I ヘクサメロン / Das Hexameron

第1章 ラグナロック
第2章 十二銀河のたそがれ
第3章 メーコラーの男

プロジェクトの名はメーコラー/1

解説/銀河転送----異宇宙の種族たち




 かれの視線が乳白色の星の帯をなぞった。北東から昇り、天頂を越えて南西でふたたび沈む、幅広い帯を。もし、夜空の背景の暗赤光がなければ、故郷テラの山頂で射手座腕の星々を臨んでいると思うところだ。

 星の帯は、南西の地平までつづいている。数十億の恒星がそこに属すのだろう。

 テラナーの隣には、ヴァロ・パク・ドゥールが座っている。夕闇のせまるころ、ハウリが約束どおりローダンを連れ出した浮遊車の室内は薄暗かった。山脈のかなり高いところまで登っていた。ヴァロ・パク・ドゥールは、山頂の狭い平地に降り、車内の灯りを消した。高山の希薄な空気のせいで、星空の光の海は、息づまるほど美しい。

「あそこから地平に傾いた星の帯を見たまえ」数分の沈黙の後、ヴァロ・パク・ドゥールが言った。「あれは、二十の領地の島宇宙の中で最大の銀河、マハルー・マハーの渦状腕のひとつ。何百億もの恒星がある。だが、きみの目にうつるものは、はたして現実かな?」

 唐突に、スクリーンが輝いた。一見、車窓の向こう側とおなじ景観。近づいて目をこらすと、はじめて違いがわかった。赤い背景輻射がなくなり、星々は違う色で表示されている。光学映像ではないのだ。

 星の帯を目で追ったとき、ペリー・ローダンは心ならずも息を飲んだ。ヴィデオ像で、地平線は糸のように細いブルーのラインで表わされていた。星の帯は、ラインに触れてはいなかった。その上、数センチのところで、切断されたようにとぎれている。

 カルタン人伝承者の冒険的プランが少なくとも部分的には成功していたことを、理性が把握するより先に、ヴァロ・パク・ドゥールが語をついだ。

「夜空をあおいで目に映るものは、現実ではない。探知器のすばやい目をもってして、初めてわかるのだ。もし、二千年の時間を待つことができれば、きみにも見えるだろうな。あの渦状腕のなかで星がひとつまたひとつと消えていくのが。あの星々からここまで光がとどくのに、それだけ必要だから。だが、探知器は即座に現実の光景を映しだす。数十億の恒星が消えた。背徳者どもが激情にかられてしでかした冒涜のために消滅させられたのだ」



第1章 ラグナロック / Ragnaro"k

1. 物質の泉
2. ハウリ襲来
3. ハンガイ!
4. 星々消え去る時




1. 物質の泉

 新銀河暦447年1月末、三角座銀河で、ピンホイール情報グループのタシット・ロヴェリンは、押し寄せるプシの大洪水を探知した。途方もない規模の高次元エネルギーが、局所銀河群に怒涛のごとく流れこんだのだ! しかし、カルタン人伝承者の巨艦《ナルガ・サント》にいるはずのPIGチーフ、ニッキー・フリッケルに報告する間もなく、かれの船《バンシー》は、プシの大津波に呑みこまれてしまった....。

 一方、ニッキーはテラから到着した新旗艦《ソロング》で、《ナルガ・サント》を出発していた。タルカニウムとピンホイール銀河を往復するカルタン船団の1隻《ルサル》が、コースを数十万光年も離れた宙域で難破したのだ。今、それだけの距離をこなせる船がないため、ニッキーが調査を依頼されたのだった。そして、運命の1月31日、《ソロング》は目標宙域に到達、カルタン人の遠距離宇宙船《ルサル》とコンタクトをとった。その瞬間----ニッキーたちは、銀河間の虚空に突如として物質化する無数の恒星を見た! 人々の意識が闇に沈んだ....。

 ギャラクティカーの故郷銀河でも、その超常現象は確認されていた。プシの大波動が通過した後、局所銀河群のはずれに、数十億の恒星の凝集体が出現したのだ。もしや、新たな〈物質の泉〉が誕生したのか!?




銀河系からの距離 2,130,000光年
アンドロメダから 1,170,000光年
ピンホイールから 880,000光年
フォルナクスから 1,970,000光年

 人々は新しい恒星の凝集体をラグナロック----神々のたそがれ、と呼んだ。まもなく、星々が、巨大な渦状銀河の四半分であることが判明する。四半分....それは、やがて残りの4分の3が到来することを、おごそかに告げているのだ。

 数十億もの恒星が突如として物質化したことで、局所銀河群の時空構造体は著しく揺らいだ。プシの洪水はいたるところに爪跡を残し、時空の連結を危機にさらす。時間と空間が褶曲し、奇怪な特異空間が出現する。そこは物理定数の地獄。ストレンジネスの嵐が荒れくるうマイクロ宇宙。だが、星々の出現がこの宇宙に何をもたらすことになるのか、ギャラクティカーはまだ知らない....。



2. ハウリ襲来

 PIGは、新たにギャラクティカーとカルタン人伝承者のあいだに締結された相互援助条約にしたがい、ピンホイール各地の秘密基地の撤去をすすめていた。惑星フィニステレもそのひとつ。ところが、突如上空にあらわれた黒い船団が、フィニステレ基地を跡形もなく消滅させてしまった! ----超空間からエネルギーを抽出するハイパートロン抽出器を除いて。

 謎の船団の奇襲を奇跡的に生きのびた、ニッキーの腹心のふたり、ウィド・ヘフリッヒとナルクトル、そして、スプリンガーの言語学者ネルヴァ・タンの3人は、〈黒い船〉の乗員たちの目的がハイパートロプ奪取であることをつかむ。ようやく捕虜にした襲撃者のひとりは、自分がハウリの一族であることを明かした。

「われわれは、〈最後の六日間〉の加速と、〈時間終点計画〉のためにやってきたのだ」

 2月末、クロッツからの生還者ラトバー・トスタンを銀河防衛の中枢《バジス》に護送するため、高速艦《コルドバ》は独立運動組織グループ本部〈クラーク・フリッパー〉を出発した。すでに〈網を歩む者〉の急使の報告で、ドリフェルの急変が明らかになっていた。このコスモヌクレオチドの管轄宙域〈直径5000万光年の天球〉のプシ定数は5万年前の本来の数値を回復した。結果として、〈網を歩む者〉やエネルプシ駆動が利用してきたプシオン網が消滅しつつあるというのだ。物理定数の補正のために、時空構造が異常なまでに不安定になっている。

 そして、プシの洪水が生み出した時空褶曲のひとつが《コルドバ》の進路に立ちふさがった! マイクロ宇宙に転落し難破した高速艦を救ったのは、周囲と協調できずお荷物あつかいされていたトスタン。17年前、かれの《ツナミ−32》がグリゴロフ・プロジェクターの事故でタルカンに漂流した時の記憶がよみがえったのだ。あの時、そして今回も、ストレンジネス・ショックで故障したのはハイパートロプ----。

 ハウリが来る! トスタンの記憶が警報を発したとき、謎の船団が出現した。ヘクサメロンの預言者たちが、人工的に安定化された時空褶曲にひそんでいたのだ。襲撃を辛くもかわした《コルドバ》は、ハウリの作戦を逆手にとってマイクロ宇宙からの脱出に成功する。時空褶曲がタルカンから持ちこんできた固有時間のためタイムラグが生じたものの、ともかくも《バジス》への到着を果たしたのだった。



3. ハンガイ!

 ニッキー・フリッケルが意識をとりもどしたのは、7月10日のこと。5ヵ月ものあいだ失神していたのか! それはストレンジネス・ショック。彼女たちは、突然物質化した異宇宙のかけらのまっただなかに位置していたのだ。シントロニクスも機能を停止していた。旧式なフルメカ・ポジトロニクスが世話していなければ、全員餓死していたのは確実。

 ストレンジネス・ショックによりニッキーたちは短期間の記憶喪失に苦しむ。だが、艦内の事件----PIGのパラテンソールの意識がエネルギー生命体として具象化する----に対処するなかで、乗員たちは活力をとりもどした。そうして、ニッキーはカルタン人の《ルサル》とともに異銀河の星々の調査を開始する。そして、惑星エジュヤムで彼女が遭遇したのは、カルタン人。

 すなわち、この星々はタルカンから転送されてきたカルタン人の真の故郷ハンガイの断片。超技術が銀河ごと転送した固有の時間と空間が、今はまだ異宇宙からきたカルタン人をストレンジネス・ショックから守っている。ふたつの宇宙を隔てる物理定数の壁は、いまも直接のコンタクトを妨げてはいたが、ニッキーは数々の情報を携えテラへの帰途についた。



4. 星々消え去る時

 4月2日。銀河系では、ハンガイ第2クォーターの出現が確認されていた。推測は、現実となりつつある。おなじころ、局所銀河群のNGC3627から、数百万の恒星が消失したことがあきらかになる。人々は、いにしえの深淵の騎士団の伝説を想起せずにはいられなかった。

「最後の深淵の騎士が死ぬとき、すべての星々が消え失せる」

 NGC3627----それは、〈力の球形体〉エスタルトゥの公用語ソタルクで「ヴィラメシュ」と呼ばれる銀河。17年前、ソト・ティグ・イアンの銀河系侵攻艦隊によって、アンソン・アーガイリス指揮下のエスタルトゥ行きハンザ・キャラバンが幽閉された島宇宙....。だが、オリンプ皇帝は生きていた。オニクスと名づけられた灼熱の惑星で、無慈悲な隔離スクリーンの下で、解放の時を待ちつづけていたのだ。

 そして、時が来た。ハンガイの第1クォーター転移の余波であるプシの洪水が、積荷のパラタウを誘爆させ----隔離スクリーンを制御するプシオニクスを破壊したのだ。地獄の監獄惑星から解放されたアーガイリスたちは、近隣星系で物資を整え、故郷への生還を果たした。

....アーガイリスは報告する。ヴィラメシュから星々が消失したのは、1月31日、ハンガイの初回転移の瞬間! さらに、その前後、ヴィラメシュに出没した未知艦艇の通信傍受記録から、恒星消失にハウリが関与していることが明らかとなったのだ....。



第2章 十二銀河のたそがれ / Zwo"lfgalaxienda"mmerung

1. ドリフェルの洪水
2. クロッツ暴走せり
3. 未来へとつづく道
4. 帰還せよ、ヴィーロノート
5. 憧憬との訣別




1. ドリフェルの洪水

 大異変をひきおこしたコスモヌクレオチド・ドリフェル。ドリフェルがある〈力の球形体〉エスタルトゥでも、プシ定数は揺らいでいた。サブハルへ帰還する途上、アトランは、プシオン網がほつれ、そこかしこに無風ゾーンが発生するさまを体験する。

 十二銀河帝国の文明は、エネルプシ駆動を基盤としてきた。プシオン網の消滅は、その喪失を、星間航行の崩壊を、暗黒時代への転落を意味するのだ。ジオン・ゾムの大無風ゾーンに散在するわずかなリニア駆動船も、この混沌の前には無力。そんな時、〈網を歩む者〉の組織の創設者クリエオン人が、総招集をかけた。

 サブハルに到着したアトランは、消息を絶ったローダンの手がかりをもとめ、タルカニウムのパラタウ・カタストロフ以来、かたくなに〈門〉を閉ざすドリフェルに強引に突入する。転落した「潜在的未来の世界」でかれの遭遇した影----コスモクラートの使者は、両宇宙を危機にさらす〈最後の六日間〉の軍団のヴィジョンをアルコン人に見せる。そして、帰還したアトランは、使者がサブハルにも出現し、ゲジルを連れ去ったことを知る。

 〈網を歩む者たち〉は、本星サブハルをめざす。しかし、プシオン網ともに失われたのはエネルプシ駆動だけではなかった。500人近くいた〈網を歩む者〉のうち、会合期日の3月22日までにサブハルに到着したのは、わずか百余名にずきなかった。

 〈はじまりのホール〉に集合したかれらに、クエリオン人が宣告する。

「〈網を歩む者〉の組織は、本日ただいまをもって解散する!」

 ドリフェルは、〈直径5000万光年の天球〉のプシ定数を正常値にもどした。5万年、いわば「不正に」強化されたプシオン網が消滅するのは、モラル・コードそれ自体にとって、ポジティヴな結果なのだ。

 クエリオン人はいまだやまぬドリフェル変調の帰結するところを究明すべくサブハルを去り、残された者たち----もはや、〈網を歩む者〉ではない----は、滅びの淵をのぞく十二銀河の種族たちを救済する道を模索することになる。



2. クロッツ暴走せり

 カルタン人のタルカニウム四太陽帝国の首星だったオーグ系フーバイ。膨大なパラタウの爆燃がもらたしたプシの洪水は、敏感なカルタン人エスパーの大半を死にいたらしめた。かろうじて生き残った者たちも、パラタウなしではなすすべを知らない。

 しかし、上空に到着したクロッツ=《ナルガ・プール》から救いの手は来ない。破局の際、フーバイにいたグッキーたちは、クロッツ司令官バオ・アト・タルカンに救助活動を要請するが、艦内に別の問題をかかえるバオは提案を受け入れない。

 だが、カタストロフから2ヵ月のすぎた4月2日、艦内の統制をとれなくなったバオが折れた。問題解決をグッキーらが援助するという条件つきで、タルカニウム救援部隊の派遣を了承。さらに、バオは、局所銀河群にハンガイの第2クォーターが物質化したことを語る。そのとき、予想外の事件が起こった。ハイパー探知器が、アプザンタ=ゴム辺境の球状星団の消失を報じたのだ! 数百万の恒星が消えた----。

 事態はさらに手にあまるようになる。バオとの協約に応え、サブハルからアトランが駆けつけるのと時をおなじくして、クロッツが暴走する。リニア空間に突入し....まもなく出現したのは、〈力の球形体〉の心臓部、〈暗黒の天空〉!

 クロッツに進入したアトランはそこで旧友に出会う。ピンホイールでドリフェルの洪水に呑みこまれたタシット・ロヴェリン----かれこそは、カマシュ人トファリ・ロコシャン! 氏族の継承神ルログの力で救われ、《ナルガ・プール》内部へと転移させられていたのだ。グッキーとも合流したふたりは、巨艦暴走の原因が航法エンジニアをつとめるナックの反逆にあり、その背後に「絶対の指令コード」をあやつるトレンという存在のいることをつきとめる。トレン----〈暗黒の天空〉の惑星エトゥスタルにおりた男は、ハウリ。そして、トレンは、〈永遠の戦士〉を影であやつっていたプテル人シングヴァ族と同盟を結んだのだ。



3. 未来へとつづく道

 イジャルコルはひとつのヴィジョンを見た。

 かれはかつてのウパニシャドの最後の〈永遠の戦士〉だった。

 グラニュカル、ヤルーン、アヤンネー、ナステョール、ペリュフォールは、死ぬか、パラ現実のなかに失踪した。シューフやムッコール、シャルグク、クロフォール、トライシーはシングヴァの忠実なあやつり人形。

 イジャルコルは母なる世界、ヴェーダ系第5惑星アナムウンにおける最大のウパニシャドに幽閉されていた。パニシュたちは、かれの最後の望みをかなえてくれた。晩年の20年間の自伝を書くことを許されたのである。それに先立つ5万年について、語る気はなかった。

 脚韻を踏んだ。最後の行は最初の行と、最後から2行目は最初から2行目と。文頭と文末のあいだの韻のいきつもどりつが、書き終わるまで、ちょうど真ん中で韻がそろうまでつづけばよいのだが、とイジャルコルは思った。

 せめてただ一編の詩を完成させるまでは生きていたい。

 それ以上の人生は生きる価値がない。

 最後の細胞シャワーの効力もやがて尽きる。シングヴァはかれを処刑するつもりだった。だが、ヴィジョンのなかでは顔も姿も確かでない、異宇宙から来たシングヴァの同盟者が、自然死という慈悲をあたえてくれた。全部で1アナムウン年がかれに与えられた。

 26の惑星と、うち5つの酸素世界をもつヴェーダ星系は、新たなウパニシャド教団〈永劫の直接闘争〉の牙城だった。〈永劫の直接闘争〉はもはやエスタルトゥの〈第三の道〉の教えではなく、逆に公然とそれに対抗するものとして広められていた。

 そして、権力は、シングヴァが異宇宙タルカンからの異人たちとともに統治する〈暗黒の天空〉にあった。かれらは十二銀河の喉元をしめあげる恐怖政治を布いていた。

 死の5日前、イジャルコルは、パルカキュアの〈永遠の戦士〉ムッコールの付人、シングヴァのノルシュの訪問をうけた。ノルシュが言う。「ゴリムは駆逐された。われらは銀河系征服艦隊を準備している」

 死の4日前、シャルグクが付人グリエクをともなって現われた。シャルグクには頭部がなく、頭部のかわりにシングヴァが共生していた。そのグリエクがいう。

「われらはドリフェルを破壊して、モラル・コードを制御している。われらが〈法〉なのだ!」

 3日前にはテスターレがやってきた。アラスカ・シェーデレーアのかつての肉体なき共生体は、いまや戦闘形態のソトとして出現した。「わたしは失敗者ストーカーから製造された百万のクローンの第1号」

 2日前、イジャルコルはひとつの詩もつくらなかった。〈永劫の直接闘争〉のもとめた犠牲者の、何百万という魂が嘆きの詩を歌ったから。「友よ、これがすべての終末....」

 生涯最後の日、イジャルコルの独房にアラスカ・シェーデレーアがあらわれた。「タルカンへ行っていたのだ。エスタルトゥはもうおらぬ」

 そして、0日目がもたらしたのはただ暗黒。

 ....イジャルコルはもうひとつのヴィジョンを見た。

 かれはストーカーとともにアナムウンに着き、数十億のプテル人に熱狂的にむかえられた。人々はかれを、最後の〈永遠の戦士〉と褒めたたえた。その称号を冠されるにふさわしい、と。

 しかしイジャルコルは喝采をおさえ、おのれの種族に、かれの生命はつかのまのものであり、与えられた栄誉にふさわしくないと告白した。

 かれは全ムウンのプテル人に語りかけた。ひとりのソト----そのすべての欠点、誤謬にもかかわらず----つねにエスタルトゥに近く、これまでのどのソト、どの〈永遠の戦士〉よりも、いかなる時も超知性体の意にかなう行動をとったソトがいることを。

 そして、エイハブ船長を真にして唯一のソトと紹介した。第三の道のための闘いで多くの傷を負い、不具ともなり、なおかつ耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、エスタルトゥのため闘いつづけたソト、と。「かれこそエスタルトゥの具象化----ソト・タル・ケル」

 全ムウンがストーカーのもとに馳せ参じた。パニシュ・パニシャからウパニシャド卒業生、最下級のシャドまでが。将軍にはじまり、衛士たち、はては一兵卒にいたるまで。かれらは闘士としてストーカーにつきしたがった。

 それから、史上最強の〈戦士〉艦隊が十二銀河を駆けぬけ、エスタルトゥの教えと相いれぬものすべてを根絶した。それはシングヴァの地獄惑星に対する懲罰にはじまり、〈暗黒の天空〉の大粛清をもって終結した。

 エトゥスタルで、条件づけを施されたソトがクローン培養されることは二度とない。

 〈暗黒の天空〉からは、タルカンの異分子すべてが掃討され、《ナルガ・プール》の残滓は、燃えつきたうつろな丸太としか見えなかった。

 タルカンから、ゴリムのペリー・ローダンが到着し、エスタルトゥ帰還の場は整ったか、とストーカーに訊ねた。ストーカーが誇らしげに肯定すると、ペリー・ローダンは言った。「では、エスタルトゥを異郷の地より呼びもどそう」

 そして、そのとおりになった。

 再生の奇蹟が起きたのは、動植物が「わたしはエスタルトゥ!」とささやくエトゥスタルだけではなかった。

 超知性体の〈力の球形体〉への帰郷は、十二銀河のすべてで感じられた。すべての恒星系とあらゆる惑星、最も低次の知性体しか住んでいない世界でさえ、エスタルトゥが異邦より帰還したことを知った。

 イジャルコルは、満足した。

 かれは戦士の位を捨て、「詩人コル」として宇宙を旅した。その歌で、超知性体の帝国と〈物質の泉〉の彼岸に秘められた創造を、真の宇宙の奇蹟を賛美した。

 詩人コルは、その創造叙事詩によって、秩序と混沌の力が均衡をたもつ、この調和の宇宙のなか、不死となった。

 最後の細胞シャワーの効果が薄れはじめた時、詩人コルは安らかに眠りについた。この唯一の奇蹟たる宇宙に、おのれの役割をはたしたことを得心しながら。

 かれの人生は満ちたりたものであり、死による幕引きはしかるべき報酬であった....。

 イジャルコルに第3のヴィジョンは訪れなかった。

 なすべきことを知るには、必要もなかった。ふたつの両極のヴィジョンが、道をしめしていた。第三の可能性があり、その〈第三の道〉を行く。最も困難ではあるが、それこそ目標へと通じる道でもある。

 未来のヴィジョンはもういらない!

 かれは未来を、生きたいのだ。



4. 帰還せよ、ヴィーロノート

 レジナルド・ブルが、呼びかけるその声を聞いたのは、2月末のことだった。

「ヴィールス船を集結して帰還せよ! ヴィールス物質は貴重なのだ!」

 それは人類の導師〈それ〉の声。エネルプシ駆動しかもたぬヴィールス船は、プシオン網が消滅すればガラクタでしかない。それが「貴重」とはなぜ? だが、〈それ〉が望む以上なんらかの意味があるはず。ブルは連絡のつく全セグメントをつうじて、十二銀河全域に散ったヴィーロノートに集結を布告する。期限は7月31日、会合点はアプザンタ=ゴム北部のエデン・ノヴァ宙域。

 一方、ハウリのトレンがエトゥスタルにおりた隙をとらえて《ナルガ・プール》の秩序を回復したアトランは、〈暗黒の天空〉の監視をバオ・アト・タルカンにまかせてサブハルに帰還する。アルコン人を悩ませているのは、自分にしか聞こえない謎の歌。

 サブハルにはオファル人の「名歌手」サラーム・シーンがいた。故郷惑星マルダカーンにおいてシングヴァ独裁を打破して帰還したばかり。その助けを借りて、アトランは奇妙なメロディの素性を記憶の底から拾いあげた----〈深淵の地〉の関門都市スタルゼンで「騎士叙任」をうけたとき、背後に流れていたケスジャン聖堂のコーラスだ! 思い出すのは、コスモクラートの呪いからの解放策をもとめて、数ヵ月前、ノルガン・テュア銀河の聖堂惑星クラトへむかったイェン・サリクのこと。謎のメロディは、サリクの成功の証なのか?

 そして、アトランは、混沌とした〈力の球形体〉エスタルトゥを去ることを決断する。十二銀河の情勢は残留を希望するロナルド・テケナーとロワ・ダントンにまかせ、かれ自身は、タルカンに失踪したローダンの捜索に出発するのだ。いま、それに必要な助けは局所銀河群でしかえられない....。

 7月31日。エデン・ノヴァには45万隻のヴィールス船が集結していた。いまや友となったイジャルコルは、ブルとイルミナ・コチストワの額の〈トシンの印〉をとりのぞく。ヴィールス船は巨大な集合船を構成し、長かった「星々への焦がれ」の時代に別れを告げ、ほころびつつあるプシオン網にのり、故郷をめざした。

----ヴィールス船団よりわずかに先行したアトランは、グッキー、エイレーネとともに銀河系辺縁のラトレイ系アスポルクの地を踏んだ。17年の追放の後、ついにアルコン人は故郷にもどったのだ! コスモクラートの呪いは沈黙していた....。



5. 憧憬との訣別

 われわれは、何が待ちうけているのかを知らない。

 ヴィールス船さえも、それについては語らない。

 4000万光年。そう、しかし、さらに深遠なる意味が秘められているにちがいない。それを推測することが日課となった。なぜなら、超知性体〈それ〉の介入は、ヴィーロノートの意義ある未来の近いことを認識させたのだ。だが、その意義とはただちに顕れるものなのか? その本質を知ることが、われわれにできるだろうか? 質問は、もうひとつある。だが、そこにいたるまでには、さらに長い時が過ぎ去るであろうこともわかっている。

 われわれは、英知の果てにたどりついた。しかし、どんな境界のむこうにも、新たなはじまりがある。18年がなにほどのものであろう? 18年....。星から星へ、奇蹟から奇蹟へ、驚嘆から落胆への18年。そのすべてに、どんな意味があったのか? そして、はたしてわれわれに、意義を問う権利があるだろうか? 問いかけること自体は、つねに正しい、と思う----そう、回答のなかにも、また問題はあるのだから。あるいはわれわれの誰にも理解しえぬかもしれない回答のなかにも。

 ありきたりな暮らしのなかの問いと答えを思い出そう。実現しうる手段のある目標をさがそう。

 すべては銀河系でみつかるだろう。

 エレンデュラ、ダタバール、ジオン・ゾムよ、さらば。二度と相まみえることのないトロフェノール、アプザンタ=シャド、アプザンタ=ゴム、ムウン....。ジュラーガルよ、シューフ、ムヤージュフ、ウルムバル、パルカキュアよ、その星々に平穏あらんことを。

 さらば、エスタルトゥ!

 ヴィーロノートは、故郷へ帰る。



第3章 メーコラーの男 / Der Mann aus Meekorah

1. 希望の星アンクラム
2. ドリーマー
3. エスタルトゥは何処に
4. プレイヤーの使者
5. 《ジュアタフ》の迷走
6. 失われたシュプール




1. 希望の星アンクラム

 異宇宙タルカンで、広大な銀河ハンガイをひとりさまようペリー・ローダン。惑星ベンタンクのハウリ基地から脱出したテラナーは、星々の転送になんらかの関係があると思われる恒星五角座、ハイパー送信施設がある青色恒星をめざした。推測が正しければ、そこはハウリと敵対関係にある、カルタン人組織の重要拠点。

 ドリフェル・カプセル《レダ》は、星系進入後まもなく、「アンクラム系防宙艦隊」に捕獲されてしまう。その構成種族ベンノは、ローダンのことをヘクサメロンのスパイと疑う。しかし、《ナルガ・プール》や伝説の《ナルガ・サント》の運命を知ることから、最外縁惑星ラングライの第5衛星ガンガの艦隊基地に連行され、監視下に置かれることになる。

 基地司令官、ベンノのリュータルフの知己をえたローダンは、ベンタンクのハウリ拠点の存在を語る。ヘクサメロンの預言者たちの目的が、ハンガイ転移の一端をになう「アンクラム計画」の妨害にあることは明らか。リュータルフは調査部隊の派遣を約束する。ローダンへの処遇も改善された。しかし、その陰でテラナー暗殺の試みがつづく。食料供給器に混入された毒、キャビン入口にひそかに設置された行先不明の転送機----細胞活性装置と網歩服のピコシントロンのおかげで、企ては未遂に終わる。

 ベンタンク調査隊は、ハウリがすでに撤収していたことを報告した。ところが、第1惑星ジムボンの衛星ドリファール軌道上で、大送信機群のテストがはじまろうとした瞬間、《レダ》はベンタンクからの未知電波を探知。撤収は偽装だったのだ。テストを中止させなければ! アンクラム系は、ハンガイ種族のみならず、メーコラーへの帰還を望むローダンにとっても頼みの綱なのだ!!



2. ドリーマー

 ローダンは許可なくしてガンガを飛び出したが、けっきょく警告がまにあわず、ドリファール送信機が崩壊していくさまを目撃、絶望にとらわれる。だが、〈プロジェクト・リーダー〉であるカルタン人レン・ノにむかえられたテラナーは、被害が60%にとどまり、転送期日までに修復が可能であることを教えられる。ドリファール基地のカルタン人たちは、この「メーコラーから来た男」に感謝の意をあらわす。やがて、ローダンはレン・ノと親しく言葉をかわす機会をえるが、レン・ノもまた、ベンタンクのハウリやリュータルフと同様、エスタルトゥについては何ひとつ知らなかった。

 アンクラム星系の中枢ドリファールで、ローダンはベンノの母種族たる〈アッタベンノ族〉のベオズと知り合う。かれはドリファールのカルタン人たちから「夢見る者」と呼ばれていた。そして、ローダンのことを賢者、と崇めるベオズは、もっとも頻繁に見る夢を語る。

「空高く浮遊しているのです。眼下に広がるのは単調な平野。砂地なのでしょう。2体の生物が見えました。一方は四腕四脚で、一風変わった外見をしています。もう1体は樹上生活者のようでした。わたしはふたりの方へ降りていきました。あと数メートルまで近づいたとき、電光が走ったのです。2体の生物はくずおれ、身動きしなくなりました。明らかにわたしのせいです。かれらは死んだ。わたしが殺したのです。わたしは悔恨の念を抱かなければならない。なのに、喜びでいっぱいなのです。重大な使命を完璧にはたした、と感じて」

 数日後、アッタベンノがローダンを訪れた。かれの個人的な友人でもあるリュータルフが、エスタルトゥの手がかりを発見したというのだ。ふたりは第2惑星ヌルーの月ユロンにむかう。ユロン....ローダンの居室に仕掛けられた暗殺のための転送機の送り先も、またユロン。そこには、1隻の宇宙船が不時着していた。船内に足を踏みいれたローダンを、ロボット音声がむかえる。

「----《ジュアタフ》へようこそ!」

 その言葉は、ソタルクだったのだ!



3. エスタルトゥは何処に

 合成映像は口をひらき、話しはじめた。

「われわれと話したいと望む、きみは誰か?」

「わたしはペリー・ローダン。メーコラーから来て、エスタルトゥを捜している」

「エスタルトゥの何を知っているのか?」

 テストをうけているのは明白。慎重に答えなければ。

「エスタルトゥは〈第三の道〉の創始者」

「なぜここで彼女を捜す?」

「はるか昔、エスタルトゥはタルカンからの救難信号をうけとり、それをたどった。以来、彼女は消息を絶ち、〈力の球形体〉は孤児となった」

「それで充分。明らかに、きみは聖別されしもの。きみが話したいというなら、話すがよい!」

 映像は消滅した。壁がふたたび現われる。しかし、元どおりではなかった。ホログラムの映っていた平面の中央に、ひとつのシンボルが輝いていた。三角形に、中心から3つの頂点を指した矢。〈第三の道〉の象徴だ!

 ローダンは困惑した。誰と話せというのか? 幾万という質問がのどまで出かかっている。だが、合成映像の顔は消えてしまった。そこから答えは得られないのだ。

 背後に軽くこするような音を聞いてふりかえった。ふたつの機械の集まりのあいだから、青緑色のロボットが現われる。まるで、何千年もの休止状態をすごしてはじめて歩きだしたように、のろのろと動いていた。

 ローダンは息をつめてロボットを観察した。半円窓に似たスリットの横、ふたつの軟骨状のものが動きだした。数センチも突出する柄の先についている。まちがいない、それは光学感知機器の一部なのだ。

 テラナーの3歩手前でロボットは立ち止まった。

「話すために来たのだろう」低い、蛙の鳴くような声が響いた。ローダンを驚かせたのは、その声が頭蓋の下部3分の1のところにあるスリットではなく、頸部をとりまく襞のどこかから出てきたことだった。「わたしに話したまえ」

「こちらは名のったな」とローダンは答えた。「今度はきみの名を聞かせてくれ」

「わたしはイェヴェ・オル・ダヴン」

「少々複雑だな。ヨルダンと呼んでかまわないか」

「了解した。わたしはヨルダン。きみは何について話したいのか?」

「わたしはエスタルトゥを捜している。きみは彼女について何を知っている?」

「われわれは大勢いながら孤独なのだ」



4. プレイヤーの使者

 ロボット船をおりたローダンは、ベオズの姿がないことに気づく。かれを包囲する形で姿をあらわしたのは、ハウリの一団! そして、1体のベンノ....裏切り者は、リュータルフだったのだ。麻痺銃の一撃をあびたローダンは意識をうしなった----。

 輝く六角形....6つの輝く光点。6----ヘクサメロン! 光は大きくなり、小さくなり、強烈にひらめき、細々と消えいるように....幾重にも反響する声が言った。

「ヘクサメロンは、メーコラーから来た男ペリー・ローダンに、〈最後の六日間〉の法に帰依する最後の機会を与える----」

 ローダンが意識を取りもどした場所は、ユロンではなかった。アンクラム系ですらない。昆虫種族の都市国家がたがいに覇を競う未知の惑星。女王国〈ヴ〉において、〈聖杯〉の称号をあたえられたテラナーは、大いなる権限をもって戦いの前線に身を投じる。そして、いつしか殺戮と弱肉強食のおきてにあらがう意志の力を失っていった。やがて、かれ自身の身に死がせまったとき、ひとりの異人がかれを救う。

「〈チェスの指し手〉がわたしを派遣した。ペリー・ローダン、おのれの道に気をつけるのだ」

 ----ローダンは覚醒した。かれが体験したのは、ハウリの機械が作り出したヒュプノ・ドリーム。かれをヘクサメロンの側に引き入れようとするもくろみだったのだ。その時、薄暗い部屋にベオズと《ジュアタフ》のロボットたちが突入してくる。ローダンとドリーマーのベオズは、ロボット船に収容され、ユロンから宇宙へと飛び出し、アンクラム系をあとにした。



5. 《ジュアタフ》の迷走

 ジュアタフ・ロボットの発言者ヨルダンは言う。

「われわれは等しく探求者。ともにシュプールを探すのだ」

 やがて、ローダンが船内で発見したミュータント・ザタラのフアマチュア----かれは記憶を失い、ザタラとしての能力も不完全----を加えた一行は、ザタラ種族の母星タラへ。しかし、ザタラ族はハウリによって根絶されていた。

 ローダンはさらに、フアマチュアの記憶から《ジュアタフ》内に1体のベンノの遺体を発見。翻訳=音声合成装置は、持ち主の死のまぎわの言葉を記録していた。

「....最後の....。タムバウ....。ジュアタフ....〈満の時〉....〈焦点〉タムバウ、ますます重要になる地....惑星タムバウ....惑星タムバウ....」

 ベンノとジュアタフ・ロボット。両者になんらかの関係があるのか? そして「タムバウ」の名を聞いたヨルダンは、シュプールを見出した、とつぶやく。だが、やがて《ジュアタフ》のたどりついたタムバウは、それほど重要とは思えない砂漠惑星。砂の他に存在するものといえば----ハウリの要塞! ジュアタフ・ロボットたちは奇襲によって防衛基地を破壊する。ところが、唯一息のあったハウリが謎の言葉をもらす。

「たとえ要塞を破壊しようとも、背徳者にチャンスはない。新たな〈焦点〉を....」

 〈焦点〉! それも今度はハウリの口から!?

 フアマチュアは記憶と能力とを取りもどし、ザタラのシュプールをみつけた、とロボット船を去る。その直前に、ミュータント・ザタラはヨルダンの意識内容を読んでローダンに教えるのだった。

 ....ジュアタフ・ロボットたちは、長いあいだ〈満の時〉を待っていた。シュプールは、探しもとめてきた〈集結の地〉へとかれらを導くだろう。シュプール----〈エスタルトゥのシュプール〉は、ササク系テュヨンへ通じているのだ。



6. 失われたシュプール

 テュヨンには、樹上生活者から進化した種族ベングエルが住む。ベングエルはたがいに職業や特徴をあらわす仮の名で呼びあう。かれらは占星術者。星々から宇宙の事象すべてを読み取り、自分だけが知る自分の〈真の名〉を得るのだという。そんな未開惑星にローダンとベオズ、ヨルダンを降ろした《ジュアタフ》はいずことも知れず飛び去ってしまう。

 やがて一行は、他人に〈真の名〉を明かすただひとりのベングエル、エセルフィムと知り合う。かれを見たベオズが驚く。ヨルダンとエセルフィム、かれの「夢」に現われた2体の生物がそろったというのだ! エスタルトゥについて問われたエセルフィムは答える。

「われわれは大勢いながら孤独なのだ」

 ローダンはテュヨン統治機関〈アストラル評議会〉の一員〈星のぞき〉と会見。しかし、老ベングエルはエスタルトゥのことを知らない。むしろ、ローダンをベングエルの宇宙観に対する脅威と認識、敵対視する。

 暦は5月に変わっていた。ササク系で、木星型惑星ふたつの合が起きる----ベングエルたちはそこから凶徴を読み取った。突如としてはじまる大疎開。ローダンはおのが目を疑った。ベングエルが宇宙船を持っているとは!

 エセルフィムの仲介でローダンは、やはり異邦人の〈名なし〉と出会う。「伝説探究者」を自称する昆虫種族の成員は、エスタルトゥという知られざる伝説に興味をしめした。そして、すべてを聞き終えたかれは、こう結論づける。

「主なるヘプタメルと〈火炎の領主〉たち----ヘクサメロンは、総体として超知性体級のポテンシャルを持ち、エスタルトゥを打ち負かして自己を強化するため吸収した。エスタルトゥなるものはもはや存在しない。ヘクサメロンがそのシュプールすべてを消し去ったのだ」

 ベングエルの船団が続々と出発していく。みずからもテュヨンを去る〈名なし〉は、同行するようにと、ローダンを誘う----テラナーは《レダ》を信じて断るのだが。

「わたしはカルタン人の母星へ行くつもりだ、〈第一プレイヤー〉の宇宙より来た友よ」

 やがて、ロボット船を追跡していたドリフェル・カプセルの通報でレン・ノの救援艦隊がテュヨンに到着。ベンノのひとりがローダンらに駆け寄る----その時、ベオズの夢が実現した! 閃光が走る。そして、ヨルダンとエセルフィムは魂を失い、生ける屍となりはてる。

 なぜこんなことが? ローダンには理解できなかった。



プロジェクトの名は メーコラー /1

「〈六日間の出来事〉?」

「んで、〈七日目の主〉」

「宇宙滅亡の六日間の出来事のあと、七日目の主は新しい宇宙とともに生まれ変わる。とうぜん、教義としては〈信じる者たちもまた新しい宇宙に生まれ変わるのだ〉とつづくわけ」

「そもそも、高齢の宇宙タルカンは拡張のサイクルをとうに終わって、収縮をはじめていた。それを、200万年前、ヘクサメロンは重力定数その他もろもろを操作して宇宙の終末プロセスを猛烈に加速する」

「そんな超技術があるなら、今ある宇宙を改造すればいいのでは?」

「そこは高次のソンザイの考えること。わたしら低次のソンザイにはわかんないみたい」

「やっぱり、リフォームより新築だよね〜」

「....」

「タルカンて、背景輻射が1000℃を超え、夜空は赤黒い....せまりくる終末というのはじつはけっこう近い将来で、なんと数百年後とか。こんなでっかいものがなんでそんな短期間で、とは思うのだけれど」

「新理論〈宇宙のデフレーション〉?」

「そこは高次のソンザイの技術。わたしら低次のソンザイにははかりしれないみたい」

「ブルドーザーで一気にばーん、って、あとは産業廃棄物?」

「....」

「そうして、からみあう現代物理学とあちらこちらの宗教のモチーフ」

「ベオズの啓示、ジュアタフの巡礼、ベングエルは....なんなんだこいつら? 聖別されちゃうペリー・ローダン」

「それから、ジュアタフとベングエルが出会ってピカピカって半死半生状態になる〈対自殺〉」

「これって、量子と反量子ががーんと衝突して別の量子放出して消滅する〈対消滅〉のイメージ?」

「なんなんだかな〜」

「理屈をこねてみたい年頃なんだよ〜」

「だれが〜?」



解説/銀河転送----異宇宙の種族たち

ハウリ
ベンノ
ジュアタフ
ベングエル


"PROJEKT MEEKORAH / プロジェクト・メーコラー

1998/5/18 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi