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西暦1993年10月、西塔玲二はワンダラーにいた……わけがない。
でも、目の前には宅配便の箱。そこから、こぼれおちた、紙の山。
神田の某仲介書店がつぶれたりなんかして、三省堂がローダンの原書を扱わなくなって、ずいぶんになる。これだけの原書の新刊を見るのは、ほとんど1年ぶり。
ちょっと気が遠くなりかけた。
やっぱり、これ、読むんだろーな。
そーして、超知性体の使者でもなんでもない、単にエライだけのmdiの支配者は、なんとゆーか、やっぱり、こう言った。
「さいとー・れいじーよ。mdiはぷらいべーと・こすもす13の最後の校正をしている。4日以内に適当な最新情報を送付するのだあああっ」
はあ。やれやれだぜ。
『えーっと、ま、そーいった次第でやして、なんともーしましょーか、例のコメントとゆーか、ちょっと状況報告ということで。
到着した原書を、1、2冊手にとってみる。パラパラとページをくってみる。……ヨクワカラナイ。
これまで借りまくって拾い読みしてきた最小限の情報、というレベルで見ていると、えらく単純に思えたこの1600〜1649話、エノクス/アルコアナ・サイクル、ぢつはずいぶんと複雑怪奇な構成であったようでありんす。
1625話「〈それ〉のメッセージ」では、ブリーに問い詰められたエノクスのフィリップが、謎の「リーン」も「スリーン」も、実はエノクスたちのことである、と白状しています。「テックス」(技術屋……くらいの意味でしょうか。アラクノイドをエノクスたちはこう呼ぶ)がまだ滅んではいないことも、この巻ですでに明かされておりました。
ついでに、この前後で、デッドゾーンの中のアルコンや、他の惑星で謎の現象が観測されている。で、そのうち幽霊船というかなんというか、そんなモノ……が、後日ヴォイド近くのサンプラー惑星のひとつで発見される残骸(200万年前のもの)と同タイプとか。
他にも、アカロ3という惑星でテケナーが発見したクリスタルとかあるみたい。21角柱(正確には、両端がピラミッド状になっている63面体)。長さ20センチはあるのに、わずか60グラムという軽さ。中はいったいなんなんだ? おまけにストレンジネスが負の数値。四半世紀前にリンゴラで発見された活性装置の残骸とまったくおなじ「ありえない」ストレンジネス値というやつ。
たしかサンプラー惑星の数は21個でしたよな(これ未確認)。
それからなあ、ここがこうなってああなって……』
「おいおいおい、いきなり1650話から先にもっていってどうするんだ」
「とかなんとか言いながら、勝手に人のペンネームで書かないでくださいって」
「最近、原稿くれないからなあ」
「で、ここまで作ってしまったというわけ?」
「と、いうことで、赤入れよろしくっ」
新銀河歴1174年5月、ローダンはワンダラーにいた。
超知性体の使者としてあらわれたエラートは言った。
「ペリー・ローダンとアトランよ。〈それ〉は15の不死を用意している。4日以内に13人の候補者をともないワンダラーへ来たれ」
ローダンとアトランは、かつての細胞活性装置所持者、そして、あらたな候補者とともに人工惑星を訪れた。
チップの形をした細胞活性装置を埋めこまれるローダンとアトラン。そして、ブリー、グッキー、トロト、ロワ、テケナー、アダムス、ティフラー、アラスカ、マイルズ・カンター、ダオ・リン・ヘイ。拒絶を聞きいれられずに強引にチップを埋めこまれたナックのパウナロ。
サトー・アンブッシュを含むそのほかの候補者に、不死は与えられなかった。
「しかるべき候補者がこの場にいない」〈それ〉は言う。残るふたりの候補者は、「いま現在生まれたばかり、これから四半世紀のうちに、不死を得るのにふさわしくなるはず」グッキーは確かに聞いた。「残るふたりはきみの同類だ」と。
そして、ローダンに約束した15の永遠の生命のほかに、もうひとつの不死。
エノクス、すなわち、〈名乗りをあげぬ素性不明の存在〉に16個目の細胞活性装置が授与される。
外観は陽気に軽口をたたくヒューマノイド。
かれは25年後にふたたびあらわれる。危機に頻するソル系に。
テラナーはかれの種族をエノクスと呼ぶ。ローダンたちは、かれをエノクスのフィリップと呼ぶようになる。
そう、それが、すべての発端だった。
ちなみに、最近知ったのだが、Nomen Nescioというのは、ドイツで用いるラテン語の常套句で、「なにがし某」という意味合いだそうで。するってえと、エノクスとゆーのは、「なにがしのこれこれゼロエックス野郎」くらいの、ほとんど冗談のような名前だったのかもしれないっすね。ミカミさん。
25年は平穏に過ぎていった。
ギャラクティカムはテラ、アルコン、アコンを中心として栄えた。アダムズが率いるハンザ同盟の船は局所銀河群を結び、ローダンはその1隻《オーディン》で局所銀河群を駆けめぐる。アトランは科学振興財団GAFIFを創設。グッキーは、〈それ〉が告げた「同類」を捜しもとめて流浪していた。
モノス独裁時代以来、最大のプロジェクトも実施された。
ブリーに率いられた遠征隊が、ドリフェルのとなりのコスモヌクレオチドを探索する旅に出立した。そして、10年をかけて、ギャラクティカーは5000万光年のかなたの炉座銀河団に、コスモヌクレオチド・フォルナクスAを発見したのだ。
あ、ちなみに、グッキーは、アラスカと一緒に動いてたんすよ。アラスカくんも、テスターレにフラレて、ヒマになったんでしょうね。
炉座銀河団からの帰路、ブリーは立ちよったNGC1400に、破壊された高度技術文明の跡を発見する。しかも、みずから星系を破壊したらしい。
ようやく出会えた最後の生き残り、クモ型の生命体はブリーを見て自決した。「スリーン!」と叫んで。
アルコアナと自称するクモ型種族が集団自殺を遂げた原因は、謎のスリーン。
この種族の言葉で、リーンは「善きもの」、スリーンは「悪の権化」。そして、スリーンは、ヒューマノイド?
クモたちはノヘライサ銀河、すなわちNGC1400で、数10万年にわたって平和な文明を築いてきた。そして、わずか数十年前、突然に73ある入植星系すべてをノヴァと化して集団自殺を遂げた。
ブリーはクモたちの遺産のいくらかを持ちかえることができただけ。
そう、それも、すべての発端だった。
ところで、この時点のギャラクティカーは、アルコアナという種族名を知らない。
ブリーはね、クモさんが大好きほんとだよ。だけど、わかんないから、クモさんのことアラクノイドと呼ぶんだよっ。
バナナは半分じゃあ足りないような気もする。
やがて、新銀河歴1200年が訪れる。
『んで、まだまだ話はずるずる。
このクリスタルを例の〈シンタ〉が欲しがってる。それも、どうやらノドもテもないないシンちゃんがノドからテが出るほどだっていうんだから尋常じゃあないハナシ。
ふふふふふふふふ……』
ああ、れいちゃんたらなんておちゃめ。
「紀元は1199年の大晦日」
「ちなみに暦は新銀河歴」
「こんちわあ、電報でーっす」
「え、ひょっとしていま結婚式?」
「うーん、なんか西暦3587+新銀河歴1199年のにゅういやあぱーちーにいきなし電報がとどくっていうのは、なんか、設定に無理があるような」
「たぶん、電報って結婚式専門かなんかで生き残ってるんだよ」
「シチュエーションはいくひさしく平穏な年越しを迎えたテラニアのパーティ会場」
「ローダンのもとに届いた匿名の怪電報」
「『ローダンとアトラン、最後の深淵の騎士たちが、騎士たることを拒んだいま、すべての星々が消え去るだろう』って」
「ローダンとアトラン、ブリー、そのほか、笑ってごまかすしかない」
「まあ、そだね」
「だよねえ」
「ところが、新年むかえて10日ほど。夕方のバルコニーで、ほろ酔い加減のローダンが音痴な鼻歌ならしてぼーとしてると」
「東芝かなんかのコードレスホン……えーっと、ミニカムともいうな……ささげもった執事がつつっとよってきて」
「ローダン様、お電話でございます」
「うっ……」
「思わず言葉をうしなうペーくん」
「報告によれば、超空間の利用ができなくなった、とか」
「ようするに、超空間蛇口からエネルギーもとれないし、超光速が頭につくのは通信も航行も、みーんな、だめ。銀河系文明崩壊は時間の問題」
「ようするに、人類は星々への道を失ったのだあ」
「それでも、まだなんとかショボショボ機能するエンジンをだましだまし偵察に向かったローダンは、けっきょく《オーディン》もろとも虚空で立ち往生」
「先行き不安な、安直な展開」
「ともあれ、こうして、エノクス/アルコアナ・サイクルが幕をあける……」
「ちゃんちゃん、っと」
「おわってどーするんだよ、このヒトは」
「つづきまあす」
新銀河歴1200年1月10日、テラを含む直径1万光年の宙域を災厄がおそった。
超空間ベースで動く機器すべてが動作を停止。その中には、あらゆる動作原理の超光速エンジン、超光速通信、超空間から無尽蔵のエネルギーを引き出す超空間漏斗、星間文明に必須の技術資産の大半がふくまれる。
科学者たちはこの領域をデッドゾーンと名づける。
銀河系は震憾した。
試みられた外部からの救援作戦はすべて徒労に終わる。
そして、テラがデッドゾーンに呑まれたことで、銀河政局のバランスは崩れ、アコンの暗躍がはじまった。
『ちょーさによると、でっどぞーんはすーひゃくまんこーねんかなたのげんしょーのきょーぞーなんだおー』
おいおい。
そのさなか、テラにエノクスたちがあらわれた。
エノクスは、素性をけっして教えない。いつも冗談ではぐらかされてしまう。好奇心の赴くままにテラナーの生活をのぞきこみ、たずね歩く。エノクスには、絶対移動のような移動能力があり、デッドゾーンの内外を自由に往来できるらしい。
テラはエノクスの気まぐれな助けによって、細々と外界と連絡をとることができるようになる。
5月、デッドゾーンは謎のまま消滅した。
だが、アコンの暗躍はやまず、エノクスも去ろうとはしない。
そして、謎のアコン女性評議員ヘンナ。
ヘンナさんねえ。
テラがデッドゾーンにハマってるころは、まだヘンナさんはご活躍されてない。
エノクスが来て、オリンプで大宴会して、アトランに人類の「ひみつ」がみたいとせまってだまされてケンカして、デッドゾーンが消滅して。
グレートアトラクターが発見され、第二のデッドゾーンの発生が確実視されだしたころ、ペリーとヘンナは運命の出会いをはたすのであったぁぁぁ。おいおい。
んで、運命かなんかよくわからない接近遭遇のあと、M−13球状星団に第二のデッドゾーンが発生するのだな。
あ、それから、エノクスって、実はデッドゾーンの由来を知ってるわけですよ。でも、教えてくんないの。
デッドゾーンの謎を追うサト−・アンブッシュとマイルズ・カンターのふたりの科学者はM3球状星団近辺に巨大な時空の裂け目を発見。この〈グレート・アトラクター〉がデッドゾーンの要因のひとつであることが判明する。
しかし、この構造裂口自体、どこからか操作されている。やがて、変化する時空構造は第二のデッドゾーンを生みだす。
そして、もうひとつの事件があった。この宇宙の外の存在シンタと接触した、サトー・アンブッシュが消息を絶つ。シンタには、この宇宙の協力者が必要。
だが、シンタもやはり、デッドゾーン発生の由来ではないという。
パウナロは最後のナック。かれの知覚はすべて超空間に向いている。
そうして、ある時空褶曲の中で、シンタと遭遇した。
超空間の異変が、シンタの興味を惹いたのだ。
この話はねえ……原書がなくてオチがわからんだけに、どう扱ったらよいものやら。
ちなみに、シンタとの遭遇というのは、シンタ、または、シンタの力、あるいは、補助種族、どれか、さっぱりわからない。
とかなんとかいいながら、別の時間平面の西塔玲二は知っていたりなんかする。
『そーなんですよ。
1637話「時の虜囚」ではなーんと、サトー・アンブッシュが「消滅」してしまう!
パラ現実界の中で、〈キ〉の力が暴走してすっかり迷ってしまったサトーさん。やはり時空褶曲からパラ現実に転落していた《タルファラ》のパウナロ。両者をひきあわせてくれた謎の男は、実は別のパラ現実平面のサトー・アンブッシュ。
そうして、わけもわからずひたすらぐちゃぐちゃに続いたパラドックスのあげく、サトーさんはその存在自体が消え去ってしまったとさ、とゆーお話。なんだかなあ。
当事者のパウナロがまたなめくぢだもんだから「思ったよりだいじょうぶ」とか「あーあ、やっぱり」とかわけのわからない解説をする。ほんとーにわからない。
この次の話が「シンタの呪縛」。
《タルファラ》御一行さまはサトーくんの犠牲にもかかわらずパラ現実界を脱出できずにいる。
で、シンちゃんの補助種族マーンファに操られる連中と、次元を駆けぬけるそーだいな追っかけっこ。けっきょく、ハイパー次元アトラクター近傍の時空褶曲が閉じる寸前、かれらはご帰還、事件はとりあえず終わりみたい。
とはいえ、ななめ読みした感じだと、シンタとパラ現実とあの妙なストレンジネス数値……負のストレンジネスの話はずるずるツルんでいるようで。
シンタさんは、きっと必ずまた帰ってきてくれることでしょう。いやだなあ』
『そーそー、シンタは時空褶曲のかなたのパラ現実界からこの宇宙への突破口をもとめているわけ。
あまたなるパラ現実界でシンちゃんマーちゃんの侵攻が進み、そいつを阻んでいるのは、異常にちがうストレンジネスだけなんだとー』
ふーん。
「エノクスは痩身」
「エノクスはパンクスタイル」
「へーいっにーちゃんねーちゃんがんばってっかあ、ていう軽いノリ」
「いつでもどこでも出現するいっけん正義の味方みたいな行動力」
「好奇心旺盛で、ヒトの機嫌もかえりみず、なんでー、どーして、おせーてっ」
「うっとーしーよね」
「ついには、あのアトランに『人類のひみつを見せてほしいの』とか言いだす始末」
「ひみつ……て、アレだよね」
「おかあさん、あかちゃんはどこからくるの、ってやつ」
「でへへへへへへえ、みせてやろーか、とかほのめかして、コキつかったあげく」
「踏みたおしてしまうアルコンじじい」
「なんか、純真な若者をだまくらかす中年おやじの世界」
「銀河系のゴタゴタっていうのも、どうせA専務とB常務とC支社長の派閥争いだもんな」
「いやーっ、おとなって不潔よっ」
「テラとアルコンの老人たち、のーみそ腐ってるものな」
「細胞活性装置がもらえないおかげで万年新進気鋭のアコンがあるから、いちおう危機になってるようなもので」
「ヘンナさん?」
「うんにゃ、ヘンナさんは実はけっこうまともなヒトみたい。今回のほんとうの悪役はアコンの秘密結社〈ブルーの軍団〉と黒幕〈ブルーの蛇〉」
「あおだいしょう」
「ところが、そのあおだいしょう。本名はアルノラさんとというんだけど、ヘンナさんに接触してのたまうことには」
「あなたとわたしは、じつはアコンを守るために秘密に製造された7人のクローンの生き残りなのよっ」
「いもーとよっ、てか」
「ところが、おねーさんっ、てわけにはいかない。アルノラさんは怪我して整形してるから顔だってちがうわけ。気味が悪いヘンナさんは《マゲンタ》で逃げだす」
「ところが、世間の連中はヘンナさんをブルーの蛇だと勘違いしてあとを追うし。読者は残りの細胞活性装置所持者〈鏡に生まれつきしものたち〉を連想して、どきどきどき」
「どーせちがうんでしょ」
「ん、すべて世はこともなし」
1200年9月、第二のデッドゾーンが発生する。
場所はアルコンのあるM13球状星団。
時を同じくしてソル系に異変。
旧冥王星軌道上にワンダラーが出現した。使者エルンスト・エラートは告げる。
「不死を欲するものよ、ワンダラーへ来たれ。ただし、宝を得られるのは、〈鏡のごとく生まれつきしものたち〉のみ。資格なきものは生命を危険にさらすことになろう」
〈鏡に生まれつきしものたち〉を自負するものたちが、ワンダラーに殺到する。だが、だれひとり細胞活性装置を得ることなく、生命からがら逃げ帰る。
不穏な銀河系をいっそう混迷へと駆り立てるワンダラー。
しかして、不穏な銀河系とは。
ワンダラーにモノ好きが殺到して、風紀がいたく乱れた。ついでに、デッドゾーンのたてつづけの出現で愚民どものモラルが下がった。
どさまぎに、〈ブルーの蛇〉と呼ばれるねーちゃんが、アコン革新派をたばねて世を正さんとする。
公然のアトラン私設秘密結社GAFIFの仕掛人ヤルト・フルゲンの必死の追跡もむなしく謎は謎のまま。でも、ついにアルノラさんの独白で、姉妹クローン誕生秘話を、読者のあなただけにはこっそりお教えしまひょ。
……んなとこでしょ。
テラのローダン、アルコンのアトランと肩をならべる、アコンのアルノラになりたいブルーの蛇さんは、いやがるヘンナさんとともにワンダラーへ。
で、いったいヘンナさんはどういうヒトなのだろう。いまひとつわからないけど、科学者のはしくれであるらしい。ちょっと疑問符。
同じ頃、エノクス発祥の惑星ミステリーに招待されたグッキーは、全天を覆うプラネタリウムを見ていた。
エノクスは宇宙の地理学者。どこにでもおもむき、収集する。
しかし、エノクスの能力をもってしても、訪れることができない宙域がある。
その宙域とはあっ! とかなんとか、大上段にかまえておいて、もうちょいとあとにつづいてしまう。
『そのちゅーいきとわあ、って、ぢつは1649話に登場のシーンだったりするのよね。最近まで知らんかった。
ちなみに、グッキーは実はプラネタリウムなんか見ていない。プラネタリウムを見たのはローダンね』
よいこのみんなは、れいじーみたいなうそつきにならないようにしようっ。
ブリーは真実を知る。
リーン、すなわち、スリーン。それは、エノクス。
繊細なアルコアナはエノクスの仮借なき好奇心に耐えきれず、集団自殺を偽装した。クモたちはかなたの銀河へと遁走し、時空の隠れ家にひそみ、息をころしている。
ブリーはついにアルコアナとの接触に成功する。
『ちなみに、クモさんたちのひそむ数百万光年かなたの銀河を発見したのは、例によって便利なパウナロでした。
クモたちの避難所シェオコル星系を包み、エノクスの進入を阻むはずの力場の発生装置はなんたらかたらとむずかしい名前で、略称は〈マック〉。
なんでも、〈マック〉は2回作動した。1回目は試験的に。2回目は微調整の後に永続的に。
で、余波でグレートアトラクターが発生し、ついでにデッドゾーンがあらわれいでた、と。ふむふむ。
で……さきほどの1637話では、フィリップがローダンに、「250人の仲間が〈近道〉をあやつる能力をなくしてお家に帰れなくて困ってるのよ。ぼくらは宇宙飛行をしないから、お船を調達してほしいのねん」と頼む場面もあります。話からすると、〈マック〉の影響らしい。
どうやら、こんな契機でもって、エノクスの母星がわかる……のかなあ。よくわからないけど』
ところで、やってくれるよヴルチェクおじさん。もちろん、エノクスたちが侵入不可能と言ってるのは、クモの星系のことなんかではない。
じつに、クモたちのちゃちな仕掛けなんかをはるかに超えるもんだよーん、という話になってくる。くわばらくわばら。
デッドゾーンの謎は解けた。事態を認識したクモたちは、〈マック〉を再調整する。
M13球状星団のデッドゾーンは、やがて消える。
で、前後して、ワンダラーにのこのこやってきたアルノラさんは、留守をあずかるエラートの手にかかって悲惨な最期をとげる。
「だから言ったのに」と、最近どんどん人間ばなれしてきたエラートはうそぶく。
でも、おかげで、エノクスのでばかめ本能とクモさんのちゃちな仕掛けでヨロけてしまった不甲斐ない銀河系大騒動も、ほとんどおしまい。
あとは〈鏡に生まれつきしものたち〉の登場を待つばかり。
ナディアとミラのヴァンデマー姉妹は双子。ふたりはツヴォタートラハト生まれ。
ふたりは理由もわからず、ワンダラーに呼ばれ、細胞活性装置をあたえられる。
そして、不穏な噂がもたらされる。
ワンダラーに〈それ〉がいない。
エラートの役目は、〈それ〉が〈大いなる虚無〉に旅立つ前に指示したとおり、ふたりに細胞活性装置を渡すこと。
ところで、ふたりは謎の能力をもつ。
なんでも、神経が細いミラはナディアと数百メートルはなれると、ぷっつんして暴れまわるらしいけど。そんな壮絶なのーりょくのおかげだけで細胞活性装置がもらえるはずはない。
関係ないけど、わたしはいちおう、ナディアが姉さんだと思ってます。超能力の持ち主は、ミラね。
そうして、時をえてエノクスは語りはじめた。
かみのけ座銀河団方向のヴォイド。
星々の巨大な空隙に、いかなるものの侵入も拒む、なにかがある。
「深い霧のたちこめる暗い森のなかの洋館」
「住んでいるのはうらわかい美女ふたりと怪しい老執事」
「ぎえーーーーひーーって悲鳴がときおり、聞こえるとか聞こえないとか」
「おまえもろーにんぎょーにしてやろーかあぁっ」
「サイコ〜〜」
「いっぱあぁつっ」
「……」
「さてはて、まいどおなじみの暗黒星雲プロヴコン・ファウストからヴァンデマー姉妹の登場」
「じつはこのサイクルの前半に、こっそりひょっこり登場していたという」
「ニアミスしたのは、〈それ〉の言葉を素直にうけとって同胞……すなわちネズミビーバーを探し歩いていた、かあいそうなグッキー」
「どうして、ミラ&ナディアがグッキーの同類なのか」
「単にちょーのーりょくしゃのことなのか」
「よくわからないけど、グッキーが惑星ツヴォタートラハトでフェリックスという記憶喪失のエノクスと出会ったとき、お買い物のふたりとすれちがっていたという」
「じつにたあいもない」
「おーい」
「で、鏡ってなんなんだろう」
「やっぱりなんというか」
「つまり、鏡に生まれついちゃってるんだろーね」
「ふむふむ、つまりは鏡に生まれついてるわけだあね」
「生まれついてるんだから、しょーがないというか」
「なんといっても、生まれついてるってのはいいよな」
「言葉のひびきがちがうっていうか」
「〈鏡の生まれ〉とか〈生まれながらの鏡〉とか」
「かがまないかがみますかがむかがむときかがめばかがめ」
「よーするに、わからない」
「でも、一番わからなかったのが、当のふたり」
「なんなのよ、とかいいながら、とりあえず、ローダンが準備している遠征隊に参加してみたりする」
「おなじみヘンナさんは、汚い政治の世界に疲れて、ローダンと一緒に科学者のキラキラの探求心をいだいて大宇宙に飛ぶ」
「久々の女性レギュラーですね」
「おっし、燃えてきたぜっ」
「おいおい、燃えてどうするんだよ、このヒトは……」
ローダンは決意する。
〈大いなる虚無〉へと遠征隊を組織する。
アトランやグッキーが乗船し、運命の命ずるままにヴァンデマー姉妹が乗り組む。
ローダンが星をにらんで言ったとか言わないとか。
「とーちゃん、おれはやるぜっ」
最近シリアスが続かない西塔玲二であった。
ひーっ。
まあ、いつの時代も金がものいうわけで。
かのミスタ・ローダンも資金繰りには苦労しておられます。
自由テラナー連盟に行けば、第一テラナーのコカ・スザリー・ミソナンさんに「あーらろーさん最近おみかぎりじゃないのどーせあたしよりアコンの雌ギツネのほうがいいんでしょやなひとねっ」とあしらわれ、銀河評議会では「経済の弱体化と民主主義の不信にはいかがおすごしでしょうかいまそがり」とばかりに門前ばらいされてしまう。
しかし、もつべきものは友。とくに悪い友達でして。
アダムズはあらたな通商圏拡大をにらんで、ぶつぶつ言いながら金をくれたりする。
アトランはあいかわらずで「おれをのせるんなら金だしてやる」。
ミソナンさんは、あんなこと言ってはみたもののけっきょく《バジス》をくれたりする。おとなの世界はやっぱりよくわからない。
とにもかくにも、《バジス》は飛び立っていくのでありました。めでたしめでたし。
西塔玲二は決意する。
ぷらいべーと・こすもす14のときにはハメられないようにしよーっと。
それでも、原書や原書がとどき、運命の命ずるままに電話とかメールはやってくる。
れいじーが本をにらんで言ったとか言わないとか。
「やれやれだぜ」
『実は、デッドゾーンに呑みこまれたアルコンで奇怪なことがおこるわけですな。
全高700mにもなるクリスタルの虚像。これがデッドゾーンが脈動するのに合わせたほぼ1日周期であらわれたり消えたり。いつものごとく無造作に踏みこんだアトランは、クリスタルの実体がある場所のお空をながめてほけーっとして帰ってくる。
そして、やはりデッドゾーンの中、M13の惑星のひとつアリガ……ちなみに、アリガというのは、アトランの旗艦《アトランティス》のパイロットにしてアトランの彼女と噂されるテタさんの故郷、とうぜんの展開からしてテタさんは事件にまきこまれてるんだけど……に接近する宇宙船。あらわれたり消えたりしてるので「デッドゾーンでリニア航行してる」と大騒ぎになるけど、これもクリスタルと同じで点滅してるわけ。やがて、幽霊船はアリガを突きぬけて消えていきましたとさ。
ところで、ふたつの怪現象を分析したマイルズ・カンターは、こいつは鏡像だと言いきる。つまり、デッドゾーンのおかげでどこか遠くのモノが見えてるんだよ、というわけ。ひょっとして、デッドゾーンの発生源かもねー、だって。
発生源はクモさん。
では、幽霊船はアルコアナのかというと、さにあらず。
えーっ、だったらこれはー、れいちゃんわかんあい……ということで、デッドゾーンを経由して、話はずるずるつながってしまう』
「こんなところで勘弁してつかーさい、おだいかんさまあ」
「水がなければ酒を呑めばいいのよっ」
「それはじょーおーさまでしょ」
「くるしゅーない、次号予告もするのだ」
『ちゃらららららーーん。
さてはて、《バジス》が目標とするヴォイドにはその昔おそろしい敵がいて、周囲の銀河壁の種族が大同盟して戦ったんだよーん、とかいうありがちな噂。
ヴォイド宙域の近辺に散らばるサンプラーという惑星群を《バジス》一行はうろうろしていくんだけれど……。
ひとつ、アリガの幽霊船と同タイプの船の残骸の発見。
もうひとつの伏線、負のストレンジネス。リンゴラの細胞活性装置の残骸〜21角柱クリスタル〜シンタ〜ときて、サンプラーのひとつで消えたエルトルス人の一団が、負のストレンジネスを帯びたバーサーカーとなって局所銀河群に出現、おるすばんのティフくんの細胞活性装置チップをかっぱらう(とりかえすらしいけど)。
なんとも、先が読みたいような読めないような……。
以上でごぜーます。あとはしぼってもでねーだよ』
ところが、やはり、れいじーはうそつきだったりする。
『とっころーで、謎の(敵)というのが、ヴォイドの中にいたのか外から来たのかはたまたいたんだろーか、と、なんともいいかげん。
かつて大同盟を結んでいたらしい種族の末裔たちに伝わる(クヴィドルの紋章)とは何か?
マークはただの「∞」なんすけどね。
ともかく、200万年前の戦いの焦点とかなんとかいわれる、ちょーアヤシげな惑星群を《バジス》一行はうろうろうろ。
とあるサンプラーで消えたエルトルス人たちがエノクスの母星ミステリーにあらわれたのは偶然?(のわけはねーよなあ)
波乱万丈の次号を待て!』
おいおい、待ってていーんだな。
「なんかちがうっ、ぼくはこんな原稿、書いてないぞお」
「それでも署名は西塔玲二」
「だって、ぼくじゃないもん……」
「それでも署名はさいとー・れいじー」
「けっきょく、原稿あってもなくても本つくるヒトなのね」
「〈さいとー・えれじー〉なんつーのもいいかもしれない」
「……」
「〈それ〉がいない」
「もう少しあと少し眠れない夜を抱いてもう探さないっ」
「負けないできっと忘れないっ」
「えれじー……?」
「ともあれ、1600〜1649話、エノクス/アルコアナ・サイクルはこんなんして幕を閉じる……」
「〈宇宙の大謎〉と呼ばれる200話サイクル第1幕の終わり」
「そして、サンプラー巡りが第2幕」
「なんでも、究極の第3の謎の解答にせまるとか」
「だいじょーぶかね」
「あんまりだいじょぶな気がしない」
「ではみなさん、現代のフェアリーテールの語り部! 西塔玲二先生に応援のお便りをっ」
「やっほー」
「さて、北九州市の猫神いるなさんからのお便りです。『今回のぷらいべーと・こすもす、なんか流れが変なんですけど、やっぱりさいとーせんせーも〈キ〉が違ってしまって原稿まとめる時間が混沌してたりするんでしょうか』」
「ぼくはわるくないもん」
「とにかく、ページ番号がそろっているかぎり乱丁ではありませーん」
「つづいて、南足柄郡の匿名希望さんから。『ローダンとアトラン、最後の深淵の騎士たちが、騎士たることを拒んだいま、すべての星々が消え去るだろう』って」
「……」
「そうだよね、あの1600話の電報、だれが出したんだろ」
「いまのところ、謎だったりするよなあ」
「なんかくだらねー謎だけどね」
「たぶん、作家は忘れてるぞ」
「なんかやんなってきたな」
「だけど止められないおわらせない」
「因果な趣味だよなあ」