた……。
コスモクラートは、ついに本格的な使命に、アトランを投入する。
西暦3818年、コスモクラートの委託をうけ[A5] 、ひとり転送されたアトランは、巨大なジェットをもつ球状銀河アルコルドームに、宇宙の脅威といわれるエヴォロを探索する。
探索のはて、マナム・トゥル銀河で目撃したのは、みずからの意志をもつ巨大なプシオン塊、エヴォロの誕生。アトランは、〈付帯脳〉にたくわえられた知識と経験を核のひとつとして、エヴォロにポジティヴな性向をあたえることに成功した。
だが、その直前にエヴォロがはなった複製たちは〈星の暗黒兄弟〉となのり、アトランを送りこんだコスモクラートに宣戦を布告する。
ここにも、時をさまよう者たちがいる。
アルコルドーム銀河にあらわれたファルトゥローン。かつて、アルコルドーム原住種族に〈星の暗黒兄弟〉の襲来を警告したカシャ・ナルクトゥアン。〈時間カプセル〉をあやつり、マナム・トゥル銀河で〈時間外科医師団〉の謎を追う、ゴマン・ラルゴとネイタドル・オフ。
アトランが生きてきたこの宇宙は、無限に分岐しからみあう時間平面の複合体。各時間平面におかれた時間廟を時間カプセルでむすぶ壮大な時間病塞ネットワークを建設したのが、〈時間外科医師団〉とよばれる太古の種族。
〈時間カプセル〉はいくつもの時間平面で、アトラン、または、かれの精神をうけつぐものたちを見いだす。いずれの時間平面でも、おのれの信じるもののために戦いつづけるアトランとその鏡像たち。
時間病塞システムとアルコルドーム銀河の歴史を軸として戦う、アトランと〈星の暗黒兄弟〉。
〈星の暗黒兄弟〉は、時間病塞システムによる時間改変、アルコルドームの原住種族の超技術によって、球状銀河のジェットを変化させ、〈物質の泉〉を直接に攻撃しようとする。
コスモクラートがさしむけたチャイブレイン――アトランの息子――、カシャ・ナルクトゥアン――アトランの知識と経験をうけついだエヴォロ――、二体の超存在にささえられたアトランは、〈星の暗黒兄弟〉をたおす。
この時間平面での任務は終わった……。 アトランはコスモクラートがふたたび自分を転送しようとするのを、記憶がうすれていくのを感じていた。