
ところは、銀河系を支配する〈システム〉の頂上、ソル星系!
「外」では、銀河障壁に大穴が穿たれ、
アンドロメダからの援軍と合流したヴィダーの大攻勢が始まろうとしている。
だが、太陽系を包む未知障壁の彼方の〈回廊の主人たち〉は、
そのすべてを、ただ傍観するのみ。
かれらは待ち受ける----700年の長きにわたり張りめぐらした罠に獲物がかかるのを。
そしていま、ペリー・ローダンは、荒れ果てた故郷テラの大地を踏む....

「....本船は、まもなく〈デフトラ・フィールド〉----フィクティヴ転送機効果デフレクター・スクリーン----を通過する」太陽系内部は、封印されておらぬハイパー機器すべてを静止させる「絶対停滞状態」にあった。どのようにしてか、ソル系に回廊の主人が不在なのを確認後、ナックは三叉船をタイタン----「制御ステーション」に向けた。
〈シミュセンス〉。擬似体感システム。ナックの協力によりテラへの転送機をくぐったローダンは、テラを支配する暗黒の力を、自らの体で味わうのだった。〈ドリーム・テラ〉----「夢」のネットワーク内では、テラは銀河系を導く偉大な惑星。その代表たる8名の回廊の主人のもとで....。
夢見る者たちは、自動システムの庇護下、誕生から死の瞬間までをシミュセンス網にリンクしつづける、脆弱で、短命な存在。テラナーは、ゆっくり、しかし確実に滅びつつある....。
「悪夢」からローダンを覚醒させたのは、〈ドリームハンター〉のモルト・ゲリン。シミュセンス網から自らを切り離すのに成功した少数のひとり。珍奇な夢、新鮮な夢を商品とするかれは、夢の指標である「ドリーム・インデックス」値が異常に高いローダンを「保護下」に置くべく執拗につけ狙う。
ゲリンの魔手を逃れるため、ローダンは〈ドリームヘルパー〉の一団に身を投じる。「夢見る権利は平等」をモットーとするヘルパーは、夢の狩人たちと冷やかな対立状態にあった。そしてローダンは、両勢力が硬貨の両面であることを悟る。シミュセンス・ネットワークこそ、かれらの人生そのもの。かれらもまた、夢を見続けているのだ。
ヘルパーの長老に、タイタンから生還した男「ギガ」の伝承を聞かされたローダンは、シミュセンス・システムを切断する方策を求め、テラニアをめざす。そして、実は旧「HQハンザ」に本拠を置くドリームハンターの首領パスカルに囚われたかれは、再びギガの名を耳にする。老パスカルの夢に介入したギガは、全シミュセンス網を掌握する力をもたらす〈究極のモジュール〉の存在を物語ったというのだ。
死を目前にして「夢」の中の永遠の生命を渇望する老人の身代わりに、ゲリンら数名と共にテラで唯一機能するタイタン行きの転送機を抜けるローダン。待ちうけるのは、いまだかつてギガ以外に生還した者のない「夢のラビリンス」....。
ようやくにして連絡のついたナックの誘導で、モジュールに到達した一行の前に、謎の男が出現する。かれこそは〈ドリーム・オペレーター〉ギガ。しかも、その姿を、ローダンはすでにドリーム・テラで目撃していた----回廊の主人ドリアン・ワイケンとして! ギガ、究極のモジュール....すべては、猫が鼠を弄ぶようなゲームにすぎなかったのだ。
ギガ----タイタン中央管制シントロニクスの投影像の哄笑が、ローダンたちを吹き飛ばした。ゲリンたちハンターは、一切の記憶を奪われ、テラへと回送される。再び「夢」見るために。そして、ローダンをも、不思議な力がつかんだ----。
かれを収容したのはナックの《キューゲル》だった。そして、この強引な救出作業のため、主人たちの注意を喚起してしまった三叉船は、ソル系から緊急離脱をはかる。友の消息を追ってデフトラ・ウォール前面まで進出していたアトランの《カルミナ》にローダンを転送、ナックは超空間への逃走を試みるが....果たせなかった。《キューゲル》に到達した自爆インパルスが、アイシュフォンとエムザフォルもろとも、三叉船を破壊しつくした。

「あきらめることはない。まだきみは、コンジョンクを捜していないではないか」とだけ暗示して、奇妙な「鳩」のシンボルをテラナーに託した。アシュカン系コンジョンク----シュプールは、ハンガイに通じている。
コンジョンクは、数百年前からイングコーム・ハウリの統治下にある。かれらのもとで鳩のシンボルを示したアラスカは、1体のナックの知己を得た。エラデルと名乗るナックは、アラスカがそれまでに出会ったその同族とは異なり、不完全ながらも意志疎通を図ろうという態度が見られた。その理由を、ナックはこう語った。
「説明しえぬもの、〈最も内なるもの〉を求める道で〈より外なる平面〉に属する知性体の協力が有益と判断したからだ」より外なる平面----ナックは、自らがテラナーたちより「内なる平面」の存在であると誇らしげに告げたことになる----。
エラデルの案内で、ある時空褶曲の彼方へと到達したアラスカは、異宇宙の惑星ウクスバターンで、失われた旧友たちと再会する。ゲジルに、エラートとテスターレに! 驚くべきは、〈アス・レテル〉と名乗る誘拐者によってゲジルがここに幽閉されてから、わずか数年が経過したのみである事実。再びエラデルの誘導で、今度は逆方向に時空褶曲を越えた4人の耳に、理由を言わぬまま残留したナックの最後の言葉が木霊していた。
「わが眷族が諸君の助けとなろう----〈ヴァロンツェム〉と唱えれば」....ゲジルの逃亡を知った回廊の主人レミン・キリアンは、ウクスバターンから時空褶曲の通じるすべての世界に警報を発した。例外はただひとつ----テラ。そして、偶然か、あるいはエラデルの策略か、4人は新銀河暦1147年の地球に漂着していた!
ドリームヘルパーの一族と遭遇し、テラの状況を知ったかれらは、アマゾンの原野に独り住むという隠者「パウナロ」を捜す。テラから出る道を知るらしい孤高の存在----かれはナック! そして、キーワード「ヴァロンツェム」によって協力者に転じたパウナロは、テラニア宇宙港へと4人を誘う。おりしも3月、ハルト人・ポスビ連合艦隊の銀河障壁突破によって生じた混乱の隙を縫って、パウナロの操る三叉船はソル系を離脱、星の海に姿を消した....。

一方、カンターロの間には混沌が沸き立っていた。ドロイドたちは、すでに主人と最高司令部への絶対の信奉を維持できないのだ。それをさらに煽るSHF発信機の「総演習」。ヒューマニドロームから加わったナックたちの協力は、その成果を揺るぎないものとしていた。
時をおなじくして、ソル系にほど近いタウ・ケチ星系の惑星メナフォルでは、元タルカン艦隊の科学者チームの総力を結集して開発された〈パラトロン・トランスフォーマー〉が設置を完了していた。《バジス》のハミラー・チューブの支援で完成した、通称パラトランス装置は、ディメトランス駆動の源パラトロン・コンヴァーターをトランスフォーム砲の原理で使用する。これをもってすれば、太陽系を包むデフトラ・ウォールを粉砕できる! メナフォルの非常事態を察知した回廊の主人ヴェロ・バニールがカンターロの大艦隊を派遣せんとしたとき、ソル系辺境で警報が発せられた。2000隻のフラグメント船団が、バリア前面に出現したのだ!
エグジタス・デーは1147年5月15日----ヘレイオス出撃を目前にしたローダンの前に、旧友3人とゲジルを乗せた三叉船《タルファラ》が到着する。再会を喜びあう間もなく、ローダンとゲジルは、パウナロの協力を得て、《タルファラ》でデフトラ・ウォールの彼方のソル系へと出撃した。
そして、ようやく三叉船が小惑星軌道まで到達したころ、エグジタス計画の最終フェーズが発動された。ソル系の周囲に集結し、カンターロの猛攻に耐え忍んでいたヴィダー主力と、銀河系各所に潜伏していたSHF部隊で、決定的な送信が開始されたのだ。すべてのカンターロたちがたちまち無気力状態に陥り、さらには混沌とした制御通信網は、回廊の主人の発した自爆インパルスにも反応しない! 加わえて、惑星メナフォルのパラトランス装置は膨大なエネルギーを費やしたすえに、ついにデフトラ・フィールドを破った! テラ陥落も時間の問題と思われたその時、《タルファラ》、そして全ヴィダー艦艇で、回廊の主人の通信が轟きわたった。
「われは回廊の主人エイガー・キャットメン。ヴィダーよ、ただちに太陽系から撤収せよ。ソル系を消滅させる起爆装置はわれの手にあり。ソル系を贖い、銀河系を解放する代償を払えるのは、ペリー・ローダン、きみだけだ。5月30日、ひとりだけで惑星パルカルに来るがいい....」そうして、ついに到来する対決の時。1000年もの昔に見捨てられた植民惑星で、姿を見せぬ回廊の主人は、銀河系を去る「代価」を伝える。ゲジルとエイレーネ! 愕然とするローダンの前に、エイガー・キャットメンはとうとうその素顔をあらわした----死んだはずのドレイキスト、ペドラス・フォック! かれこそが、「モノス」であったのだ!
「回廊の主人はひとりだけ! 皆、われの影にすぎぬ....。すべては、〈父〉に代わってきさまに復讐するためよ!」ひそかにモニターで追跡していたアトランが動いたのは、その時だった。太古の武器庫から発掘されたハイパー・ヴィールスが、フォック----テラの悪魔のパラトロン・バリアに殺到し....狂気の復讐者は大爆発のなか消滅した。

"ZURU"CK IN DIE MILCHSTRASSE" / 銀河系に還る
1990/12/15 r.psytoh with y.wakabayashi
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