IV 銀河系に還る / Zuru"ck in die MilschstraB"e



1. 反逆者ロムルス
2. 星の暗黒回廊
3. モトの真珠




 新銀河暦1144年。

 ドリフェル・ショックによって700年の時をなくし、

 局所銀河群をさすらうペリー・ローダンらタルカンからの帰郷者たちは、

 ついに故郷銀河系への進撃を開始した。

 ある者は「星の暗黒回廊」を越え、

 ローダン自身はワリンジャーの遺産「パルス整流器」の助けで

 クロノパルス・ウォールを克服して----。

 銀河系は、現在、正体不明のサイボーグ種族カンターロの圧政下にある。

 それでも、銀河系は彼らの故郷。いま、彼らは銀河系に還るのだ....






1. 反逆者ロムルス

 銀河系に新しい生命を!

 アラロンの遺伝子ファブリックを中心に、銀河系各地でマルチ・クローニングがおこなわれていた。比率の差はあれ銀河種族の大半でクローン化が進行中。将来は、クローン----ビオント、インヴィトロとも呼ばれる----が、母なる子宮から生まれる生命を駆逐するだろう....。

 アラスの遺伝工学者フェルドルは、成人試験によって「不適格」の烙印をおされた自分のクローン、アリボを連れてアラロンを脱走した----アリボは天才の名を欲しいままにしたフェルドルが理想のすべてを実現したクローンであり、それゆえにカンターロの基準に照らし不適格だった。ふたりの目標は、以前フェルドルが抵抗運動組織〈ヴィダー〉と接触したプロフォス。影のように彼らを追跡するカンターロのクローン・ハンターの前に、フェルドルは自らを犠牲にして「息子」を逃がす。そしてアリボはヴィダーの闘士に救われ宇宙へ----その時、アリボの乗るヴィダー船にひとつの通信が届いた。ヴィダー謎の上層部〈ロムルス〉からの....。

 おなじ頃、ベデン系のヴィダー工作員ヤルト・フルゲンは惑星中央シントロニクスにハッキング、驚くべき情報を入手していた。宇宙港に着陸した、おそろしく旧式なスペース・ジェット。乗船していたカンターロ・ダールショルとペドラス・フォックというヒューマノイドは、ふたつの銀河障壁のはざまで難破した宇宙船2隻から、クロノパルス・ウォールを「外」から突破した船からやってきたというのだ!

 この情報をロムルスのもとへもたらすべく、フルゲンはヴェガ系フェロルに。連絡員とは合流できたものの、カンターロのビオント部隊に包囲される----絶体絶命の瞬間、思わぬ救いの手がのびた。エルトルス・クローン戦士のタウロ・カソム、その体内に、ヴァリオ−500が生きていたのだ!

 アリボたちは、ロムルスからの連絡にあった、廃棄予定で無防備の移動要塞を制圧していた。その際捕虜にしたのは、銀河に君臨するトロイカ体制〈システム〉の一方の主、ナックのアヴァリン! 異宇宙生命体は、奇妙な言葉をもらした。

「テラは封印されている。おまえたちになど、決して近づくことはできぬ」
 その直後、ビオント部隊を率いて1体のドロイドが出現、ガルブレイス・デイトンと名乗った! 非公式にロムルスと会見したいというドロイドと、やがて到着したヴィダーの旗艦《クイーン・リバティー》の間にハイパー回線がつながれる。デイトンは呼びかける。銀河系の未来のため、戦いをやめるべきだ----ところが、突如出現したカンターロ艦の襲撃の前に《クイーン・リバティー》は逃走する。あれは、デイトン? それとも、会談自体が罠だったのか?

 それからまもなく、ヴィダー最大の作戦「堤防決壊」が発動された。ロムルスと科学チームの開発したワクチン・プログラム〈コントラ・ウィルス〉はウィルス・ウォールを粉砕した!

「ロムルスはウィルス・ウォールの中で死んだ! たったいまから、ホーマー・G・アダムスの新たな人生がはじまるのだ!」
 そして、銀河系を死の世界に偽装する〈ハイパー通信障壁〉をも越えたヴィダーは、「銀河障壁の外から来た」者たち----キョンに停泊中の、フェニックスからの障壁突破隊を故郷へと迎え入れた。



2. 星の暗黒回廊

 クロノパルス・ウォール突破が果たされるわずか前、ジュリアン・ティフラーは《ペルセウス》を含む3隻でフェニックスを出発した。かれの計画は、イホ・トロトが語り、ローダンたちの体験した「星の暗黒回廊」を利用して銀河系内部へ達しようというものだった。その出発点はシラグサ・ブラックホール。事象の地平の彼方のマイクロ宇宙で、彼らは予想通り自動ステーションに迎えられ、特異点へと運ばれた。そして....銀河系ではなく、まったく未知の宙域に出現した! 受信ステーション=モイシュ・ブラックホールで「星の暗黒回廊の第2転轍種族」を称するアイスクロウと遭遇したティフラーは、この銀河ネイスクールが銀河系から5000万光年離れたNGC7331であることを知る。ところが....。

「モイシュは袋小路。どこへも通じておらず、どこからも達することはできない」
 星図によれば回廊の存在しないはずの宙域からの来訪者というニュースは、ネイスクールに少なからぬ動揺を呼び起こした。ティフたちは要請されるままに、「回廊の第1転轍種族」ファーズル人、「回廊の管理種族」キューテネクス人の惑星を通過していく。どこへ行っても、カンターロはおろか、シラグサに消えたイルーや《ナルガ・サント》の名を知る者はない。だが、そのすべては「回廊の建造者」を自認する種族〈アノレー〉によるテストであったのだ。ついに自ら姿を現わした「とどまれるもの」アノレーのデグルームは告げる。

「諸君を〈さまよえるもの〉と考えていたのだ----カンタルイと」
 ティフラーがネイスクール種族によってたらい回しにされているあいだに、自由商人の船《バルバロッサ》は、カルタン人フェル・ムーンの煽動にしたがい単独で暗黒星回廊の秘密を解かんとした。だが解明されたのは、まったく別の事実----惑星ペーネロクスの遺伝プロジェクトの顛末から自由商人は、アイスクロウやファーズル人、キューテネクス人がすべて同一種族「スクール人」であることを知った。かれらは、いわば地球の出世魚に似た、4つの成長段階を経て暗黒回廊のため働きつづける種族なのだ。まもなく追いついたアノレーの使者の言葉を聞き入れ、《バルバロッサ》は僚艦と合流する。

 そのころティフラーはデグルームの船《ヤルカンドゥ》で星の暗黒回廊のむすぶ銀河を経めぐっていた。《ナルガ・サント》の残骸を見、テラの20世紀ごろの文明を築いたイルーの子孫を見た。やはり暗黒回廊によってここへ移送されていたのだ。そして小銀河ゴランダールにあるアノレーの発祥惑星アイライで奇妙な記念碑を見た時、ティフラーの積もりつもった疑問が、確信へと結実した。

「真実を明かしたまえ。きみたちは回廊の建造者ではない、と!」
 アノレーはネイスクールに移住する遥か以前に、彼らがマハラバン----始祖たち----、あるいは〈回廊の主人たち〉と呼ぶ種族から暗黒回廊の利用法を継承したにすぎない。碑文は回廊の主人たちの刻んだもの。そして主人たちはいずこともなく姿を消した。どこか未知宙域の大ブラックホールに隠遁した----過去の記録を失ったアノレーの伝説はそう語っている。  さらに、カンターロもアノレーの一氏族! デグルームの主張によれば「科学者」種族であるドロイドたちが、なぜ銀河系を抑圧し、支配しているのか? デグルームは、彼らが局所銀河群を訪れた理由は、袋小路である回廊からの来訪者----イルー・シラグサや伝承者の船----の出現に回廊の主人たちの手がかりを見たからと推理。あるいは、カンターロは〈それ〉の力の球形体で途方もない「何か」を発見したのかもしれない....。



3. モトの真珠

 ヴィダーと合流し、銀河系に帰還したローダン。彼らはヴィダー本拠惑星アルヘナへの途上、監獄惑星ウウレマを強襲、収容されていたペドラス・フォックを救出した。ドレイキストは告げる。

「大地の大穴を見たか? カンターロはウウレマに巨大なハイパー送信施設を建造して、大侵攻の準備を進めているのだ」
 一方、自由商人の惑星フェニックス。そこでは、ダールショルの置き土産「ロボット胞子」による大混乱が生じていた。見えざる存在がシントロニクスを狂わせ暴走させる。なす術もなく、惑星を撤収するしかないかと思われたが、イホ・トロトと一エンジニアの活躍によってロボット胞子の「女王蟻」が発見された。胞子除去を終えた直後、到着したのはヴィダーからの急使! 会合点の名はズールー。自由商人とヴィダー。いまこそ攻勢に転じる時!

 そのころ、惑星ブガクリスでゼロドリームに陥っていたイルーナは、未知存在----ゲジル?----の助けで覚醒を果たしていた。だが、ブガクリスは《バジス》乗員の子孫「山人」とハウリの末裔、さらには原住種族のドラゴンまで巻き込んだ大紛争の一歩手前の状態にあった。エイレーネや、山人でありながら《シマロン》に同行して過去の支柱での事件も体験したコヴァ・インガードの協力でかろうじて危機を回避、平和への礎を築いたイルーナは、ゼロドリームの中で知った銀河系への増援作戦に参加するべくフェニックスをめざした。

 ....モトの真珠を追ってついにカラポン帝国の首星にまでたどりついたダオ・リン。彼女は虜囚ではあったが、状況はこちらに味方していた。カラポン皇帝ソイ・パンは元伝承者たる彼女に興味を示し、ベンツ・カラパウの失策によって降格されたフェング・ルーは起死回生を狙ってモトの真珠強奪をもくろむ。ルーの副官や、カルタン船《マラ・ダオ》に同行していた二重スパイも加わった陰謀の果ての、勝利者はダオ・リンだった。彼女はモトの真珠を手に入れただけではなく、ソイ・パンその人を人質にカラポンを脱出したのだ。

 そして、ソイ・パンの知識にあった一連のハイパーインパルスを照射されたモトの真珠は、そのデータの一片を解放した。

「わたしはエルンスト・エラート....」
 それは、永遠の時空の放浪者エラートの手記! 再生画面にあらわれたかれは語った----モトの真珠は元来、未知の言語で〈アミモテュオ〉と呼ばれている「アムリンガルの年表の概要記憶装置」。過去の支柱の彼方のアムリンガルでこれを入手した後、かれはクリエオン人キトマに与えられた使命に沿って各地を放浪した。テラを、カルタンを、シラグサ・ブラックホールを! ルナのハイパーシントロニクス・ネーサンの異常なふるまい----《バジス》を分解し、いまやカンターロ、ナックと共に銀河系を支配する〈システム〉の一角を担う----も、《ナルガ・サント》の銀河系派遣とシラグサ・ブラックホールへの突入も、カラポン帝国の急激な拡大も、すべてはエラートのもたらした、モトの真珠の内に秘められたデータのせいなのだ....。

 シラグサ突入の際のショックでふたつに割れた真珠の片われが現在も《ナルガ・サント》にあることを確信したダオ・リンは、母なるカルタンに凱旋する。しかし、彼女はアミモテュオの秘密を誰にも告げず、銀河系をめざした。その手には、数百年ぶりにひとつとなったモトの真珠があった。



"ZURU"CK IN DIE MILCHSTRASSE" / 銀河系に還る

1990/12/15 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi