II 過去創造の支柱 / Sa"ulen der Schaffung der Vergangenheit



1. クロノパルス・ウォール
2. 永遠の船
3. パラドックス・過去




 異宇宙からの帰郷者たるペリー・ローダンたち「タルカン艦隊」は、

 ドリフェルのもたらした破局によって700年の時間を奪い去られた。

 さらに、ようやく相まみえた故郷銀河は、

 未知の障壁「クロノパルス・ウォール」によって外界と隔絶されていた。

 過去の真相をもとめて放浪する人々は、

 「サトラングの隠者」ワリンジャーと悲劇の再会を果たし、

 なおも「四腕の予言者」イホ・トロトの足跡をたどり、

 断片的事実をつかんでいく。

 そして、真実への道に立ち塞がるものこそ、

 謎多き「過去創造の支柱」....

1. クロノパルス・ウォール

 過去への指標をもとめて局所銀河群各地へ散ったタルカン艦隊。アルコン人アトランは、自身の網歩船《カルミナ》、ラトバー・トスタンの《TS−コルドバ》、科学者チームの《ラクリマルム》と《キグナス》の4隻で銀河系を隔離するクロノパルス・ウォールに沿って飛行し、銀河障壁の計測をおこなっていた。やがて、《ラクリマルム》の探知センターが奇妙なものを発見した。銀河障壁に、くぼみがある! しかも、その中に恒星系が存在するではないか。

 ヘラ湾と名づけられた「飛び地」へと進入したアトラン・コマンドは最外縁惑星ヘラIIIに着陸。そこで何らかの技術施設の活動が探知された。あるいは、それこそがクロノパルス・ウォールにくぼみをうがつ秘密なのか? しかし、運命はギャラクティカーたちに無慈悲なしうちを与える。ヘラIIIにはもう1組の知性体が存在したのだ。「飛び地」に難破した異人とその被造物とは、障壁の知識をめぐる過酷な争いをつづけていた。双方の死と、未知の技術施設の破壊によって、不毛な戦いに決着がついた時、アトランたちは最大の希望を失った。クロノパルス・ウォールの飛び地は、すべての秘密を抱いたまま、ゆっくりと崩壊をはじめた。

 「ギャンブラー」トスタンの健康状態は芳しくなかった。数回におよぶ強度のストレンジネス・ショックに加え、停滞フィールドによる時間ジャンプがかれの肉体をぼろぼろにしていた。かれは無理をおして消滅しつつあるヘラ湾へと《TS−コルドバ》を突入させる。未探査のヘラIIが、かれを呼ぶのだ----。

 そこに見出されたのは、累々と横たわるカルタン人の屍。基地内には大気が存在しないのに、遺体のひとつとしてヘルメットを閉じていない。もしや「銀河系の支配者」の攻撃を受けたのでは....。自分の推測に戦慄したトスタンの目が、リーダーとおぼしき遺骸にとまった。それはマン・グロ、かれの旧友「キングタイガー」ではないか! かれがなぜ銀河系に? あるいは、老カルタン人は友であるトスタンの帰郷を信じ、クロノパルス・ウォールの関門を確保せんとしたのか。

 そう予感した時、トスタンはかねて計画していた大賭博を実行に移すことを決意した。かれに心酔する乗員たちを半ば強制的に撤収させた後、アトランの制止をもふりきって、スヴォーンのポジィとただふたり、《TS−コルドバ》を駆って銀河系へ突撃する----ツナミ型特殊艦のアンティテンポラル干満フィールドをもってすれば、「クロノ」パルス・ウォールを克服できるはずだ!

 ....数時間後、人々はバリアの奥深くにまばゆい閃光を見た。エネルギー計測の結果が出る。銀河障壁は、遅すぎた帰郷者たちから、またひとつの希望を奪ったのだ。



2. 永遠の船

 ペリー・ローダンは《シマロン》でリシュタル系を発ち、四腕の予言者捜索の旅を開始した。直後に探知された、アンテナを林立させた宇宙船----。

「メモ映像の宇宙港にあった船だ!」
 それはイホ・トロトのシュプール! 追跡を察知したアンテナ船は、グラドの眷族シャンガントの中央星系へ逃げこむ。シャンガントたちは、なぜか知らぬ存ぜぬの一点ばり。ローダンは直感する。アンテナ船には「銀河系の支配者」と何らかの関係があるのだ。そして、ようやく探り出されたその正体はコウモリに似た〈ベカス人〉----700年前、宇宙ハンザ同盟商館の置かれていた、オルサ系カッスバンの種族だ。だが、当時まだ原始段階にあったベカスが、すでに遷移駆動を実現しているとは....?

 オルサ系に着いたローダンたちは、予想とはうってかわった歓待を受ける。どうやらテラナーの外見が、700年前ベカス人に航宙技術を与え、ドリフェル・ショックから救った「神々」とそっくりらしい。はじめローダンは、当時のハンザ商館員を連想したが、まもなく判明した事実に疑問を抱く。コウモリ種族は4年ごとに巨大な〈永遠の船〉で、神々に奉仕する代表者を、15の入植星系すべてから派遣するというのだ。4年後に帰った者も、その期間のことを何ひとつおぼえていない。ハンザ商館跡の調査から、それが永遠の船の寄港地のひとつパウラ系へと移転されていることもわかった。折も折、カッスバンは近く4年に1度の永遠の船の来訪をむかえんとしている。ローダンは、永遠の船と神々の秘密を解く決意を固めた。

 永遠の船----全長250メートルの魚雷形ロボット船は、神々を装い密航したローダンらを乗せてパウラ系に到着。先行した《シマロン》はハンザ商館のあったパウラIVが648年前に破壊されていたことをつきとめていた。「神々」はハンザ商館員ではありえない。永遠の船の目標はパウラII。その宇宙港に驚くべきものがローダンを待っていた。あのヴィデオそのままの発着場に、イホ・トロトの網歩船《ハルタ》が! しかも、ローダンが操縦席に座った瞬間、ハルト人のプロジェクションが出現。

「きみが死んだはずはないと思っていた。わたしは永遠の船で過去の支柱へむかうところ。わたしを捜すなら、おなじ道を来たまえ!」
 ....ローダンたちは《ハルタ》を永遠の船に係留し、最終目的地「永遠」へと出発した。

 永遠----パウラ系からわずか数光年の大ブラックホール。永遠の船はその事象の地平を越え、マイクロ宇宙へと突入した。特異点の周囲を独自のミニチュア宇宙に包まれた全長1キロのステーションがめぐっている。そしてミニチュア宇宙の突出部は5本のハイパーエネルギーの柱で封鎖されて....「過去の支柱」、その名が一行の胸に去来する。ステーション内部ではベカス人を素材に遺伝子操作実験が行われていた。そして、ミニチュア宇宙と同じようにエネルギー柱で隔離された区画で、ローダンはベカスの「神」と対面。かれは、視覚歪曲力場に隠れたロングナターンと名乗る存在にブラフをかけた。

「おまえたちの殺したサトラングの隠者から、その名は聞いたことがある。死と破壊をともない現われる者、カンターロよ!」
 そう、神とはまさにカンターロ! だが、ドロイドはグッキーに正体を暴かれる前に自爆してしまった。まもなく姿を現わした、カンターロに仕えステーションを制御していたものは、ナックのラカルドン! そして、かれの助力で〈過去創造の支柱〉を越えた一行は、隔離宙域にただひとつ存在する小惑星でイホ・トロトと再会した。ハルト人は語る。ここは〈それ〉の年代記作者の創造した年表の世界、アムリンガル。しかし、かれの知りえたのはドリフェル・ショックによって破壊される以前にアムリンガルの年表を読んだ者の名のみ----エルンスト・エラート! そしてトロトはこの空間にラカルドンの手で幽閉されたのだ。ナックはローダンたちをもアムリンガルに葬り去るつもりでいる。

 過去の支柱のエネルギー構造を利用してミニチュア宇宙へ脱出した一行だが、その時ステーションから発されたビームが《ハルタ》をブラックホール特異点へとはじきとばした。次の瞬間、網歩船は虚無のただなかに浮遊していた。トロトが言った。

「星の暗黒回廊の領域へようこそ....」


3. パラドックス・過去

 新銀河暦446年、イホ・トロトはM−87へ飛んだ。その直前、アプザンタ=ゴムでかれの出会ったけだものの末裔ペレヴォンが死のまぎわにもらした、権力を約束する「ミモトの宝玉」とは? M−87でトロトの遭遇したヴィーロノートは、宝玉こそ〈星の暗黒回廊〉の鍵という噂を教える。だが、その秘密を知るというゴンドワルカンの魔術師----サイノス!----は、謎のサイボーグに襲われ虫の息だった。最期に、〈大群〉をはぐれたサイノスはこう言い残した。

「やつらは星の暗黒回廊の知識を恐れた」
 トロトはヤンガル系ヤンヨクでペレヴォンの王にまみえた。王はミモトの宝玉の拝観を許す代わりに命じる。死の惑星トフタルから「暗黒のキューブ」を持ち帰れ----。トロトはトフタルのATGフィールドの彼方の空間にいたり、7万年の昔からけだものの伝説にある暗黒のキューブを手に入れた。星の暗黒回廊----ブラックホールを利用した銀河間搬送手段のデータ・クリスタル判読装置を。ヤンヨクに生還したトロトは、反乱計画が露顕して中枢部の設計者の懲罰艦隊に追われるペレヴォン王からミモトの宝玉を奪い逃走した。

 キューブが宝玉から読み出したデータにより、かれはクリスタルをペレヴォンにもたらした存在の名を知る----カンターロ、と。そして、「ミモト」の名を持つブラックホールのマイクロ宇宙内の都市で「ミモトの監視者」と称するドロイドと出会い、宝玉とキューブ返還の代償として局所銀河群へ転送してもらったトロトだったが、約束通り銀河系にほど近いポイント・シラグサに物質化したのは、新銀河暦640年のことであった....。

 そしていま《ハルタ》は再び暗黒回廊を越えた。パウラから、テラまでわずか6350光年のペルセウス・ブラックホールに。時さえ超え、新銀河暦490年に! 銀河系は要塞だった。数十年にわたる、ハウリ、そして、謎に包まれた〈ブリッツァー〉との戦争がそうなさしめたのだ。平和に慣れたギャラクティカーは「ローダンが死んだ」事実を克服し、ようやく戦乱の時代を生きる活力を取り戻しつつあった。ブリッツァー----「稲妻あやつるもの」----という名称は、どこからともなく出没し、一撃で惑星をも破壊するその猛威に由来する。未知の襲撃者を、ギャラクティカム指導部は、同時期に姿を見せはじめたカンターロと同一視していた。だが、ドロイドは470年にこう布告して後、公式には目撃されていない。

「この宙域に速やかに秩序の回復されることを希望する。われらの再来までに新たな秩序が樹立されていなければ、独自の対策を実行するであろう」
 いま、そのカンターロが再び公然と名乗りを上げてギャラクティカムとの会談を要求してきた! 会合点はボシック系オリンプ。タイムパラドックスを恐れるローダンは、この会談にオブザーバーとして列席してから「現在時」にもどることを決意。カンターロの1体が生体爆弾となって銀河の要人を抹殺せんとする試みはグッキーの介入により回避された。だが、ローダンにはわかっていた。この時を境に、クロノパルス・ウォール建造が開始されるのだ。

「ローダンは暗黒星に墜落して死んだ」
 この奇妙な噂は、《ハルタ》がペルセウス・ブラックホールを抜けて「帰還」することで定着する....。パウラ・ステーションを破壊して現在時にもどった一行は、フェニックス−1をめざした。



"ZURU"CK IN DIE MILCHSTRASSE" / 銀河系に還る

1990/12/15 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi