II タルカン Tarkan



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解説 : 最後の六日間

『タルカン』が呼んでいたような気がする




 新銀河暦447年(旧暦4034年)1月。永劫の闘争の君臨にいたるエスタルトゥの使節との接触から、まもなく20年が過ぎようとしている。

 この比較的長い期間、ソト・ティグ・イアンは前任者同様ギャラクティカー転向に成果をおさめていなかった。そしてついに敗北を悟ったとき、ティグ・イアンは銀河系の破滅を招来せんと試みた。

 幸いにしてこの企ても失敗。そしてソトの死とともに舞台は力の球形体エスタルトゥへ転じる。そこでは不幸の連鎖により、網を歩む者とその協力者たちが全力で防がんと努めた事件がおこっていた----タルカニウムでの破局、膨大な量のパラタウの急激な爆燃が。

 この破局は実に宇宙的帰結をもたらすことが判明。それもひとりの人間、ペリー・ローダンと密接に関係して。プシオン爆発のその瞬間、コスモヌクレオチド・ドリフェルのなかにいたこのテラナーは、それによって死にゆく宇宙、タルカンへ到達する。



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『ヘクサメロンの書』六日目の歌

「神々の息子にしてエシュラ・マハーズの支配者ヘプタメルはかく語り、無知なるものに教えをたれり。

 第六の日こそはじまりの終わり。賢きものたちに六日目の黎明を告ぐるきざしあり。火の女神ギラトゥ、その頭をもたげ、灼熱をふりまかん。御力の徴として、星々のかかる空にオムファーの花のごとき輝きの見ゆ。星、互いににじり寄り、領地は互いに歩みよるべし。

 うめく声、宇宙を駆けゆかん。完成への道は苦痛に満ちているがゆえなり。さらに、知恵の小径を侮蔑せし不信者の巷に、絶叫あがらん。あまたの種族が絶滅し、星々は燃えつきん。それこそ浄化なるべし。六日目を生きながらえるは、心に『ヘクサメロンの書』の真実への信仰の宿るもののみ。獣も草木も死に絶えん。なれど、其は主なるヘプタメルの司祭らに不浄と呼ばれしもののみならん。

 二十の領地と、宇宙の果てにいたるまでのすべての領地の種族を、苦難おとなう。されど危難こそは完成の先触れ。信仰をいだくものたちは、再生を待つことを知るがゆえに、黙して耐えざるあらざりなん。

 六日目は、火と炎とともに暮れ、五日目が次ぐ。宇宙なる壮大ぬ業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




 ゆっくりと意識をとりもどす。わたしは誰? ペリー・ローダン。記憶が蘇ってくる....。

 絶えず変位し、未来を形づくるプシオン情報量子プシクス。ドリフェルのなかでは当たり前の情景。プシクスの離合集散が、無数の潜在的未来を形成するのだ。

 そのプシクスの活動が、一瞬全面的にストップした! ドリフェル・カプセル《レダ》でヌクレオチド内部に突入していたペリー・ローダンは、輝く五つの星を見た。そして、次の瞬間あたりに暗黒が落ちた....。

 カプセルのあるのは宇宙空間のただなか。日付は2月4日。失神は4日間つづいたのだ

「4日」かれは目をむいた。それから、訊ねた。「ここはどこなのだ?」

「異宇宙よ」《レダ》が答えて、「電子の素電荷は、0.158アットクーロン。さほどのストレンジネスじゃないけど、でも、異宇宙にかわりはないわ」

 では4日間もの失神は、ストレンジネス・ショックだったのだ。異宇宙。カプセルの言葉では、ここにはプシオン網はないという。故郷宇宙へ帰る手段はないのか。そして、もうひとつ....。

「質問をどういったらいいかわからんのだが」と《レダにいう。「無限にちかい平行宇宙の数を思えば無意味なことだし。しかし、何か示唆はないのかね、われわれが“どの”宇宙にいるのか?」

「タルカン」《レダ》は即座にそう答えた。

 ローダンの記憶は数日前にさかのぼった。ワリンジャーとの会話を思い出す。クロッツについて、宇宙間の障壁について。そしてこれまで人類の遭遇した異宇宙、ドルーフ宇宙、反ローダンの平行宇宙について。ジェフリーはそれらに対し、確固とした理論を有しているようだ。

「ジェフリー、きみは..その..つまり....人類の宇宙における宿命を信じているのか?」

「はっ!」そう叫んだワリンジャーは、一瞬、心底おびえているように見えた。「それこそが数百年来の問題なのでは? ちょっと考えさせてください」だるそうに後ろへもたれかかると、脚を組んで、「その、哲学者によって宿命と目されるところのものを、わたしのような人間は、先験的蓋然性をほとんどもたない事象の現実化、と翻訳するわけです。ありうべからざることの連続を、哲学者は宿命とみなします。わたしにとって、それは依然、統計でしかない。むろん人類の場合には、最高に稀なる統計ですけれどね。驚くほどしばしば、よりによって一番ありえないはずの事象が創りだす統計です」

「ありがとう」ペリー・ローダンは頬笑み、「きみからちゃんとした回答をもらえると思うべきではなかったな」

「ちょっと待って」ワリンジャーが、おこりにかかったように反駁した。「まだお終いじゃありません。あなたの質問が意図しているのは、“上の”誰かが人類統計をねじまげていると信ずるかということでしょう?」

「そうだ。で?」

「その問いには、お答えできませんね。占術になってしまいますので。そいつは専門外でして」

「もう一度、礼を言うよ」ローダンは辛辣に、「むろん、それはわかっている」

「しかし、ひとつのことは不可避に見えるのです」知らぬ顔でワリンジャーは先をつづけた。「あなたが望むと望まないとにかかわらず、それは起こる。人類の宇宙的宿命への信奉をそこからそらそうとしても、ゆだねられたのはあなただ」

「何のことだね?」

「わたしの不機嫌の元凶とおなじものでして」とワリンジャー。かれはいつになく真剣だった。「けれど逆に、わたしが不機嫌だからこそ、そしてわたしのみならず、そういった事柄を扱う者すべてが----まさにそうであるからこそ、わたしにはわかるのです。いつの日にか、われわれがモラル・コードの秘密を解き明かすだろうと」

「そうかね」いくぶん驚いてローダンは言った。

「そうですとも。それによって、われわれ、あの謎の解答をも得るかもしれない。『〈法〉は誰が創り、どのような作用があるのか』。いまだけは、あなたの表現法を拝借して言いますとね----依然として人類の宇宙における宿命の一部なのですよ、第三の究極の謎を解くことは」



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『ヘクサメロンの書』五日目の歌

「星々のかかる空の色に、賢きものたち第五の日のはじまるを知る。その色、ドゥラームの藪の花のそれに似て、いまだ生あるわずかのものたちは、火の女神ギラトゥがかれらをその罪のために死を呼ぶ憎悪をもって罰するのだと思うであろう。天は燃え、大地は鳴動し、われらの知るごとく、いかなる生命も存在しえなくなるのだから。

 されど、すべてはギラトゥの憤怒ではなく、完成が満たされねばならぬとき起こるべきことの予徴なり。信仰をいだくものたちは種を蒔く。発展し、火の熱にもあらがう力をもつであろう新たな知恵のために。しかしその後には、信者たちも儚くなるのだ。おのれの遺産が護られ、二十の領地と宇宙の果てにいたるまでの他のすべての領地の惑星が、虚無と荒野になりはてることを確信しつつ。

 されど神々の息子にしてエシュラ・マハーズの主ヘプタメルは語れり。

 不信の芽を警戒せよ。そは新たな知恵の敵なり、と。汝らは、すべての不信の徒どもが六日目のうちに死に絶えたと信じており、またそれは見た目には正しい。しかし、不信の徒どもはその不浄の精神が護られるよう腐心しており、それはやがて復活し、忌まわしい顔をのぞかせるであろう。それゆえ汝らは心をとぎすまし、不信に圧倒されることなきようにせよ、と。

 五日目は熱と爆音とともに暮れ、四日目が次ぐ。宇宙なる壮大な業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




 《レダ》は各種ハイパー通信を探知していた。既知のコードはもちろんない。たとえこの銀河がハンガイだとしても、ここのカルタン人が5万年前に出発したピンホイールの同族とおなじコードを使っているはずがない。

 通信波中ことさら特徴的なものは、315光年先の星系から発信されている、明らかに人工の高エネルギー・ハイパーインパルス。まさにこのインパルスにひきよせられて、ドリフェル・カプセルは異宇宙内のこのポイントに物質化したのだ。

 その星系とは....。

 広いヴィデオ面の映像が変わった。星の海がわずかに色褪せる。暗赤色の背景光がその強度をうしなった。前面に、ひとつの星座が押し出された。一目見て、ペリー・ローダンは跳びあがった。

 かれの目に、正確に五角形の頂点をマークする5つの星が映った。恒星のふたつはルビーの明るい赤、ひとつは目もくらむ青、残りのふたつはグリーンに輝いている。

 かれは、意識をうしなう直前に見たヴィジョンを思い出した。あれはこのことだったのだ。ふたつの赤、ふたつの緑、そして青い恒星! はたしてかれは、カプセルがタルカンに物質化して後これを知覚したのか、それとも真実ヴィジョンとして体験したのか?

「五角形」口をついて出る。

「魔除けの五稜星ね」《レダ》が不吉なものを匂わせて言った。

 インパルスは、青色恒星から来る。ローダンはカプセルを恒星五角座へむけた。数分で3.5光年まで接近。そのとき《レダ》が、それまで気づかなかった黄色恒星を発見する。現在位置からわずか15光時。しかも7つある惑星のうち第3のものには、知性体のいる形跡が見られるという。針路を変更したとき、ローダンは《レダ》には聞こえない声を耳にする。

「きみは故郷への憧憬に憑かれている。われわれのところへ来たまえ。きみに故郷を再生してやることはできないが、故郷とおなじ心地になれるよう配慮してさしあげる」

 第3惑星は、テラの第三紀に相当する世界だった。原住種族はいない。いたとしても、知性体に発展するより先に、ギラトゥの熱に滅びてしまうだろう、ローダンは思った....ギラトゥ? それはいったい誰?

「火の女神」答えが返ってきた。「しかしそれは世界を滅ぼす憤怒ではない。それは新たな秩序の力、それゆえ人は滅びのことを口にしてはならない。それは、宇宙再生のための準備なのだ」

 声の主は何者? 未知知性体のステーションもまったく反応を示さない。あるいは、発見されることを恐れているのか。カプセルはステーションの西4キロの地点に着陸。《レダ》の反対をおしきって外へ出たローダンはふたたび襲ってきたストレンジネス・ショックのため意識をうしなう。



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『ヘクサメロンの書』四日目の歌

「いま一度、星々のかかる空はその色を変え、かけがえのないサルットゥの宝石のように輝くだろう。そこに賢きものたちは第四の日のはじまるを知る。もはや一面に満ちる熱気が火の女神ギラトゥにより広められているのか否か論争はない。四日目の夜明けにいまだ生あるわずかのものたちは、起こりつつあるすべてがヘクサメロンの計画にしたがう、完成のためのものと知っているのだから。

 そして、そのものたちはエテークと呼ばれる。かれらは時をぬけ、その運命が完成をむかえる第一の日まで生きつづけるよう定められているがゆえ。エテークは、信仰をいだくものたちが五日目に蒔いた種より生じいで、それゆえ残された時間も、覚醒した意識に気づかれぬまま過ぎゆくということはない。

 しかしまた、不信の徒の芽も萌え、そこからアンヌトゥ、罪人と呼ばれる生命が誕生する。アンヌトゥたちの脳には、不信の徒どものもつすべての知識が集積され、それゆえアンヌトゥたちは信ずるにいたる。完成の過程を遅らせるのも、いや、なかんずく逆転させるも容易なことである、と。かれらは形あるものが、いかにして形なきものと変じるのかを知っていたがゆえ。その知識から、かれらは望むるところを実行にうつした。しばしのあいだ、アンヌトゥがエテークに勝利するにちがいないと見ゆる。そして、かく四日目は暮れるのだ、不確かな時として。さらにエテークのなかにさえも疑うものがある。はたしてヘクサメロンの大計画は実現されうるのか、と。ためらうものは熱気のなかに死ぬ。神々のこうのたもうがゆえ。『われらの言葉を信ぜぬものに死あれ!』

 エテークとアンヌトゥは、しかしこれまで宇宙の知らぬ生命体であった。肉体をもたず、ただ精神のみより成り、形ある被造物のもたぬ力をそなえていた。四日目には太陽は膨張して流れ出す熱で惑星をつつみ、星の領地はたがいに融合し、生を有する形あるものは存在せず、ただ精神のみが火のあいだをただよい、完成がいかに実現されるかを観察しているのだから。

 四日目はためらいと不確かさとともに暮れ、三日目が次ぐ。宇宙なる壮大な業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




 ローダンが気づくと、目のまえにラトバー・トスタンが立っていた。トスタン----いや、ちがう。男はヴァロ・パク・ドゥールと自己紹介した。インターコスモで! かれが意識をうしなったローダンを助けたのか。ローダンは、ドゥールの服の胸についた黄金色のマークに興味をひかれる。半円に、放射状の線6本。左から右へと長くなっていく。

 網歩服のシントロンからインターコスモを学んだというドゥールが、

「ヘクサメロンの預言者よりその客に挨拶を。そしてかれが故郷にあるごとく感じられんことを」

 かれは〈ハウリ〉、“この”宇宙の監視者であると語る。かれは、ローダンが別の宇宙から来たことを知っている!

 ローダンは今度は、部屋の唯一の装飾と思われる真紅の花に目をとめた。

「この花はなんというのだ?」

「それはオムファーの花」ヴァロ・パク・ドゥールが答える。「女神ギラトゥによって清められた種だ」

 ドゥールが去ると、ローダンは返却された網歩服のピコシン(超極小シントロン)に、《レダ》がかれを置いて惑星を離脱した理由を訊く。ドリフェル・カプセルは、ハウリの極秘ステーション周辺にはられた特殊な探知スクリーンを発見、ローダンは未知種族----つまりハウリ----とのコンタクトを切望していたし、スクリーンに接触したかれがハウリに救助されると判断したためという。また、《レダ》はローダンの行動が暗示の類で強制されたものでは、と疑念を抱いている、と。

 考えに沈むローダンは、ドリフェルがかれを“ここ”へと転移させた原因は、タルカニウム崩壊しかないと結論した。だが、この銀河は、はたしてハンガイなのか。

 タルカンにはプシオン網はない----少なくとも《レダ》の知覚メカニズムに探知できるようなものは。モラル・コードに相当するものはあるのか? 渦をまいて体をもみほぐす水を満たした浴槽のなかでの思いつきに興じる。文明を有するヒューマノイドの衛生的欲求は、どれもほとんど異ならない。どの恒星系、どの銀河、どの宇宙に発祥しようと関係ない。宇宙どうしが、ささいな事柄では似通っていながら、大きな基本的な点では根本的に異なっているということが考えられるだろうか? もしタルカンにモラル・コードが存在しないなら、それと関連して通常宇宙のコードの意味にどんな結論をださねばならないのだろう。タルカンでは、超知性体は知られているのか? 物質の泉、物質の沼は、コスモクラートは? いまここで、突然タウレクやヴィシュナがあらわれることはありえるのか? あるいはティリュクか、使者カルフェシュが?

 疑問のあまりの多さに、かれは当惑した。思考が混乱してしまっている。かれは、無目的な思索に迷いことことなくしがみつける、確固とした一点をさがしもとめた。

 エスタルトゥだ! 永遠の戦士イジャルコルから、かれは戦士教団の歴史を知った。およそ5万年前、超知性体は未知の救いをもとめる叫びにしたがった。彼女はおのが力の球形体を、発祥する宇宙を離れたのである。いまや何の疑いもない、叫びはタルカンから来たのだ。収縮しつつある、死にゆく宇宙から。すなわちタルカンが、エスタルトゥの目標だったのだ。超知性体は、宇宙を分かつ障壁を突破する法を心得ていると考えるべきなのだろう。つまり、エスタルトゥはタルカンへ到達したことになる。

 彼女はいまどこに?



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『ヘクサメロンの書』三日目の歌

「神々の息子にしてエシュラ・マハーズの主ヘプタメルはかく語り、無知なるものに教えをたれり。

 第三の日は、エテークと、不信という罪を犯したことにその名の由来するアンヌトゥのあいだの戦いの日。争いはここかしこに揺れ動き、見かけ上どちらの軍勢の優越もなく、信仰をいだく精神は不決断のゆえかためらいに陥る。さしずめアンヌトゥが完成の道をふさぐことに成功しそうに見えよう。

 そしてそのすべては争いの女神アラパのなせる業。彼女の争いの光景を楽しむがゆえ。犠牲者たちは精神の形態をとり三日目にその御元に召される。なれど女神アラパもシャムーの地にいます神々の一柱。いかに彼女がアンヌトゥの優越に肩入れするように見えようとも、錯覚にすぎぬ。そもエテークは、その道を完成へいたらしむるために、勝利を勝ち取る必要はなく、ただ時の過ぎ去るを待てば良いのだから。そして時はまた、三日目も暮れ、二日目の明くるために流れすぎる。かくてアンヌトゥの努力は無に帰す。

 三日目には、星々のかかる空はイハリスアトゥの水晶、海の水のごとく輝く。そしてまた三日目も暮れ、二十の領地と宇宙の果てにいたるまでの他のすべての領地の精神生命体もわずか百あまりしかその生をとどめえない。星々は融け、領地は相近づき、そして三日目に二日目が次ぐ。宇宙なる壮大な業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




「急ぎたまえ、ペリー・ローダン」慌ただしさを隠しきれずに、「〈和合〉の瞬間が近い。これをおろそかにするものにとって、一日は半ばの価値すらないぞ」

 ドゥールによって半ば強引に起こされたローダンは、かれにつづいて長い回廊をぬけた。広いホールに、ステーションに詰めるハウリ全員が集合しているらしい。そのなかに、黄金色のシンボルをつけているものはいなかった。ドゥールは、ここのハウリたちのなかで特別な地位を占めているのだ。

 無数のテーブルには、食事の用意がなされていた。銀色のシンボルをつけたハウリが口を切った。

「神々の息子にして二十の領地の支配者、主ヘプタメルよ、祝福あれ。きょうのこの日、われらを完成の栄えのため働かしめることに。その御言葉に忠実に、われらは職務を遂行せん、不信の徒に対抗し、ささやかながら六日目をできうるかぎり速やかにその終わりにいたらしめることに貢献せん。なぜなら、六日目には“11マイナス6”日目が次ぎ、さらに日が過ぐるごとにわれらは創成の円環の閉じる瞬間に近づくのだ」

 副修道院長の言葉が終わるとともに、食事がはじまった。のちにローダンは、濁った緑色の液体がポナー、干し草のような固形口糧がウルキートゥといい、宗教的な“浄化”のためのものと聞かされる。

 その後、かれは与えられた行動の自由を利用し、ハウリのタイガー=6部隊の駐屯するこの惑星、ベンタンクの探索をはじめる。ピコシンによると、山脈の近くにハイパーアンテナが設置されている。そこにハウリの主要任務の施設があるにちがいない。

 そこでローダンが見たものは、ひそかに荷降ろしをしている宇宙船だった。全長300メートル。円錐状の船首と長さ140メートルのシリンダーをつなぎあわせた形。降下する貨物は、山の頂上の緑のなかへ吸い込まれていく。ピコシンにも探知できぬ半物質的プシ・フィールドが張られているのだ。恒星五角座といい、どうやら対立しているらしい二勢力は、どちらも非常な高度技術を駆使しているらしい。

 《レダ》がコンタクトしてくる。

「新機軸のしっぽをつかんだわ。この惑星は、周知のとおり中くらいの強度の、数光秒近く宇宙にまで届くプシオン場にくるまれている。そのフィールドは独特の構造をもっているの。一見して考えられるような静的なものではまったくない。むしろある種のダイナミクス、けれども効果を発揮するのに外部からの刺激を必要とするダイナミクスを内にひめているの。フィールドには、ある特定の機能に調整された固有知性があるわ。これをプシオンスサイバネティクス系と命名したいわね....」

 ローダンは聞いていなかった。かれの世界には、かれと、《レダ》の言葉しかなかった。しかし言葉はまるで、かれの意識のなかでダンスを踊る映像のように、かれの脳を通りすぎていった....。

 かれは何もみつけなかった。何も見なかった。船も、アンテナも。



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『ヘクサメロンの書』二日目の歌

「第二の日にはもはや星もなく、領地もない。すべて形あるものは、途方もない密度の雲に統合される。燃え上がる火。女神ギラトゥはその力の皆を、完成の過程を促進するために使い果たしたのだ。

 宇宙の果てが相近づき、境界の内側はアルスシモンの鉱石の色の、耐え難く明るい光に照らされる。

 ギラトゥの火が不信の徒の魂を狩りたて、アンヌトゥは女神の燃える怒りのまえに隠れがも安全な場所もみつけられぬ。最後にかれらも衰退し、燃え上がる宇宙雲に生なく混入する形なきものとなりはてる。

 しかしまた、エテークにも存在の終焉が近い。かれらは、ただひとり二日目の熱気を生きぬく力をもつ主ヘプタメルの精神体と融合するのだ。すなわち信仰をいだくものの魂はかれの一部となり、ひとつとなる。

 かく二日目は間近い完成の確信とともに暮れ、一日目が次ぐ。宇宙なる壮大な業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




 ステーションへもどったローダンを、ドゥールが待っていた。

「〈ヘクサメロン〉とは何だ?」ローダンが訊ねる。

「この宇宙の、われわれの近づける最高決定機関、神々の英知の通訳、完成の過程の監視者だ」と、ヴァロ・パク・ドゥール。

「では、主ヘプタメルとは?」

「ヘクサメロンと、シャムーの地にいます神々とを結ぶリンク」

 ふたつの言葉は、インターコスモに対応する単語がないことによる、ピコシンの造語。ヘクサメロンとは「六日間のできごと」、主ヘプタメルとは「七日の主」の意味らしい。そしてタイガー=6は、宇宙の創成と死滅のサイクルの完成を妨害しようとする“不信の徒”の力を排除すべく科学的研究にあたっているのだ、と。

「わたしの宇宙には伝説がある。エスタルトゥという名の高次生命体がはるかな昔、タルカンへと転移したという....」

 かれは言葉の途中でさえぎられた。ハウリは明らかに激怒している。かれが、とてつもなく冒涜的な単語を用いたというのだ。

「ならばよかろう」かれは重苦しい声で答えた。「ただ無知の特権として、重罰から救ってやろう」ふたたび腰をおろし、「完成の過程を収縮プロセスと比較しようというのは、不信の徒の妄想からくる冒涜だ。その言葉を二度と口にのぼせるな!」

 やはりそうなのか! タルカンという概念はハウリにとりタブーなのだ。それはテラの言語で、「収縮しつつあるもの」。

 さらにローダンは、ハウリが“6”という数を神聖視していることにも気づく。

「わたしは、エスタルトゥという超生命について訊ねた。エスタルトゥのことを、われわれは超知性体と呼んでいる。その名を聞いたことがあるか?」

「一度たりと」ハウリは答えて、「この宇宙には超知性体など存在しえない。ヘクサメロンがすべてを支配しているのだ」

 まただ----バオ・アト・タルカンもまた、エスタルトゥの名さえ知らなかった。彼女はどこへ消えたのだ?

 その夜、ローダンはヘクサメロンの預言者列席のもと、ヘクサメロンの書の六つの歌を聞かされる。

 ペリー・ローダンは呪縛されたように座り、未知の教えの言葉に耳を傾けた。いくつもの映像がかれの目のまえをすぎる。かれは、宇宙がドゥラームの藪の花の、サルットゥの宝石の、イハリスアトゥの水晶の、アルスシモンの鉱石の色に輝くのを見、一日目には、“究極の奈落の暗黒”に満たされるのを観察した。星々が衝突し、濃密なガス雲になるのを見た。銀河がたがいに融け合い、宇宙の地平が接近するつれ、次第に目もくらむ光として輝くのを見た。物質とエネルギーの結合の瞬間を体験し、そこから単一の事象にいたるまで、もはや放射と粒子の区別ができぬことを知った。

 かれは、精神生命体エテークとアンヌトゥの影を見る。かれらの戦いを体験した。アンヌトゥたちが死に、エテークが主ヘプタメルに吸収されるのを見た。だが主ヘプタメルは最後まで、信じられぬほど明るい六角形の姿でしかあらわされなかった。

 かれは、これまでつまびらかでなかったいくつかのことを理解した。〈領地〉とは、銀河を意味するハウリ語であり、二十の領地とは、主ヘプタメルの支配する20の銀河の総体のことである。知らず力の球形体と比較していた。かれらが神々の息子と呼ぶ主ヘプタメルが、通常宇宙でいう超知性体というのもありえないことではなかろう。

 話を聞き終えたローダンは、ヘクサメロンの教えに、自分は心服できぬと悟った。これは異端の存在を認めぬ宗教なのだ。

 ひとりになったかれに、ふたたび《レダ》が連絡してくる。ドリフェル・カプセルは、ローダンの異変を察していた。つまり、かれと、かれの網歩服のピコシンは、それがハウリにとって危険と判断した例のプシサイバー・シテスムにより、山脈でのできごとの記憶を消去されていたのだ。



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『ヘクサメロンの書』一日目の歌

「第一の日のあいだ宇宙にはただ主ヘプタメルのみがあり、かれのなか、ひとつになったエテークたちの意識がある。

 そして破裂のときまで宇宙がつねに変わりゆく形あるものと形なきものとに満たされているにもかかわらず、主ヘプタメルの目をもってしてさえもはや見ることはできない。一日目の宇宙でのできごとは、もはや半神の近くでもとらえられぬ領域で起こるがゆえ。

 宇宙は究極の奈落の暗黒に満ち、形あるものも形なきものも、かつて宇宙の有したすべての物質とエネルギーの統合されるわずかな空間におしこめられる。

 なれどそのときシャムーの地の神々のたもう。いまこそこと足れり! かくて一日目はわずかな空間に圧縮された原力の震えとともに暮れる。一日目を新たなはじまりが次ぎ、ささやかな宇宙の境界を原力が押しひろげる。新たな宇宙が誕生し、原物質の輝く雲の上に主ヘプタメルの精神がただようであろう。宇宙なる壮大な業を創造りなし、その絶えざる更新をなさしむる、シャムーの地の神々に栄えあれかし」




かれの視線が乳白色の星の帯をなぞった。北東から昇り、天頂を越えて南西でふたたび沈む、幅広い帯を。もし、夜空の背景の暗赤光がなければ、故郷テラの山頂で射手座腕の星雲を臨んでいると思うところだ。

星帯は、南西の地平までつづいている。数十億の恒星がそこに属すのだろう。

テラナーの隣には、ヴァロ・パク・ドゥールが座っている。夕闇のせまるころ、ハウリが約束どおりローダンを連れ出した浮遊車の客室は薄暗かった。山脈のかなりの高度まで登っていた。ヴァロ・パク・ドゥールは、山頂の狭い平地に降り、車内の灯りを消した。高山の希薄な空気のせいで、星空の光の海は、息づまるほど美しい。

「あそこから地平に傾いた星の帯を見たまえ」沈黙の数分の後、ヴァロ・パク・ドゥールが言った。「あれは、二十の領地の島宇宙中最大の銀河、マハルー・マハーの渦状腕のひとつ。何百億もの恒星がある。だが、きみの目にするものは、はたして現実かな?」

不意にスクリーンが輝いた。一見、車窓の向こう側とおなじ景観。近づいて目をこらすと、はじめて違いがわかった。赤い背景光は消え去り、星々は異なる色彩で指示されている。オプティカル映像ではないのだ。

星帯を目で追ったとき、ペリー・ローダンは心ならずも息を飲んだ。ヴィデオ像で、地平線は糸のように細いブルーのラインで表わされていた。星帯は、そこに触れてはいなかった。その上方、数センチのところで、切断されたようにとぎれている。

カルタン伝承者の冒険的プランの、少なくとも部分的成功を理性が把握するより先に、ヴァロ・パク・ドゥールが語をついだ。

「夜空をあおいで目に映るものは、現実ではない。探知器のすばやい目をもってして、初めてわかるのだ。もし、2000年の時間を待つことができれば、きみにも見られるだろうな、あの渦状腕のなかで星がひとつまたひとつと消えていくのが。あの星々からここまで、光がこなすのにそれだけ必要だから。だが、探知器は即座に現実の光景を映し出す。数十億の恒星が消えた。不信者どもの、激情にかられた冒涜によって消失させられたのだ」

 ローダンの魂はふるえた。ハンガイ----ハウリによれば、マハルー・マハー----の一部が消えた! それはタルカンからメーコラーへと転送されたということか。その帰結は、故郷宇宙に大混沌をひきおこすにちがいない。一刻も早く帰還の道をみつけなければ!

「教えてくれ。銀河の転移に必要なはかりしれぬ力を創り出すことを、不信者はだれに教わったのだ?」

「やつらは創り出してなどおらん」陰鬱にヴァロ・パク・ドゥールが答える。「全能なる宇宙がすべての知性体に提供するものから引き出し、その冒涜的目標を追うために利用したのだ。シャムシュの首飾りの真珠のなかには、星々と銀河すら動かすエネルギーがある。不信者どもは真珠からそれを抽出したのだ。やつらは宇宙から膨大な質量の恒星を消し去った。そうすることで、神々の意志にしたがい六日間の経過に作用する宇宙重力が減少するからだ」

 〈シャムシュの首飾りの真珠〉! それは何だ? 映像がそれ自身語っていた。かれは一筋に並んだ真珠を見た----モラル・コードのプシオン場凝集体のように。シャムシュの首飾りとは、タルカン宇宙のモラル・コードなのか?

 ハウリはかれに、冒涜者たちの首謀種族の映像を見せる。大量虐殺されたそれは、確かにカルタン人! ヘクサメロンと価値感がちがう、それだけで彼らは殺されたのだ。せまる宇宙の破滅を逃れようとしただけで。さらに恐るべきことに、ハウリはローダンをもヘクサメロンの奉仕者として拘束するつもりなのだ。ローダンはベンタンク脱出を決意する。

 宵闇にまぎれ、ステーションを脱走するローダン。そしてドゥールはこれを予期していた。プシサイバーの暗示がせまる。

 ローダンを救ったのはピコシンだった。失神させられたかれは、無事《レダ》に到達。黄色恒星系を離脱したローダンは、次なる目標に恒星五角座、ハウリの対立勢力の拠点であるはずの青色恒星を選ぶ。

「ありがとう」と、うめく。「たぶんもっと後、記憶がはっきりしたらな。さしあたって、腹がへったね。まる2日ろくなものを食っとらん。何があるかね?」

「ウルキートゥとポナー」《レダ》の即答。

 究極の憤懣に、のどがおかしな音を立てた。

「ときどき」と、ローダン。「きみは悲壮なユーモア感を発揮するようだな」



解説 : 最後の六日間
----神は六日で世界を創りたもうた

クトゥルのロボット王朝 ハウリ エスタルトゥ

『タルカン』が呼んでいたような気がする

「これまでも、異宇宙の話はあったよね」

「ドルーフの赤い宇宙、メルコシュの故郷の宇宙、悪人ローダン....ぷぷぷ....が住んでる平行宇宙、冷気のエレメントの零下宇宙などなど」

「あー、そして熱燗のタルカン」

「収縮して〈熱く〉なった宇宙って、ほんとに赤くなるんですかぁ----どなたか検証してほしい」

「猫たちを小さな宇宙に押しこめ、それを収縮させてパニックをおこさせます」

「すると、なんとか生き残ろうとした猫どもは5万年をかけて無限のプシオンの力を操作して....」

「猫又みたいなもん----コズミックな数珠のパワーをじゃらじゃらさせたりなんかして」

「まあ、対するローダンだって、立派にオカルトですけど」

「天文学的、宇宙的な偶然のなかでも生きのびるほど命の数が多いという----うーん『延命2098年のシュレーディンガーの猫』っ!」

「....はあ」

「そして、『V』をへて大いなる『ゲイトウェイ3』にいたる『エスタルトゥへの道』っ!!」

「....」

「これぞ時代の要求に忠実なSFと呼ばれるゆえんであります」

「だれが言うんですか、だれが!!」


 1989年3月....半年仕事の『タルカンが呼ぶ!』をようやく終えてぼーっとしている編集人の部屋には、たぶん変色しかかった『メーコラー』の原稿の山ができている。そして、おそらく、これまた厚い封筒がやってくるのだ。たとえば、

「やっほー、やっと半分です。続きは夏に1450話が出てからですね。タイトルは、そだな

故郷への遠い道I〈望郷篇〉

サヤーロンに還る!!

PERRY RHODAN Nr.1400-1450

でどうでしょう? へへへ....

----西塔れいじ拝」

 そうして、歴史は繰りかえし、この永劫の闘争はただひたすらに、まだまだ、いつまでも続いていくのである----のかね?

 あーあ。



"TARKAN RUFT!" / タルカンが呼ぶ! II

1989/2/15 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi