
そして、まさに時を同じくして新たな脅威が姿をあらわした。おとめ座銀河団の力の球形体〈エスタルトゥ〉を支配する「永劫の闘争の哲学」が甘言と武力と巧妙なプシオンの技術を背景に銀河系に手をのばしたのだ。そして今、騎士たちの故郷は永遠の戦士の帝国の支配下にある....
「あらゆる秩序と美をもちいた世界構築が双方の運動法則に即した物質作用なら、また自然の盲目的力学が混沌から壮麗な発展をなして自ずと完成にいたるなら、その時、構築されし世界の美より人の見出す神がかった創造主の存在は完全に覆される。自然はそれ自体足るを知り、神の支配は不要なりと」
----イマヌエル・カント

かれらは罠にはまったのか? “旧友”とはストーカーの作り出したまやかしだったのか? そのとき、ワリンジャーが銀河間の虚空にひとつの巨大な構造物を発見する。コスモヌクレオチド----フロストルービンの兄弟! ローダンたちには知るよしもなかったが、それこそは永遠の戦士たちが十二の奇蹟をとおして操作をもくろむという事態の焦点....ドリフェル。
さらに誘導電波にみちびかれ、ある球状星団外縁の赤色恒星をめぐるガンダル・ステーションへ。そこに正体不明の“旧友”が待っているのだ。
....男はテスターレと名のった。肉体をもたぬプロジェクション。かれは〈網を歩む者たち〉の使者。
----5万年前、エスタルトゥの操作をうけたコスモヌクレオチド・ドリフェルが、その管轄宙域のプシ定数を変化させ、エネルプシ駆動で利用可能なプシオン網を造り出したという。永遠の戦士はさらなる操作をもくろみ奇蹟を建設....このままではトリークレ−9の二の舞いとなるのは確実。テスターレの正体、それは、4年前に無限艦隊の中枢部で行方不明となっていたアラスカ・シェーデレーアのかつての共生体----600年来アラスカの顔面に融合していたこのカピン人フラグメントも、今や自由意志で行動できる力を身につけていた。アラスカの船で網を歩む者たちの拠点惑星サブハルに降りたったローダンは、そこでゲジルと、生まれて数ヵ月の娘エイレーネと再会する。網を歩む者たちはモラル・コードの機能を守るためにプシ定数の正常化をめざし、永遠の戦士たちと対立しているのだ。



だが、いまではその能力も影をひそめ、エイレーネはひとりの人間の娘として成長した----宇宙の「進化たまねぎモデル」のなかで「人の皮」と呼ばれる段階の知性体として。そして、理解することのかなわぬ宇宙モラル・コードの守護のため、第三の道を歩むため働くことを決意していた。プシオンの刷り込み〈賛意の刻印〉を伝授され、彼女は網を歩む者となった。
----エイレーネが網歩技術の訓練に励んでいるころ、ドリフェル内部では異常な活動が進行していた。「孵卵器」と化したドリフェルが、5万年前から用意していた何かを孵そうとしているのだ。だが、いったい何を?そして....悪意を秘めた偶然により、ドリフェル内空間へといたる「門」を監視するステーションへとエイレーネが跳躍したまさにその瞬間、ドリフェルは異形の物体を生み出した。後に〈クロッツ〉----血塊、丸太、あるいは障害----と呼ばれることになるその異物体は、この空間にとって異質なもの。〈クロッツ〉の超強力なプシオン放射は周囲のプシオン網を歪め....エイレーネは歩んでいた優先索からはじきとばされる。網を歩む者たちの必死の捜索にもかかわらず、彼女は発見されなかった。

ドクロエドは永遠の戦士の宿敵たるゴリム=網を歩む者のひとりをとらえたことに満足せず、その秘密を聞き出そうと日夜尋問をつづける。しかし相手の沈黙に業を煮やし、イジャルコルの本星ジオン星系ゾムへの送検を決定。パイリアルのプシ技術すべてが休止する「宴」の終わった翌日に、と。
ドリフェル・ステーションのモニターから娘の転落した網索を発見したローダンは、そのシュプールをたどり、ゾム・ウサド、そしてパイリアルへとたどりついた。ゾム人秘密警察に逮捕されたかれを、地下組織ハジャシ・アマニが救う。そして、ハジャシのリーダー、ガフロン人ゴルグドの協力によって、「宴」の隙をついてのエイレーネ奪還も成功した。

ところが、ふたりの精神に刻印されたプシオン・インプリントが紋章の門のエンジニア種族ナックに感知されていた。受け入れステーションで待ちうけていたゾム人警察にローダン父娘はとらえられてしまう。
トペラズの収容所でふたりは、ラオ=シン族のシアコンと称するカルタン人に瓜ふたつの男と出会う。かれはなぜかふたりに好意的で、かねてから自分用に準備していた脱走路を提供してくれる。疑念を感じつつもローダンらはシアコンのお膳立てにしたがい収容所を脱出。とちゅう助法官に追われ、正体不明の製品を製造する工場へと逃走する。エイレーネとの交感現象から夫と娘の所在を知ったゲジルの通報----駆けつけたイホ・トロトの船が間一髪父娘を救出した。
----そのころ、収容所ではひとり残ったシアコンが隠し持つコンピューター相手に独白をつづけていた。かれの本名はクシア・キュ・キョン、カルタン人のスパイ....。

レジナルド・ブルは網を歩む者となることを拒んだ。目的を同じくしつつも自由なヴィーロノートでいることを望んだのだ。かれはエスタルトゥ全域に拡散したヴィールス船を統合しつつ、アプザンタ=ゴムで目撃されたというカルタン船のシュプールを追っていた。惑星ムアントクでの情報収集、ついでエルファドでの誤解にもとづく紛争を経て《エクスプローラー》は自由惑星ボンファイアに到着。そこで謎の種族ラオ=シンについてローダンと情報交換をする予定だった。
ところが、旧交のあるボンファイアの地下組織から、ローダンが新設のゴリム・ハンター組織〈五階梯の館〉ことハトゥアタノの手に落ちたと教えられる。後手にまわったブルたちは、ハトゥアタノの船がまもなくボンファイアを発つことを知った。
一方囚われの身のローダンは、ハトゥアタノ幹部のひとり、奇蹟のエンジニア種族ナックのファラガと出会う。なぜプシオン技師族がハンター組織に? そのとき、《エクスプローラー》の奇襲をうけた衝撃で、ファラガは「この空間」での五感をおぎなう視覚・音声マスクを取り落とし、パニックに陥った。ローダンが仮面を拾い手渡したとき、ナックはトランス状態で意味不明の言葉をもらす。
「メーコラーのなかにしか生はない。縮みゆくタルカンには死のみが潜むのだから」
ローダン救出に成功したブルは、親友と別れたあとで今度はグッキーからの連絡をうける。アプザンタ=ゴム北部の惑星チャヌカーに、ラオ=シンの秘密基地があるというのだ....。

ふたりは、まもなく到着したグッキーによって解放される。ラオ=シンは追ってこない。かれらの秘密帝国の正体をつかんだブルたちを放置するのか? それはどうやら、何らかの理由でパラタウの使用が厳しく制限されているためらしい。
----グッキーはある微弱なインパルスを受信した。それは、エデンIIへ出発後、消息不明のエルンスト・エラートからのものであった。「憎悪すべきヴィールスの肉体からついに解放された。いつの日か諸君のもとへもどる」グッキーが去ると、ブルはエスタルトゥにカルタン人が存在することを故郷へ知らせるべく、報告艦として《アヴィグノン》をファチィにまかせ、ソト支配下の銀河系へと派遣。そして自身は「フーバイ」の名のみ判明したラオ=シンの本星をもとめ出発した。

アラスカ、それにカリュブディスのシレーヌによって記憶を奪われたと称する正体不明のヒューマノイドふたりを含む数人の男たちをひきつれ、ライニシュは暗黒の天空奥深く侵入する。そこにある惑星マジュスンタでは、プテル人たちが極秘の研究をおこなっていた。かれらはそこを強襲したのだ。
「予言する植物」、ライニシュはそう言った。かれの権力への道を約束するもの。アラスカは、唯一強奪に成功した一株の植物の表皮に、見知った顔をみつけた。16年前、暗黒の天空で行方不明になっていたジェニファー・サイロン、デメテル、それに、3名のシガ人! かれらはその植物に融合させられていたのだ。
しかし融合植物はファラガの手で、ポジション不明のハトゥアタノ本星タロズへと移送されてしまう。アラスカは、エイレーネとの約束を思い出した。彼女の兄ロワの運命を解き明かす....。そのかれにライニシュが言う。わしは近くトロフェノールのある惑星で開催される、カリュドーンの狩りに参加する。その気があるならおまえも随行に加えてやるが? そしてかれの見せた、狙う獲物の写真は----ロナルド・テケナーとロワ・ダントンではないか!

だが、それは罠だったのだ。恒星の近くに達したとき、ヴィーロノートたちはグメ・シュジャーのこぶしが巨大化するように近づくのを見た。まるで《アヴィグノン》を握りつぶすかのように----。
気がつくと、《アヴィグノン》は大破しつつも銀河系の内部にあった。それはまさに奇蹟。かれらはゴルディアスの結び目唯一の関門に墜落したのだ。本来ソトの船にしか開かれない出入口に。
ファチィはGOIの存在する確率の高いイーストサイドへ針路をとる。ソトに対抗する力をもつのはブルー人の国家しかない。スティギアの網をぬけて飛行する途上、かれらはソトの大艦隊を探知する。ソトがイーストサイドへの攻勢を準備しているのだ。だが、まもなく一行はスティギアの網を許可なく使用したとして、フレシュ・トファール185に拿捕されてしまう。
ウィンダジ・クティシャによる激しい拷問がつづく。ヴィーロノートたちは知るはずもないGOI拠点のデータをもとめられ、つぎつぎと息絶えていく。座して死を待つよりは、と生き残った13名は脱走を敢行。むなしくロボット部隊に鎮圧されんとしたそのとき、偶然近くを航行中に救難信号を受信したGOIの高速船《リングワールド》が駆けつける。ファチィらは、捨て身の作戦で武器庫に点火し、炎上する宇宙要塞から、間一髪救出されたのだった。

かれはクラーク・フリッパーでGOIの秘密の数々を見る。パラタウの力でエスパーになるパラテンソールたち。新開発の秘密兵器ストリクター。くわえて、エネルプシ駆動への改装を拒んだ《バジス》がガルブレイス・デイトン指揮下、433年に銀河系から失踪したという事実も知らされる。
だが、肝心のエスタルトゥのカルタン人についての報告はティフラーたちには歓迎されず、テラのアダムスのもとへ行くよう勧められる。
GOIの秘密の同盟者、パラタウ闇商人のスプリンガー、エイハブ船長ことモセク・バン・オスファーの船でイーストサイド経由テラへむかう。途上、フアタ・ジェシの臨検を撃退したおり、ファチィはエイハブ船長の正体を知る。死んだはずのストーカー!
エイハブ=ストーカーの密輸する大量のパラタウはGOIの次の大作戦のための準備なのだという。
ヴィーロノートたちは無事テラへ到着するが、かれらの報告はここでもじゅうぶんな評価をえられなかった。しかしそのかわり、三角座銀河ピンホイールでカルタン人の秘密を追うニッキー・フリッケルのピンホイール情報グループ、PIGに参加するよう要請をうけ、ファチィたちはそれを了承する。
いまやテラはスティギアンの本拠地。さらにその中枢、ウパニシャド地区にある〈ソトム〉への潜入作戦のため、さまざまな経路でパラテンソールたちがテラへ集合しつつあった。そして、「裏切り者のパニシュ」と呼ばれ指名手配されている、ジュリアン・ティフラーとニア・セレグリスが。

ところが、ふたりを助けた謎の老人がいるのだ。ペレグリンと名乗るこの老人は、神出鬼没の活躍で潜入チームの正体が露顕するのを防いでいる。
ソトの不在をついてソトム潜入に成功した一行は、自動機械の障壁を排除してスティギアンの生体コンピューターに到達する。だが、ソトの船から発せられるインパルスなしにアクセスすれば、ソトムの自爆装置を作動させてしまうのだ。
そのころ、スティギアンは銀河中央ブラックホールをめぐるステーションにあった。5名のナックがそこからゴルディアスの結び目とスティギアの網を制御しているのだ。何者かがソトムに潜入したという情報をうけたかれは、急ぎテラへむかう。
ソトムにほど近いウパニシャド・チョモランマでは潜入していたパラテンソールが正体を看破され、パニシュの尋問をうけていた。彼女が独房にもどされたとき、狭い牢のすみに小さな箱がひとつ。ふたを開くと、そこにあったのは----パラタウ!
ソトの船《ゴムスター》がテラの周回軌道に入った。生体コンピューターのブロックがはずれる。その瞬間ティフラーたちはすべてのデータを読みだし、結果として生体脳を崩壊させた。
ソトの着陸より先にソトムを脱出しなければ----しかし侵入者を察知したパニシュたちは、シャド軍団を派遣していた。その囲みを突破するのは不可能....。そのとき、ティフたちの前に出現したのはティンタ・ラエフ、ウパニシャド潜入以後連絡のとだえていたパラテンソールだった。ティンタは〈運動速度可変能力者〉。その力でコマンドは包囲網をすりぬけ、間一髪脱出に成功。だがラエフ自身はパラタウ過充電により、「脳が焼き切れ」生命を落とす。
ひそかにテラをはなれる途上、ティフは考えた。この情報によってスティギアンのイーストサイド攻撃の詳細が判明するだろう。しかし、われわれを助けた謎の老人ペレグリンとは何者? このラテン語は「放浪者」を意味する。すなわち....ワンダラー!?
----ソトムへ帰還したスティギアンの目に、本拠地での敗北を悔やむ色はなかった。GOIは、あのデータから決してかれの「究極の最終兵器」が何なのか知ることはできない。そして、それを防ぐ手段はないのだ....。

PIGは十数年の活動から、カルタン人がフォルナクス系から多量のパラタウを積み出し、銀河間空間でウムバリ級多段船に積みかえておとめ座銀河団の方角へと消えることまではつかんでいた。いまファチィの報告で、その目標がエスタルトゥのアプザンタ=ゴムであることが判明したのだ。
さらにカルタン人はこの十数年、版図を縮小しつづけている。炉座銀河がパラタウの産出地であることを知ったマーカーとの係争でも、戦わずして領土を空け渡しているのだ。
そしてPIGはついにカルタン人のパラタウ・キャッチャーの1隻を捕獲。捕虜のひとりが叫ぶ。
「メーコラーは広い。そしてアルドゥスタールはわれらの故郷として狭くなりすぎた。だから出ていくのだ。サヤーロンの光なぞ、ロウソク同然、それに対して....」それ以上は聞き出せなかった。しかし、メーコラーとは「宇宙」、アルドゥスタールとは「ピンホイール」また、サヤーロンとは「銀河系」であることは確か。
そして、わかったのは....近くエスタルトゥ・コロニーのプロテクター、ダオ・リンが帰郷すること。

ダオ・リンを迎えたのは、同胞ではなくPIGの艦隊だった。彼女の船《ザナー》は捕獲されるが、ダオ・リン自身は〈声〉の命令で艦を脱出していた。
取り逃がしたダオ・リン捜索のつづくなか、テフローダー女性のパラテンソール、ポエル・アルコーンはひとつの声をつかんだ。そのアルドゥスタールの声とは、カルタン人超エスパー18人のサークル〈伝承者たち〉のテレパシー。死の床にある構成員の後継としてダオ・リンを必要としたのだ。かれらは「カルタン人の真の歴史」を護っているという....。




謎の巨人クロッツ。それを形成する物質があまりに均質であることから、出現の直後から「人工物では」との疑いがもたれていた。ところが、この半年の調査から、もうひとつの事実が明らかになったのだ。
ストレンジネスとは、素粒子の状態をあらわす物理的数値。クロッツのそれは、この宇宙のものではない。強力なプシ放射も、異なるストレンジネスがこの宇宙に適応する過程の余波。この物体は、異宇宙からやってきたのだ!
----そのころ、暗闇のなかでひとつの生命が目をさましていた。フアカガチュア。放浪する植物コマンザタラの妹!ワリンジャーはこの十数年開発にいそしんできた宇宙間駆動〈ベクトル化グリゴロフ・プロジェクター〉を装備したゾンデを射出する。それらはクロッツの発祥宇宙へと達するはず。ところが、そのすべてがストレンジネスの嵐の中で消息を絶ってしまう。「過去とは、救いをもとめる探索に等しい。過去とは生存競争。過去とはタルカン。
現在とは、救いをもとめる探索の継続。現在とは異質なもの。
未来とは、暗闇。コマンザタラなしでは。タルカンなしでは....」
ダニエルは救出行動の際クロッツ内部へと転落。異物体の内部には、しかしバリアがはられ、その内側には呼吸可能な大気が満たされていた。そして、遭難した網を歩む者のひとりは、そこで知性のある植物を発見していた。フアカガチュアを!
ダニエル一行の帰還と並行して、ゾンデから幾枚かの写真が電送されてきた。異宇宙からではなくクロッツの内部から----写真の1枚にワリンジャーは奇妙なものをみつける。ブーツとキュウリ。そして、ブーツに刻印された「メイド・オン・テラ」の文字!

オルフェウス迷宮を抜けるカリュドーンの狩り。力の球形体全域から参加を望む者がやってくる。その獲物が形態発生フィールドによって姿を変えられた知性体とだれが知ろう----446年3月15日、ヤグツァンでカリュドーンの狩りが開かれる。
アラスカから連絡をうけたローダンは、ワリンジャー開発の迷宮撹乱装置をたずさえてメタン惑星へ。そこでかれは、迷宮の門がジオン・ゾムのトペラズで製造されていた謎の物体であることにに気づく。
ローダンが、そして狩人としてデソト=フェト・レブリアンとスリマフォが、ライニシュの随行としてアラスカが、蓋然性の迷宮へ足を踏み入れる。4人はひそかに連絡をとりあい、ふたりの虜囚を獲物とつけ狙うライニシュの裏をかいてロワとテケナーを救出することに成功する。しかも、アラスカはライニシュから五階悌の館の本星のポジションを入手していた。
そして、ひとつの謎----アラスカとともにライニシュの随行をつとめ、迷宮の闘いで死亡した記憶喪失者ふたり。形態発生フィールド圏外に運び出された遺体を見たローダンが思わず叫んだ。「M−87のオケフェノケース!」 ハルト人の故郷銀河を統治する〈中枢部の設計者〉たちが、このエスタルトゥで何をしていた?

ひとりドリフェル・カプセル《ナル》でプシオン情報量子に満ちたドリフェルへ突入するアトラン。ところが、突入直後にエイレーネの密航が発覚。しかも、その瞬間、カプセルはプシクスの奔流に呑まれて制御を失い、コスモヌクレオチドの用意する潜在的未来----蓋然性の世界へと墜落してしまう。
そこはパイリアル....永遠の戦士の帝国の全権を掌握したイジャルコルが、網を歩む者たちを滅ぼしたことをエスタルトゥの諸族に報じていた。だが、そのために果てしなく繰りかえされたドリフェル操作がプシの嵐をまき起こし、その猛威の前に“この”宇宙は破滅の縁にあった。ふたりもこの嵐に引きこまれようとしたとき、エイレーネがやにわに叫んだ。
「シ・キトゥ、シ・キトゥ、シ・キトゥ!」それは彼女の父ローダンが、かつて崩壊しつつある深淵の地で出会った「エントロピーの母」の名....。
気がつくと、ふたりは新たな世界にあった。コスモクラートの呪いがアトランの帰還を妨げているはずの故郷、局所銀河団の一角。そこに、見も知らぬ島宇宙が存在しているのだ。シ・キトゥの下僕トゥミカと称する男に導かれ、ふたりはその銀河の一惑星に着陸する。大気をもたぬ惑星には孤独なステーション。トゥミカはふたりにそのバリアを解除するよう要請する。
ステーションへ忍びこんだアトランたちは、そこに活動する者がカルタン人であることを知る。そして、トゥミカがバリア・ジェネレーターと教えた装置が実はステーションの生命維持機器であることを。シ・キトゥはふたりに大殺戮を犯させようというのか? そのとき、またもエイレーネが、
「カハバ、カハバ、カハバ----!」カハバ----娼婦。シ・キトゥの異名。アトランが我に帰った時、《ナル》は通常宇宙に帰還していた。
アトランの不安----ドリフェルの蓄える恐怖のヴィジョンは真実の未来なのか? シ・キトゥの目的は何? そして、コスモヌクレオチドのなかで発現したエイレーネの力は?

権謀術数を弄する戦士たちの会合は議長選出から波瀾を生んだ。すでに開催地決定で後れをとったエレンデュラのカルマーらがイジャルコルと対立する。だが、イジャルコルはハトゥアタノを共同設立した両アプザンタの永遠の戦士グラニュカルとアヤンネー、それに迷宮の門の建造をジオン・ゾムに依存するトロフェノールのヤルーンを味方につけ、議長の座についた。
噂についてはイジャルコル以外全員の見解が一致していた。かれらは惑星エトゥスタルでのできごとを記憶していない。それに対して、かの地を最近訪れたイジャルコルはおぼえていると主張する。ならば、イジャルコルがもう一度力の球形体の心臓へおもむき、超知性体健在の証を持ち帰るべきではないか?
ここで会合は第一の中断を余儀なくされる。オルフェウス迷宮を自力で----ローダンたちがそう偽装した----脱出した元パーミット所持者が、戦士の法典にしたがい幽閉者イジャルコルのもとへ恩赦を乞いにあらわれたのだ。ロワとテケナーは別室でイジャルコルと対面。そのときふたりは、イジャルコルもまたエトゥスタル訪問の記憶を有しておらぬことを知る。
結局イジャルコルも再度のエトゥスタル行きを認めざるをえない。しかも、かれの不在中に開催される生命の競技が、マルダカーンではなくここゾムで、それもたったいまかれが〈ジオン・ゾムの自由人〉に列した元パーミット所持者の主催で執り行われるのだ!
審議は再度、不意に中断される。議場に突如、12名の付人プテル人が出現したのだ。かれらはエトゥスタルから来た。そして、発言者スロルグは言う。超知性体の存在を疑うなどという冒涜者たちに力の球形体をまかせてはおけぬ。これより永遠の戦士各々に、われら付人が随行する、と。イジャルコルの付人はわれスロルグ。かれはエトゥスタルで超知性体健在の確かな証明を手に入れるだろう....。
会合の最後に、ペリュフォールが質問に答えた。
「わたしはソト・ティグ・イアンに、できうるかぎりの〈ムウンの失われたヘスペリデスの贈り物〉をひきつれて銀河系へ来い、との栄えある命令をうけたのだ」

おれは元USOスペシャリスト、ラトバー・トスタン。600年をコールドスリープですごし、宇宙ハンザ同盟の《ツナミ》型艦の艦長になった。そして、430年に〈ベクトル化グリゴロフ・プロジェクター〉を備えた新式メタグラヴ艦のテスト飛行に出発し....事故にあったのだ。
それ以上の記憶は戻ってこなかった。コントラ=コンピューター・インタープリターである同僚スヴォーンのポジィ・ポースとともに、トスタンは付近の偵察をはじめる。どうやら、巨大な宇宙船のなかにいるらしい。それも、とてつもなく巨大な。
いくつもの種族からなる船の住人たちのあいだで、なにやら紛争が起こっていた。食料を奪いあっているのか。マモシツと名のる二足歩行の魚類に似た種族と友好を結んだトスタンは、かれらも記憶の欠落に苦しんでいることを知る。「ストレンジネス・ショック」不意にその言葉が脳裏に浮かんだ。それが何を意味するのかはわからない。しかし、確かなのは、それがかれらの記憶喪失に関係しているということ。
巨船の周囲はプシ撹乱波で覆われ、ハイパー波は通過できない。マモシツの通信センターを借りたふたりは通常波で救難信号を発する。はたしてこの通信を耳にするものはいるのか。救いはあるのか....。
----救難信号は網歩船の1隻に受信され、サブハルのワリンジャーへ回送された。15年の空白の後に、ラトバー・トスタンが連絡してきた。それもクロッツのなかから....!

16年前からテルツロックにいる深淵の地生まれのハルト人ドモ・ソクラトは、僚友ベンク・モンツとともに隔離シールド脱出を計画。ストーカーの墓所にあるスティギアンの施設へむかう。バリア衛星への道が隠されているとすれば、そこ以外ない。
ステーションに侵入したソクラトらは、いつのまにか何者かの暗示下に置かれていた。声に導かれ、ふたりは未知への転送機をくぐった....。
おなじころ、生きていたストーカー=エイハブ船長の《オスファーI》も、かつてのシャン救出のためビック・プラネットをめざしていた。
ストーカーはブルー人ティルツォとともにバリア衛星に接近。このパラテンソールはプシオン網経由の透視・盗聴の能力ディアパシーをもっているのだ----そして、ティルツォはひとつの「声」を「聞いた」。
「メーコラーのなかにしか生はない。縮みゆくタルカンには死のみが潜むのだから」スティギアンが銀河系へ連れてきた5人のナックのひとり、アルフラル! かつてのソトは、しばし熟考した後、ティルツォにこう答えさせる。
「ゆえに、われらに生を選ばせたまえ」すると----ナックが語りかけてきたではないか。きみたちの望みは何だ? ストーカーはアルフラルの問題を正しく理解し、かれを友としたのだ。
ソクラトとモンツは、バリア衛星のなかでわれに返った。ふたりのまえにいたのは、衛星施設と融合した老ハルト人。かれは、バリア衛星への到達に成功した唯一の存在。だが、かれはここに囚われて急激に老いていった。ここまでふたりを導いたのはかれ。同族ふたりを助け、老人は息絶えた。そして、ソクラトたちはアルフラルの先導でストーカーと合流する。
救出作戦ののちGOIと合流したストーカーは、かねてよりの疑問をティフラーにぶつけた。かれの調達するパラタウの大半は、パラテンソール用に備蓄されずに、GOIの謎の同盟者〈ビッグ・ブラザー〉のもとへ輸送されているらしい----いったい何者? 〈それ〉? あるいは、ローダンが帰還したのか?
ティフラーはうっすらと微笑んだだけだった。

それはすべて、GOIとハルト人共同の大作戦の序章だった。ソトム潜入にも参加したパラテンソール、シド・エイヴァリットとエルサンド・グレルが惑星ハルトに到着。スティギアンの強襲を待ちうける。
ハルトに潜入したヒュゴラシュ----ソトの生体サイボーグは、迎撃の準備をすすめるハルト人のなかにまぎれこむことに成功していた。かれの外見はハルト人そのもの。GOIのパラテンソールにはあやうく正体を看破されるところだったが、伝説的なハルト人型ロボット〈パラディン〉と主張することでのりきった。
襲来するソトの衛士艦隊。アコンのウパニシャド卒業生バス=テトのハルコンに率いられた軍団は、太古の戦士種族ハルト人の猛攻に直面する。しかも、はじめて実戦に投入された抗法典分子血清アンティマコスにより、本来の自分をとりもどした衛士たちはつぎつぎと投降。ハルト人の反乱は成功した。

そして、今回もまた。GOIも、シドも、知らなかったのだ。ヒュゴラシュにプシオン網を操作する力があることを。移送班はフレシュ・トファール703のウィンダジ・クティシャのもとに捕らえられてしまう。
ところが、ソトも予想しなかった事態が生じていた。ヒュゴラシュが自我をとりもどしつつあったのだ。かれは、暗黒の天空の一惑星で生まれた。そして、プテル人の遺伝子操作によりいまの形となった。かれは故郷への想い----郷愁にとらわれていた。
ヒュゴラシュ=パラディンVIと、そして再びあらわれた謎の老人ペレグリンのもたらしたパラタウの力で、シドたちは宇宙要塞の機能を麻痺させることに成功。パラタウはエスタルトゥのプシ技術に対する最高の兵器なのだ。GOIの闘士たちは、混沌のうちにフレシュ・トファールを脱出。初めてエネルプシ船を持ち帰った英雄としてクラーク・フリッパーに凱旋する。
----平穏をとりもどしたハルトで、ひとりの男が本来の自分をとりもどしつつあった。バス=テトのハルコン。かれがウパニシャドに入ったのは、行方不明の妹を捜す力を身につけるためだった。彼女の名は、イルーナ....。

その司令官ガルブレイス・デイトンは、この十数年のあいだ銀河各地をひそかに経めぐり、科学者たちを拾い集めて、ソト勢力の有するエスタルトゥ・ハイ=テクへの対抗手段を開発せんと努力していたのだ。現在ではプシ走査器、ストリクターなどの新式装置がここからGOIへ供給されている。
だが、シドをもっとも驚かせたのは、《バジス》艦内に、あのペレグリンがいたことであった。謎の老人はバジス・チームの一員だったのか? だが、ペレグリンはかの老人と自分が別人であると主張し、またデイトンも、ソトム、フレシュ・トファール703での事件のおり、ペレグリンが艦内にいたことを保証した。
それでもシドの疑念は残った。ソトム作戦とおなじころ----そして、ティンタ・ラエフの独房に無からパラタウが出現したころ----《バジス》では犯人の知れぬパラタウ盗難事件が起きていたのだ。
そして、シドの心の決まるより先に答えはしめされた。ペレグリンが消えたのだ。かれの残したものは、ひとつのデータ・パックと、数式と図面の書かれた一冊のノート。再生画面にあらわれたかれは言う。
「エネルプシ駆動は人類と友邦には必要のないもの。だが、目前の脅威をのぞくためには、敵の秘密を知らずばなるまい」かれはエネルプシ駆動の技術ディテールのすべてをノートに記していた。驚くべきは、これまであった捕獲エネルプシ船消失は、すべてかれ、人類の導師たる〈それ〉のしわざだったという。なぜ?
疑問を口にする間もなく、《バジス》艦内にエスタルトゥからの大艦隊襲来を告げる警報が響きわたる。ペリュフォールが来た!

ビッグ・ブラザー部隊はペリュフォール艦隊を待ちうける。ゴルディアスの結び目へいたるためにはどうしても通過せねばならない宙域に、ストリクターを投入するのだ。
ストリクター----プシオン網狭窄装置。その稼働範囲ではプシオン網索の間隔は徐々に狭められ、ついには「閉じて」しまう。エネルプシ駆動の船は閉鎖点で航行不能となり、通常空間へはじき出されるのだ。
そして、解放戦線の探知器は永遠の戦士の艦隊をとらえた。コマンドが準備され、次々と配置につく。かれらは皆アンティマコス・ガスのタンクを装備している。法典分子影響下にあるペリュフォール艦隊の成員たちを、ハルトでのように無力化するのである。
そのとき、探知士が奇妙なものを発見した。艦隊のはるか後方を超光速で航行している一群の物体----ストリクターの有効圏外をつきすすんでいくそれこそはヘスペリデスの贈り物。ムウンの奇蹟は、独自の航行機関をもっているのだ!
だが、《バジス》はすでにペリュフォール艦隊を捕捉していた。いま贈り物に割く戦力はない。かれらは予定どおり反法典分子ガスで艦隊を無力化、唯一抵抗力をもつ永遠の戦士と付人を排除した。永遠不滅の生命をもち、無敵と謳われた永遠の戦士のひとりを倒したのだ!----だが、包囲網を逃れた贈り物の群れはプシオン網をぬけてイーストサイドめがけ突進していく。はたして、いかなる災厄を秘めているのか....?

----ハルト人の反乱が銀河全域を興奮させていたころ、ピンホイールでも緊張が高まりつつあった。カルタン人最大の秘密、伝承者氏族の存在を知ったギャラクティカーは、このままではすまされない....。PIGの極秘拠点、アンドルヤ星系カバライは砂漠の惑星。およそ400年前にカルタン人とマークスの末裔マーカーとのあいだでくりひろげられた「毒吸い」戦争の舞台となったところ。現在でも惑星の随所に幾多の残骸が横たわっている。
そのカバライに突如マーカーの一艦隊が出現した。どうやら過去の大戦の遺産を回収しにきたらしい。だが、カルタン人の旧基地惑星におけるマーカーの作戦行動を、猫族が黙って見ているはずがない。なかんずく、司令官メレーク1は大工場の建設を開始した。おそらく、銀河系の次にはアンドロメダ、それともピンホイール侵略に手を染めるだろうソトへの対抗兵器製造のため。カルタン人はすべてを知って黙認しているのか。背後で糸をひくのは伝承者たち。彼女たちは、PIGの本拠の座標まで知っていたのだ。
さらに、カルタン人の艦隊の出現により、PIGは隠れみのを捨てざるを得なくなる。カルタン人を迎撃し、マーカーと不可侵条約を結んだニッキーは、事態を銀河系へ報告させるためファチィを派遣し、自らは旗艦《ヴァゲイオ》で伝承者のシュプールを追う。

偶然をよそおってPIGと遭遇した伝承者の船《アルドゥスタール》。追跡は辺境の惑星ニュレロへとつづく。そこで、替え玉たちの監視の任をうけた新伝承者ダオ・リンが待機しているのだ。「殺人」の苦悩をかかえて。
“伝承者たち”の、パラタウ爆燃による狂気の自殺。だが、ポエルが気づく。あの船には18人の「老人」しかいなかった。ではダオ・リンはどこに? ニュレロの、うち捨てられたカルタン人の廃都市のなか、ダオ・リン狩りがはじまる。そして、死んだ替え玉のなかに自分の恩師がいたことを知ったダオ・リンは、伝承者たちのテレパーに心を閉ざし、追うニッキーを待っていた----テラナーたちは知らない。ダオ・リンを手中にした瞬間から、追う者が一転して追われる者になることを....。




----幼いころ、才能を認められ辺境からマルダカーン最大の学校に入学したかれは、恩師の死とともに後継者争いに巻きこまれ母校を追われた。放浪の途上アラスカに生命を救われたシーンは、旅のなか疑惑をいだいた戦士の体制を打破するため、網を歩む者のひとりとなってマルダカーンへもどった....。かれの今回の作戦は、特殊な歌唱法を教え込んだ弟子たちを生命の競技のメイン・コーラスに送りこむこと。オファル人の歌は、競技者の精神に作用し、仮想の世界での競技を現実のものと信じさせる効果をもつ。そこに、もうひとつの要素を植えこむのだ。
オファル人動員のため例年ここマルダカーンで行われてきた生命の競技が、今年は特別にイジャルコルの本星ゾムで開かれるという。再度のエトゥスタル行きに出発したイジャルコルの「名誉を讃えるため」に。戦士体制に一大打撃をあたえる好機。
かつての学友にして、かれの放逐の因ともなったカレング・プロー。母校勢力を率いる仇敵の放ったスパイの妨害を切り抜け、サラーム・シーンの学校ナムビク・アラ・ヴァダはメイン・コーラスの要所を占めることとなった。競技を動かすおよそ130万のオファル人のなかで。

そのひとりは、イェン・サリク。追放の深淵の騎士のひとり。16年前、〈旧友〉アラスカは騎士のオーラを解放せんとしたが、果たせなかった。当時はアラスカ自身、網を歩む者たちの行動の限界を知らされていなかったのだ----プシオン優先索を渡って深淵の騎士団の聖堂惑星クラトへ行き、そこでオーラ除去の方策を手にいれるつもりだったのだが。だが、クラトのある銀河ノルガン・テュアは個人跳躍やエネルプシ駆動の有効圏たる5000万光年の球のはるか外。そして、いまサリクはメタグラヴ駆動を備えたみずからの船で聖堂惑星への途につかんとしていた。目的地に着くまで数ヵ月はかかる。しかも、コスモクラートの呪いを解く手段がみつかるという保証はないのだ。
もうひとりは、イホ・トロト。目標はM−87。やはり16年前、かれはハルト人の故郷たる球状銀河へ個人跳躍を試みた----力の球形体エスタルトゥからM−87まで、わずか数百万光年。あるいは、異銀河制圧サイボーグたるソトが、そこへも派遣されているかもしれない、と。だが、中枢部の設計者たちの銀河からは優先索が除かれ、巨大な無風ゾーンと化していたのだ。加えて、ヤグツァンで発見されたオケフェノケース。トロトの不安はいやますばかりだった。
3人目は、アラスカ・シェーデレーア。かれはヤグツァンのオルフェウス迷宮で、ライニシュから五階梯の館の本星タロズの座標を入手していた。そこには、ファラガの手で運び去られた融合植物、その一部となったジェニファー、デメテルたちがいる。アラスカはひとりその救出にむかうつもりだった。
だが、そのかれの心を悩ますことがあった。600年来の共生パートナー、今は自由なプロジェクション存在となったテスターレが行方をくらませていたのだ。

そのファラガに迎えられたアラスカは、ナックが必ずしもライニシュの命にしたがっているわけではないと知る。ファラガはかれを極秘の実験に誘い、融合植物との接触を試みた。実験は失敗。しかしアラスカはジェニファーに自分を認識させることに成功した。
アラスカに少し遅れてタロズに帰還したライニシュも融合植物とのコンタクトを望んだ。ジオン・ゾムの自由人として生命の競技の準備を進めるゴリム、すなわちロワとテケナー失脚の方策をもとめて。
その時、暴走したマジュスンタの植物は予言する。
「事態の御者は〈網を歩む者〉が創設された同じころ、おのが精神財を広めた者」肉体なき者たち----テスターレのことだろうか? アラスカは思った。では、もうひとりとは?「網を歩む者たちに未来はない! そのすべての道が袋小路」
「アプザンタ=ゴムの〈災いを告げる蜉蝣〉が反乱を起こす」
「権力の命数は尽き、鼎の軽重を問われて帝国は分割される」
「その成し手は、仮の宿より来たる軍団。戦場では敵だが、ともに宇宙的破局にいたる業をなす」
「蜉蝣たちは災いを告げる----だがそれに気づくのはふたりの肉体なき者のみ」
やがて鎮まった植物は、ライニシュの問いに答える。生命の競技を妨害するには、130万のオファル人のうち30万をふたつの惑星に分断してしまえばよい、と。その言葉が、先刻の実験中ジェニファーと接触したアラスカの罠とも知らず、ライニシュはナックを連れて出発する。
刻一刻と衰えていく融合植物をアラスカに託したファラガは、時限装置によって栽培カプセルを射出した。アラスカは、瀕死の植物をイルミナ・コチストワに引き渡す。植物とジェニファーたちを分離できるのは彼女だけだ。
アラスカは、タロズ滞在中に入手した、ファラガの“日記”をひもとく。
----ナックは異質な空間に恐怖している。かれらは5万年前の破局の犠牲者。過去の謎と、自分たちの起源と意味を模索しているのだ。日記はさらに、ドリフェルの変調が著しいこと、〈災いを告げる蜉蝣〉がコントロールを逸脱しつつあることを記していた....。あるゴリム・ステーションに立ち寄ったアラスカは、かれに宛てたテスターレの報告をうけとる。
「エルンスト・エラートと、蜉蝣を調査中」

トスタンからの救難信号が受信されたのが4月23日。そして、今日は6月3日。救出体制が整うまでに1ヵ月を要した。510歳の老エルトルス人タファス・ロゾルが出発する----銀河を発つとき持ち出してきたトランスフォーム爆弾3発を、クロッツの強烈なプシ放射をもつらぬく信号弾として携えて。
そのころ、トスタンとポジィ・ポースは商人種族マモシツと仲違い、独自に巨艦からの脱出手段を探していた。かれらの《ツナミ−32》を発進させるためには、格納庫のハッチを開かなければならない。
途中でマモシツに隷属していた種族を解放、かれらの案内で艦内のデータ端末を発見する。スクリーンに、タファスの点火したトランスフォーム爆弾の描くLの字----USOの暗号で、「状況了解。援助困難。独力で脱出を」。トスタンは、救難信号を受信した“味方”の存在することを知る。
だが一方、クロッツの支配者が動き出していた。まず、トカゲに似た兵士がマモシツの一部を抹殺する。〈プロジェクト・コーディネイター〉が、かれらを計画から逸脱した不穏分子とみなした、というのだ。
トスタンはトカゲたちを“知って”いた----トラーヴ人。遺伝子操作で生み出された、支配者の警察種族。ストレンジネス・ショックによる記憶の空白期間に、トスタンはかれらと関わったことがある!
プロジェクト・コーディネイターが動きだした以上、長居は無用。格納庫ロックの解除ができぬとみたトスタンは、《ツナミ》で強引な脱出を試みる。
----クロッツの支配者プロジェクト・コーディネイターとは? トスタンとの関わりとは? 《ツナミ》が突破する寸前、巨艦から超大出力の送信が一度、未知の言語で発せられた。「ヴォ・クシング・バオ・アト・タルカン」

ファラガはライニシュの命で、パイリアルの門制御官を強いて輸送中のオファル人の一部を隔離、紋章の門のネットワークをブロックして島流しにした----ところが、事態は予想外の方向へ進む。権力欲に憑かれたアユスクシクサがライニシュも知らぬうちに薬物で門制御官を支配下におき、門の交通網を意のままにしようと謀ったのだ。しかし、薬物に冒されたナックはシステムの安定を保てず、テラナーの門は崩壊寸前の状態に陥る。
危機を未然に防いだのは、パニックに陥ったアユスクシクサでもライニシュでもなく、異常を察して高速艇で駆けつけたテケナーたちと、隔離されていたオファル人のプシの歌声であった。
門のブロックはライニシュ自身の動きをも封じ、事態は再びジオン・ゾムの自由人たちの手の内にもどる。しかし、執念をもやすライニシュはリニア駆動の艦艇でジオン星系へむかった。
生命の競技開催が目前にせまったある日、エトゥスタルへの旅からイジャルコルが帰還。力の球形体の住人すべてが見守るなか、真相をつげる。
「エスタルトゥはここにはもうおらぬ!」

「話しておくれ、小さなケラ。わたしの時間がより速く宇宙の血管を流れるように!」ゾムの月イジャルコルの虜囚、パイリアル人ジェオは、かつては反イジャルコル地下組織を率いていた。いま、囚われの身のかれの唯一の話相手は、正体不明の植物、ケラ=フア=ザタラ。ケラは過去を、現在を、そして未来の夢を物語る....。イジャルコルの発言はとてつもない興奮をひきおこした。だがそれは、イジャルコル本人の意図ではなく、エトゥスタルから連れもどった47名の付人プテル人の意向であるらしい。
生命の競技の日がくる。決して開催されることのない競技の日が。ライニシュが分断したオファルの歌手たちの間の距離など、何の支障もない。開会を祝う歌が数万光年をへだててはじまった----サラーム・シーンの作曲した、死のハーモニーが。数千光年をへだてた二群のオファル人によって生みだされ、紋章の門に、プシオン・テレポート網に共鳴した。まず、ゾムの王の門が反応する。大音響とともに崩壊するジオン・ゾム最大の紋章の門。その波がさらにパイリアルのテラナーの門に、ロムボクの英雄の門に、そして....ついにジオン・ゾムの奇蹟は存在することをやめた。紋章の門と大無風ゾーンはもはやない。網を歩む者たちの作戦は成功したのだ。
----ジェオは、ケラの夢のとおり、ふたりのゴリムに出会う。ジオン・ゾムの自由人として生命の競技の準備をすすめてきたゴリム。かれらはライニシュの部下の手を逃れ、衛星イジャルコルに隠した船で脱出しようというのだ。同行を勧められたジェオは断った。かれはもう疲れきった老人なのだ、と。紋章の門の崩壊により、ジオン・ゾムは大混乱に陥った。ペリュフォール死す、という噂を追いかけるように、不敗の戦士たちの神話が崩れおちる場面をまざまざと見せつけられたのだ。奇蹟の崩壊が生んだプシの嵐が小康状態をみたとき、エトゥスタルからやってきた付人たちの代表スロルグが声明を発する。
「永遠の戦士たちは失敗した。たった今から力の球形体の主人は、われらプテル人だ!」

ブルの《エクスプローラー》は、16年前ザートラ宙域で道を分かった《グレイ・スクワール》と再会していた。スヴェーゲン・ドルハムをリーダーとするこのヴィールス船は、炉座銀河からの報告を携えてきたのだ。エイハブ船長が、帰郷を望むヴィーロノートたちと銀河系ハローでおちあう用意をしている、と。会合点は、恒星ラトレイの惑星アスポルク。
9月17日、《グレイ・スクワール》と分かれたブルはプシオン網の結節点からグッキーの連絡を拾い出す。「9月10日から20日の期間に、惑星ピナフォールで会合したし」ネズミ=ビーバーは、謎に満ちたラオ=シンの本星フーバイのシュプールをつかんだというのだ!
ピナフォールに到着したブルは、しかし、そこにグッキーの姿を見出せなかった。しかも、ナフォール人の神官ザレクスはグラニュカルの工作員。進退きわまったブルに手掛りを与えたのは、ヴェクセルだった。「幻の毛皮生物」とはグッキーにちがいない。
シントロンは〈グラニュカルにのみ見ゆる場所〉が古代の神殿などではなく、この十数年のうちに墜落した宇宙船であると明らかにした。しかも、いまも何者かがプシのパワーで残骸を守っているのだ。
味方にしたナフォール人たちとともに残骸を捜索したブルは、大量のパラタウを発見する。パラトロン・バリアの制御なしで!----なぜ爆燃せずにいられるのだ? 細心の注意をはらい容器すべてを運び出した後で、ブルは超能力でパラタウを抑えていたラオ=シンふたりを発見する。
彼女たちはパラタウのプシ放射のため廃人となりはてながら、ただ残った本能だけで船を守護していたのだ----グッキーさえ、その呪縛下に置いて。
解放されたグッキーは、消息を絶った網を歩む者の捜索中にこの残骸をみつけたと語った。やがて、ネズミ=ビーバーは《グレイ・スクワール》の連絡にしたがいアスポルクへ、そしてブルは、難破船の本来の目標だった無名惑星をめざす。

エイハブ船長は闇商人、ソトのパラタウ管制官にとっては目の上のこぶ。今回もかれらの艦隊をまいて逃げてきたところ。アスポルクに着くやいなや、《オスファーI》船上にグッキーが出現する。ピナフォールから個人跳躍でやってきたばかり。ふたりが今後の連絡について討議をはじめようとしたそのとき、まいたはずのパラタウ管制官の艦隊がアスポルクに出現。麻痺フィールドにふたりはとらえられてしまう。
まもなく到着したウィンダジ・クティシャは、GOIの本拠の座標を聞きだそうと、激しい拷問を加える。ふたりが----特にグッキーが----消耗しきったとき、突如救いの手がのびた。
グァング・ダ・ガード----すべては、エイハブをGOIのエージェントと推測し、その信用を得るためにしくんだことだったのだ。
いまやギャラクティカーとのコンタクトを求めているカルタン人の代表とともにアスポルクを脱したエイハブ=ストーカーの船は、一路GOIの出撃拠点クラーク・フリッパーへ飛ぶ。

スティギアンの支配に屈したギャラクティカムのなかで、エスタルトゥの高度技術やウパニシャド導入をことのはじまりから頑固に拒みつづけたブルー人。いまや銀河解放の牙城であるかれらの支配宙域に、仇敵たるソトからの“贈り物”が....当初、断固として排除すると豪語したブルー人であったが、しかし、またたくうちに、永遠の戦士が誇る究極兵器の影響下に落ちてしまう。
惑星におりたった用途不明の装置たちは語りかける----わたしはあなたの役に立とう....。人々はその声を追いもとめ、殺し合いすら起きる。ブルー人すべてにゆきわたるだけの数はないのだ。
贈り物は、犠牲者をもとめて移動しながら、住人を感化していく。事態が落ち着いたとき、ブルー国家は完全にソトのもくろみのままに変貌していた。クロノフォシル・ガタス活性化によって励起された豊かな感受性は消え失せ、冷酷なまでの目的意識をもち、残忍なまでの決意をもって行動する----そして、かれらの現在の目的は、「スティギアンの排撃」。
まさにそれこそが、銀河系を〈永劫の闘争〉へ陥れるためのスティギアンの策略とも知らず、銀河評議会の席上、ブルー人代表プリュイトは宣言した。
「銀河系を没落させるスティギアンに対し、ギャラクティカムはただちに宣戦布告せよ。要求が入れられぬ場合、われらブルー人はギャラクティカムを脱退し、独力でソトを叩く」

ブルー人トリュリイトは元ハンザ・スペシャリスト。子供をもてないかれは、数十人の養子の面倒をみてい。た。だが、そのなかで贈り物に免疫をもっていたのはパドラーのタルナクだけ。あとの者たちは、ハンターと一緒になって養父を狩りだそうとしていた。
トリュリイトとタルナクは、地下にもぐった免疫者たちに合流。ティフラーとともに今後の対策を検討することになった。そこに、1体のヘスペリデスの贈り物があらわれたのだ。
何が起こったのか説明できるものはいまい----しかしそのとき、無敵とされる贈り物を撃退したのはタルナク以外の誰でもなかった。パドラー孤児とその玩具のミニ・プラットホームTA大巨人が、養父とティフラーたちを救ったのだ....。
ソトの艦隊は「銀河系の平和を乱すブルー人に鉄槌をくだす」ため銀河系ハローに集合をはじめた。ブルー族の艦艇はすでにイーストサイド各所で示威行動に入りつつある。そして、もうひとつの反乱種族ハルト人もそれに呼応するように動きだした。銀河はまさに、永劫の闘争の開幕をむかえようとしている....。
----そのころ、銀河系中枢部の一角クラーク・フリッパーでは、ガタスから帰還したティフラーの前で決定的な出会いがなされようとしていた。銀河系の奇蹟をあやつるナックのひとり、アルフラルが接触をもとめあらわれた。時をおなじくして到着したカルタン人グァング・ダ。ふたりの異質生命体は、出会ったその瞬間、互いを「兄弟」種族と確認しあったのだ!

ニュレロでダオ・リンを虜にしたのが6月30日。それ以来、もう3ヵ月以上《ヴァゲイオ》は逃走をつづけていた。PIGの基地惑星はおろか、星間ステーションへのわずかの寄港さえも許されず、行く先々にはカルタン人の艦隊が待ちうけている。伝承者たちは、ダオ・リンの所在を的確につかんでいるのだ。
一方、ニュレロの廃都に関する学術班の報告は、さらなる興奮をひきおこしていた。あの廃墟は5万年前のものだというのだ。5万年前----局所銀河団ではそのころ、ハルト人との戦争に敗北したレムール人=テフローダーのアンドロメダ移民に端を発する民族大移動が起きていた。あるいは、カルタン人の真の歴史というのも、当時のできごとに関係しているのかもしれない----だが、ダオ・リンは自分が伝承者たちの言う「最後の秘密」を知らされていないことを告白する。
ついに、カルタン人艦隊に包囲された《ヴァゲイオ》は大破炎上。乗員たちを投降させたニッキーは、ダオ・リン、ポエルほか数名とともにピンホイールの禁断ゾーン、ラクノル暗黒星雲へと逃げこむ。

500年前、公会議撤退に沸く銀河に帰還した分子変形能力者たちの一派に、ここM−33から来た者があった。そのひとりがクトゥル。ここはかれの語った、かつてピンホイールを支配したロボット王朝の屍....。
ロボットとの接触に成功したニッキーは、かれらが「六日間のロボット」と自称していることを知る。しかもかれらの話す言葉は、古カルタン語ではないか。かれらを創ったのはカルタン人だ!
ロボットは六日目のロボット、五日目、四日目....と日の逆行するほど高度かつ複雑になっていく。そして二日目のロボットのもとにたどりついた彼女たちは、ダオ・リンさえ知らぬ事実を知らされる。カルタン人は5万年前、1万年前と二度にわたりロボットたちの反逆に遭い、退行を余儀なくされていたのだ。
そして、自分たちの活動がロボットすべてに君臨する謎の力〈ゼロ〉を覚醒させたと知ったニッキーらはクトゥルIIを緊急脱出。GOIとの接触後友好に転じた伝承者の旗艦、全長90キロの《ナルガ・サント》----「故郷のかけら」の意----に収容される。




コルは詩人になりたかった。ところが、突然あらわれたアナムウン系の支配階級シングヴァのひとりシャルロルクがかれを暗黒の天空へといざない、エトゥスタルの「心臓」で、たったいまからかれがジオン・ゾムの支配者イジャル・コルだと告げた。
細胞シャワーの力で生きつづけた歳月。幾度となく疑問を抱いた。しかしそのたびに、権力を背後からあやつるシングヴァにマインドコントロールをほどこされていたのだ。エスタルトゥがここにはもうおらぬことを隠すため、シングヴァが真の支配者であることを隠すために----いまイジャルコルは思い出した。
付人スロルグの命令で、イジャルコルはデソトの本拠地クルサーファル破壊に大艦隊を率い出発した。だがかれは、デソトを討つのではなく、みずからの死に場所を、名誉ある戦死をもとめていた。
しかし宇宙船の墓場で永遠の戦士をむかえたのは、デソトではなくゴリム=網を歩む者ローダンだった。かれはイジャルコルに協力を要請する。ともに未来を築くのだ、それともシングヴァのあやつり人形のまま終わりたいのか----?
戦闘を放棄して旗艦《ゾムバス》にもどったイジャルコル。スロルグの叱責ももはや無意味。かれは、あのシャルロルクの末裔よりも、ゴリムの言葉に共感をおぼえはじめた自分を知っていたのだ。

蜉蝣を構成する擬似プシクスの輝きのなか、かれは救いをもとめる苦悩の声を聞く。その主こそ、蜉蝣に囚われた永遠の放浪者エルンスト・エラートであった。肉体をもたぬという共通点をもつふたりは意気投合、ともに蜉蝣の行動の謎を追い、やがてプシの奇蹟がエンジニア・ナックの制御すら逸脱しつつあることを知る----そう、蜉蝣は予言する。
「オーグ・アト・タルカンが帰ってくる....」5万年の昔に永劫の闘争を創始したというあの伝説の人物アッター・パニシュ・パニシャがもどってくる? かれがまだ生きているというのか?
そのころナックは、蜉蝣を混乱に導く超強力なプシオン放射の源をつきとめていた。アプザンタ=ゴム北部の近接する4星系----テスターレとエラートは、奇蹟のエンジニアたちがアプザンタ=ゴムの永遠の戦士グラニュカルの命すら無視し、まだかろうじてコントロール可能な蜉蝣たちを集結させていることを知る。蜉蝣で、妨害波の源を強襲せんとしているのだ!!
----ゴリム・ステーションに報告を残したテスターレは、ふたりに望みの肉体を与えてくれるという「成就の地」をめざし、エラートとともに旅立っていった....。

3星系は、たがいにわずか数光年の距離に近接している。ラオ=シン謎の本星フーバイも、かならずその近くにある! ブルはクマイ潜入を決意。イルミナ・コチストワの手になる生体マスクでカルタン人に変装したかれは、ピナフォールで収容した重症者二名とともにクマイのカルタン人に引き渡される。
「涙の網」、「タルカニウム」----頻繁に住人たちの口をついて出る言葉。〈涙の網〉とはカルタン語で〈ヌ・ヤラの涙〉と呼ばれるパラタウの保管施設。タルカニウムとはここ四太陽帝国の総称。その名は、あのオーグ・アト・タルカンに由来するのか?
クマイ周回軌道の《エクスプローラー》は、涙の網に数億トンのパラタウが蓄積されていること、そして、クマイの施設が5万年前に建設されたものであることをつきとめていた。成功するかに見えたスパイ作戦だったが、思わぬ落とし穴が待っていた。まもなく行われたタルカニウム・プロテクター会合に、チャヌカー=バンセイの司令官メイ・ラオ・トゥスがあらわれたのだ。彼女はブルの額のトシンの印を看破、ブルは、あれほど探しもとめていたフーバイへと護送されることになる。

----タルカニウム三角形の重心から垂直に引いた線の先にはドリフェルの門が位置している。5万年前、網を歩む者たちとカルタン人のあいだに何があったというのか?ファマル----カルタン語の呼称は「オーグ」系フーバイ!----に着くなりローダンたちはカルタン人エスパー警察にとらえられてしまう。だがタルカニウムに迫る危機が二勢力を同盟者とした。アプザンタ=ゴムの災いを告げる蜉蝣の大群がやってくる! ナックがつきとめたという妨害波の源こそ、涙の網に貯蔵された膨大な量のパラタウであったのだ。
〈蜉蝣〉=擬似プシオン情報量子の大襲来は、カルタン人エスパーたちの発狂死を意味する。パラトロン・バリアをもたず、超能力でパラタウを制御しているカルタン人にとって、それは5億トンのパラタウの大爆燃につながる。そして、それは“真の”ラオ=シン計画の崩壊。この破局だけは阻止しなければ!
----ラオ=シン計画、それは単なるカルタン人移住計画ではないというのか? エイレーネが不意に言う。かつてエスタルトゥで絶大な勢力を有していたカルタン人は、5万年前みずからのはじめたことを終わらせるために帰ってきたのだ、と....。

3ヵ月がすぎ、トスタンは無為の日々にたえられなくなった。ローダンはかれの記憶こそ事態の鍵としてトスタンの身を危険にさらすことを厳禁していた。それが、かれにはがまんできない。さらに、得体の知れぬ〈虎〉の悪夢がかれを苦しめる。
正規乗員800名のうち大半が動乱のジオン・ゾムに帰郷しているガフロン艦《タアール》。正常な航行が不可能と思われていたこの艦をトスタンは動かし、離陸に成功する。事後承諾の形で、トスタンとポジィ、それにロゾルは故郷銀河系へと発進した。
....故郷でかれを待ちうけていたもの、それはカルタン人との友好関係を認識したナックの手で銀河系から駆逐されつつあるヘスペリデスの贈り物だった。無敵とされるそのひとつを、奇策をもって破壊したかれらはGOIの注意をひき、11月15日、故郷へとむかえいれられる。ところが----
トスタンを収容した艦に、グァング・ダとアルフラルが乗艦していたのだ。かれらを一目見た瞬間、トスタンの特異な記憶層からひとつの像が浮かびあがる。〈キングタイガー〉----強敵にして最良の友、かれがトスタンに託した知らせとは、
「ヴォ・クシング・バオ・アト・タルカン」そして記憶のかけらが蘇ってきた。
----グリゴロフ機関の事故のあと、かれらはストレンジネス・ショックから数ヵ月も意識をうしない、気がつくと未知の銀河にいた。1ヵ月をかけて艦を修理したものの、補給に着陸した惑星で、トスタンそっくりの(すなわちミイラのような)種族の襲撃をうける。そのとき救ってくれたのがキングタイガー----かれは〈プロジェクト・リーダー〉と称していた。そして、十数年後、完成した〈救済作戦〉用の艦にトスタンは同乗することになったのだ....。

スティギアンにつきしたがい銀河系へやってきた、元《ツナミ−113》乗員のシャンの追跡を逃れ、さらにコマンザタラを珍種の植物と誤解した収集家をまいてスヴォーフォンですごすうち、ふたりは夢を見た。
コマンザタラは「妹」フアカガチュアのあらわれる予知夢を----同時に、自分がザタラ種族の一員であることを思い出す。
ジツィの夢は、融合植物、ザタラのジャルカンダ。意にそまぬ共生を強いられているジャルカンダはコマンザタラを「予知の姉妹」と呼んだ。
そして、10年後の446年11月17日、予知夢は現実となった。フアカガチュアがスヴォーフォンにあらわれたのだ! 再会したザタラたちは、さらにイルミナのもとにある融合植物と、そのマジュスンタの母体とのコンタクトを結んだ。フア以外はすべて、5万年前から何者かのために永遠の探索、すなわち情報収集の旅をつづけていた。だがその記憶はストレンジネス効果によって失われてしまったのだ。
共生体ジェニファーらを解放するために死んだジャルカンダを「みとった」あと、ザタラとジツィはシャンの襲撃を、かつてコマンザタラを追いまわした収集家の助けで撃退。空間転移でGOIの艦へ跳躍する。おなじころラトバー・トスタンを収容した艦へ。
そこでグァング・ダ、アルフラルと邂逅したザタラはさらに記憶を呼びさます。5万年前ザタラの奉仕していた主人とはカルタン人。そしてクロッツこそ第2の《ナルガ・サント》。「ヴォ・クシング・バオ・アト・タルカン」のメッセージは『タルカンのバオが故郷のさらなるかけらとともに到着した』という意味なのだ。「さらなる故郷」すなわち《ナルガ・プール》。
ジャルカンダは死のまぎわ、迫る破局を予言した。コマンザタラは言う。それを回避できるのは「オーグ・アト・タルカンの言葉」のみ....。
これこそが破局----スティギアンの言葉が銀河をゆるがす。ナックにまで離反されたかれは、銀河系を〈物質の沼〉に変えると宣言した!

そのころ伝承者たちは、おのれの問題と直面していた。《ナルガ・サント》で唯一タルカニウムまでの膨大な距離を克服する探知器が、コロニーに近づくプシの光輝を報じたのだ。それこそはナックのあやつる蜉蝣の大群。だが危機の存在を知りながら、伝承者たちにはそれを伝える手段がなかった。
討議の場にあらわれたニッキーは、ポジトロニクスが唯一の解決策と考える「かれ」の覚醒を、伝承者が却下しようとするのを目撃する。
ダオ・リンの主張で、ニッキーとポエルは生還の望み薄い〈啓示の霊廟〉へおもむくことになる。代償はカルタン人最後の秘密。そこに眠る者だけが、タルカニウムに警告するすべを有するはず。
道々、ダオ・リンがカルタン人の真の歴史を語る。
5万年前、カルタン人はアプザンタ=ゴムでナック、ザタラらと共同社会を築き、絶大な権勢を有していた。だが超知性体の失踪後実権をにぎったプテル人の陰謀で同盟は失われ、カルタン人は敗退を余儀なくされた。長い旅の末にM−33にたどりついたカルタン人は、事態に対処するため惑星クトゥルのロボットを創造。ところがその反逆のため野蛮に退行----そして、数万年がすぎた。宇宙航行技術をとりもどしたカルタン人のあるものが、クトゥルのロボットと《ナルガ・サント》を発見。種族の偉大な過去を知り、当時の指導者オーグの残した約束の地ラオ=シンの伝説を知った。それこそは、タルカニウム。万難を廃して帰還すべき故郷なのである。何かちがう----ニッキーは本能的にそう感じた。辻褄はすべて合うが、どこかおかしい。
数々の罠をくぐりぬけ霊廟に入った3人は、ついに深層睡眠カプセルにたどりついた。めざめた男はゆっくりと起き上がり、口をひらく。
「ヴォ・クシング・オーグ・アト・タルカン」かれは伝説のオーグ・アト・タルカン! 伝承者たちに迎えられ、事態を聞いたかれは言う。
「罪悪を終わらせるために、わがすべてのシャドたちにむけて語らねばならぬ」

「永遠の戦士の哲学はまやかしだ!」オーグ・アト・タルカンの声の影響は顕著だった。いまだ法典ガスの影響をうけておらぬ下級シャドたちは動揺し、いたるところのウパニシャドで内戦が勃発、その大半が廃墟と化す。オーグ・アト・タルカンの声は、銀河系、エスタルトゥを問わず、あらゆる場所でいつわりの第三の道の哲学を非難しつづけた。
ある惑星のウパニシャド崩壊のおり、瀕死のパニシュを暴徒から救ったファチィ・スルチとGOI工作員キング・ヴァンスは、ウィンダジ・クティシャに宛てた報告を託される。《アヴィグノン》乗員の仇、ファチィの復讐の的〈恐怖のハンター〉----やつは宇宙要塞フレシュ・トファール3201にいる!
要塞にたどりついたふたりは二手に別れ、ヴァンスは謁見の間へ、ファチィはひそかに技術施設に潜入、とらえられた時には、空調システムに細工をほどこすことに成功していた。
偽装を看破されたヴァンスとともに、ウィンダジ・クティシャの前に引き出されるファチィ。だが、そのとき異変が起きた。恐怖のハンターがふるえている! ファチィが空調システムにしかけたアンティマコス・ガスのボンベが効力を発揮したのだ。エルファド人ウィンダジ・クティシャは、もはやかれの輝けるソトの教えを、戦士の法典を信じることができない。それを悟った瞬間、かれはみずからの生命を絶つ道を選んだ。....護衛ロボットが銃をおろしたとき、あとにはなにも残っていなかった。苦いものを噛みしめつつ、ファチィは思う。かれの復讐は終わったのだ。

エイハブ=ストーカーは、おのれの復讐の時が到来したことを悟る。かれが「英雄」として高い評価をあたえる者たち----ファチィ、シド・エイヴァリット、グァング・ダらをひきつれ、ソトの篭城するウズルフ・ステーションへ乗りこんだストーカーは、抗法典分子ガスで要員を無力化し、ソト・ティグ・イアンにふたたび決闘を挑んだ。
結果はかれの----そしてかれを再生したタフンの医学の----勝利だった。細胞それ自体から強化されたストーカーの能力は、一度は敗北を喫したスティギアンのそれを、完全に凌駕していた。かれは名誉を回復する。そして、本当の復讐はこれからはじまるのだ。
時をおなじくして、ギャラクティカーの新たな同盟者となったナックのアルフラルの機転により、奇蹟に蓄積されたプシ・エネルギーは間一髪、巨大ブラックホールの“事象の地平”に解放された。銀河系最大の危機の回避!! 同時に、銀河系の奇蹟もまた消滅していた。スティギアの網は本来のプシオン網に駆逐され、戦士のこぶしはもう銀河系に輝かない。
銀河系は解放されたのだ....。
446年12月末、ステーションから凱旋したストーカーは、スティギアンの旗艦《ゴムスター》でエスタルトゥへ帰還すると宣言した。スティギアンの屍を、かれを裏切ったプテル人に叩きつけてやるのだ、と。アッター・パニシュ・パニシャの声が混沌をまきおこしたエスタルトゥに、かれは何をもたらすのだろう。
----独裁からの解放にわくクリスマス、ひとつの事件が起こった。クラーク・フリッパーにペレグリンが出現、警告を叫ぶ。「真の破局はこれから来る。源はドリフェルだ!」

「ヴォ・クシング・バオ・アト・タルカン」送信を再開するや、クロッツがリニア空間へ消えた。まもなく出現した場所は、タルカニウム!
ウパニシャドに響くオーグ・アト・タルカンの声は永遠の戦士の帝国を震撼させた。それは付人=シングヴァ族対永遠の戦士たちという内乱をひきおこし、エスタルトゥ十二銀河のすべてが崩壊するかと思われた。
タルカニウムのカルタン人は、クロッツを《ナルガ・プール》と呼んだ。プロジェクト・コーディネイター、バオ・アト・タルカンは5万年の空白を越えてラオ=シン計画の実現のため増援に駆けつけたのだ。だが、どこから? そしてどうやって? そもそもラオ=シン計画とはカルタン人の移住計画ではなかったのか? 多くの謎のなか、ローダンはサブハルへ帰還する。ドリフェルが急激な活動を開始したというのだ。
ドリフェルが直径5000万光年の天球のプシ定数を上昇させたのは、プテル人が十二奇蹟を建設したためと信じられてきた。だが、紋章の門の破壊にもかかわらずドリフェルの異常活動はいっこうにやむ気配もない。
クエリオン人は答えを知っているのか。ウィボルトは、5万年前に網を歩む者が創設されたとき、オーグ・アト・タルカンとコンタクトをとろうと試みた事実を認めた。だが、そのときすでにカルタン人はエスタルトゥから姿を消していた。ファマル=フーバイのゴリム・ステーションはその証。クエリオン人は答えを知るオーグの帰還を望んでいたのだ。
さらにローダンはイジャルコルのもとに行く。この混沌を静めるためにはかれの協力が必要なのだ。幽霊船と化した《ゾムバス》で、ローダンは息絶えたスロルグの頚をしめあげつづけるイジャルコルを発見。戦士はシングヴァから聞いた5万年前の真相を語る。

数百年がすぎ、かつて内戦を陰から操作したとしてエトゥスタル共同体への参加を禁じられていたシングヴァ族からも球形体の心臓へ招かれるものが出ていた。そのかれらがプシオンの奇蹟を創造すべきだと主張してまもなく、突如ドリフェル管轄宙域のプシ定数が急上昇した。シングヴァ族のしわざであるという意見がエトゥスタルで大勢を占めた。そのとき、
「ヴォ・クシング・オーグ・アト・タルカン----こちらタルカンのオーグ」《ナルガ・サント》が出現したのだ。指導者オーグは、エスタルトゥが救済にむかった銀河ハンガイから来たと語り、かれらがドリフェルによって新天地たる力の球形体エスタルトゥへ転送されたため、そのストレンジネスがコスモヌクレオチドに影響を与え、プシ定数の激変を招いたと説明した。
《ナルガ・サント》にはカルタン人のほか、プシ領域エンジニアたるナックや、生ける航宙日誌ザタラたちも乗艦していた。シングヴァ族はかれらを利用しようと考える。かれらはいまだに陰謀家であったのだ。
オーグをエスタルトゥの精神を伝えるものとして、ウパニシャドなる〈第三の道の哲学〉の学校の長となし、ナックを借りうけてプシオンの十一奇蹟と、プシ定数の変化から利用可能となったプシオン網を翔ぶエネルプシ駆動を創造させた。その間に、エトゥスタルはほとんどシングヴァ族の支配下に置かれる。
ところが、シングヴァ族は今度はオーグに不安を抱いた。かれはウパニシャドに置かれる自分の彫像におのれの精神のかけらを混入し、それを介して全エスタルトゥのシャドを導いている。あるいはかれが野望をもったら? シングヴァはオーグを暗殺、ないしはロボトミー化する計画を立てるが、それを察したオーグは《ナルガ・サント》とともに姿を消してしまった。
だが、ナックは残った。かれらはこれからもシングウァの役に立つ。それに最近は、どこからともなく謎のゴリムが出現し、シングヴァの権力をおびやかす。エトゥスタルの用途不明の技術製品を、ナックの助力で〈失われたエスタルトゥの贈り物〉としてムウン銀河にばらまいたあと、遺伝子操作で徐々に矮小化しつつあるシングヴァたちは、権力防衛のため「永劫の闘争」体制の準備にとりかかった....。

....ハンガイからの難民たるかれらは、ふたたびエスタルトゥからも逃走を余儀なくされた。しかし、超知性体との契約にもとづき譲渡されたタルカニウムの施設建設はほぼ完了しており、いつでも使用できる。いまは〈転送ポイント〉で同胞たちの受け入れ準備を整えるのだ。
ところが、《ナルガ・サント》の種族たちを思いもかけない事態が待ちうけていた。異なる宇宙への転送でうけたストレンジネス・ショックの後遺症が、健忘症の形であらわれつつあったたのだ。やがて退行現象にいたることは明らかだった。
オーグはそんな事態になるまえに準備を完成させようと努めた。炉座銀河で発見された、いわゆるヌ・ヤラの涙は《ナルガ・サント》の転送がドリフェルにあたえた変異の産物。苦しむノクターンのためその清掃を契約したのち、それがカルタン人女性にプシ能力を喚起するすることが判明。これがあれば、ハンガイの転送計画----ラオ=シン計画はよりスムーズに進行するだろう。しかし、種族の退化は目前。
それを克服するため、オーグはラクノル星雲にハンガイ諸族の英知を結集したロボット文明を建造した。退化のあとで、ふたたび文明を築くときが必ずくる。そのとき、ラクノルのロボットたちの保持する科学技術が活用できるはず。
カルタン人をはじめとする22種族は、異宇宙タルカンから来た。そして、かれらの故郷銀河ハンガイが「この宇宙」メーコラーに転送されてくる〈転送ポイント〉で、かれらは待ちつづけるだろう....。そして、オーグはラオ=シン計画の再興を夢見ながら深層睡眠についたのだ....。

そしてドリフェルの活動が一段と高まっているとの報に、かれは単独で偵察行に出る決心を固める。仲間たちの制止をふりきり、かれはドリフェルへと出発。ドリフェルは、今度は何を孵化させるというのだ?
タルカニウムでは依然破局のプログラムが進行し、また、それをとどめようという努力がつづいていた。バオ・アト・タルカンの到来がまねいた一時の緊張も、かれが協力を約したことで解消した。さらに、イジャルコルの介入でカルタン人との太古の関係を知らされたファラガらナックが、蜉蝣を停止させるべく動きだしたという連絡も入った。そして----
ナックの懸命の努力で、蜉蝣たちはタルカニウムからわずか数光時の宙域で進撃を停止した。カタストロフは回避されたかに見えた。
ところが、そこにブルの要請をうけたエルファド人の艦隊が到着する。ナック翻意の報はかれらにまで届いていなかったのだ----すでに攻撃停止命令をうけている蜉蝣たちは「通常」の活動にうつり、エルファド艦隊をプシのヴィジョンで包もうとする。その結果、タルカニウムをプシの嵐が襲った。まきおこるパラタウの大爆燃。
この完璧な破局は、しかし、ドリフェルで最大の効果を生んだ。タルカニウムの爆燃がはなつプシの奔流はドリフェルの門を抜けてヌクレオチド内部へなだれこみ----そして、プシクスが一斉に動いた。

それを、虚無のなかから観察している存在がある。〈それ〉の年代記作者である。〈それ〉の「妹」エスタルトゥをめぐる事件は、次なる章へ移った。そうして、かれは記録する。宇宙をつつむ〈深淵〉に亀裂が走り、異宇宙の星々が突入してくるさまを。
新たな章の主役は、異宇宙へと流されたテラナー。
かれの名はペリー・ローダン。
そうして、異宇宙タルカンの物語が幕をあける。

"TARKAN RUFT!" / タルカンが呼ぶ! I
1989/2/15 r.psytoh with y.wakabayashi
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