△ Perry Rhodan-Der Erbe des Universums ペリー・ローダン―大宇宙を継ぐ者
西暦(AD)20世紀末、ソル系の惑星テラの文明は紛争にあけくれていた。
だが、惑星テラの種族テラナーは、宇宙進出を契機に、M−13球状星団のアルコン人の大帝国から星間航行技術を入手。銀河系の諸勢力の脅威を前に、〈第三勢力〉[R1] を核として統一への道を歩む。
西暦1990年、テラナーは太陽系帝国を創設。多くのテラナーが近隣星系に植民していく。
ドルーフ宇宙との接触を機に、西暦2044年、アルコン人の大帝国[R2] と平和条約を締結。ポスビ[R3] 侵攻に際しては、西暦2113年、アルコン人、アコン人とともに〈銀河連合〉を結成。西暦2115年、アルコン人の大帝国と太陽系帝国を統合する〈連合帝国〉の成立。宇宙進出からわずか150年、テラナーは銀河系の既知星間航行種族による共存体制を築きあげた。
だが、200年後、星々を呑みこむスープラヘトの覚醒、銀河系イーストサイドのブルー族の〈第二帝国〉[R4] との戦争を背景に、内部の軋轢が表面化。西暦2328年、〈銀河連合〉瓦解と〈連合帝国〉分離。太陽系帝国は、銀河系内の主勢力としての地歩固持のため、新技術の入手・開発に砕身。結果、太陽系帝国は、古代レムール帝国の遺産に端を発する戦乱を招来。西暦25世紀前半の二つの銀河間紛争――アンドロメダ銀河の〈島の王〉[R5] たちとの戦い、両マゼラン星雲とM−87銀河[R6] の諸勢力との対立――は、国力を疲弊させ、諸惑星に荒廃をもたらす。
1000年をかけて、テラナー植民者は太陽系帝国からの自立を志向し、数百の利害勢力に分裂。西暦3430年、テラナー植民者の三大星間帝国は、ついに太陽系帝国を包囲する。
太陽系帝国は、テラナーが相争うこの危機をのりきり、つづいて、NGC4594銀河のカピン[R7] の銀河系侵攻を阻止。だが、もはやかつてのように、銀河系がひとつになることはなかった。
西暦3440年、銀河系全域の居住者の知性水準を操作する〈大群〉[R8] が到来。カルデュールスが私利のため運用する〈大群〉は、銀河系に甚大な被害をもたらす。
事後、講じられた対処の是非をめぐり、太陽系帝国では政府に非難が集中。西暦3444年、大執政官として、創設以来、太陽系帝国を指導してきたペリー・ローダンは、深刻な政治危機をむかえる。
パラマグ人、かつて共闘した旧ミュータントたち[R9] をめぐる一連の事件をへて、ローダンはこの政治危機をのりきる。だが、1000年以上、テラナー文明を守り育ててきたローダン、アルコン人アトラン――〈不死者〉たちは、ここに、みずからの半生を問いなおさざるをえない。
発端は、惑星テラの衛星ルナに不時着したアルコン人の探査船。ローダンはテラナー最初の月着陸船の船長としてアルコン人に出会い、惑星テラの諸国家の対立を調停し、テラナーの目を大宇宙に向けさせた。
そして、アルコン探査船の生残りをささえ、伝説の〈永遠の生命の星〉の精神集合体〈それ〉のもとにたどりつく。
〈それ〉は、アルコン人にあたえた時間はすでに過ぎさった、という。ローダンとテラナーを後継者と呼び、今後2万年の援助を約束。やがて、ローダンと一握りの友人たちに、老化を阻止する〈細胞活性装置〉をあたえた。
そして、テラナーとしての誇り、アルコン人の技術、〈それ〉の支援、超能力をもつミュータントたちの力にささえられ、いまのローダンがある。
しかし――わたしは、何をなしとげただろう?
テラナーの居住圏は拡大し、視野もひろがった。かつて惑星テラに栄えたレムール人、アンドロメダ銀河のマークス、M−87銀河に発するハルト人の、5万年の歴史を知った。20万年前と現在、テラにかかわったカピン種族の中に友を見いだした。だが、一方、銀河系の平和統一は夢におわった。いま、テラナーは分裂し、諍いをくりかえし、銀河系の諸種族とともに権益の争奪に腐心している。
西暦3456年、〈それ〉がふたつの精神集合体に分裂。ローダンは、ポジティブな精神集合体〈それ〉の駒として、宇宙規模の対局[R10] に参戦する。
精神集合体〈反それ〉の駒、平行宇宙の独裁者ローダンIIと対決。つづいて、肉体から摘出された脳だけの姿で、はるかナウパウム銀河とカトロン銀河で孤立無援の戦いを強いられる。
西暦3458年、ポジティブな精神集合体〈それ〉は勝利する。ローダンは生還し、ふたたび肉体に戻る。そのとき、ローダンは、自分の半生もまた一連の対局、試練であるかもしれない、と気づく。
銀河系に諸種族の平和共存の道をひらこうとした、ペリー・ローダン。
だが、理想の実現はひととき。銀河系はふたたび不穏な時代をむかえ、テラナーの結束もまた、失われた。
ローダン自身が指導する太陽系帝国は、依然、銀河系最強の勢力。この力を頼り、銀河系に統一を強制することもできる――だが、その結果、たどりつくのは、あの平行宇宙で独裁者ローダンIIが築いた恐怖政治と同じもの。
ローダンに、まだ道はみえない。しかし、ローダンが歩む道は、精神集合体〈それ〉の対局に審判を下したという高次存在のもとに続いている。
アンドロメダ銀河で知合った〈光の守護者〉テングリ・レトス。〈大群〉の監視者を自認するキトマ。カトロン銀河の〈時の泉〉に出現した〈時知らざる者〉カリブソ――この永遠なる者たちが、つづく試練に、ローダンを導く……
西暦3459年、複数銀河を版図とする七種族の公会議〈ヘトス〉[R11] が銀河系に侵攻。ローダンに銀河系独裁者の地位を約束し、銀河系の武力統一を指示する。
太陽系帝国は、公会議の強大な戦力を前に、一時撤退を決断する。
銀河系中心部にある暗黒星雲プロヴコン・ファウストは、宇宙塵とエネルギー渦乱流の防壁に守られた天然の要塞。太陽系帝国は惑星テラと衛星ルナを暗黒星雲プロヴコン・ファウストに転送しようとする。
だが、流用した古代レムールの技術は問題をはらんでいた。惑星テラと衛星ルナがローダンと200億人のテラナーを乗せて再物質化したのは、座標不明の宙域――未知の二銀河をつなぐ物質の〈渦流〉に生じた天然の同調点。ローダンは、ようやくのことで、惑星テラと衛星ルナを〈渦流〉の恒星メダリオン周回軌道にのせる。
西暦3460年、銀河系では、公会議の傀儡による支配がはじまる。首都惑星テラと指導者ローダンの喪失、植民星系の占領――太陽系帝国は、すでにない。銀河系に残されたアトランは、暗黒星雲プロヴコン・ファウストに残存戦力を結集、勝算うすいゲリラ戦を展開していく。
西暦3540年、〈渦流〉の惑星テラで、革命が勃発する。
80年間、恒星メダリオンの高次放射は惑星テラの住民の精神構造に変容をもたらしていた。わずらわしい感情からの解放(アフィリー)[R12] を謳い、純粋理性の段階に進化したと信じる惑星テラの住民は、変化に批判的なローダンたち免疫者を政権から排斥。本来、銀河系帰還のために建造した、遠距離宇宙船《ソル》で追放する。
ローダンと《ソル》は、公会議の中枢を瓦解させ、銀河系占領部隊を一掃する秘策をたずさえて故郷をめざす。一方、アトランがひきいるゲリラ組織〈新アインシュタイン帝国〉は、銀河系諸種族を呼集。共同戦線〈銀河種族尊厳連合〉を結成していた。
西暦3581年、《ソル》の銀河系到着。ローダンとアトランは、解放策をめぐり対立する。だが、不毛な対立の果て、銀河系がふたりを必要としていないことを認識する。銀河系の事態打開を〈銀河種族尊厳連合〉にゆだね、ローダンとアトランは《ソル》で、惑星テラをめざす。
だが、惑星テラがめぐるメダリオン系は〈渦流〉の転送特異点に消え、すでに〈過流〉には、ない――《ソル》はメダリオン系の行方を追い、いつしか超知性体〈テルムの女帝〉の版図に迷いこんでいく。
そのころ、不死のテラナーのひとりが、〈大群〉で入手した超兵器〈殲滅服〉の本来の持主、〈時知らざる者〉カリブソに出会っていた。
〈時知らざる者〉カリブソは、かつて超兵器〈殲滅服〉を借りうけ、〈大群〉監視の任についた。だが、予期せぬ超兵器〈殲滅服〉の盗難に、本来〈大群〉監視のために用意された瞬間移動網〈時の泉〉を渡り、数百万年間、超兵器〈殲滅服〉を探索してきた、という。
超兵器〈殲滅服〉を返却し、〈時の泉〉を渡ることを許された不死のテラナーは、超知性体バルディオクの版図に再物質化した惑星テラにひとり到達。だが、惑星テラに住民の姿はない。
メダリオン系の転送は不可避ではなかった。だが、精神集合体〈それ〉が回避策を妨害したのだ。惑星テラの住民200億は、メダリオン系転送に際し、精神集合体〈それ〉の〈完成の計画〉の一環として、精神集合体〈それ〉の一部として吸収された、という。
ローダンは思う――故郷、銀河系では、太陽系帝国は滅亡して久しく、やがて、〈銀河種族尊厳連合〉が新しい秩序を築く。目的地、惑星テラに、すでに生きる者はない。指揮する《ソル》は、すでに船内に生まれソラナーを自称する人々のものであり、やがて、別の道をいく。
よりどころをなくし、その手にはなにもなかった。
しかし、ローダンは先へ進むしかない。
超知性体と呼ばれる存在たちがいる。銀河、または、幾多の銀河を、版図〈力の球形体〉として、統括する超存在たち。
超知性体〈テルムの女帝〉は、惑星ドラクリオホをおおう生きた水晶の網。超知性体〈バルディオク〉[R13] の中枢は、一惑星の生態系と結合した一個の〈脳〉。精神集合体〈それ〉も、また、銀河系をふくむ局部銀河群を統べる超知性体の一体。
《ソル》は、超知性体〈テルムの女帝〉と超知性体〈バルディオク〉の交戦のはざまをぬい、西暦3584年、惑星テラと衛星ルナを恒星ソル周回軌道に帰還させる。つづいて、《ソル》は、超知性体〈バルディオク〉の〈脳〉を、超知性体〈テルムの女帝〉の惑星ドラクリオホに移送。両超知性体の融合と、対立の終結をはかる。
銀河系では、公会議が撤退。惑星テラでは、再入植者の政府〈自由テラナー連盟〉が発足する。
再開発のなか、惑星テラで、〈パン・タウ・ラ〉の石版と、人工冬眠するひとりのヴィング人が発掘される。太古、ヴィング人は〈左眼〉探索を使命とし、故郷アルグストゲルマート銀河から全宇宙に派遣されたという。
超知性体〈それ〉が惑星テラの人々に使命を託す――石版を手がかりに、せまりくる危機の元凶、太古の宇宙船《パン・タウ・ラ》を探索せよ。遠征のための遠距離宇宙船はすでに衛星ルナにある。〈渦流〉で、超知性体〈それ〉に抗戦する目的で建造されていた《バジス》である。
一方、《ソル》も探索を開始する――カリブソが危惧し、バルディオクが探索を依頼した危機の温床。それは、数百万年前、バルディオクが隠した船《パン・タウ・ラ》。
かつて、バルディオクとカリブソは、同じ〈時知らざる者〉7人の同盟に属していた。 不死の〈時知らざる者〉――または、〈力強き者〉――7人の同盟を組織したのは、〈物質の泉〉彼岸の高次存在コスモクラート。使者ロボット・ライレが〈物質の泉〉の彼岸からもたらす指示にもとづき、7人は〈宇宙城〉7基を拠点とし、〈胞子船〉7隻でこの宇宙に生命を播種。〈大群〉を建造し、知性の発達を促進した。
数百万年前、〈時知らざる者〉バルディオクは、永劫の任務と待機がもたらす不安と倦怠に耐えきれず、職務を放棄し、自身の王国を建設する野望をいだいた。まず、胞子船《パン・タウ・ラ》を隠し、つづいて、障害となる知性種族を育てる〈大群〉に罠をはる。カルデュール人が〈大群〉を支配する道を用意し、〈時知らざる者〉カリブソから超兵器〈殲滅服〉を盗むことで、〈時知らざる者〉カリブソの〈大群〉監視の任務を妨害したのだ。
〈時知らざる者〉バルディオクは仲間に捕らえられ、脳摘出・放棄の罰をうけた。
胞子船《パン・タウ・ラ》は、生命をはぐくむ無限の潜在力と危険を秘めたまま、いまだ、〈左眼〉をなくしたロボット・ライレとともに隠し場所にある。
いま、コスモクラートは〈物質の泉〉を操作することで、太古に奪われた《パン・タウ・ラ》[R14] を破壊しようとしている……そして、危機はそれだけではない。西暦3586年、超知性体〈それ〉は突如として消息を絶つ。仇敵の罠にはまって……。
アルグストゲルマート銀河で《ソル》と《バジス》は合流。《パン・タウ・ラ》でロボット・ライレと出会う。
銀河系では、放浪の種族ローヴァーが、かつて惑星テラに隠した〈ライレの左眼〉の回収にあらわれる。
ローヴァーは、バルディオクたち7人の〈時知らざる者〉の同盟の前任機構〈カタラク〉のもとで〈大群〉を建造した。だが、コスモクラートが種族の運命に介入することを怖れ、反乱を決意。数百万年前、〈ライレの左眼〉を奪った。そして、ライレは、〈左眼〉探索のため、〈時知らざる者〉バルディオクの反乱に荷担したのだ。
ロボット・ライレが〈物質の泉〉の対岸に帰還するためには、〈左眼〉が不可欠。そして、〈ライレの左眼〉とバルディオクたちの〈宇宙城〉の7基の〈鍵〉は、エランテルノーレ銀河の〈物質の泉〉を制御する手段ともなりうる。
ついに、銀河系にほど近いエランテルノーレ銀河で、〈物質の泉〉がエネルギーを吐き出す。広がる超光速の空間振動が、銀河系を含む広大な宙域に被害をおよぼす。
〈宇宙震〉は標的《パン・タウ・ラ》を破壊する。だが、〈宇宙震〉はとまらない。
《ソル》に生まれたソラナーは自問する。縁遠い祖先たちの故郷・銀河系のために、自身の故郷《ソル》をさらに危険にさらしてよいのだろうか?――《ソル》は、エランテルノーレ銀河に急行する《バジス》と袂を分かつ。
放浪種族ローヴァーが、エランテルノーレ銀河で〈宇宙城〉[R15] 探索を開始。《バジス》も、また、ライレとともに7基の〈宇宙城〉を捜索。西暦3587年、ローダンは〈物質の泉〉に発する〈宇宙震〉の停止に成功する。
途上、ローダンは、〈物質の泉〉の対極にあたる〈物質の沼〉で、仇敵の罠にはまった超知性体〈それ〉を救出する。太古の伝説「もし最後の深淵の騎士が死んだなら、すべての星々は消え去るだろう」――〈それ〉は、最後の〈深淵の騎士〉の危機を信じ、救援におもむいたのだ。
このとき、超知性体〈それ〉が不在の〈力の球形体〉――銀河系とアンドロメダ銀河を含む局部銀河群――に、もうひとつの危機が迫っていた。
超知性体〈それ〉の仇敵セト・アポフィスの罠が、〈深淵の騎士団〉創設種族ハトル人最後の生存者テングリ・レトスを捕える。暗黒星雲プロヴコン・ファウストで、太古の〈深淵の騎士〉ハルプーンのアルマダンが建設した高次元の防壁が作動。〈深淵の騎士〉アルマダンが準備した人工生命の艦隊が、〈宇宙震〉をセト・アポフィスの侵攻再開とみなし、人類をセト・アポフィスの尖兵と誤認して最後通牒をつきつける。くわえて、〈宇宙震〉の第二波は、銀河系に眠っていた太古の侵略者まで目覚めさせた。
事態を収拾したのは、120万年前に仕掛けられた〈ハルプーン遺伝子〉を継ぐテラナー、〈深淵の騎士〉の素質をしめすイェン・サリク。
アトランは銀河系種族の代表として、ロボット・ライレとともに〈物質の泉〉の対岸に消える。西暦3587年末、ローダンと《バジス》は、惑星テラに帰還した。
〈時知らざる者〉たち、〈深淵の騎士団〉……かつて宇宙的使命をはたしていた組織はすでにない。だが、〈深淵の騎士〉アルマダンが遺した人工生命は、サリクとローダンに〈深淵の騎士〉の素質を見た。
だとしたら、われわれに、なにができるのだろう?
たしかなのは、銀河系、超知性体〈それ〉、そして、コスモクラートが、より高次の視点からみて、ローダンたちの力を必要としている、ということ。
〈物質の泉〉に発したエネルギーは物質、生命、知性体をへて超知性体へと進化する。支配域〈力の球形体〉でポジティヴな力が優勢であるかぎり、超知性体はいつか〈物質の泉〉を形成し、さらにコスモクラートへと進化の道を歩むはず。だが、〈力の球形体〉が崩壊したとき、そこには破滅の跡〈物質の沼〉が残る。
西暦3588年、〈それ〉はローダンに、大宇宙を躍動させるエネルギー・生命・知性の循環の秘密を教えた。〈物質の沼〉に堕ちる寸前の超知性体セト・アポフィスが、〈それ〉の〈力の球形体〉のポジティヴな構成要素を欲していることも。
ローダンの使命は〈それ〉の〈力の球形体〉を防衛すること。
新銀河歴(NGZ)がはじまる。ローダンが創設した〈宇宙ハンザ同盟〉[R16] は、局部銀河群の銀河と銀河をむすぶ通商組織として、セト・アポフィスに対する防壁として、機能をはじめる。
このとき、ローダンは、いつか銀河系の諸種族が一体の超知性体に進化する日を夢みていた。
新銀河暦424年、太古の〈深淵の騎士団〉の拠点銀河ノルガン・テュアから帰還したサリクは、現地で進行中の〈ヴィールス・インペリウム〉復元計画について語る。
ヴィールスはすべて太古の超コンピューター、〈ヴィールス・インペリウム〉の構成素子。〈深淵の騎士団〉に伝わる〈究極の三つの謎〉を解明するための再建だという。
〈究極の三つの謎〉とは、
・無限艦隊はどこに始まり、どこに終わるのか?
・〈法〉は何者が作り、何を記しているのか?
セト・アポフィスと〈それ〉の版図のあいだに緩衝勢力を育てていたアトランと《ソル》をくわえ、ローダンの旗艦《バジス》が率いる銀河系艦隊が封印宙域にむかう。
新銀河暦426年、対峙するセト・アポフィス兵員の艦隊と銀河系艦隊の前に、突如として巨大な艦隊があらわれた……
人の姿に具現したコスモクラート・タウレクは、超知性体セト・アポフィスの秘密を語る。
フロストルービンは、元来この宇宙に物理法則を供給するコスモヌクレオチドのひとつ。だが、変調をきたし、放浪しながら幾多の銀河を破壊してきた。セト・アポフィスは、放浪するフロストルービンに搾取した意識断片を貯蔵し進化してきた超知性体。
出現した巨大艦隊は、本来の在所でコスモヌクレオチド・フロストルービンを守護していた。そして、長い探索のはて、ここにたどりついたのだ。
巨大な守護艦隊――艦隊の種族たちの呼称では〈無限艦隊〉[R17] ――と銀河系艦隊は超知性体セト・アポフィスの拠点、M−82銀河に到達。三巴の戦いの結果、超知性体セト・アポフィスは消滅し、ローダンは巨大艦隊の指揮権を手にする。
一方、ノルガン・テュア銀河では、〈ヴィールス・インペリウム〉の完成とともに、コスモクラート・ヴィシュナが目覚める。太古、コスモクラート・ヴィシュナは〈ヴィールス・インペリウム〉の能力を欲して合体し、〈ヴィールス・インペリウム〉共々、破壊された、という。
コスモクラート・ヴィシュナの具象化が導く〈ヴィールス・インペリウム〉は、ソル系のテラナーを臣下とすべく銀河系に出現。だが、コスモクラート・タウレクの介入で、コスモクラート・ヴィシュナは転向し、ふたりのコスモクラートは、コスモヌクレオチド・フロストルービンの修復と、きたるべき〈混沌の勢力〉との戦いに、ともに臨む。
全宇宙をめぐるコスモヌクレオチドの二重螺旋構造――すなわち、〈モラルコード〉、または、〈無限艦隊〉。
宇宙開闢以来、〈秩序の勢力〉コスモクラートと〈混沌の勢力〉カオタークは、モラルコードの存亡をかけて抗争してきた。
いま、〈混沌の勢力〉に与する精神集合体ヴ・アウペルティアは、フロストルービン帰還計画のかなめ、クロノフォシルの効力を失わせるため、局部銀河群に介入する。
クロノフォシルとは、ローダンが局部銀河群に刻んだ歴史。
平和をもたらし、未来への希望をもたらした成果。
プシオンとは、生命と精神のいとなみの超空間へのあらわれ。ポジティブに繁栄する文明のあるところ、超空間にはポジティブな潜在力が生まれ、ポジティブな力の回路網が形成される。ローダンの足跡は、超知性体〈それ〉の〈力の球形体〉に、ポジティブなプシオンの回路を構成している。
〈島の王〉たちの独裁を打破したアンドロメダ銀河。生命への憎悪から解放されたポスビの〈二百の太陽の星〉。〈けだもの〉とウレブの脅威が消えた両マゼラン星雲。銀河系諸種族との共存に目をむけはじめたブルー族の在所、銀河系イーストサイド。惑星テラ。超知性体〈それ〉の〈力の球形体〉の中心〈エデンII〉。
ローダンが巨大な守護艦隊をひきいて歴史をよびさますとき、クロノフォシルに発するポジティヴな衝撃が伝播し、フロストルービンを真の姿にかえすだろう。
新銀河暦427年、巨大な守護艦隊は局部銀河群に針路をとった……。
クロノフォシル[R18] 活性化は、居住する種族たちにポジティヴに作用する。銀河系に盛り上がる機運は、〈銀河種族尊厳連合〉をギャラクティカムという汎種族連合に昇華させる。人々は、星々にあこがれる。そして、《ソル》は、ふたたびソラナーの求めるものを目指し旅立つ。
ローダンと巨大な守護艦隊はクロノフォシルをめぐる。
ローダンの進路をさまたげる精神集合体ヴ・アウペルティアの起源は、〈負の球体〉に魅せられた種族。〈負の球体〉とは、コスモヌクレオチド・フロストルービンの喪失から物理法則が欠如した宙域。
アトランとサリクはコスモヌクレオチド・フロストルービンの本来の在所、この宇宙に〈負の球体〉としてあらわれる超空間の空隙〈深淵〉におもむく。
太古、コスモクラートの委託をうけた〈時空エンジニア〉種族が、ここに仮想の大地を建設。住まわせた幾十億の種族の精神の配置を素材にコスモヌクレオチドの代替物の創造をこころみて、失敗した。原因は、コスモヌクレオチド設置以前の、〈秩序〉でも〈混沌〉でもない、〈影〉の法則の干渉。
この宇宙に、いまある生命と知性を可能とした物理法則を設置した者がいるはず!
コスモクラートも〈混沌の勢力〉もこの〈法〉に縛られ、戦っているにすぎない。〈究極の第三の謎〉の解答は、おそらく、コスモクラートも〈混沌の勢力〉も知ることはないのだ。
アトランは自問する。
〈時空エンジニア種族〉と幾多の種族は、〈影〉に感化され、変異した。コスモヌクレオチド・フロストルービンの帰還のためには、〈影〉に変異した多くの生命は犠牲になってもよいというのか?
ローダンも、偉大な種族ヴ・アウペルティアの歴史に思いをめぐらす。
いくつもの悲惨な出来事を思い出す。不信をぬぐえず数百万年も放浪をつづけたローヴァー。永劫の任務に疲れたバルディオク。報われぬ戦いに散った〈深淵の騎士〉たち。種族の活力をすりへらし、衰退していった超種族ポルライター。
ローダンはクロノフォシル――自分の半生――の力で、モラルコード修復の偉業をなしとげる。
だが、心には、疑惑があった。
この道をこのまま歩いていくのか?
〈秩序〉と〈混沌〉と〈影〉、さらにあらわれた〈無〉の勢力の思惑の交差するなかで、フロストルービンを〈深淵〉にむかえいれたローダンは、その刹那、ひとつのヴィジョンを見る。〈究極の第三の謎〉の解答、〈法〉の創造主の姿が、手のとどくところにある――コスモクラートでさえ知らない〈謎〉の解答。
だが、ローダンはとっさに拒絶する。「いやだ、わたしは知りたくない!」
ローダン、アトラン、サリクは、コスモクラートに袂別の意を告げる。
コスモクラートから追放者の烙印をおされたかれらの目的地は、〈力の球形体〉エスタルトゥ。そこには、コスモクラートにも〈混沌〉にも属さない〈第三の道〉があるという。
このころ、おとめ座銀河団の〈力の球形体〉エスタルトゥの使者が銀河系にあらわれ、通商路をひらき、〈第三の道〉を布教していた。この通商と布教こそが、常識をこえた侵略であると気づいたとき、すでに、銀河系統治の実権は〈永遠の戦士〉たちに握られていた。
いま、〈力の球形体〉エスタルトゥに超知性体はいない。そこは、独裁政権〈永遠の戦士たちの帝国〉と反体制組織〈網を歩む者たち〉が、ともに異なる〈第三の道〉を唱える戦場。
数百万年前、バルディオクたち7人の〈時知らざる者〉の同盟のもとで〈大群〉を建造した36種族。後に36種族は共同で精神集合体を形成。クエリオン人と自称した。
スープラヘトから銀河系を防衛したバルコン人、〈大群〉の監視者キトマ――臨時の肉体をもって活動するクエリオン人に、テラナーは幾度も遭遇していた。
5万年前、超知性体エスタルトゥが失踪。以来、〈力の球形体〉エスタルトゥにあるコスモヌクレオチド・ドリフェルと、銀河系をふくむ直径5000万光年の管轄宙域は、クエリオン人と〈網を歩む者たち〉[R19] に守られてきた。
クエリオン人の〈第三の道〉とは、自由意志でこの宇宙のために活動すること。
新銀河暦429年、たどりついたローダンとアトランは〈網を歩む者〉の一員となる。
新銀河暦445年、コスモヌクレオチド・ドリフェルをぬけて到来した巨船が、超知性体エスタルトゥの消息を告げる。コスモヌクレオチド・ドリフェルの対岸は異宇宙タルカン。異宇宙タルカンの高次組織ヘクサメロンは、死にゆく宇宙の収縮過程を加速し、同時に宇宙の再生にみずからの精神を反映させようとしている。。
5万年前、異宇宙タルカンからの救難信号に、超知性体エスタルトゥは、異宇宙タルカンの銀河ハンガイをこの宇宙に転送することを立案。やがて、コスモヌクレオチド・ドリフェルを経由し、ハンガイ銀河の星々が局部銀河群に実体化する……。
超知性体エスタルトゥの史実の公開が、〈永遠の戦士たちの帝国〉の支配から〈力の球形体〉エスタルトゥと銀河系を解放する。
ローダンは、コスモヌクレオチド・ドリフェルの対岸、異宇宙タルカン[R20] で、〈混沌の勢力〉の領袖ヘクサメロンと戦い、超知性体〈それ〉と超知性体エスタルトゥの要望に応じ、ハンガイ銀河の転送、超知性体エスタルトゥの帰還、そして、みずからの帰還を実現させる。
新銀河暦449年、コスモヌクレオチド・ドリフェルの拒絶反応〈ドリフェル・ショック〉が発生。人々は、直径5000万光年の管轄宙域で空間がひずみ、破綻するのを見た……。
これは、ひとつの銀河を救った代償。
ローダンは自問する――わたしは、何をなしとげたのだ?
もとめていた〈第三の道〉の結果がこれなのか? 宇宙の高次勢力とかかわらずに生きることは、もはや、できないのか?
いまの妻は、コスモクラート・ヴィシュナの具象化のひとり。その妻の資質を、娘もうけついでいる。
災厄に見舞われた故郷銀河系をめざすローダンと娘、友人たちを乗せた船団――しかし、時空の波乱が生んだ停滞場が、無常にも船団を呑みこむ。 そして、695年の時が失われる……。
コスモクラート・タウレクは〈物質の泉〉の対岸に帰還するすべを探していた。
コスモクラート・ヴィシュナは、かつては反逆者とよばれながらも、長い歴史をもち、〈物質の泉〉の対岸への帰還が認められる潜在力を秘めていた。だが、タウレクは、まだ若いがゆえに、この宇宙の任務に派遣されたコスモクラート。充分な成果もなく、帰還できるはずもない。
本来なら、コスモヌクレオチド・フロストルービン修復の成果と〈究極の第3の謎〉の回答とともに、凱旋をはたすはずだった。
それを、ローダンが打ち砕いたのだ。
だが、コスモクラート・タウレクには、まだ、ふたつの策がある。
ひとつは、局部銀河群の超知性体〈それ〉――すでに1400万年を生き、なぜか〈物質の泉〉に進化する時機をひきのばしてきた。超知性体〈それ〉を〈物質の泉〉に進化させる。その成果を手土産に帰郷するのだ。コスモクラート・タウレクは、コスモヌクレオチド・ドリフェルで、超知性体〈それ〉と自分の栄光の未来を用意する。
新銀河暦449年、コスモヌクレオチド・ドリフェルが暴走。コスモクラート・タウレクの意図せぬかたちで、不安定な混沌の潜在的未来が、超知性体〈それ〉に注ぎこまれた……。
ひとつは、ローダンの妻と娘――この宇宙に残されたコスモクラート・ヴィシュナの資質を回収し、〈物質の泉〉の対岸にもたらすのだ。コスモクラート・タウレクはローダンの妻を拉致。その遺伝子から一体の知性体モノスを生成し、局部銀河群に送りこむ――ローダンの娘を探索せよ、と指示をあたえて。
新銀河暦1143年、ローダンと娘を乗せた船団は目覚め、見知らぬ宙域と化した局部銀河群をさまよう。
銀河系は、〈ドリフェル・ショック〉が呼びおこした〈ブリッツァー〉災禍のなか、カンターロ[R21] を自称するサイボーグ・クローン種族の手で封鎖されていた。諸種族は遺伝子実験やサイボーグの素材としてのみ生存を許され、緩慢な滅亡への道をたどっていた。
超知性体〈それ〉は姿を隠したまま。
ローダンは、カンターロを指揮するモノスを排除。銀河系を解放する。
ローダンたち不死者は失われたものをとりもどそうとする。
〈宇宙ハンザ同盟〉が超知性体セト・アポフィスとの戦いで育んだ結束はすでになく、クロノフォシル活性化がもたらしたギャラクティカム結成時の高揚を記憶する者もない。銀河系の諸種族は、それぞれ栄光の過去を再現しようとする。
〈テラの長老〉として、ローダンは〈自由テラナー連盟〉の復興を助力。〈宇宙ハンザ同盟〉も、一大通商組織として再興する。アトランは、M−13球状星団で、アルコン人の帝国の再興に寄与する。
〈自由テラナー連盟〉とアルコン人の帝国――拮抗する二大勢力の均衡のもと、結果として、銀河系は比較的平穏に復興の時代をのりきる。
新銀河暦1169年、超知性体〈それ〉があらわれる。以前のコスモクラート・タウレクの介入がもとで、時間感覚に異常をきたし、超知性体〈それ〉は1万8000年後の夢をみていた。ローダンにあたえた2万年の期限がすぎ、自分の希望がなにひとつ実現せず、なすすべもなく〈物質の沼〉に進化していく悪夢を。
超知性体〈それ〉は、ローダンたち不死者の〈細胞活性装置〉を剥奪。銀河系の新興勢力リング人[R22] にあたえる。ローダンは、コスモクラート・タウレクから真相を知り、〈物質の沼〉に堕ちようとする超知性体〈それ〉を救う。
ローダンは、再度、〈細胞活性装置〉をあたえられる。そして、ある者は望んでもあたえられず、ある者は意志に反して〈細胞活性装置〉の装着を強制される。
不死は、それをもつ者のためのもの、ではないのだ。
高次勢力の決定の前に、またも、ローダンはおのれの無力をかみしめる。
新銀河暦1171年、ローダンの妻と娘は、みずからの意志でこの宇宙を捨て、タウレクとともに〈物質の泉〉の対岸へと姿を消した。
ローダンに、止めるすべはなかった……。
太古、異宇宙アレズムで、生命播種の任をおびた〈力強き者〉たちのたがいの反目が、あらゆる生命を滅ぼす〈大群〉アプルーゼを生んだ。
アプルーゼは、〈死の放射〉をはなつ半生命の結晶。天体を覆いつくして増殖し、やがて飛びたつ結晶の艦隊が次の天体を占領する。
追いつめられた異宇宙アレズムの種族アインディは、200万年前、この宇宙への脱出路をひらいた。だが、事態を誤認した〈深淵の騎士〉クヴィドルは、かみのけ座方面の星のない空隙〈ヴォイド〉に開いた21の門を大艦隊で封鎖。アインディは遠隔地にもうひとつの門を開いた――銀河系の、ソル系火星に。
〈深淵の騎士〉は、銀河系でポルライターの空間兵器を投入する。M−13球状星団で試射の後、火星の門にむけられた空間兵器は、アインディの希望をくだいた。
銀河系を版図とする超知性体〈それ〉は、なすすべもなく、事態をみていた。
そして、超知性体〈それ〉は、いつか異宇宙アレズムを救うことを決意し、ひとり〈完成の計画〉の準備をはじめた……。
新銀河暦1199年、第三のコスモヌクレオチド〈ろ座A〉を発見した遠征隊が凱旋する。銀河系諸種族は、これほど巨大な共同事業を達成できるほどに復興したことを喜ぶ。
だが、翌年、超空間エネルギーの枯渇現象〈デッドゾーン〉がたてつづけにソル系とM−13球状星団をみまう。超光速航行が無効な〈デッドゾーン〉宙域で、瞬間移動能力をもつエネルギー体種族エノクス[R24] は、分断された星々のあいだで連絡と救援の役をつとめる。
〈デッドゾーン〉とは、異銀河の高度技術種族アルコアナが実施した星系防衛壁の副作用。被害をうけた両宙域は、いずれも200万年前の大戦の際、超空間構造に傷を負っていたのだ。
エノクスの言葉に、銀河系の人々は次なる遠征に心をかきたてられる――かみのけ座方向の〈ヴォイド〉[R25] には、エノクスの侵入を阻むなにかがある。ローダンは、また、別の理由から、知人たちに援助をあおぎ、老朽艦《バジス》による〈ヴォイド〉遠征隊を組織する――超知性体〈それ〉が〈ヴォイド〉に消えたのだ……。
〈ヴォイド〉宙域の21の禁断惑星に隠された鍵は、異宇宙アレズムのアインディ種族居住星系にいたる門をひらく。
アインディの星系は、異宇宙アレズムでアプルーゼ[R26] に分断され包囲されたわずかな生存可能域のひとつ。異宇宙へ転移したローダンたちは、アインディ種族の防衛戦線に混乱をもたらし、一片のアプルーゼ結晶が門のひとつをぬけた……。
新銀河暦1218年、アプルーゼ結晶は火星にたどりつく。火星は〈死の放射〉を撒く結晶の惑星と化した。
異宇宙アレズムで、〈死の放射〉に免疫なローダンたち細胞活性装置所持者は、アプルーゼの支配領域の最奥に突入し、アプルーゼの中枢星団を破壊。アインディ種族は、異宇宙アレズムの惑星トロカンを火星と置換することで、ローダンの宇宙を救う。
超知性体〈それ〉の使者がローダンに語る――〈それ〉は1200年前に吸収した200億のテラナーをアプルーゼ結晶の除去機構として、異宇宙アレズムの各所に配置する、と。
異宇宙への支援は、これにとどまらない。
異宇宙アレズムから〈ヴォイド〉を経由して帰還する《バジス》は、途上、商人種族ハマメシュ[R27] の銀河で、誘拐され、破損した巨大なシステム〈ゴマシュ・エンドレッデ〉の補修にあたるテラナーを発見。〈ゴマシュ・エンドレッデ〉が1隻の胞子船を建造し、胞子船が異宇宙アレズムに新しい生命を播種するために発進するのを見る。
エノクスもまた、種族総員が異宇宙アレズムにおもむくだろう――おそらくは超知性体〈それ〉の計画のままに。
超知性体〈それ〉の使者がローダンに語る――ローダンは〈無限への架け橋〉をわたらなければならない。
〈無限への架け橋〉は、幾多の銀河をむすぶ超空間の橋。門のひとつは、火星に――いまは、惑星トロカンにある。ひとつは、プランタグー銀河の惑星ガローンに。ひとつは、超空間泡〈バオリン・デルタ空間〉に。ゴルホーン銀河に種族ノンッゴが築いた人工の大地〈ケントイレン〉に。チェアルス銀河の惑星タガルムに。ゲシュタルター種族の故郷カラコーム銀河に。そして、太古より、これら各地の種族の運命をさだめる巨大な計画〈トレゴン〉が進行していた。
〈トレゴン〉連合の成立阻止の任をうけたシャバッザは、計画を立案した〈トレゴン評議会〉と各地の種族をむすぶ〈使徒〉たちを謀殺し、同時に種族たちの壊滅をもくろむ。
ひとりの〈使徒〉が、シャバッザの脅威を、まだ見ぬ〈トレゴン種族〉テラナーに伝える途上、生命をおとす。遺志は、ひとりの宙賊にゆがんだ形で受継がれ、〈無限への架け橋〉を渡り、惑星トロカンに達した。
惑星トロカンに災厄がおきる――無人の惑星は〈トレゴン〉超技術の時間加速場に包まれ、宙賊の救難信号に応じて新たな生命を進化させていく……。
ローダン、アトランと友人たち――〈細胞活性装置〉を携行する不死者たちの英知は、銀河系の財産。モノス支配後の復興を喜ぶ銀河系の種族たちはそう信じていた。
しかし、不死者たちは、信頼に不遜をもって応えた。本来の在所を忘れ、自己本位な〈ヴォイド〉遠征に参加。銀河系にアプルーゼの危機を呼びこみ、火星のかわりに時間加速場に包まれた危険な惑星トロカンをソル系にもちこんだ。
〈自由テラナー連盟〉は、ローダンを排斥し、〈宇宙ハンザ同盟〉の残余を解体する。〈アルコン水晶帝国〉に呼称をあらためたアルコン人の帝国は、アトランに反逆者の汚名をきせ、M−13球状星団から銀河系渦状肢への拡大を志向する。
銀河系の二大勢力の軍拡競争――その果てにあるのは、破滅だけ。
だが、いまは、この流れの前に自分たちが無力であることを、不死者たちは知っていた。
新銀河暦1288年、ローダンは〈トレゴン〉の〈使徒〉候補として、惑星トロカンの門をひらく。
直後、シャバッザに誘導されたゴエッダとトルカンダー[R28] が銀河系に侵攻。〈トレゴン〉連合の種族をむすぶはずの〈ヘリオートスの堡塁〉[R29] に仕掛けられたテロ。アトランと友たちは、たてつづけに銀河系を襲う危機を回避する。
〈無限への架け橋〉のかなたでは、ローダンが〈トレゴン〉連合の一員、ガローン人とノンッゴを滅亡の淵から救い、バオリン=ヌダ最後の生存者に出会う。ローダンは〈トレゴン〉の〈使徒〉[R30] に就任。使命をおびてダ・グラウシュ銀河に出向き、シャバッザの旗艦となりはてた《ソル》を奪回。シャバッザを〈トレゴン〉殲滅の任につけた超技術の巨大施設《マテリア》[R31] と銀河系で交戦。超知性体〈それ〉と連携し、撃沈に成功する。
アトランは、〈トレゴン〉連合の銀河のひとつチェアルスに救援におもむく。〈トレゴン〉連合がかつて封印した、高エネルギー摂食存在〈グァン・ア・ヴァー〉を、太古からの計画にしたがいダ・グラウシュ銀河にもたらす。
ダ・グラウシュ銀河に、〈トレゴン〉の6銀河の超知性体6体――〈トレゴン評議会〉――が集う。ダ・グラウシュ銀河と近接銀河の交点の特異宙域〈ボイラー〉に、〈鼓動〉を安定させるために。
〈トレゴン〉とは、超知性体6体が、特異宙域〈ボイラー〉中心に〈鼓動〉を安定させようとするこころみ――超知性体6体は、〈無限への架け橋〉の巨大な門と高エネルギー摂食存在〈グァン・ア・ヴァー〉で宙域のエネルギーを制御し、〈鼓動〉を永遠のものとする。
〈鼓動〉は、いかなる量子も生成しない〈絶対真空〉――ここには、コスモクラートや〈混沌の勢力〉がこの宇宙に干渉するために必須の〈究極素〉が存在することはない。
〈トレゴン〉とは、超知性体6体が、コスモクラートにも〈混沌の勢力〉にも干渉されず、真に自由に生きるためのこころみなのだ。
〈究極素〉製造工場〈コスモ・ファブリク〉《マテリア》は、コスモクラートから〈トレゴン〉阻止を命じられ、失敗した。だが、つづいて送りこまれた6基の〈コスモ・ファブリク〉は、超知性体が不在の6銀河を制圧。惑星テラの首都テラニアも灰燼に帰した。さらに、コスモクラート・ヒスモームが指揮する2基の〈コスモ・ファブリク〉と大艦隊が特異宙域〈ボイラー〉を包囲する。
ローダンは問いかける――わたしは、何をしている?
超知性体〈それ〉は、ローダンにすべてをゆだねた。
〈コスモ・ファブリク〉に蹂躙される〈トレゴン〉連合の6銀河、ダ・グラウシュ銀河、6体の超知性体、《ソル》で新たに生まれようとしているわが子――すべての運命が、この交渉にかかっていた。
自分にできることをするだけ。
信じるものを守るだけ。
利用され、時に謀られ、それでも、これは、かれの人生なのだ。
ローダンは、単身、コスモクラート・ヒスモームとの交渉にのぞむ。
そして、成果をえた。
〈トレゴン〉連合は〈鼓動〉を拡張しない。新しい〈トレゴン〉を試みない。そのかぎりにおいて、コスモクラートと〈混沌の勢力〉が6銀河とダ・グラウシュ銀河に干渉することはない。
自問する――わたしは、何をなしとげたのだろう?
そのとき、ペリー・ローダンは、ようやく、答えに少し近づいたような気がした。
ローダンは〈自由テラナー連盟〉の政庁主席に就任。復興の先頭にたつ。
再建された惑星テラの首都テラニアの上空には、復興の象徴〈太陽系政庁〉がそびえる。
銀河系の政情は、思わしくない。シャバッザと〈コスモ・ファブリク〉により壊滅的な打撃をうけた〈自由テラナー連盟〉と、強大なアルコン水晶帝国の戦力差は歴然たるもの。
そして、 〈トレゴン〉6銀河の〈力の真空〉――超知性体の不在――が、周辺の高次勢力の介入をうながすであろうことを、ローダンは知らない。超知性体〈それ〉[R31] の不在をついて侵入した勢力が、やがて、銀河系にも新しい超知性体〈ゼーレンクヴェル〉[R32] を誕生させることも……。
新銀河暦1303年、新しい道を歩きだした銀河系の未来は、まだ、見えていなかった。