
しかし、映った顔はティフラーのものではなかった。
冷たい戦慄がアトランの背を駆けぬけた。かれの目に映る面長の顔には、赤と黄の斑点があった。瞳は金色で、ひきこまれそうだ。密な髪はきらめいていた。
目に見えるすべてが、回転する火の車輪、それとも火の目玉に融けあい、ふたたびはっきりと形を成す。アトランは息を飲んだ。
〈第一級の危険!〉付帯脳が信号を出した。
「きみがアトランだな?」顔は、ハンガイの公用語ハンゴルで訊ねた。
「誰だ?」落ちつかなげにアトランが問いかえす。
「わたしは〈火炎の領主〉アフ=メテム」ほとんどおもしろがっているような調子で、顔は答えた。「もちろんきみはアトランだな。強烈な個性が見てとれる。あきらめるのだ! きみがわずかなコマンドとともにパガルのさして重要でない施設へ侵入し、ハウリの監視部隊との勝ち目のない戦いにまきこまれたことは知っている。それゆえ忠告する。あきらめたまえ!
わたしはきみの死を望まない。生きたまま、大使命のために勝ちえたいのだ。降伏しろ、そうすればイマーゴ、ペリー・ローダンとひきあわせ、〈ナコド・アズ・クォール〉のほとりでヘクサメロンの力を示威し、大宇宙の秘密を解明することで、いずれとどめがたい〈最後の六日間〉の経過にあらがうものに勝機はないと証明してみせよう」
アトランの頭はガンガンと鳴っていた。
「わたしのことを、どこで知った?」
かれはアフ=メテムが無感情に笑うのを聞いた。スクリーンがまたたき----次の瞬間、そこにはティフラーの顔が映っていた。

その設置される惑星アシュカルの座標は、M−33辺境の球状星団マルティ5のなか、とまでしかわからない。ハウリをおびきだすため、レジナルド・ブルはハイパートロプ機関の輸送を偽装する。〈物質シーソー〉の出力増強のために、ヘクサメロンの使徒たちはハイパーエネルギー抽出装置の獲得に躍起となっているからだ。偽装ハイパートロン装置の内部に、ブリー、グッキー、ニッキー・フリッケルらがひそみ、問題の球状星団をかすめるコースでピンホイールへむかった。
予想どおりハウリは現われた。輸送船は拿捕され、10月半ばアシュカルへと運びこまれる。偽装ハイパートロプからひそかに抜け出たコマンドは、ハウリ基地に近い山地の洞窟にベースキャンプを置き、〈物質シーソー〉中枢部の探索にかかった。しかし、ハウリ技術は異質すぎた。ハウリの生来の対テレパシー・シールドにはグッキーも無力。1ヵ月が過ぎ、ハンガイ転送の期日は刻々とせまる。
それでも、調査はやがて成果をあげた。ある建物を、真紅の服のハウリが頻繁に訪れることがわかったのだ。グッキーはこの〈水を運ぶ者〉をとらえる。〈背徳者〉たちが〈物質シーソー〉計画の詳細をつかんでいることを知り、驚愕したハウリは自害する。そのとき、つかのま崩れた対テレパシー・シールド----〈物質シーソー〉中枢部のイメージがつかめた。
ブルたちがその場所を探りあてた時には、ハンガイ第3クォーター転移は目前にせまっていた。ハウリ基地でもカウントダウンが進む。と、不意にそれがとぎれた。グッキーはパニックに陥ったハウリたちの心から、タルカン側の対応するステーション、パガルの〈物質シーソー〉が破壊されたことを読みとる。そして、アシュカルの〈物質シーソー〉も、過負荷から惑星を道連れに自爆したのだった。

《マイ・キ》には伝承者ただひとりの生き残りダオ・リンに加え、伝説の人物オーグ・アト・タルカンも同乗していた。老カルタン人はブルに語る----謎の声が、ブルこそかれを〈集結の地〉へと導くもの、と告げたのだ、と。
小艦隊は、ハウリが探知不可能な時空褶曲のひとつに逃げ込むのを確認。後を追ってマイクロ宇宙に侵入する。閉鎖空間でただひとつの恒星サプライズをめぐるのは、惑星だけではない。直径1万数千キロの平たい六角柱の超巨大ステーション! ブリーは〈招かれざる客〉と命名する。
ハウリによって〈服従の場所〉と呼ばれるステーションに侵入したブルたちは、《シマロン》乗員のひとりベネカー・フリングが駆使する魔法じみた特殊機器の助けでハウリの保安機構の手をのがれ、ウーリアン中枢への突破に成功する。そこで捕虜にしたハウリ司令官の言葉は、ウーリアンのおそるべき秘密を解き明かした。
....〈物質シーソー〉さえ時間かせぎにすぎない。ウル・アム・タロクは本来、ハンガイのタルカン脱出を阻止するために建造されていたもの。しかし、まにあわぬことを悟ったヘクサメロンは用途を変更した。真の〈時間終点計画〉とは、〈ハイパー物質シーソー〉たるウーリアンの力で局所銀河群の全質量----すべての銀河をタルカンへ移送するものなのだ!!
ブルたちは、完成間近のウーリアンの破壊をよそおい、閉じられた時空褶曲から「追い出される」ことに成功した。時空褶曲ウル・アム・タロクのポジションを携えて故郷銀河系への途についたブルは、新たなる危機を回避するためにも、すでにタルカンに出発しているアトラン艦隊を追う決意をかためていた。

「われらとともに、〈歓喜の地〉に集おう」その惑星の名は、ワリキといった。ハンゴルで「喜びの場所」を意味する。ベングエルは、そこで「完成」を待つというではないか! さらに、ジュアタフ・ロボットの一団も到着。この異質な種族がともに待つ「完成」の儀式とは何か? くしくもカレンダーは12月24日----クリスマス・イヴの到来を告げる。
喜びの惑星に出現したベンノの一艦隊。賎民ベングエル出現の報をうけ、カンサハリーヤから監視部隊として派遣された----と、司令官ドリルホブは無線で語る。そうして、見守るブルたちの眼前で、それが起こった。
上空にベンノの三胴船艦隊が見えた。輪を描いて降下をはじめる。ジュアタフとベングエルが磁石にひかれる砂鉄のように、艦隊の方向へと歩き出した。トリマランは着陸し、ハッチが開いてベンノが姿を現わし----放電が起こった。次いで訪れた暗黒が通り過ぎたとき、大地にはロボットと賎民たちが死んだように横たわっていた。不意に、人々の心に声が響いた。
「これは失敗に運命づけられた試みでした。〈かけら〉がたがいをみいださぬかぎり、完成にはいたれない」落胆をかくせない老オーグとともに、ブルはワリキを離れた。そして、《シマロン》が衛星軌道から離脱しようとしたそのとき、地表を映す全周スクリーンが突然注目を集めた。広大な海洋で、氷山が動いていた。何千という氷山が、ひとつのシンボルを描いていたのだ。第三の道のシンボルを!

....ブリーは夢を見る。秩序一色に染まる、整然とした----整いすぎた都市にそびえたつ塔。基部には、碑文が刻まれている。『秩序こそ神聖----法則は冒涜なり』....いずこからか、声が轟く。「秩序は悪魔の発明! 法則だけが真実!!」めざめた時、赤毛のテラナーは、ベネカー・フリングのキャビンにいた。フリングがつぶやく。ストレンジネスとは、単なる物理定数の相違にとどまらない----。その警句を聞いたとき、ブルは謎の男の正体を直感する。
ハウリの妨害をふりきり、《シマロン》は超空間に突入した。理論上、新型グリゴロフ・シールドは報告艦を異宇宙タルカンに導くはずだった。不意にすべての機器が停止し、司令室が暗黒に包まれた。事故? 闇のなか、エイレーネは失踪した母ゲジルの声を聞いた----「ドリフェルでのことを思い出すのよ!」そして彼女は叫んだ。〈エントロピーの母〉にして〈熱力学第二法則の守護女〉シ・キトゥの名を! ....《シマロン》は赤く輝く宇宙に到達した。
くさび艦をストレンジネス障壁を越えタルカンに運んだシ・キトゥは、具象化存在を遣わして語った。わたしがエイレーネの呼びかけに応じたのは、たまたま利害が一致したからにすぎない----。そしてブルは、失敗こそしたものの、エイレーネと同じことを試みた者を知っていた。秩序の都市のヴィジョンを創り出し、怒りにかられたシ・キトゥを招聘しようとした男、ベネカー・フリング。かれこそは〈それ〉の使者!

カンサハリーヤ中央星系のカルタン人から〈永遠の穴〉の座標を得ようとしたローダンは、カリフ系が〈イマーゴ探求者〉の船団であふれかえっているのを見て、進入を断念。と、その時、ナイ・レンが未知のプシ場に包まれ姿を消した! シュプールを追う《レダ》は、ナック母星ナンサルを飛び立った高速艇にいたる。ところが、追いついた時、乗員のナックはみな死亡していた。カルタン人を救出したあとで艇を調べたテラナーは、その目的地が「数日前ベオズの夢にあらわれた」惑星フンドロであることを知った。ナコド・アズ・クォールの手がかり....?
ファンジ系第4惑星フンドロに到着したローダンは、そこで巨大なカブト虫たちの造るピラミッドと、発狂したナックを目のあたりにする。そう、ここは〈永遠の穴〉での試練を克服できなかったナックたちの収容惑星なのだ。
さらに調査をつづけるローダンたちは、カブト虫との共生関係がナックたちの狂気を癒しつつあることを知る。だが、治癒したナックは、この「医療星」にひそかに潜伏していたハウリによってヘクサメロンの教義に服するようになっていた。ローダンはナックたちの手に落ち、かれを救おうとしたナイ・レンはナックに殺害されてしまう。
独房のなかから、カブト虫の集合生命体との意志疎通に成功し、脱出をはかるローダン。ようやくベオズと《レダ》のもとにたどりつき、惑星圏を離脱したかれは、カレンダーの日付----11月30日!----を見て、ハンガイ第3クォーター転移が寸前にせまっていることに気づく。ファンジ系もその一部。このまま待つだけで、故郷宇宙へともどれるのだ。だが、テラナーは、タルカンにとどまろうと決意した。イマーゴの道がエスタルトゥにいたることを信じて。

それは明らかに、コスモヌクレオチドの〈門〉----そしてあらゆる細部にいたるまで、〈ドリフェルの門〉に酷似している。モラル・コードは複数の宇宙に顔をのぞかせているのだろうか?
ローダンは〈門〉の近くにカンサハリーヤのナック教育ステーションを発見。そこでナックの世話をするジュアタフ、ビルゲロンは、コスモヌクレオチドの〈門〉こそが〈永遠の穴〉であるという。ローダンは《レダ》でヌクレオチドに突入する。計測された数値はすべて、そこがドリフェルであると告げていた。
グリーンに輝くドリフェル内空間。イマーゴを追ってきたビルゲロンは《レダ》の操船を誤らせ、ドリフェル・カプセルは〈プシクス〉のひとつに転落してしまう。通常のグリーンではなく、奇怪な青にまたたくプシオン情報量子....そこは〈潜在的過去〉の世界、ドリフェルの歴史庫であった。
《レダ》の難波した「過去」----それは200万年前のタルカン。探知機器はひとつの異変を発見する。重力定数が異常に上昇しているのだ。それは収縮プロセスを加速しようとするヘクサメロンの活動のあかし。そして、物理定数への干渉のために滅亡の淵におとされた超種族があった。その救難信号に応えておもむき、ローダンはそこでみずからを救う道を知る。〈潜在的世界〉に存在するドリフェルの〈門〉のすべてが「現実の」ヌクレオチドに通じているというのだ。

やがて《レダ》が、将来のハンガイ第四クォーターの大騒乱を探知する。その中心はハウリの母星系ウシャルー。この連星系で、カルタン人とヘクサメロンの両艦隊が対峙している。戦闘がはじまらないのには、わけがあった。固唾を呑んで見守っていたのだ。ぶつかりあう、ふたつの超プシ放射体----エスタルトゥとヘプタメルを!!
ふたつのプシ・エネルギー凝集体は、火花を散らしつつウシャルー系の奥へと進んでいく。あきらかにヘプタメルが優位に立っている。ヘクサメロンの〈半神〉ヘプタメル。このプシ放射体は、超知性体なのだろうか?
戦いは惑星ツェレンガーへ場を移した。ヘプタメルがそれを望んだのだ。プシオンの拘束力場がエスタルトゥを捕らえる。ヘプタメルの力は刻一刻と増し、エスタルトゥは次第に弱体化しつつある。ヘプタメルがエスタルトゥを喰らい、吸収しているのだ! そして、エスタルトゥが最後の一撃を放つ時が来た。プシの閃光がツェレンガーに直径2000キロの大クレーターをうがった後、残ったのはヘプタメルだけだった。
しかし、ローダンには超知性体の死を信じることができなかった。あのときエスタルトゥは、生死を賭けた戦闘より、他のなにかに注意を奪われていたようにみえたのだ....。

「ついに〈満の時〉が到来したのだ」そして、最大のベングエル集合船《ジュナガシュ》が、イマーゴ=ローダンに謁見をもとめてきた。ふたりのベングエル指導者〈老賢者〉と〈読心者〉。危険を訴えるベオズをふりきり巨船に入ったローダンを、マインドリーダーが歓迎する。だが、マインドリーダーこそ、姿を変えた〈火炎の領主〉アフ=メテム! ローダンはその手中に落ちたのだ。
ベオズはドリフェルを抜ける旅以来、プシオン過充電とでもいうべき状態に陥って、これまでとはちがう「白日夢」をくりかえし体験する。遠いむかし、故郷惑星ベンでの友、いまは亡きオンドルムの夢。友はかれに何かを語ろうとしているのに....。
囚われの生活が幾日つづいたのか。あたえられたわずかな自由を利用し、ローダンはもうひとりのベングエル主導者オールドワイズを呼びよせ、脱出の方策をねる。幸いアフ=メテムは何かの都合で《ジュナガシュ》を離れているらしい。テラナーはベオズの夢を頼りに、主のいないアフ=メテムの司令部に侵入、実験材料となったジュアタフ、ベングエル、ベンノたちを発見する。〈火炎の領主〉は、謎の〈対自殺〉についても何かをつかんでいるのだ。さらに、アフ=メテムの記録からローダンは、〈火炎の領主〉が自分だけでなく、タルカンに進撃したアトランも、ナコド・アズ・クォールへとおびきよせようとしていることを知った。
さらに奥のエリアでひとりの囚人を解放した時、ローダンは自分がアフ=メテムの掌の上で踊らされていたことを悟った。幽閉されていたのは、本物のオールドワイズ! 〈火炎の領主〉はふたりのベングエルの姿をとって同時にあらわれることでローダンを翻弄していたのだ。
帰還した〈火炎の領主〉の正体をあばき、熱線をあびせるローダン。だが、アフ=メテムは死んだわけではなかった。出現したプロジェクションの顔が嘲う。
「そう簡単にアフ=メテムを殺せるとは思うまい? 〈火炎の領主〉たるもの、生命はひとつではないのだ」マインドリーダーは〈力の具象化〉アフ=メテムのほんの一部でしかなかった。脱出をはかるローダンを、本物のオールドワイズの呼びかけにこたえたイマーゴ探求者たちの一団が援護する。

ペリー・ローダンはその光景を見渡した。たっぷり30体のロボットと、同数のベングエルが部屋中にひしめき、何かを待っているようだった。
ベングエルとジュアタフ!
悪い予感がテラナーの内を走った。
〈わたしは、あなたたちの結びつきのなかで、第3の存在になりたいのです!〉〈対自殺〉を経験したベオズの夢....。
そこに第3の存在はない。それとも?
「警報!」ピコシンが報告。「プシオン・レベルの攻撃。プシサイバー・フィールドが張られました。完全に包囲されています。アフ=メテムは眠っていたわけではなかったようです」
「プシサイバー・ダンパーを投入したまえ。見えない攻撃を阻止するんだ!」
ベングエルとジュアタフが動作の途中で凍りついた。歓喜の声がやむ。プシサイバー・フィールドが効果をあらわしたのだ。オールドワイズとベオズももう動かなかった。ローダンは自分の精神への攻撃を感じたが、まだ明晰な意識をたもっていた。
「弱点を発見」と、ピコシン。
部屋中が、何分の1秒かのあいだ青い光に満たされた。まもなくローダンの脳への圧迫は消えうせ、ベングエルやジュアタフたちもふたたび動きだした。ベオズがかれらのあいだに歩む。
そして、それが起こった。
その場にいた者すべての頭部から放たれた閃光が、テラナーの目をくらませた。ふたたび目をあけたとき、ベングエルとジュアタフたちは死んだように床に横たわっていた。オールドワイズも仰向けに倒れ、微動だにしない。ローダンとアッタベンノだけが、理解しがたいできごとに困惑して、立ちつくしていた。
閃光のなごりが、15秒ほどかけて色褪せていった。そして、その瞬間、ペリー・ローダンの意識におだやかなメンタル音声が響いた。
〈《火炎の領主》に気をつけなさい! かれは強大ではあるけれど、無敵でもない。常にあなたに近く、そしてまた遥かに遠い。これまで来た道をそのままおゆきなさい、それが正しい道なのだから! 迷える《子ら》をその手にいだき、かれらの希望を満たす新天地へ、真の故郷をみいだせる場所へと導くのです。あなたには、もうあまり時間がない。あなたの時よりも大切な時があるからです。そう、〈満の時〉が。それはあなたが思っているよりも間近。それゆえ、たとえ同情を呼びさまされても、生気なく足元に横たわる者たちを気にかけていてはなりません。かれらは死んでいるのでも、意識を失くしたのでもない。生きています。その自我を奪われたわけでもありません。あなたにとって、もっと重要なことは解放です。そして、もうひとつ。オンドルムの友、あなたの小さな道連れのことをいつも心にとめておきなさい。かれの一部は死者のなかに生きています。そして、死すべきではなかったその死者の一部が、守られねばならないかれの強い精神のなかに生きているのです〉

不意に攻撃の手がゆるんだ。《ジュナガシュ》全域に鳴りひびく警報。網歩服のピコシンが、〈火炎の領主〉の外部警戒ポストの報告を傍受する。十数隻の未知艦隊が、ベングエル集合船めがけて突進してくるというのだ。ヘクサメロンの領主は、兵力の大半をそちらへさしむけねばならなかった。

《カルミナ》のアトランは、銀河間の虚空に星系を発見する。そこにあるのは、ハウリの拠点だけではない。近傍に、安定化された時空褶曲が口をひらき、〈怒涛の極〉と呼ばれているのだ。アルコン人は、そこでならナコド・アズ・クォール、ないしはローダンの手がかりが得られるとふんだ。アトランを乗せて《TS−コルドバ》が単独で出発する。
その星系は、ハウリに「ギラトゥ」と呼ばれていた。ヘクサメロン神話における火の女神。そして正確に五角形をなす惑星のひとつの名は、アラパ----不和と戦争の女神。傍受した通信は、そこで一大計画〈火炎疾風〉のテストが近いことを明らかにした。
潜入したアトラン・コマンドは、近くアフ=メテムがアラパに来訪するという情報を入手する。アルコン人を〈永遠の穴〉へとまねきよせた謎に満ちた〈火炎の領主〉ならば、まちがいなくローダンの消息をも知っているはず....。基地の奥深く進んだ一行は、幽閉されたジュアタフとベングエルの一団を発見する。不意にひとりのベンノが姿をあらわし、アトランは居並ぶものたちから光が発されるのを見た----。
「アフ=メテムの炎から身を守りなさい! あなたは迷える〈子ら〉の心に通じる門の鍵をもつ者。それをお使いなさい。そして、急ぐのです。〈満の時〉は近い。意識を失い、前に横たわるものたちを気にかけてはなりません。かれらは何ひとつ失わない。かれらは大勢いて、そしてまもなく、もう孤独ではなくなるのです」謎の声の過ぎ去った後を、沈黙が埋めた。それを破ったのは、突如活発な動きをみせたハウリたち。コマンドの面々はようやく悟った。〈火炎の領主〉は、これから来訪するのではなく、すでにアラパにいる。アトランたちは罠にはまったのだ。出現したアフ=メテムの巨大なプロジェクションにマイクロ核爆弾をたたきこみ、決死隊は急遽逃走に転じた。《TS−コルドバ》が惑星周回軌道を離脱しようとする----そこに試動した〈火炎疾風〉が襲いかかる。すべてのハイパー機器からエネルギーが奪われ、熱に転じる。あと一瞬遅かったら、《コルドバ》がアンティテンポラル干満フィールドで相対的未来に逃げこむことさえ不可能だったろう。
〈Y−ゲート〉に帰還した一行は、群れをなしてハンガイから離脱していく船団を探知する。イマーゴ探求者たちだ。会合点で待機していた僚艦は、大船団の目標を告げる。ナコド・アズ・クォール....。
----〈永遠の穴〉を見た瞬間、ラトバー・トスタンはなくした記憶の最後の一片をとりもどした。そこは17年前、〈クロッツ〉がメーコラーへと出発した場所なのだ!

星系唯一の惑星ウナグの第13衛星ガルムに投獄された3名は、やがてナックにかれらを解放する気がないことを知る。オサマは、ナックのゴン=ヴェン評議員だったダルフロルの子のひとり。かれは、〈ナックの墓場〉で自分の「兄」を殺したイマーゴを恨んでいたのだ。3人はフリングの力で脱走に成功、まもなく誤解の原因を理解したエレゴ系のプロジェクト・リーダー、カルタン人ホン・トゥルに迎えられる。かれはブルに、ローダンとアトランに関する全情報を提供する代償として、すみやかにエレゴ系から退去することを要求する。ハンガイ最終クォーターの転移の期日は2月28日。ハウリの活動が激化しているいま、この機を逃せば次はないかもしれない。エレゴ系はプロジェクト遂行のため、すべての力を結集しなければならないのだ。
ホン・トゥルから得たデータにしたがい、《シマロン》はエレゴから8000光年の距離にある星系をめざした。そこで、ジュアタフとベングエルが異常と思えるほど集結しているというのだ。ベングエルと接触したブルは、かれらが「イマーゴ」の名のもとに招集をうけたことを知る。目標は、ナコド・アズ・クォール。
当初、ベネカー・フリングは、「E探知」について何も語らなかった。だが、いま《シマロン》でブルに問いつめられた〈それ〉の使者は、こう答えた。
「エスタルトゥはここにはもういない!」----5万年前タルカンへ来たはずのエスタルトゥ。彼女は「ここにも」もはや存在しないというのか!?

「われらはイマーゴのそばにありたいのだ!」悲痛なその叫び----そう、かれらはアトランのことも「イマーゴ」として崇めだしたのだ。なぜ、突然? ローダンの身に何か起きたのか? アトランたちの脳裏に暗い予感がよぎる。
全艦による突入は、ハウリ艦隊の出現に阻まれた。アフ=メテムの罠を突破するため、アンティテンポラル干満フィールドにかくれた《TS−コルドバ》が突入、アトラン、ブル、エイレーネ、ミュータントを含む8名のコマンドが《ジュナガシュ》に潜入する。パラ心理バリアをかいくぐり、かれらはローダンがいるはずの中核部へ突破孔を開く。そして、ハッチを閉鎖されて立ち往生していた《レダ》の協力で、ドリフェル・カプセルをめざしていたペリー・ローダンとの再会を果たす。
脱出の道をさぐる一行を、ひとりの白い巨人が援護する。かれはゴヨー・アム・スヌー。ヘクサメロンによって滅ぼされた太古種族グルールの最後の生き残りであり、復讐者! 〈火炎の領主〉に復讐するためだけに、かれは永劫とも思える時間を生きてきた。そして、仇はいま、目の前にいた....。
ゴヨーとアフ=メテムの決闘のあいだに、ローダンたちはタルカン遠征隊へと帰還する。ゼロドリームによってゴヨーと共感状態にあったイルーナが、グルールの消滅を報じる。復讐者は〈火炎の領主〉の具象化を道連れにこの世界から姿を消した....と。

二度にわたる偵察行動で、アンティテンポラル干満フィールドで1.17秒後の未来に転移した場合のストレンジネスが、ウーリアンを覆う時空褶曲のそれと等しいことが確認された。ツナミ艦で、マイクロ宇宙との往復が可能なのだ。
ウーリアンへの突破を目前にしたとき、デイトンの前にひとりの女性があらわれる。何度となく、かれの夢にあらわれたヒルダル。彼女はエスタルトゥの具象化!
「宇宙を冒涜の影がおおっています」ナックの超感覚は、エスタルトゥがその幼な子、トト・ドゥガたちに命じて育成させたもの、とヒルダルは語った。....すでに彼女は幾多のメッセージを送っていた。エスタルトゥは生きているのか----デイトンの問いにヒルダルが答える。
「エスタルトゥは生きています、また、死んでもいるのです」
「ナックの使命は未来にあるのです」プロジェクト・メーコラーの完成後に何がおこるというのだ?
時空褶曲の奥のマイクロ宇宙では、ツナミ艦の偵察を察知していたハウリの大艦隊が待ちうけていた。しかし、僚艦3隻を失いながらも、デイトンはやりとげた! ウーリアンを沈めたのだ!! 崩壊するマイクロ宇宙を脱出しながら、デイトンは安堵のため息をついた。局所銀河群の危機は回避された。エスタルトゥの化身の陰鬱な予言もくつがえされた----かれは、そう信じた。

「〈満の時〉が近い。同胞よ、ナルナへ来たれ」ナルナ----連絡をとったオーグ・アト・タルカンによれば、いまやほとんど知るもののないベングエルの母言語で「集結」を意味するシグナル。ミスティコンと名づけられた黄色恒星の唯一の惑星ナルナは、《ソロング》が駆けつけた時すでにバブル船の大群であふれていた。ワリキでのできごとの記憶がニッキーに蘇る。賎民たちがいる、では、ジュアタフもいるのだろうか? 彼女は発見する。惑星地下に限界まで掘りひろげられた大空洞----そこに、ジュアタフ・ロボットたちの大都市が存在したのだ!
やがて、ロボットの1体と接触したニッキーは「トト・ドゥガは奇蹟を待っている」と聞かされる。ソタルクで「わが幼な子たち」を意味する言葉「トト・ドゥガ」は、ジュアタフたち自身のことをいうらしい。
ナルナ送信機を停止させようと現われたハンガイのカルタン人たち。ベングエルが暴動にいたろうとしたとき、ひとりの女性が出現した。ヒルダルが! 彼女はエスタルトゥの遺産と、その子らトト・ドゥガについて語る。
....ヘクサメロンに追いつめられたとき、超知性体はある惑星の塵から500体のトト・ドゥガを創造した。〈子ら〉は〈最後の六日間〉の軍団の目を逃れるため、無人の惑星ウシンディに移住する。〈遺産〉は大きすぎ、より多くの仲間にわけあたえなければ耐えがたかった。トト・ドゥガは、地下で爆発的に増殖していった。オーグとダオ・リン----カルタン人のふたりの代表者の介入によって、送信機の破壊は阻止された。そして、ナルナの声はハンガイ中のトト・ドゥガとベングエルに「集結」を呼びかけつづける。惑星ウシンディ----今日のナルナの資源を使いつくし、40億に達したトト・ドゥガは、さらに資源をもとめて飛び立った。また、ヘクサメロンの目をひくことをおそれて、〈遺産〉を一見重要には見えない知性体ベングエルにもわけあたえ、ベングエルは〈遺産〉を子孫たちへとうけついでいった。
やがて、各個体の〈遺産〉はわずかになった。トト・ドゥガはみずからの発祥も使命も忘れ去り、ハンガイを漂泊する。しかし、〈満の時〉が到来すれば、数十億のトト・ドゥガは集い、エスタルトゥの偉業を完成へと導くのだ....。

タルカン遠征隊とイマーゴ探求者の大船団は、ハンガイ第4クォーターをめざす。〈火炎の領主〉は、ローダンとアトランをナコド・アズ・クォールにいざない、かれらを〈永遠の穴〉にとどめおこうとした。だからこそいまはハンガイをめざすのだ。
行く手をはばむハウリの暗殺艦隊を、〈それ〉の使者ベネカー・フリングと「名歌手」サラーム・シーンの連携で排除。ハンガイへと突進するかれらの前に出現したヒルダルは、ローダンにトト・ドゥガの創立史を語る。
5万年前、タルカンに介入したエスタルトゥは、やがてヘクサメロンの存在に気づいた。敵の目をくらまし、カンサハリーヤを援助しつづけるために、エスタルトゥは自分の死を演出する----ローダンはツェレンガー決戦のヴィジョンをいま一度見た。最期の瞬間、エスタルトゥはトト・ドゥガに自分自身を分け与えたのだ....。
〈集結の呼び声〉の発信源は、銀河中枢部のダオ・バン星系。偵察にむかったアトランは、そこで、岩山の頂上に〈第三の道〉のシンボルの刻印された砂漠惑星ジトラ----あの〈焦点〉タムバウと瓜ふたつの世界!----と、アフ=メテムの要塞惑星ヴォンタードを発見する。
そして、アトランの報告で針路をジトラへと定めた大船団のエンジンが、一斉に停止した。アフ=メテムの声が轟く。
「〈背徳者〉よ、エシュラ・マハーズの六日目の終焉を、〈火炎の領主〉が〈火炎疾風〉で祝福しよう」

「やっぱり〈対消滅〉のイメージだったのだね」
「〈対自殺〉のあと、魂をなくしたジュアタフはただのぎっこんばったんするロボットになる」
「魂をなくしたベングエルは、うっきー、って、ただのお猿さんになる」
「そして、ふたつの魂が消滅し、ほんの一瞬だけエスタルトゥが再生」
「なに考えてんだかな〜」
「姿かたちはみえないけれど〜、つねにどこかで点いたり消えたり〜」
「そこは高次のソンザイの考えることは、わたしら低次のソンザイにはわかんないみたい」
「じゃんっ、電気を大切にねっ!」
「....」
「人気沸騰のデュオ〈ローダン&アトラン〉....おっかけ数十億人に身をやつしたエスタルトゥを引き連れて、数十億人のファンが待つファイナル・コンサート会場へ!」
「そこに、立ちふさがる炎の壁」
「おれはやるぜっ! 男ローダン演歌の花道!?」
「女房に逃げられ〜幼いこのコの手をひいて〜?」
「んでもって、きゃーイマーゴぉって、ロボットと猿がおっかけていく」
「....」
「いよいよもりあがってまいりました〜?」
「じつは緊迫感のかけらもないな、これ」


"PROJEKT MEEKORAH / プロジェクト・メーコラー
1998/5/15 r.psytoh with y.wakabayashi
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