III ゴリム / Gorims

『ジオン・ゾムの紋章の門
 力の球形体エスタルトゥには、いわゆる十二の奇蹟が存在する。各銀河にひとつずつ。それぞれの島宇宙が自然の、人工の、技術のもたらす無数の驚くべき現象を呈するにもかかわらず。それらのうちひとつが、他を遥かに凌駕しているのだ。
 そしてこれは、その第二の奇蹟。宇宙の放浪者よ、きみがこの宇宙、他のどこにもみつけることのかなわぬものだ。ジオン・ゾムとはNGC4503。そして一見何の変哲もない銀河系。星のジャングルの旅人よ、雑多な種族のるつぼを想定してみたまえ。その構成者たちは進化の様々な階梯にある。惑星に拘束されるものから宇宙航行をなすもの、原始段階からプシ能力を有するものまで。物質的なもの、精神的なもの。エスタルトゥの哲学の教えを知っており、しかしながらまだ精神的にはそれを理解するにいたらぬもの。ジオン・ゾムでは、力の球形体最古の文明の近傍で最も若い文化が発展しているのが見受けられる。
 そして、ジオン・ゾムはひとつの特異な現象を呈する。その中枢部ではある力がはたらき、いかなる種類の宇宙航行も不可能とする。より正確に言えば、その力の欠如がいくつかの星系を隔てる光年に宇宙船で橋をかけることを不可能たらしめるのだ。
 そのために、ただの一歩で惑星から惑星へ渡り歩くことを可能とする“門”が生まれた。一流の建築家が設計し、才ある技師がそれを建造、そして天分豊かな芸術家が紋章で装飾した。それら紋章はエスタルトゥの生命の哲学の表現。倫理、道徳的意義を有する鏡。建築家と、技師の印章であり、そして芸術家の精神の刻印を併せもつもの。
 ジオン・ゾムの門は技術と精神の記念碑であるばかりではなく、単に重要な芸術と科学の融合でもない。それ以上のものなのだ。それはこの銀河の生命の鼓動。文明化した惑星のあいだを結び、種族たちを結びつける架け橋。宇宙的思弁の象徴。
 行け、星々への焦がれにうかされるギャラクティカーよ。自身でエスタルトゥ第二の奇蹟を見、その歩ごとに世界を経めぐるのだ。』

第7部 永劫の闘争の哲学 / Philosophie der Permanente Konflikt

第19章 シャッディンに死す

 エスタルトゥ十二銀河のひとつジオン・ゾムに着いたヴィーロノートたち。《エクスプローラー》は東部の、競技の惑星マルダカーンのある〈オファルの歌手の帝国〉へ、《ラヴリー・ボシック》は中枢部にあるというジオン・ゾムの奇蹟〈紋章の門〉をめざし、そしてロナルド・テケナーの《ラシャト》はウェストサイドにあるという謎のゴリム・ステーションへむかった。宇宙放浪者ロンガスクは、そこで失われた《ツナミ》乗員のシュプールがみつかると主張した。
 アカバー星系第一惑星シャッディン。アカバー、シャッディンはそれぞれソタルクで、“未来の灰”“苦痛に満ちて死す”の意。そして、やがてたどりついたシャッディンは、エネルプシ駆動の機能しない〈無風ゾーン〉に包まれていた。そこではプシオン網が崩壊しているのだ!
 荒廃したゴリム・ステーションには、ひとりのゴリムがいた。物質プロジェクション――いわば影の肉体をもつライモネン。テケナーは過去の記憶からひとつの像を呼びさました。キトマ。やはり物質プロジェクションの身体の女性。600年のむかし、彼女は太古〈大群〉を建造したという自分の種族を捜していた。ライモネンはキトマの同族、クエリオン人なのだ。
 無風ゾーンに囚われたライモネンは言う。

「エスタルトゥの奇蹟は、〈コスモヌクレチド・ドリフェル〉を、モラル・コードを脅かしているのだ!」

 かれはテケナーの手で、苦痛の生から解放された。

第20章 法典の熱病

 ジオン・ゾム東部にむかった《エクスプローラー》は、謎の奇病に冒されていた。法典熱だ。法典分子によって広められるこの病にかかった者は、まず深い昏睡状態に陥り、やがて病根たる法典分子をみずからの呼吸中に放出しだすのである。病原菌をもたらしたのは、一時ヴォルカイルの下にいたドラン・マインスターら4人のハンザ・スペシャリストたち。そして、もうひとり……
 マグハラの地下界でイルミナに救われたキドが、記憶をとりもどしたのだ。かれはあるソト、英雄ソトの付人クラルシュ。そしてかれのソトが派遣され、死をむかえた銀河とは、ソタルクではヤニチャ・ヤン――カピンの銀河グルエルフィン!
 もし、イルミナが適切な瞬間に血清アンティマコスを完成し、介入しなかったなら、キド=クラルシュはおのれの計画を完遂していただろう。法典熱の影響下に落ちた全《エクスプローラー》を率い、かれのソト・グン・ヌリコを殺害したカピンへの報復の途につくことに。法典熱の末期症状は、ブルがクロレオンでパーミットの感化をうけたのとおなじ、犠牲者を永遠の戦士と錯覚させるのだから。
 あやういところでウィーロノートたちは常態に復帰し、キドは4人のハンザ・スペシャリストとともにセグメント《アーマゲドン》で逃走した。
 そして、《エクスプローラー》は新たな興奮につつまれた。騒動のさなか、4月に《ホイゼン》とともにグルエルフィンへむかった1隻《リヴィングストン》が帰到したのだ。かれらは、ガンヨー・オヴァロンの死後のグルエルフィンの歴史を報告する。

第21章 誓約

 ……旧暦3580年、銀河系が公会議の圧政下にあるころ、グルエルフィンを統一するガンヤス帝国の支配者オヴァロンは、細胞活性装置の故障から生命維持装置の助けを借りて、脳髄のみになりながらも生き永らえていた。ところが、新ガンヨーがかれを抹殺せんと謀り、そして……

『「ケルトラトンは?」法学者が容器に数歩まで近づくと、暗い声が訊ねた。
「ここです、ちゃんと聞いていますよ、オヴァロン」ケルトラトンは答えた。「気分はいかがです?」
「最期の時がきたらしい」とオヴァロンはきっぱりと言った。
 絶望に押しつぶされそうになり、それをそぶりに出さぬため、ケルトラトンは意志力を総動員せねばならなかった。
「あなたを救えるのなら,われわれは何でもします!」と、断言する。
「何人たりと、わたしの死をはばむことはできまい」オヴァロンが言う。「それでいいのだ。なぜなら、死はわたしにとり苦痛からの解放なのだから。だが、友人たちに囲まれて逝けるのはうれしいことだ。ケルトラトンよ」
「はい!」
「きみは上流階級出のガンヤス人で、帝国を統治するための教育をうけている。――そして、善なるものを信じている。約束してくれ、グルエルフィンのあやまてる状況をのぞき、われわれの種族を惑星に束縛された孤立から救い出す政府をうちたてるために全力をつくす、と!」
「約束しますとも、オヴァロン!」
 何を言ってるんだ、わたしは! と絶望的に考えた。いつか果たすことができるかもおぼつかぬようなことを、どうしておまえは約束できるのだ!
「ありがとう」オヴァロンの声は弱々しかった。「それから、帝国が銀河系の人類とコンタクトを取るよう尽力することも約束してほしい。アトラン、ローダンはガンヤス族の友だ。もしきみがかれらを助けることができるなら、そうしてもらいたいのだよ、ケルトラトン!」
「微力をつくします」ケルトラトンは誓った。
「それにはきみの生涯すべてが必要だろう」かつてのガンヨーは言った。その声は、ささやくような低音となっていた。「しかし、わたしが帰還して、混沌を制圧するまでには20万年が必要だった。もしきみの意志が十分に強ければ、ケルトラトン、グルエルフィンにまきおこるカオスを克服できよう」
「休息をとってください、オヴァロン!」ハテルモンフが割り込んだ。
「休息!」オヴァロンがオウム返しに言う。いまやその声はほとんど聞き取れなかった。「ようやく憩うのだ――長いながい時ののちに」
 しかし、いま一度、司令室に反響するほど声をはり上げて、
「見よ、星々を!」はっきりと叫ぶ。「きみらを呼んでいる! 無為に待たせておいてはいけない! 真に生きるのだ、友よ!」
「脳波、ゼロに落ちました!」生命維持システムのコントロールを読み取っていたジェルタイメが報告。「増幅器をもちいても、振幅検出できません」
「オヴァロンは逝去された」虚ろな声で、ハテルモンフが、「生命維持システムをはずしてくれるかね、ジェルタイメ。偉大なるガンヨーを、かれにふさわしく宇宙に葬ることにしよう」』

第22章 グルエルフィンの興亡

 オヴァロンの臨終に立ち会ったケルトラトンたちはその後、帝国を離反したヴェサケノス族のもとへ身を寄せる。それから57年、ケルトラトンはオヴァロンの遺言を守るために奔走した。帝国最強のルピクラン教団の助力で再統一はかなうかに見えたが、誓約を果たす直前にケルトラトンはテロのため生命をうしなう。グルエルフィンは再び戦乱に覆われた。
 それから300余年。ケルトラトンの子孫は故オヴァロンとの誓約のために身を献じつづけた。そしてケルトラトンの曾孫シラリアはある日啓示をうける。グルエルフィンは統一されねばならない、迫る永遠の戦士の脅威を防ぐために……。それはオヴァロン。かれの精神は死後も宇宙のプシオン網のなかに生きていたのだ。謎のゴリム、トルニブレトの援助で、かれは故郷に警告すべく帰還したのである。
 シラリアは、オヴァロンの伝導者として帝国再建に乗り出す。彼女は、戦争によって私腹を肥やすガンヨー教団、かつてのルピクラン教団を革命により排除。グルエルフィン同盟をうちたて、史上初の女ガンヨーに就任する。
 それから22年がたつ。オヴァロンは、窮地に立った恩人トルニブレトを救いにいくと言ったまま消息を絶った。しかしグルエルフィン同盟は銀河防衛の準備をつづけていた。そこにソト・グン・ヌリコがあらわれたのだ。永遠の戦士と看破されたソトは、友好的な態度をかなぐり捨てるが、すでにそれに備えていたカピンによって撃沈された……
 ソト・グン・ヌリコの消滅から44年。《リヴィングストン》に同乗してきたカピン伝導者3人の口を借りて、ガンヨー・シラリアはグルエルフィン500年の歴史を語り終えた。オヴァロンが生きている――そしてソトは永劫の闘争の先駆。ブルは判明した事実を反芻しつつ、ストーカーを受け入れてしまった故郷銀河系に思いを馳せた。

第23章 マルダカーン

 ダーン系マルダカーンは、オファルの歌手の帝国の本星。ここで、〈生命の競技〉が開催されるのだ。
 そして、エルファド人ヴォルカイルもマルダカーン唯一の都市、南極のマルダッカにあった。かれは本来の作戦領域エレンデュラで、ゴリムに苦杯を喫した。しかもかれの名誉はセポル星系で著しく傷つけられていた。その汚名をすすがねばならないのだ。
 マルダカーンの唯一の存在意義は、両極をのぞく惑星全域を覆う荒野において、プシオン擬似物質建築を舞台におこなわれる生命の競技。勝者は北極の高等ウパニシャドにシャドとしてむかえ入れられる。だが敗者は1マルダカーン年、テラの11年間この惑星で奴隷として暮らさねばならない。まもなく今年の生命の競技が開催されるのだ。
 《エクスプローラー》、《ラヴリー・ボシック》は生命の競技の惑星マルダカーンへ到着した。そして、《ラシャト》もまた、シャッディンを封鎖していたエルファド人コリュアムから、《ツナミ》乗員の生存者48名がマルダカーンにいるという情報をつかんでやってくる。ところが……
 元《ツナミ》乗員たちは北極のウパニシャドにいる。そしてパニシュ・パニシャのグラウカムは、かれらに会いたければ生命の競技で勝ち残れと宣告したのだ。
 一方、やはりウパニシャドにゴリムがいると聞いたヴォルカイルは猛烈にかれらと戦いたくなった。戦士の学校に潜入したかれは、しかしシャンと称するゴリム数名に完膚なきまでに打ちのめされる。パニシュの位を有するかれが。やがて気づいたエルファド人は、パニシュ・パニシャに諭される。おまえがゴリムに負けたのは、心に迷いがあるからだ。それを打ち破れ、永遠の戦士イジャルコルのために、生命の競技でヴィーロノートたちに勝利するのだ!

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『エスタルトゥへの道』を行く/8

「しっかし、キトマっつーのも何の脈絡もなく出てきたなあ。あー、べっくらした」
「たしかにテケナーは〈大群〉の時代も生きていたわけだから、キトマのことを知っていてもおかしくはないんですが……」
「日本の読者は、はいそうですか、ってわけにもいかんし。まあ、クエリオン人は〈大群〉建造にも関わったほどの由緒正しい種族ですよ、って説明するしかない」
「以前に銀河系に襲来した〈大群〉を造るのに協力したらしい。でも、あのローヴァーの建造した〈大群〉とは別物……ですよね?」
「ローヴァーは『力強き者』の前任組織〈カタラク〉時代の〈大群〉建造者だからね。そういえば、銀河系太古のスープラヘト危機を救ったのがやっぱり〈大群〉建造種族のひとつ――なんて話もあった」
「そんな連中がいまごろ何してるんでしょう」
「うーん、ドリフェル監視艦隊だとか……オルドーバンみたいに。まず、コスモクラートの委託をうけて、ってことはありえる。逆に、ローヴァーみたくコスモクラートに反旗を翻してたってことも、ふむ」
「ときに、キトマほどではないけど、やっぱりずいぶん昔にお亡くなりになったオヴァロンも、突然の復活ですが」
「いや〜、死人に口なしとはいうけどね、フォルツが大昔になに考えていたのかは永遠にわからない。オヴァロンの死そのものが唐突だったし――当時、とにかくカピン人は便利で強すぎた。公会議VSギャラクティカー・カピン同盟軍なんて大戦争に話をもっていきたくなければ、グルエルフィンは混乱してもらうしかなかったんじゃないかな」
「トルニブレトが生前のオヴァロンについてやけにくわしい。細胞活性装置の故障のこと、カピン人が知能増強に使ってた共生体トリュツォムの機能――このへんもなかなかクサいでしょう」
「旧友って、オヴァロンだったのかなぁ」
「ともあれ、クロノフォシル遍路話で 200〜 300話の舞台はM−87をのぞいて総まくり。んで、どうもこのへんの話は 400〜 599話に手を染めた、という感じで」
「そこから後はもう『アトラン』でツバついてるし、設定のほじくり出しも先がないぞな!!」
「あー、っとそれからゴリム。はじめ“異端者”かと思えば、これも意味があるみたい。んー、伏線伏線!!」

解説 : 太古種族のこと

エルファド人
オヴァロン
グルエルフィン
キトマ
サトー・アンブッシュ

第8部 カルタン人 / Die Kartanin

第24章 ストーカー暗躍

 炉座銀河ハンザ商館の追跡をのがれたカルタン人の宇宙船《マスラ》。惑星スコラ原住種族を強いて修理を進めるが、このままでは故郷の三角座銀河への帰還は絶望的。プロテクターのダオ・リンは、ハンザ商館襲撃を決定する。かれらの“盗んだ”パラタウを奪回するのだ。
 ちょうど星系内に出現したノクターン群の騒ぎにまぎれ、カルタン人は目的を達する。ハンザ艦隊が到着したのは《マスラ》の消えた直後だった。
 だが、駆動系の修理は完全ではない。進退きわまったダオ・リンは決断を下した。敵、宇宙ハンザ同盟の本拠を討つ――。そのときだった。ストーカーがあらわれたのだ。
 ボシック星系オリンプでは、エスタルトゥへのキャラバンの準備が進められていた。しかし、2度にわたるコンテナ爆破事件により、出発時期はいまだに決定しえずにいる。キャラバン基地を極秘に移転する一方で、オリンプのロボット皇帝アンソン・アーガイリスは謎の破壊工作者を捜していた。やがて判明した犯人、スプリンガー族長のゴシュボンは、ストーカーの委託で動いていたのだ。なぜストーカーが?
 テラは政治的にも流動期にある。第一テラナーに立候補したシーラ・ロガルドとその政党コスモポリタンは、第三の道を主張する。コスモクラートも、混沌の勢力も、そしてエスタルトゥの影響もなしで、と。
 〈それ〉はなぜ沈黙しているのか。エデンII活性化以来、人類の導師は瞑想にふけっているかのようだ。ストーカーも、〈それ〉とのコンタクトを望みつつも成功できずにいるらしい。
 まもなくテレポート実験が開始される……

第25章 パラタウ・アタック

 テレポート。究極の移送手段。その端末をもつ者すべてがテレポーターとなる。アルコンIに開かれたウパニシャドにおいて、その大実験が開催されるのだ。かつての大帝国の中心に、銀河の要人たちが集まってくる。
 テラのウパニシャド・チョモランマでは、ティフラー、テラナー女性のニア・セレグリス、深淵の地で生まれたハルト人ドモ・ソクラトの3人が銀河系最初のシャンとしてのテストに合格していた。かれらはアルコンに待つストーカーのもとへ派遣される。
 ストーカーはあせっていた。銀河系の重要惑星の多くにテレポート・システムを設置し、銀河全域を巨大な無風ゾーンに変えるのがかれの使命。そのためにはパラタウが邪魔になるのだ。カルタン人に対し、かれは約束した。パラタウ所有権の確保、《マスラ》の修理、そしてホーマー・G・アダムスという名の虜囚を……。
 NGZ430年3月30日14時ジャスト。テレポート・システムのスイッチが入れられた。そしてまさにその瞬間に、カルタン人の攻撃が開始された。猫族は、アルコン内部、、ウパニシャドにいたのだ。かれらのパラタウを用いた攻撃はすべての機械類、テレポートさえも作動不能に陥れ、その混乱のなかアダムスの姿は消えた。カルタン人によって誘拐されたのだ。
 ストーカーの計画は、一見成功したかに見えた。しかしそうではなかったのだ。パラタウによるテレポート・システムの混乱。そして誘拐したアダムスをウパニシャドへ連れてくるはずだったカルタン人の裏切りと逃走。すべてが狂っていた。しかしこのままでは終わらせない。かれは陰謀の仕掛人なのだから……

第26章 ピンホイールへ

 マークスの末裔マーカーの宇宙船が、銀河間空間の暗黒惑星である生命体を採取中事故にあい、謎の男ふたりに救われた。

救い主は、かつてのミュータント部隊々員ダライモク・ロルヴィクとタッチャー・ア・ハイヌ。〈それ〉に統合されたはずのふたりは、負のプシによって〈それ〉が麻痺していたときに精神集合体から分離し、放浪の旅をつづけている……

 ストーカーは3人のシャンと、そして従兄弟のトファリーを捜しているというレリラ・ロコシャンを連れて炉座銀河へと出発した。トファリーはカルタン人の船にいるというのだ。そして《マスラ》は、駆動系の破損から三角座銀河には到達できない。拠点があるはずの炉座銀河へむかうしかないのだ。
 また、アダムス救出に艦隊を率いて出発するはずのガルブレイス・デイトンのもとにも、仲間を捜す女性があらわれていた。バス=テトのイルーナ。カルタン人のパラタウ・アタックの際にアストラル漁師シャギィと離れ離れになったのである。十中八九、シャギィは《マスラ》にいる!
 そして、《マスラ》のシャギィは本来の記憶を取りもどしていた。かれはカマシュ人トファリー・ロコシャン。氏族の追跡をのがれるために、みずから偽りの人格を信じていたのだ。
 そのころ、ダオ・リンは難問に直面していた。パラタウ泥棒の親玉アダムスを捕らえたのはよいが、このままでは故郷銀河、ギャラクティカーのいうところのM−33ピンホイールまで帰りつくことは不可能。そして彼女は、炉座のハンザ商館から強奪したパラタウを使うことを決意。エスパーの力で大深淵を跳躍しようというのだ……

謎の存在の助けで、シャドック・クレク採取に成功したマーカーたちは、針路をパラタウ産地ヌ・ヤラへむけた。先祖の宿敵の名をとって“ゴノツァル”と命名したシャドックは、プシオン的真空を作り出す能力をもつのだ。

第27章 カルタン

 大跳躍は成功――《マスラ》は、故郷星系たるグーネン系に物質化したのである! しかしそこでダオ・リンは、パラタウ供給源のヌ・ヤラ星系が反乱を起こしたことを知る。
 《マスラ》転送の際のパラタウ爆発は、各所で探知された。ストーカーの船《エスタルトゥ》も、デイトン指揮下の銀河艦隊も目標をピンホイールにすえた。 シャギィ=トファリーとアダムスは、ダオ・リンによって首都ト=ツィン=カルタンへと連行される。そして“高貴の女たちの評議会”において、彼女の口からストーカーの陰謀の全貌をきさかれる。かれを“友”と呼んだストーカーの。
 評議会ホールに到着したティフラーたちは、そこのカルタン人のほとんどがすでにゴノツァルの呪縛下にあることを察した。まもなくマーカーを排除したかれらによって呼びよせられた銀河艦隊によって迫りつつあったマーカー艦隊も追い払われる。戦争の危機は回避されたのだ。ここにカルタン人とハンザ同盟の対立も解消され、2種族協調の道が模索されていくだろう。

レリラ・ロコシャンとバス=テトのイルーナは、ともに捜す相手を見出せなかった。実は同一人物であるかれらは、伝言を残して姿を消していた。

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『エスタルトゥ』への道を行く/9

「えェ、独逸で現在も進行中、空前絶後、世界最長ののSFペリー・ローダンに、最近カルタン人てェ種族が登場しております。お空に見えます星座、なんと言いましたか――そうそう、三角座。その辺にあるメシエ・カタログ第33番の銀河に発祥するってえ連中で。
 このカルタン人てェのが、いわゆる“天の川”のソルてぇ太陽のまわりを回っておりますところの惑星地球の、あの、道路をピョコピョコ横切って、それでもって途中で、はた、と立ち止まってこっちをキョロリとにらみ、たまたま目があったりすると、まず間違いなくこちらが先に視線をそらしちまうという、カツブシとコタツの好きな猫にそっくりだってんですねー。
 は、何が猫に似てるかって? ヤですよ、おまいさん。カルタン人。さっきから言ってんでしょ。え、言ってない? 1回だけ? そりゃヘクリツってもんです。あたしのせいじゃあない。よく聞いてないおまいさんが悪い。は、説明が長ったらしい? 大きなおせわじゃ。あっと、ちょ、ちょっと待ってくれい!」

(しばしの間)

「(咳払い)ええ……大分話がそれちまいましたネ。 そう、カルタン人は猫に似ている。本国ドイツじゃあご大層な人気らしい。パラタウでもってエスパーになるのが良いのか、性格が悪いのがウケるのか、『ミャオウ!』てな挨拶がはやったり。ところが、ひょんなことから、それが災いする御仁もいるわけで――
 まあ、カルタン人が大勢で野営をしているとお思いなさい。夜になると、なんてったって猫だから、俄然活動的になる。焚火なんぞ囲んで宴会を始める。で、これまたなんてったってネコだから、マタタビが好物だったりする。焚火にマタタビ放り込んで、煙がモクモク立ちますと、その匂いでみぃんなラリっちゃう。イーイ気持ちになっちまうわけですな。嘘だと思ったら、おまいさんも試してごらんなさいナ。ラリった猫の鼻の頭にトンガラシなんぞ塗ると、もっと面白いものがみられるかも……また話がそれましたナ。
 さて、そんな場面にあるテラの工作員がでくわしたとお思いなさって。類稀なる能力と容貌とを併せもつその御仁、ラリ猫どもに威勢よくタンカを切った。
『さあ、みんな飛ばしてやる!――あ、あれ、なんだい、その目つきは?』
 そう、“ネズミ”ビーバーのグッキーが、この後どうなったかは、ブリーでさえもあえて語ろうとはいたしません。おあとがよろしいようで……」

第9部 紋章の門 / Die Heraldischen Tore

第28章 生命の競技

 《エクスプローラー》ではある実験が行われていた。マルダッカで捕らえたエルファド人に、抗法典分子血清アンティマコスを投与したのだ。やがて覚醒したエルファド人は、戦士の法典を忘れ去っていた。
 まもなく訪れたパニシュ・パニシャ、グラウカムによって、パーミットを持つテケナーとダントンのふたりが来たる生命の競技参加を認められた。ブルは戦士のこぶしを失ったものとして、その権利を認められないのだ。
 生命の競技は、プシオン建築を舞台に、オファル人の歌声の有する暗示効果によって仮想世界に生きる人物となった参加者たちが戦うもの。無数の予備戦と、大競技と呼ばれる決勝からなる。やがて競技は開始された。
 ダントンとテケナーは、無数の予備戦を勝ち抜いていく。仮想の世界でのかれらの戦いは、競技の審判者クールゼン・トンを激怒させた。かれらは戦士の法典の、服従のおきてに反する行動をとっている。だが、それでも圧倒的なまでの勝利を手に入れているのだ。
 そのころ、ブルはマルダカーンの地下組織、競技師のギルドと接触、永遠の戦士支配に反対するかれらの助力で北極のウパニシャドへ潜入をはかっていた。そこにいる元《ツナミ》乗員たちと会うために。しかしかれは、逆にかれらによって捕らえられる。かれらはシャン。法典分子の影響によって、完全な永劫の闘争の信奉者になりはてていたのだ。
 一方ふたりのパーミット所持者は大競技進出を決めていた。対するは、エルファド人ヴォルカイル。ところが、大競技ははじまると同時に終わった。ヴォルカイルは、法典分子の過充填によって生命維持機能に異常を起こしていたのだ。ふたりはかれを、イルミナのもとへ連れていく。彼女ならエルファド人を救える。
 ヴィーロノートふたりは生命の競技に勝利した。だが、その勝利は戦士の法典に反している。そして、ブルとイルミナは犯罪者として扱われる。ウパニシャド潜入と、そしてもう一方はヴォルカイルから“名誉の”戦死を奪ったとして。決定を下すのは、永遠の戦士イジャルコルだ。
 ホールに響くイジャルコルの声は、パーミット所持者を十二銀河において潜在的影響力をもつべき存在として認めた。ただし、そのためには無風ゾーンを越えて〈王の門〉に達さねばならない。ふたりの犯罪者は法の守護を剥奪されし追放者〈トシン〉とされる。かれらは額にトシンの印をつけ、9マルダカーン年、すなわちテラの99年のあいだ十二銀河の領域に束縛されることになる。印を取ろうとしたり、エスタルトゥから逃げだそうとすれば、トシンの印が爆発するようになっているという。
 ヴィーロノートたちはテケナーたちの指揮下無風ゾーンへむかう。そしてブルとイルミナは、Seg−1とイルミナの《アスクレピオス》と《リヴィングストン》の3隻で、100年の虜囚の道を行く。

第29章 無風ゾーン

 《アハターデック》が難破した。生存者はシガ人女性ジツィ・フッツェルただひとり。そして放浪する植物コマンザタラ。パーラフォンによって思考する植物と意志疎通の道を築いたジツィは、氷雪惑星の洞窟でコマンザタラの夢見る現実を聞かされる……
 無風ゾーンではエネルプシ駆動は機能しない。しかしストーカーの叙述とは異なり、遷移・リニア駆動ならば航行可能なのだ。そしてそれを作り出すのは、テレポート・システムの拡大である紋章の門。そこへヴィーロノートたちは進んでいく。
 テケナーやダントンは、山積する謎に悩まされていた。キド=クラルシュと4人のハンザ・スペシャリストを乗せて消えた《アーマゲドン》はどこへ行ったのか。永遠の戦士たちはなぜゴリム――特にクエリオン人を仇敵とするのか。エスタルトゥの奇蹟とは何なのか。結局、超知性体エスタルトゥに会うしか道はないのだろうか? しかしエレンデュラでもジオン・ゾムでも、彼女の名を知るものは皆無ではないか。
 そのとき、巨大なプシ転送機網を構成する“閉じた”プシオン網の1本が、115万光年離れたアプザンタ二重銀河へと通じていることが判明する。これこそエスタルトゥに通じる道にちがいない。そして、それは王の門を経由しているはず。かれらはそこへと到る長い道の第一歩、〈七つの太陽の帝国〉のザートラ星系にたどりついた。
 用心深いテケナーは、ヴィーロノートたちが惑星パイリアルに降りる隙に、《ラシャト》と《ラヴリー・ボシック》を緊急発進させる。会合点はアプザンタ。
 一方、トシンとなったブルたちは、テケナーたちの数光年後方を進んでいた。ところが、突然無風ゾーンが発生、立ち往生してしまう。ザートラ星系の紋章の門のウォームアップがはじまったのだ。さらにロボット操作の戦闘機ゴリム・ハンターの出現。ハンターたちは乗員のいなくなったヴィールス船300隻を破壊、そしてその間にブルたちは、出現したゴリムの船《ズタア》によって救われる。
 パイリアルに降りたパーミット所持者とその妻たちは、〈護法官〉ドクロエドに歓迎される。かれはエスタルトゥの名を知っているのだ!
 しかしかれは何も語らず、2ヵ月が過ぎる。そしてNGZ430年の明けてまもない日、パイリアルの紋章の門――“テラナーの門”と命名された――が落成する。

第30章 王の門をめざして

 《ラヴリー・ボシック》に潜入していた元ハンザ・スペシャリスト、スーザとルシアンのシガ人ペアは、パーミット所持者にアンティマコスをわたすためテラナーの門に潜入、そこで奇蹟のエンジニア、異次元種族ナックの姿を見る。やがて紋章の門は、パーミット所持者と、1万2000のヴィーロノートたちを呑みこんだ。だが、次なる目的地に物質化したのは、テケナーとダントン、それにふたりの妻のみであった……
 おなじころ、ゴリムに救われたブルは、永遠の戦士伝説の仇敵〈デソト〉の名を知り、その手がかりのある“宇宙の墓場”クルサーファルをめざす。
 パーミット所持者は王の門をめざす。しかしその道は長く険しい。パーミットの影響下に置かれることは、幽閉されているヴィーロノートたちのところから脱出し、4人に追いついたシガ人ペアのもたらしたアンティマコスによって防がれる。7つの門を経て、かれらはムリロンの“蛮人の門”にたどりついた。
 シッダ系ムリロンには、根強い抵抗運動組織があった。ここはかつて、ゴリムの拠点だったのだ。そして英雄ゴリムたちとともに永遠の戦士と戦い、2000年まえトロフェノールのオルフェウス迷宮に幽閉されてしまったというデソトもここで生まれた。そのシュプールをもとめ、ブルもムリロンにあらわれる。
 かれらは、抵抗運動組織のもとにゴリム・ステーションを発見。そこでクリエオン人の映像を見る。

「エスタルトゥの示す道は誤りだ。われわれクエリオン人こそが真の第三の道の導き手!」

 テケナーたちの次の目的地は、ゾムの王の門……

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『エスタルトゥへの道』を行く/10

「生命の競技って、むかーしフォルツの書いた心理決闘に似てません?」
「アトランvsカルバの、たしかにね。ただ生命の競技の場合、あの心理決闘にあった信条のちがいとか、内なる葛藤とかがあまりない。だからすごーくうすッペらな感じがする」
「まあ、今回は永劫の闘争は悪だ、って決めこんでますからね。仮装世界……じゃなくて、仮想世界のだましあい、みたいな感はありますよ」
「ロン・ロワ・コンビがいかに嘘ついて網の目をすりぬけていくか、が焦点になってしまってる。それはそれなりに面白いんだろうけど、このへんがマーちゃんの限界とは思いたくないね」
「新しくヴルちゃんと組むプロット作家になったそうですし」
「ああ、大好きなツィーちゃんよ、どこへ行ったの」
「それから、グリちゃんのマイキャラ、コマンザタラ」
「しゃべる植物」
「動けないくせに移動できる――時々ふっとどこかへ消えちゃう。しかも“永劫の探索”とかいうのをつづけてるらしいし。ただのエスパー植物じゃあないみたい。何かの伏線なんですかね」
「最近のグリちゃんはちょっとおかしい。話は盛り上がるんだけど、変なとこでセコイ。パーミットの感化力に陥ちたテケナーたちから、女性陣が戦士のこぶしを取りあげるとこなんざ、完璧に色じかけ――まさに戦士VS女性、『女の平和』ありすとふぁねす」
「愛欲は世界を救えるか……こんなシーン、ティーンエイジも読む本に書いていいんでしょうか」
「10年前にくらべたらそんなこと。知る人ぞ知る。昔は裸のおねーさんの広告が平気でのってたような三流誌だからね。たぶん当時ドイツの少年ファンはSF=SMマガジン時代のわれわれと同じ苦労をしたに違いない……若すぎる人にはわからんだろうけど」
「さて、おかしな種族また登場。仮面をつけた芋虫みたいな紋章の門のエンジニア――その名もナック。法典に縛られない一族とか?」
「第三の道、という伏線も、〈警告者〉のあたりからやってるけど、また出てきた」
「みんなわれこそは、と主張して譲らない」
「そのうち、元祖第三の道とか本家第三の道とか出てきて老舗合戦するんでないの?」

解説 : ジオン・ゾム

生命の競技
紋章の門
宇宙放浪者
テレポート・システム

WEG NACH ESTARTU / エスタルトゥへの道
1988/7/15 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi