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『海賊放送局アケロン
……ただ見よ、見るのだ! わたしはもどってきた。諸君への、好評の未来予知劇『そしてすべての星々が消えうせる』の次なる一幕を携えて。
諸君のまどろみを脅かしているのだろうか? 望まれぬわが再来で驚愕させているのだろうか? そう易々とわたしをふりすてることはできぬ。わたしは不死。わたしの示すような根本的価値感を言の葉から死滅させることはできないのだから。
見よ、わがもたらすものを! わが運命のオルガンに耳を傾け、流れ出る近未来の映像を観るのだ。
堂々めぐりをつづけるな。立ち止まれ。そして聞け。
〈警告者〉は警告する。このまま無思慮に進んでいくことに、次第に狭まりつつある環の上を歩きつづけることに対し警告する。諸君はいつかその魔圏で行きづまり、ただ足踏みだけを続けることになるのだから。
諸君は袋小路にある。頭を上げてこの道にもはや後戻りのないことを確かめろ。諸君は壁につきあたってただ足踏みだけをつづけるだろう。
この袋小路に入り込むな、その果てには死の苦しみが待っている。曲がり道を使ってもだめだ。それは堂々めぐりへといたるから。悪魔の渦では後戻りは不可能、それは諸君をくり返し出発点へ連れもどし、そしてついには行き止まりへ導く。静止。澱み。停滞。
それを望むのか?
否! もう一度言おう、否! 望むべきではない。だが、いったいどんな逃げ道が残されているというのか? わが運命のオルガンに訊ねてみよう。
見よ! 見よ! 聞け! 聞け!
諸君に第三の道の歌を聞かせよう。かの大通りは袋小路と知れ。壁に頭をぶつけることなく、引き返せ。そして環に沿って動いてもいけない、その路も諸君を前へと導くことはない。
すなわち与えられた大通りのどちらも目標へいたることがないのなら、第三の道を探すのだ。そしてもしそれが目立たぬ分岐で、多くの危険をともなう荒野を抜けるほとんど進むことさえできそうにない小道であったとしても――それを行け!
その時〈警告者〉は運命のオルガンで伴奏しよう。
この真摯な警告をむやみに聞き流してはならない。自分の殻に閉じこもってはだめだ。目を、心を開け。そして見よ、諸君に第三の道のシンボルを示す。それをみずからの内で反応させ、心の奥深く受け入れろ。
自由になれ、束縛を逃れろ、そして注意深くあれ。
そして、ふたたび旗が掲げられたときありったけの耳をわたしに傾けよ。
海賊放送局アケロン――
時代のつねに一歩先を行く――
が送る。
正しき道にある〈警告者〉を。
知恵の小道にある〈警告者〉につづけ。
第三の道を選ぶのだ!』
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429年3月、クロノフォシル・テラ活性化のさなかスリマフォもまた遥かなあこがれにしたがいヴィーロノートとしてテラを飛び立った。イリスとして自己回復の機会を待っていたとき以来の友、レオナルド・フレートのヴィールス船で。かれらの目標は、力の球形体エスタルトゥ十二銀河のひとつジュラーガル。
ジュラーガルの奇蹟は〈歌うモジュールの輪舞〉。虹色に輝くクリスタル柱の群れは、しかし無風ゾーンのなかへ人を誘いこむシレーヌであった。一行はその暴力により難破してしまう。
およそ2ヵ月が経過し、モジュールの群れが去り無風ゾーン消滅ののちも、レムリアと名づけたその惑星から出発しようとしないレオらと道を分かち、スリマフォは救命艇を改造したヴィールス船《ココン》でただひとりトロフェノールへむかう。
その奇蹟は〈オルフェウス迷宮を抜けるカリュドーンの狩り〉。参加の方策をもとめるスリマフォは“キラー”の称号をもつハンター、アルマナクと出会う。かれは戦士カルマーの命で報告艦《ペンドルム》を破壊した男。かれに随行してスリマフォはオルフェウス迷宮へと歩みいる。
ナックの制御する3つの門を抜け、肉体を変貌させる迷宮に入ったふたりは、アルマナクが狩ると豪語していた“フェトの怪物”の襲撃をうけ、あやういところを脱出する。しかし迷宮を出たところで、スリマフォは連れがアルマナクではないことに気づく。それはフェトの怪物――いや、怪物の正体は迷宮の作用で姿を変えられた人間だったのだ。
かれはフェト・レブリアンと名乗り、2000年のあいだ幽閉されていたと語る。ふたりはフェトの故郷であるジオン・ゾムへむかう。
ブルとイルミナは、宇宙の墓場クルサーファルに到着していた。そこは、永遠の戦士の手がのびるまえに用いられていた遷移やリニア駆動の宇宙船の墓場。そこでふたりはコスモクラートのスパイと断定される。告発者はデソトその人。宇宙放浪者の伝説的指導者は、フェト・レブリアンと名乗った。かれは、超知性体エスタルトゥの真意を知りたい、そのために永遠の戦士イジャルコルに貢ぎ物を捧げてエスタルトゥの門へいたる許可を得るのだと言う。告発の理由として、そしてイジャルコルへの貢ぎ物として姿を見せたのは、半コールドスリープ状態のスリマフォ、コスモクラート・ヴィシュナの具象化であった……
炉座銀河では、パラタウを転送機で輸送する実験がおこなわれていた。そしてアンソン・アーガイリスの指揮下ハンザ・キャラバンの準備も進んでいく。
6月25日、アーガイリスは炉座の賢者に会う。ノクターン塊の集合体から、パラタウによるプシの嵐は5万年まえ突如起こった事態と聞かされる。
さらに、賢者からその名を知った〈炉座の愚者〉のもとで、おなじ問いをくり返したかれは不思議な回答を得る。
「陽気な老人の星々が互いにからみ合うまえのこと。当時その星座は2本の平行な直線を描いていた。〈宇宙の両道〉、あるいは一部のノクターンは〈メーコラーの髪飾り〉と呼んでいた」
ストーカーの接近を知ったロボット皇帝は、みずからストーカー・マスクを着けていた。やがて愚者のいるキュクロプス系に出現したソトとかれの対決は痛み分けに終わった。ストーカーはかれの正体を見抜いたのだ。かれはアーガイリスに、パーミットとプシ・プレッサーを贈る。アーガイリスは、相手が何らかの理由から“時間切れ”を恐れていると感じる。
おなじころ、テラのウパニシャドでは3人のシャンが次々と階梯を消化し、卒業が間近にせまっていた。ウパニシャド・チョモランマ近辺は、最近常に不穏だった。ストーカーに反対する地下組織団体が次から次へとあらわれ、ティフラーたちに翻意を勧める。シャンたちが心を動かされることなどなかったが。
最後の階梯を修了するまえ、ストーカーはシャンにウパニシャド創設者の彫像の説明をする。
「すべてのウパニシャドにアッター・パニシュ・パニシャの像が安置されている。かれの名はオーグ・アト・タルカン。かれは最初のソトであった」
3人のシャンはゴム――成就の階梯に達した。特にティフラーとニアは、互いの愛情さえも忘れ去るまでに。3人は“かれらのソト”へ、すなわちストーカーへの忠誠を叩きこまれている。そして、かれらはストーカーの永遠の戦士として、供を構成する者を捜すため、おのれの種族のもとへ出発した。
……7月、カルタン人に強奪されたパラタウ・キャッチャーの行方を捜索していたニッキー・フリッケルたちは、銀河と平和条約を調印しようというカルタン人が、何か極秘の計画を進めていることをつかむ。《マスラ》プロテクター・ダオ・リンが、謎の〈アルドゥスタールの声〉の命をうけてたどりついた惑星ヴァルーサでは、新型のリニア駆動を装備した多段式遠距離宇宙船の艦隊が建造されつつあったのだ……
テケナー、ダントンのパーミット所持者は護法官ドクロエドとともに、ジオン星系ゾムの王の門で物質化した。そこでかれらはイジャルコルの親衛隊のエルファド人ヴィローノによる妨害工作をしりぞけ、5月半ば、ついに衛星イジャルコルでおなじ名をもつ永遠の戦士と対面する。そしてその場には、氷づけのスリマフォを連れたデソトもまた、いた。イジャルコルはフェトが自力でオルフェウス迷宮を脱出したとして恩赦を与える。
そして、スリマフォの解放をもとめるパーミット所持者たちのまえにその姿をあらわした。かれはムウン銀河に発祥するプテル人。永遠の戦士12人はみなプテル人。そしてソトやその付人は、かれらをモデルとして創造されたもの……。イジャルコルはスリマフォを解放する代償として、近くアプザンダ二重銀河の重積ゾーン〈暗黒の天空〉で行われる、永遠の戦士全員の列席するあるできごとの証人となってほしいと依頼する。わたしはエスタルトゥに、あるささいな質問をしたいのだ、と。
《エクスプローラー》はそのころ、無風ゾーンの外、ヴォスゴル星系ニュー・ムリロンにあった。そこでは植民者であるムリロン人たちがゾム人の護法官による“系統発生プロジェクト”の責苦にあえいでいる。
ムリロンにあったゴリム・ステーションごとこの惑星に到着したブルは、三重船に《リヴィングストン》の姿がないことに気づく。いまやかれらの友となったエルファド人ヴォルカイルから、ギャラクティカーらしいゴリムがコンタクトをもとめているという連絡が入ったというのだ。そのゴリムは暗黒の天空のなかの、惑星ボンファイアで待っている、と。
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「えらいドタバタした展開になってきたな」
「もう余すところ10冊。事態も終盤――そんな感じですね」
「そこにまた、メーコラーの髪飾り」
「メーコラーのかんざし、メーコラーの矢とも読める。なんでも『メーコラー』っていうのは、カルタン語で『膨張する巨大なもの』の意味だそうで」
「思わずふとった芸姑さんを想像してしまう」
「スチャラカじいさんの色町遊び」
「ねこーじゃ、ねこーじゃ――とかいって」
「……で、むかしは世の中こんなに乱れていなかったんぢゃ、と昔話をする。陽気な老人てのはやはり法の創造者の陰喩ですかね」
「創造の山の活性化でも、浮浪者おじいさまのヴィジョンが登場してる。アレかもしれない」
「謎また謎、しかもこの語呂合わせの連続は凄いなんてもんじゃないですよ。アルドゥスタールとエスタルトゥ、オーグ・アト・タルカンとカルタン人、露骨なくせになにひとつ読み解けない伏線の山」
「ウパニシャド創設者オーグの彫像は、よく読むと実はお猫さま。口が三叉になってるとかなんとかね。もっとも、冠詞からすると男性ではあるけれど」
「そして、謎を秘めた『網を歩む者』――最近の『読者とのコンタクトページ』の気配からすると、1300話にはじまる物語のキーワードらしいんですが」
「前にも1224話の『コンタクトページ』でヴルチェクが将来の展望の中でちらりと洩らした。そこには永遠の戦士とかストーカーとかの名前も出てた。そうした名前の中でいまだ登場しないのが『網を歩む者』」
「『網』といえばヴィールス船が使うプシオン網」
「で、例の旧友は『歩む者』……おそらくは宇宙プシオン網をなんらかの形で操作できる存在。プシオン網のなかに生きのびたオヴァロンも、謎のゴリム、トルニブレトも候補者だし、あのキトマの種族クエリオン人のことかもしれない」
「『歩む者』といえばローダンだって候補者。なんせ独力でトリークレ−9を動かした怪物ですから。それに『網を歩む者』が味方とはかぎりませんよね」
「ひとつ、冗談、いいかな」
「また、悪質なんでしょ」
「ローダンの、娘の名前、エスタルトゥ」
「ひえっ」
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暗黒の天空――謎に満ちた超知性体エスタルトゥの座。その宙域に、荒れはてた惑星ボルダーがある。そこにジオン・ゾムの王の門と通じる〈エスタルトゥの門〉がある。パーミット所持者とその随行4名は、紋章の門を越えてここボルダーに到着した。
上空にはおよそ十万隻の艦隊が集結していた。そして永遠の戦士の星型宇宙船12隻。さらに、パイリアルで引き離されたヴィーロノート1万2000人、元《ツナミ》乗員のシャン48名、《アーマゲドン》で消えたハンザ・スペシャリスト4人、すべてがここに集まっていた。かれらは皆法典ガスの影響下にあった。そしてキド=クラルシュも。かれが言う。
「紋章の門を抜けるごとに、おまえたちの意識のプシオン・コピーが取られ、利用されていたのだ」
上空にはさらに、《ラヴリー・ボシック》と《ラシャト》も到着していた。軌道上で事態を観察していたかれらは、ボルダー上で永遠の戦士たちの会合がはじまらんとするまさにそのとき、13隻目の、そして他をはるかに凌駕する大きさの星型船が接近するのを探知した。
アプザンタ二重銀河を支配する両永遠の戦士グラニュカルとアヤンネーが同時に口を切った。
「暗黒の天空の支配者たちは、遠き星雲に第三の道をもたらすべく、いまを絶好の機会と判断した」
支配者たち? ロワは疑問を感じた。暗黒の天空の支配者はエスタルトゥではないのか。なぜ超知性体が複数で表現されるのだ? そのとき、かれが出現した。新たなソト、ティグ・イアンが。
ソト・ティグ・イアンはクラルシュを付人にし、10万隻の艦隊を率いて銀河系へ出発する。旗艦は《ゴムスター》。片やふたりのパーミット所持者と随行たち、そしてデソトは、イジャルコルとともに“エスタルトゥの呼び声にしたがい”暗黒の天空奥深くへと進む。
10万隻の艦隊が銀河系へと航行していく。その途上“失敗者”である“旧ソト”からのハイパー波が受信される。
「NGC3627、ヴィラメシュに、エスタルトゥへもたらしてはならない貨物を積んだキャラバンが停泊している」
それは、アンソン・アーガイリス指揮下のハンザ・キャラバン。ティグ・イアンはそれをパラメカニック・フィールドで拘束し、撃破していく。そしてカラッケ50隻、コゲ20隻からなるキャラバンは、まもなく張られた隔離スクリーンによって、荒野の惑星に幽閉されてしまう。ティグ・イアンの誤算はただひとつ。騒乱のさなかコールドスリープから脱したスリマフォが《ココン》で逃走したことであった。だが、銀河系へ着いたスリマフォは航行中吸わされた法典ガスを除去するため服用したアンティマコスの、コスモクラートの具象化のメタボリズムへの副作用によって意識をうしない、適切な警告を発するより先にタフンのメディカル・センターへ運ばれる。
スリマフォの逃亡と時期をおなじくして、孤独な惑星にあったジツィ・フッツェルはコマンザタラの言葉を聞いていた。救済の時が来た……そして、ジツィはタフンに係留された《ココン》のなかで発見されたのだ。
8月5日、ジュリアン・ティフラーとニア・セレグリスはアルコンIにその供を集結させた。約1000隻の艦隊。おなじ日に、ギャラクティカムはひとつの凶報をうけていた。新たなソト、ティグ・イアンが銀河系ハローに到着したのだ。
その供にギャラクティカーをも引きつれたティグ・イアンのデモ演説に対し、ストーカーはかれを〈スティギアン〉――冥府より来た者と呼んだ。そしてストーカーは投降を要求する付人スコルシュを激怒のあまり殺してしまう。かれは自制をうしない叫ぶ。
「わたしは自分の良心を殺してしまった!」
ストーカーはもはやギャラクティカムにとって招かれざる者なのだ。しかも、エスタルトゥから付きしたがってきたパニシュたちもスティギアンのもとに走り、唯一の味方であったティフラーも《ココン》で発見されたアンティマコスによっておのれを取り戻し、ストーカーは孤立無援となる。
最後の道は、マゼラン星雲へむかったドモ・ソクラトの供を率い、スティギアンを決闘にひきこむこと。マゼラン星雲に移住したハルト人の惑星で、ふたりのソトは対峙した。
勝敗はあっけなく決した。しょせんストーカーは、“銀河系攻略用ソト”たるティグ・イアンを製造するため必要な“サンプル”をエスタルトゥへ送るための手段にしかすぎなかったのか? スティギアンはテルツロックを隔離スクリーンで包む。そこはストーカーの墓所となるのだ……
だが、粉砕されたストーカーの身体は間一髪ティフラーによって運び出された。ソクラトは同胞とともに隔離バリアの下に残る。ストーカーを救うべくタフンへむかう途上ティフラーが言う。
「ストーカーはより妥協しやすい悪。スティギアンは大難なのだ!」
『「落ち着きたまえ、ガーシュイン」四方八方から囁くような声。
「落ち着きたくなどない――それにできんのだ!」
わたしは荒々しく言い返した。「結局この不幸な事態はまっくわたしのせいなのだ。それに、二度とわたしのことをエスタルトゥから来た誘惑者のようにガーシュインなどと呼ばんでくれ。ホーマー・G・アダムス、それとも単にホーマーだ」
「きみは確かに事態の触媒の役目をはたした、ホーマー」ネーサンが答える。きょう、新銀河暦430年9月15日に、スタルホフで“面をつきあわせて”わたしの話相手をしていたのは、ルナのハイパーインポトロニクスだったから。「だが、きみがやらなければ、誰か他の者がいたろう。この展開はきみたち人間の手を――それに、われわれハイパーインポトロニクスの手も――越えた法則にしたがっていたのだ」
ようやくわたしはいくらか平静を取り戻し、椅子に沈みこんだ。精神の目のまえをもう一度、チョモランマ=ウパニシャドで演じられたシーンが流れすぎる。
新たなソト、ティグ・イアンは全銀河文明の銀河評議員のまえに姿を見せ、自分が侵略者としてではなく、友として、助言者として来たことを請け合った。
ああ、そうとも、かれは多くの美しい、偽りの言葉を口にのぼせた。
わたしはひとつとして信じなかった。
ソトには一度失望させられた。二度目はそうはならない。
一方でティグ・イアンは、かれのもとでラール人統治のようなことがくり返されるのを心配する必要はないと保証した。
かれのもとで!
それで十分ではないか?
かれはエスタルトゥが〈それ〉の力の球形体の所有権を主張することはないとも説明――エスタルトゥの具象化としての権利をもって言明した。むしろ自分はわれわれと交わした援助協定を満たすための顧問でしかない、と。
援助協定!
そんなことは知らないし、望みもしなかった。しかしこのソトはわれわれが何を望むかなど知りたくはなかろう。かれにとって、われわれがどうすべきか知るだけで十分なのだ。
それから、かれは援助協定の個々の点を列挙した。銀河系の文明惑星すべてへの、十分な数のウパニシャド学校の準備、ギャラクティカーのための技術発展援助の教示、ギャラクティカムにすべての第三の道の敵、特にゴリムに対して有効に戦う能力を与えるための、永劫の闘争の組織。
しめくくりにソトは、銀河系を宇宙最大の奇蹟で飾りたいと発表した。エスタルトゥ十二の奇蹟すべてをさえ凌ぐ奇蹟で。それは銀河系を宇宙の果てからでもそれと知れる宇宙の灯火となすだろう。
わたしは怒りではじけた――残念ながらようやくここスタルホフにおいてであって、チョモランマでではなかった。
「お笑い草だ!」悪態をつく。「このソトは銀河系がこれまで知るなかで最悪の専制君主へと脱皮するだろう。わたしたちが20世紀この方、ペリー・ローダンや偉大なテラナーたちと築き上げてきたものすべてが破滅するのだ」
「いいや!」さえずるような声が叫んだ。「そんなことはけっして起こらないぜ、ホーマー!」
最初わたしは脳天を打たれたように思った。ティグ・イアンがわたしをうかがって、あざけるつもりかとあやぶんだのだ。
しかしそこで、部屋の中央にネズミ=ビーバー、グッキーの立体映像をみつける。
われ知らず、目に涙があふれ出てきた。
「泣くなよ、ホーマー」イルトが元気づけてくれる。「なにもかもよくなるよ。あんたはぼくの幻を見てるだけだ――ぼくもあんたを見てるんじゃなくて、ネーサンからあなたがそこにいるって知ってるだけ。ぼくらのあいだの距離がとてつもなく大きいことは知ってるだろ」
「だが〈それ〉は!」わたしは叫んだ。「〈それ〉がわたしたちを援助することはできないのかね?」
「そいつはぼくにもわからない。この連絡も、もう長くは維持できないんだ。でも、あなたと全ギャラクティカーに保証する。ペリー・ローダンと仲間たちは、銀河系の友達をけっして忘れてないって。
いまはまだコスモクラートの呪いがぼくらの帰還をじゃましてる。でもその日は来るんだ。それまであんたたちがしっかりしてなきゃいけない。ストーカーも、ティグ・イアンも、どんなソトも信用しちゃだめだ。エスタルトゥの銀河で起きていることは、宇宙のモラル・コードを脅かしているんだから――そして、その事態はどうやら〈それ〉の力の球形体にも伝染してしまうみたいだ」
「わたしはもうどんなソトも信じない。しかし、どうしたらソトに対抗できるのか、具体的な示唆をくれないか、グッキー」
「ホーマー、かれにはもう聞こえない」ネーサンが言った。「連絡は切れた」
そのことを――そしてネーサンを通してグッキーから知ったことを――消化するのには、少し時間がかかった。
その後で、それまでより自由になった気がした。
同時にわたしのなかで、エスタルトゥのソトたちがわれわれをひきずりこんだ不幸な事態に抵抗しようという決意が生じていた。
われわれは、もう一度学ばねばならない。
しかし、やりとげるだろう。そのことは確信していた。われわれ、銀河系文明は……。』
<< 1295−1297
「ついに」
「ついに、出ましたね」
「うん、いかにもツーンと臭ってくるような浪花節だけど、やはりどこかじーんと感じてしまうわな……信じるものに裏切られ、故郷を追われる主人公。平和を願い、希望を抱き、だが、やがてくる非情な結末に泣きぬれる仲間たち。風の便りにふと聞いた忘れえぬ故郷の危機。帰れるものなら帰りたい――そう、帰れぬまでも、友たちのために力をつくそう。失意にみちたこの心にふたたび熱い炎を点そう。そして、主人公はまた立ち上がるのだ……うるうる」
「……えと――それで、スティギアンですけど」
「うん、スティギアってのはギリシア語の冥府。ストーカーの神話きちがいの産物ってことかね」
「オルフェウス迷宮のカリュドーンの狩りは、本当なら『プシオン迷宮のヤルーンの狩り』。失われたヘスペリデスの贈り物は『エスタルトゥの贈り物』が正解。あ、『プシオン』というのも本来ソタルクにはない語彙だそうで」
「《ツナミ113》《114》の乗員の中にくわしいのがいたんだろうね」
「はあ、しかしなんとも。侵略予定地の種族のサンプルをとって、その精神構造と知識をそなえたサイボーグを製造、それから浸透をはじめる。頭がいいのか回りくどいのか、よくわからん連中ですね」
「さーて、ようやく物語の筋道がみえてきた――NGZ427年にゼト・アポフィスがお亡くなりになると、宇宙ハンザ同盟は防衛機構としての意味を失い、ただの商業組織になる。商売上手なアダムスは先を見越して新市場開拓にあちこちに《ツナミ》を派遣する。その一部隊がエレンデュラで拿捕され、乗員をデータ源とするストーカーが製作される」
「秩序VS混沌戦争のただなかに乗りこんだ〈警告者〉。追いかけたテケナーはとかげ商人と手を組んだアダムスに誤魔化される。テラ活性化の興奮のなかで正式に紹介されたストーカーは、チャンスとばかりに演説をぶってサンプルを故郷に送ることができた……と」
「ストーカーはテラナーなみに運がいい。決闘の間も遺跡のことなんか考えるほど悠長だし、悪いところまでテラナーそっくり、なんだろうな」
「けっこう愛嬌あって、いいキャラでしたね」
「うん」
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NGZ430年6月15日、ブル、イルミナとふたりのメンターを乗せた《エクスプローラー》は、エルファド人ヴォルカイルに指定された、謎のゴリムとの会合地点ボンファイアに到着した。他のヴィーロノートたちはすでにそこでかれらの来るのを待っていた。
ボンファイアは自由惑星。そこには、必ずしも戦士の法典に属さぬものも集まってくる。先行して着陸したヴォルカイルを追い、ブルは新たに副官に任命したテラナー、ボニファチオ・スルチとともに船を降りる。
自由惑星とはいえ、ボンファイアには永遠の戦士アヤンネーの秘密警察が暗躍している。自由惑星の保安機構の援助でかれらの手をのがれ、ブルはヴォルカイルと再会する。かれの語るゴリムの風貌は、どう考えても、銀の髪のアルコン人アトラン!
ボンファイアは中間ステーションにすぎなかった、とエルファド人は訂正する。謎のゴリムは、惑星アクアマリンのゴリム・ステーションで待っている、と。
《エクスプローラー》がアクアマリンへの出発を準備しているさなか、《リヴィングストン》が道を分かつ。3人のカピン伝導者が、惑星ボルダーに集結する艦隊をグルエルフィン侵攻軍とみなしたのである。ブルもひきとめはしない。それぞれが、おのれの道を行くのだ。
アクアマリンは、文字通り水の惑星。ボンファイア、そしてアクアマリン――その名は明らかにテラ語。では、ここに待つゴリムとは? と、海中から巨大なゴリム・ステーションが浮上してきた。ハッチが開く。そこに立つゴリムの姿を見たとき、ブルの口をついて出た名は――
「ペリー……!」それはまぎれもなくペリー・ローダン。かれはブルとイルミナに、かれ、アトラン、それに数名の友人たちがコスモヌクレオチド・ドリフェルの守護組織〈網を歩む者たち〉に所属していると明かし、ふたりにも組織への参加を要請する。
考える時間を与える、とローダンがアクアマリンを去ったあと、ブルはすでに心を決めていた。しかしまず、何か行動しなければいられない。そしてブルの目にとまったものは、エスタルトゥの産とは思えない、多段式宇宙船の残骸だった……
パーミット所持者一行が、永遠の戦士イジャルコルの旗艦《ゾムバス》とともにボルダーを離れてちょうど24時間後。エスタルトゥがかれらに接触する。〈それ〉とおなじように、テレパシーで。
〈暗黒の天空にようこそ。超知性体エスタルトゥの力の球形体の中心にようこそ〉
やがて《ゾムバス》と2隻のヴィールス船は、緑色恒星唯一の惑星エトゥスタル軌道に到着する。
エトゥスタルへ降りるまえに、イジャルコルがふたりのパーミット所持者を招く。かれはエスタルトゥの存在に疑問を、みずからの任務にためらいを感じていた。永遠の戦士のひとりが“エスタルトゥの呼び声”にしたがい暗黒の天空の中心にいたるのは実に数百年ぶり。それ以外に超知性体が戦士たちのまえに姿をあらわすことはないのだ。
そのとき、付人タイプのプテル人があらわれる。
「賢きエスタルトゥの〈心臓〉へようこそ!」
スロルグと名乗るプテル人に導かれ、イジャルコル、パーミット所持者、デソトがエトゥスタルへと降りたあと、ジェニファー・サイロンは夢を見る。
おい茂った植物相のみの惑星エトゥスタル。植物すべてが叫んでいた。「わたしはエスタルトゥ!」第三の道とは、生命の流れを止めぬこと。生まれ、死に、再生する。それこそ〈法〉なのだ。そしてコスモクラートの望むのは第三の謎の答えではなく、物質の泉の此岸を思うとおりに造りかえることなのだ……
「わたしはエスタルトゥ!」植物が、動物がそう囁く。ここはエスタルトゥの園。存在するものすべてにエスタルトゥが宿っている。
スロルグが言う。時の流れを忘れたとき、エスタルトゥに会える……テケナーが最後に時計に目をやったのは、NGZ430年8月10日だった。
どれほどの時が流れ去ったのか。やがてデソト=レブリアンが驚くべき知らせをもたらす。かれはエスタルトゥの園で、ひとつだけ異世界産と思われる植物をみつけた。アルドリューザタロと名乗るその植物は“宇宙の孤児”と称する。デソトが訊ねる。
「エスタルトゥにコンタクトできるか?」
答えが返ってくる。
「エスタルトゥはここにはもうおらぬ!」
「わたしはエスタルトゥ。わたしはエスタルトゥ……エスタルトゥはここにはもうおらぬ。シュプールひとつ残さず、おのれの力の球形体を去ってしまった。かけらだけが……わたしの、わたしの……わたしたちのなかに残っている。わたしたちだけが彼女のことをおぼえている。わたしはエスタルトゥ! わたしはエスタルトゥ……エスタルトゥはわたしの内にある――けれど、わたしはエスタルトゥではないのだ……」
エスタルトゥは、当時“現在とおなじような”危機にさらされていたという遥か彼方の〈創造ゾーン〉のひとつへ赴いたというのだ。
最大の秘密が暴露したことを悟った〈心臓〉からの召喚がパーミット所持者にとどく。そこでかれらがプテル人が聞かされた真実とは――
ふたりはソト・ティグ・イアンのデータ源だったのだ! かつてストーカー製造に《ツナミ》乗員が利用されたように。紋章の門を通過するとき、ギャラクティカーの心理パターンを収集していたのだ。プテル人クローンたるソトは、かれらから得る情報にしたがい銀河系を征服するだろう。
そして真の支配者は、かれらプテル人なのだ。このみすぼらしい付人たちが主人などと、誰が気づこう。
永劫の闘争はエスタルトゥの意志にそうもの。第三の道をゴリム――網を歩む者たちから守るために、われわれは奇蹟を創造した。ゴリムが騒乱の源なのだ!
ふたりのテラナーが情報の奔流から解放されたときデソトの姿はなかった。《ゾムバス》へ呼びもどされたのだ。ふたりは、ソトへと情報を供給する形態発生フィールドを、プテル人の隙をみて破壊することに成功した。逃走をはかるかれらのまえに、イジャルコル
が立ちはだかる。かれは疑問も、ためらいも忘れ去っていた。“機能する”永遠の戦士にもどったのだ。
「おまえたちをトロフェノールのオルフェウス迷宮に幽閉する――無期限、永遠に」
「わたしはエスタルトゥ
!」植物たちが囁く。そして、「エスタルトゥはここにはもうおらぬ!」
ここにはもうおらぬ――では、どこにいる? いつかこの力の球形体に帰ってくるのか?
すべての問いは虚しい。ふたりは黙ったまま、幽閉への道程の第一歩を踏み出した。
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「ふう……」
「エスタルトゥはいない。第三の道とは永劫の闘争の哲学。おとめ座の奇蹟のいざないは永遠の虜囚と放浪のはじまり――クロノフォシルが示した輝かしい夢も、ストーカー訪問にはじまる悪夢の出来事のためにみごとに裏返されてしまった」
「テラ活性化、あの1246話は感動でした」
「歴史の化石――ローダンが平和と協調の道を拓いたプシオンの足跡。特にクロノフォシル・テラの活性化は暗黒のエレメント――カオスの象徴との決着をもってなされた。そうして、呼び覚まされた地球の記憶は銀河の種族たちのあいだに親しい感情を芽生えさせ、さらに遥かなるものへの身の焦がれに火をつけた……」
「『あこがれは星に焦がれる』――たぶんこの言葉は生涯わすれられないでしょうね」
「無我夢中で1200話ものストーリーを追いかけたけど、あの時、このあこがれに共感できたこと、それだけでほんと、死んでもいいかな、って思ったものね。フォルツが生命をかけたのが、わかったみたいで」
「そして、感動の頂点の1251話で登場したストーカーは、ぼくたちのたかぶる気持ちもろともギャラクティカーをみごと泥沼に引きずりこんでしまった――と」
「でも、これがはじまりなんだろうね。ヴルチェクにしてみれば、フォルツの築いてきた感動のいっさいを押し潰して、そこからやっていくしかないんだと思う。とにかく、この物語にはまだまだ感動を生みだすポテンシャルがあるという事実――信じてもらいたいな、ヴルチェク先生に……」
「フォルツの盛りあげてきた話に決着をつけたのも、けっきょくはヴルチェクなんですから」
「わたしはフォルツ。わたしはフォルツ……フォルツはここにはもうおらぬ。シュプールひとつ残さず、おのれの築いた世界を去ってしまった。かけらだけが……わたしの、わたしの……わたしたちのなかに残っている。わたしたちだけがかれのことをおぼえている。わたしはフォルツ! わたしはフォルツ……フォルツはわたしの内にある――けれど、わたしはフォルツではないのだ……」
「不気味だけど、言えてますね」
「偉大な人だったから、な」
……ふたりは黙ったまま、ペリー・ローダン1300話『網を歩む者たち』に手をのばした。
