
「何を嘆くことがある、ペリー・ローダン?」実体のない声が訊ねた。「きみは同族の誰よりも長く生きたではないか?」
ローダンは平静を保った。
「遅かったではありませんか、旧友よ」と、薄闇にむかって叫んだ。「見たところ、われわれを最後の瞬間までいたぶることに興じておられる」
「わたしが何に興ずるか、わかるつもりかね、ペリー・ローダン」見えない発言者が告げる。「なんにしろ、きみは喜ぶべき時の享受者ではなかった。きみは失敗したのだ!」
「これまでの自分の行動の概括は、まだ書いたことがありませんのでね。しかし、興味がありますな、どうしてあなたが、わたしの失敗という結論に到達されたのか」
それは一風変わったシチュエーションだった。通常なら〈それ〉はメンタルな手段で語りかける。相手の意識中に、その思考が直接具象化する方式だ。しかし今回は、超存在の声が聴覚的に聞きとれた。〈それ〉が話すほど、その声は大きくなり、暗い路地の狭いねじれを通してエコーが響きわたった。
「局所銀河群の銀河を見てみたまえ、ペリー・ローダン。あまねく混沌が支配している。多くの種族が原始の段階まで退行してしまった。危険、飢餓、悲劇はいたるところにある。これが、きみの作ろうとした宇宙かね?」
「第一に、大破局が到来しました」ローダンが答える。「超知性体である以上、あなたはわれわれ以上に、その責任を負っているはず。隣接する宇宙から異銀河をむりやり転送することで、われわれの宇宙が重大な損傷を負わずにはいられないことを、あなたは知っていなければならなかったはずです」
「ここでは、そんなことを話しているのではないよ、ペリー・ローダン」路地のねじれたチューブから声が轟いた。「きみには使命があった。きみときみの同族をアルコン人の後継者にしたとき、わたしはきみを大宇宙を継ぐ者と呼んだな。きみはその遺産を活かせなかった」
「責任をとるべき事実は思いあたりませんな。お忘れですか、わたしが700年の間、停滞フィールドに囚われていたことを」
「きみに与えた何千年という時間に比べたら、700年などどれほどのことがある?」
「ちょっとしたものですよ」ローダンは自分の立場に固執した。「われわれがそれまでの期間になしとげたことにご注目いただきたい。銀河系の内部の敵対的関係を排除。銀河系を、諸種族がギャラクティカムを通して代弁される政治的統一体としました。ギャラクティカムによって保証される、継続する平和を築いたのです。近隣の島宇宙とも友好的状態にある。宇宙ハンザ同盟は、商業面だけにとどまりません。ギャラクティカムに統合された種族の善意のメッセンジャーだ。
そのすべてをご覧になっても、なお、われわれが失敗したと言われるか?」
最後には、ペリー・ローダンは怒っていた。もうこりごりだった。この薄闇のなかに立たされ、悪夢にとびこんだような建物に囲まれて、姿をしめさず実体のない声だけで語りかける存在に、責任を追求されるなど、あきあきだ。
〈それ〉が笑うのは2度目。鈍く、喜びのかけらもなく。
「聞いているぞ、ペリー・ローダン」と、〈それ〉。「きみらの経歴のはじめには、テラ人類は行動欲に満たされていた。目標を自覚していた。確かに、若い文明にありがちな誤りに陥りもした。平和がおのれのポジションの強化によってのみ獲得しえるもので、安息は仮想敵を征服することによってのみ達成しうると信ずるという、な。テラナーは銀河系にパクス・テレストリス(テラの平和)をもたらそうと望んだのだ。しかし、かれらはすぐに学んだ。覇権の追求には、すぐに幕がおろされた。テラナーの文明は他の文明と同盟を結び、平等を認めた。そして、前進する。銀河系は文明的観点からして、比較しうるすべての銀河を数世紀先行していた。
そのすべてを、きみたちは最初の2000年でなしとげたな、ペリー・ローダン。わたしは夢中になったよ。自分の選択の正しさを確信した。だが、それから何が起こったね?」
「何も。わたしたちに責任のあることはね」ペリー・ローダンは答えて、「われわれは、役に立つ愚か者でしたよ。あなたと、あなたの妹エスタルトゥを助けて、死にゆく宇宙タルカンから、ハンガイ銀河をわれわれの宇宙へと移送したとは。つづくできごとについては、われわれには定かではない。そこまでわれわれの知識はおよびませんのでね。大破局とその後のことの責任は、ふたりの超知性体にあります。そのひとりは、あなただ!」
「わたしは責任逃れをするつもりはない」と、暗い路地に反響した。「わたしは自らのあやまちを痛感している。だが、大破局後の掃討は、ペリー・ローダン、それはきみたちの仕事だったはず。そしてきみたちは失敗した。破局からこれほど経っても、世界は混沌が覆っている。高度に発展した文明種族が原始状態に退行している。局地的戦争が艱難辛苦を広めている。文明が分裂。植民惑星は荒廃。きみたちには、大破局の後遺症をのぞくに充分なだけの時間があった....」
「充分?」ローダンは反駁した。「われわれ、カタストロフ自体をそもそも体験していないのです。せいぜい最初の数時間程度だ。そして、停滞フィールドから逃れえたときには、700年が過ぎ去っていた。百年戦争もはるか過去のこととなり、銀河系は通過不可能な障壁にくるまれていた。われわれは、回廊の主人たちの独裁を打破し、壁をとりのぞきました。銀河系諸族を再統一し、ギャラクティカムに新たな生命をふきこんだ。神々ではないのです! 2万年なら、あとどのくらいなしとげられることでしょう。2万年の期間中に、銀河系でもっとも優秀な文明であることを証明せよ。おぼえておられますか?」
「おぼえているとも、ペリー・ローダン。それゆえに、きみたちをわがもとへ呼んだのだ。期限が過ぎたのだよ!」
太古5万年前に超知性体エスタルトゥに与えられた使命にそって、テラナーとおなじく〈それ〉を捜しつつも、一切の協力を拒む、異宇宙タルカン生まれの種族ナック。さらに突如として銀河政治の表舞台に出現した神秘のヒューマノイド種族リング人。その「調停者」たちは、まるで平和を武器に銀河を征服せんとしているかのごとくふるまい、かつ同時に、ワンダラーのシュプールを求めているらしい。
バルコン人の肉体に縛られたエルンスト・エラートは、〈それ〉の年代記たる「アムリンガルの年表」を訪ねて局所銀河群をさまよい、心ならずもモノスの「母」たる宿命を背負わされたゲジルは再び銀河系に現われたストーカーの言葉に動かされ、はるか彼方の島宇宙へとモノスの「父」探求の旅に出た。
道はからみあい、もつれつづける。銀河系各地に出現しては消滅するワンダラー。娘エイレーネと行動をともにするナックの助力により、そのひとつに到達したローダンは、人工惑星の時間軸の異変を知る。それは「過去が現在にずれこみ顕現化した」フィクティヴ・ワンダラーなのだ。さらに、人々のワンダラー捜索を妨害するものもまた、現われる。未知の艦隊は、ペリー・ローダンの「仇敵」を自認する、モノスの「父」によって派遣された----〈トルイラウの守護者〉に....

ある「任務」のためと称して貝殻船でストーカーが去った後、ペル・エ・キットの属する反〈守護者〉ゲリラ組織〈トパル〉と合流したゲジルは、思わぬ「知己」と再会する。エスタルトゥ十二銀河の産で、一見して愛玩動物のような知性体ウルフォ。ドリフェル・ショックでこの銀河に漂着したという、網を歩む者たちにも参画していた種族の協力で、トパルは強力な情報網を築き上げていた。しかし、不運にも、〈守護者〉の秘密警察組織ゼルパトに属する人物のウルフォと接触したことからゲジルは惑星警察に逮捕され、やがてゼルパトの管轄に移された。「賓客」として! かつてアス・レテルは、「おまえの存在がさらなる災厄を招くのだ」と彼女に叫んだ。まだ見ぬ〈守護者〉は、ゲジルを得て何をせんとしているのか....

30メートルほどの、メタルブルーに輝くシリンダー。頂部には、20世紀の天文台を想起させるようなドームがある。継ぎ目はない。なにより不思議なことに、それはジャングルのただなかに、ある日突然あらわれたのだった。
クザンと呼ばれる、猿に似た原住生物の「族長」が、シリンダーに触れ、消えた。数時間後に姿を見せたとき、半知性体はインターコスモを解し、片言ながら話せるようになっていた! やがて判明する事実----〈メンタル・マシン〉は知性を「反転」させるのだ。テラナーが触れれば、ついには原始状態にまで退行する!
だが、コマンドが本格的調査を開始できぬうちに、〈メンタル・マシン〉は忽然と姿を消した。残された手がかりは、知性転極の犠牲となったコマンドの指揮官、レナ・グリスピンの作業服のシントロニクスが、マシンとの接触中に記録した言葉だけであった。
「汝の心が高き秩序にそうたとき、初めて光を見出さん。汝がわれらが光を知るなら、それを誰より知ったか心せよ。知識の機械に驚いたのはひとりのみ----かれが来たのは最近、われにとっては数秒なり。かれをみつけ、問え! かれを捜すなら、光の廟に来たれ。しかれども、かのものの人物を知らずに来ることなかれ。かれの名を訊ねられん」

艦隊によるファウスト封鎖に先行して塵芥内へと斥候に出たアルコン艦《アマティル》は、急激な塵芥の活性化によって大破、障壁突破後まもなく爆発する。かろうじて脱出しえたわずか3名の生存者たちは、おりよく近くを航行中に救難信号を受信した《ゲーア・ノヴァ》のビューノム・ジャフェに収容された。このゲーア人が実は奴隷商人で、かつてプロヴコン・ファウストが「閉じた」暗黒星雲であったころの地位----塵芥障壁の活動を唯一感知しうる「航法士」----をとりもどすため、トルイラウ人と同盟を結んだフィンクラン人に、それと知らず塵芥制御ネットワーク機構建設のための労働力を提供していたことから、アルコン人たちは、思いがけず謎の真相をしることになる。
ツヴォタートラハトの施設が、実はかつてモノスによって極秘裏に建設されていた、非常用の防衛要塞であること。そして、惑星に原住するツヴォターたちのあいだに、ひとつの予知夢が広まっていること。巨大な円板状のパラダイスが、かれらを迎えにやってくる----ワンダラーが来るのだ!
そして、トルイラウ人も知らぬことがあった。塵芥の運動を予測できるのは、現在ではフィンクラン人だけではなかった。アッカーティルの推論をうけてファウストに到着した、エイレーネの導師ウィロムの三叉船《アネズファル》は、塵芥のコントロール衛星を苦もなく確認・破壊して暗黒星雲に進入する。そして、同乗を許されたローダンとアトランが、惑星ツヴォタートラハトに囚われていたビューと《アマティル》生存者たちの救出に成功したしたとき----ワンダラーは来た! しかし、人工惑星は、ツヴォタートラハト上空で蜉蝣のように明滅をくりかえすと、まもなく消滅した。そして、人々は悟るのだ、ファウスト塵芥の活性化は、このために、ワンダラーの出現をこそ妨害するためになされたことを。すべては、またふりだしにもどったかに見えた。
塵芥が再び活動を停止したいま、封鎖艦隊との戦闘を避けてトルイラウ艦隊も去ったツヴォタートラハトで、ひとりの人造人間が発見される。ツヴォターの言うパラダイスからの使者....ホムンク! ワンダラーにはぐれた〈それ〉の使者を、ローダンはテラへと連れ帰る。あるいは、かれからワンダラーの行方について知ることができるかもしれないという希望は、しかし、裏切られた。ホムンクの体内で、ある時限機構が活動を開始し、自らの「任務」を思い出した人造人間は、ひそやかにテラを去ったのだった。

サトー・アンブッシュによる〈パラナック〉実験は、部分的成功を見る----ストレンジネスの差異から、フィクティヴ・ワンダラーと「真の」ワンダラーは区別できるのだ。だが、パラリアリストの能力をもってしても、かつてウィロムがなしとげたように、フィクティヴ・ワンダラーのひとつへ転移する以上のことは不可能。
そんな状況の1171年3月、ギャロルスを完成させるため奔走していた《シマロン》のレジナルド・ブルは、キャルバ星系の惑星ゾルバトで、奇妙なできごとに遭遇していた。植民者の退行したと思われるゾルバト人と、原住種族ララペッチュとのあいだで戦争が勃発せんとしている中、1発のアルコン爆弾が発見されたのだ。ゾルバトのすべてを焼き尽くす核火災は、時限装置により、間近に迫っていた。危険きわまりない兵器を除去するうちに、ブリーはゾルバト人を支配する寄生体の存在に気づく。きわどいところで、戦争は回避された。
そして、傍受された奇妙なメッセージ....
「さまよえるもの、ここにありき。そをみつけんと欲するもの、印をたどるべし」
さまよえるもの....ワンダラー! では、「印」とは、アルコン爆弾のことか? そして、他にもたどるべき印があるというのか?

ところが、救いの手は、思わぬところからやってきた。ナックのサバジン。ノクターンのシンボル通信を研究対象とする存在が、ピンホイールにいようとは。ナックの三叉船《クリナール》と、そして銀河系にもどるダオ・リンからの援助として2隻のカルタン船の随行をともない、エラートらの《タンボ》は炉座銀河へとむかった。
この小銀河にいるという、〈それ〉の誕生協力者。サバジンの作り出したパッセージ・シンボルでチュクロープ系にたどりついた一行は、〈炉座の愚者〉を訪ねる。しかし、愚者は、自分はわずか400万歳でアムリンガルや誕生協力者の生成を知るには若すぎる、と回答を拒否。しかもエラートらが〈それ〉を捜していると知ったサバジンが道を分かったため、一行は思いもかけぬ障害にぶつかることになる。〈炉座の賢者〉のいるアウゲンリヒト星系への道で立ち寄った過去の遺物----ドリフェル・ショック以来忘れ去られたハンザ商館、ファーリン星系コントール・フォルナクスで。
炉座商館には、生存者がいた。それどころか、〈シー〉----彼女----と呼ばれる「守護天使」の力で、ファーリン系に接近する宇宙船すべてを捕獲することによって、生存への意欲を維持していたのだ。捕獲----そう、〈シー〉は、ノクターンをあやつることができる! 《タンボ》とカルタン船も拿捕され、エラートたちもコントール・フォルナクス逗留を強要される。
パッセージ・シンボルの失効をシントロニクスが知ったとき、ひとつの奇蹟が生じた。胎児が、ノクターンをあやつり、道を切り開いたのだ。そうして、コントール・フォルナクスに到達した胎児は、ノクターンの暴走で司令官ライラ・テラを失い混沌の極致にあった炉座商館に、「守護天使」として迎えられた。胎児は、当面カプセルにとどまることを望み、シントロニクス----船を、《マザー》と呼んだ。そして、自らの力で、ファーリン星系の第14惑星に集積をはじめたノクターン柱を、〈ファーザー〉と。そしてコントール・フォルナクスの人々は、彼女を〈シー〉と名づけた。
〈シー〉が「シーラ・コレル」となったのは、1155年のこと。彼女の友人であり、「誕生」を決意させた、ウンブレト・コレルによる。ウンブレトは、〈シー〉が、カプセルの中で700年を経たいまも精神的には「子供」であり、それゆえ海賊行為に罪悪感をいだかないことを悲しんだのだ。しかし、まもなくコレルは消息を絶ち、それゆえ、シーラ・コレルは現在も〈シー〉。コントール・フォルナクスの守護天使であり、人間以上のもの。だから、友達もいない。
およそ1400万年もの昔、〈それ〉の誕生に触媒的な貢献をはたした種族が、より高次な存在形態を手に入れた姿が、現在の5次元水晶生命体なのだ。さらに、アムリンガルの年表の所在を訊ねるエラートに、賢者は答える。
「だが、われわれ、〈それ〉を助けたいだけなのに!」エラートがくいさがる。
「たしかに〈それ〉には助けが必要だ」と、賢者。「かの超知性体は、思わしくない状態にある」
「では、なぜ、われわれが年表へといたることに協力してくれないのです?」絶望のあまりエラートは叫んだ。
「わたしは、座標を教えられない、としか言っておらぬ」賢者が修正する。「きみたちを連れていけぬ、とは一言も口にしていないが」
「われわれを、アムリンガルの年表のところへ運べる、と?」エラートとテスターレが、ほとんど同時に訊ねた。
賢者が答える。
「ああ、できる。しかし、いますぐでなくてはいけない。いま、この瞬間に。ちょうどよい時機なのだ。決断したまえ。ほんとうにそれを欲するか? 心の底からでなくてはならぬ」
アラスカ・シェーデレーアは、この申し出をうけるのに、エラートとテスターレが一秒たりともためらわないであろうことを疑わなかった。かれらはケムバヤンで、真のアムリンガルの年表のもとで天命を授かるという予言を聞いたのだ。以来、ふたりはアムリンガルだけをめざしてきた。
しかし、アムリンガルは、かれ、アラスカには何をもたらすのだろう? キュトマとの再会? 〈それ〉へといたるシュプールを? 〈それ〉を助け、2万年の猶予についての誤りを悟らせる方策の示唆をか?
「準備はいいかね?」賢者が訊いた。
「いいとも」間髪をいれずに、エラートとテスターレは答えた。

ある火山の噴火の際、噴出された奇妙な物体----溶岩にも耐えるそれを、人々は「神々の贈りもの」と呼んだ。そうして、43個のパーツを組み合わせる、できあがった歪んだ金属柱は、知性をもって語りはじめた!
「わたしは絶対なる〈願望成就リサイクラー〉。わたしを正しく組み立て、正しい願望を口にした方は、3つの願いをかなえてさしあげる。望みは何です?」
願望成就リサイクラー----頭文字をとってWER(「誰」とも読める)----はパルピュロンに混沌をよびおこすことになる。砂漠で渇き死に寸前の科学者は雨を望み、願いはかなえられたが、まにあわなかった。妻を厄介払いしたい男には、死を呼ぶレーザー光線がつかわされ、願望を成就した。混乱がきわまったとき、ハンザ商館の館長モルケン・カツシュは、願望をかなえて分解した〈だれ〉を組み立て、問いかける。
「誰が〈だれ〉を設計し、かなえるべき『正しい願望』とは何か。答えろ、誰が〈だれ〉を作ったのだ?」
絶対なる願望成就リサイクラーは、この質問に答えることができず、ばらばらに分解すると、消滅した。

おりしも、事件のさなか友好を結んだカルタン使節ハン・シュイ・プォンから、やはり訪アルコン中のリング人使節、調停者ファランド・アライの発言に関する報告がもたらされた。「わが種族は、現在ある強力な存在の後援をうけており、まもなくかの支援者のもとへ巡礼がおこなわれるであろう」----銀河系イーストサイド、フェルト星系の近くにいるという、「強大な後援者」とは何者?
一方、ハン・シュイ・プォンの報告は、ピンホイール・カルタン人の高貴の女たちの評議会にも伝えられ、争議を呼んだ。リング人がその「平和」を、銀河系の中でだけ玩んでいるうちはいいが、やがて他の島宇宙をも「調停」しだすのではないか----カルタン指導層の疑惑を、今回のニュースは強めたのだ。《タンボ》が炉座銀河へ出発するのを見送ってから、なおもグーネン系カルタンにとどまっていたロナルド・テケナーも、リング人を後援する「力強き存在」に興味をひかれ、ダオ・リン・ヘイの《アルドゥスタール》で故郷銀河にむかった。
テラでは、おりしもトプシダー問題解決の報酬として、調停者ケラマル・テソンがペリー・ローダンからワンダラーに関する資料を受け取っていた。ただし、要請は「10の占領された星系」の解放であったが、そのうちのひとつ惑星エフレムは、フィクティヴ・ワンダラーの出現によってトプシダーが撤収したことから、報酬も「1169年10月に活性装置携行者たちがワンダラーに関して体験した」データのうち、10分の9に限定----ワンダラーの軌道に関する資料が削除されているのだ。データに欠落があることを知ってもケラマル・テソンがまったく動じないさまを見て、ダオ・リンは、調停者がもはやそれを必要としないのではないか、と疑いをいだいた。
イーストサイドへむかった《アルドゥスタール》を、再び出現したトルイラウ人の艦隊が襲う。ブルー人クローンの廃墟惑星キュルドは、貝殻船の核火災で地獄と化した。間一髪、テケナーらを救ったのは、トパルの工作員レル・オ・サン。リング人の目的地、フェルドゥール系メナーでのトルイラウ艦隊との会戦をも乗り切ったかれらは、調停者たちと謎に満ちた「後援者」の対面の幕切れを目撃する。それは、ツヴォタートラハトに出現し、テラから姿を消したホムンク! 〈それ〉はリング人に何を伝えたのだ?
レル・オ・サンは、トルイラウへと帰還する前に、銀河系に出没する〈守護者〉の艦隊の目的を明かした。すでにゲジルを手中におさめたトルイラウの支配者は、さらに、ある人物の誘拐をもくろんでいるというのだ....
天空のかけらの細片を入手したウィロムは、それが2つの情報をプシオン的に収納していることを知る。一方はかたくなに解読を拒むが、もうひとつのデータは、ある星系の座標であることが判明。銀河系イーストサイドとサウスサイドのはざまに位置する、ファリクス系。そこには、自由商業惑星ヴァールがある。
しかし、それは罠だったのだ。トルイラウの守護者の工作員は、《アネズファル》でヴァールに現われたナックを殺害、ローダンの娘を手中におさめた。きわどいところでトルイラウ人の計画を察知したことが、逆にウィロムの生命を縮めることになった。M−83からのスパイたちの使命は、「エイレーネをトルイラウに誘拐する」ことだけだったのだから。ヴァールに駆けつけたローダンらの包囲網をぬって、貝殻船は逃走。しかも、エイレーネ=イディニュフェは、自分の意志でトルイラウへ同行する決意を伝えてきた....

めざすドラゴンをみごとしとめたとき、奇妙なことが起こった。スクラビンは、急に見知らぬ世界に立っていたのだ。かれの前に立つ、奇態なかっこうをしたテラナーは、ピート・ローランドと名乗った。
「ボスにつかわされたのよ。俺っちの時間でなきゃ、殺せないんだとさ」
そう言うと、ローランドはぴかぴかの、しかし明らかに時代物の----「前ローダン」時代の----拳銃をかれに擬し、こう言った。
「コルト・リヴォルヴァー、最新型の、きわめつきの〈ピースメイカー〉さ。こいつでロシアン・ルーレットだ!」
そうして、ローランドは自分の頭をふっとばして、消えた。大事なピースメイカーを残して。それが悲劇の開幕であった。コルトには、この危険な賭博の通例とは逆に、5発の弾丸がこめられていたのだ。
スクラビンはクサマンドールに帰ってきた。ピースメイカーを携えて。かれは、荒くれどもの元締め、エプサル・クローンのラバシル・カウモにロシアン・ルーレットを挑み、敗北した。カウシモは族長イバン=メストロクに、スプリンガーは父が狂ったと確信した息子に、自分の生命を賭け、次々に死んでいった。
最後の犠牲者は、ギャロルスの通報をうけ、クサマンドールにワンダラーのシュプールありと来訪した《ハーモニー》のベオズであった。イバン=メストロクの最期を目撃したアッタベンノは、ひそかにコルトを収容。しかし、ピースメイカーは、無為に譲渡されることを望まなかった。不意に暴発した「平和をつくるもの」は、タルカンに生まれ、ローダンの友として異宇宙にまで遠征したベオズの生命を奪ったのだ。

守護者は、いまはまだゲジルの前にあらわれるつもりはないらしい。艦長は、指示があるまでトルイラウを巡航する予定だという。途上、ゲジルはいくつかの惑星を実地で見る機会を得る。
従僕としてつけられたトルイラウ人コン・ユ・スプライクの母星ハマク。スプライクの母体となった種族ハマカウは、トンボに似た昆虫種族であった。かれらは《カサデガ》を「災いの使者」と呼び、恐れていた。
ペル・エ・キットの種族、コンティード人の発祥惑星では、すでに大半が不定形のトルイラウ人タイプに改造されていたたが、予想したような不満は感じられなかった。本来のコンティード人は、知性こそ有しているものの、満足に動くことすらままならぬ植物生命体なのだ。かれらは守護者に感謝こそすれ、恨むことなど考えられないらしい。
これら遍歴の間に、数ヵ月が経過した。そして、ゲジルは、ときおり自分を「見て」いるらしい姿なき存在に気づいていた。あるいは、それこそはトルイラウの守護者? しかし、彼女は、その存在の放射する感情が、畏怖と不安であることをも察知していた。捕虜----たとえ「賓客」と呼ばれようとも----に対して恐怖をいだくとは?
そして1171年5月末、ゲジルは見えない存在の「声」を聞く。〈わたしには、きみが必要だ。だが、きみだけでは足りないのだよ、ゲジル!〉
さらに数ヵ月が過ぎ、ゲジルは新しい従僕を与えられる。クローニングされたヒューマノイド型ドロイド。名は、ヴォルタゴ。およそ従者らしくないクローンは、自分を収容した惑星キュリナムで発生したトパルの蜂起に際して、数十名の反徒からゲジルを守りきった。はかりしれぬ力を秘めたヴォルタゴ....その姿は、なぜかゲジルに、懐かしいものを感じさせるのだった。そうして、《カサデガ》はようやく進路をさだめる。トルイラウの心臓、権力の中枢、惑星メリセラードへ。
〈遺伝子の海〉と呼ばれる、いわば培養液の広大な湖のほとりの都市で、ゲジルは待った。運命の日は近い。そして、その到来を告げるように現われたのは、彼女の娘、エイレーネ! ペル・エ・キットのコマンドがふたりの解放を企てるが、《カサデガ》と、そして〈遺伝子の海〉によってメタモルフォーゼを果たしたヴォルタゴのパワーの前に敗北を喫した。
そして、ついに守護者が姿を見せる。
ヴォルタゴは両のこぶしを固く握りしめ、筋肉が緊張のあまり破裂しそうだ。
反重力シャフトへのドアが不意に開いた。ガラスのシャフトを通して、まばゆい陽光がとびこんでくる----そしてたちどころに、ひとつの輪郭を描き出した。奇妙な、喜ぶような興奮が彼女の心に転落してきた。ヒューマノイドの輪郭だ。身長は1メートル80くらい、鍛えぬかれた、骨ばった男の輪郭。
ゲジルはあらんかぎりの力で自分を遮蔽した。守護者の喜びに押し流されずに思考したかった。
決定的な示唆を、さざめきが与えてくれた。
かすかな、物のこすれる音、それとも囁きが、部屋を満たした。男の服が、鎖かたびらのように組み合わされた、長方形のプレートでできていたのだ。短い赤錆色の頭髪、そばかすのちりばめられた顔....
「ご紹介してよろしいかしら、イディニュフェ?」
ゲジルの声はかすれてひっかかり、両の手がふるえた。
「こちらは片目のタウレク。物質の泉のこちら側、最後のコスモクラートよ。とっくにいなくなったものだと思っていたわ」
男は陽光の中から歩み寄り、同時にようやく多幸症的感情の爆撃がおさまる。ゲジルはほっとした。隣のイディニュフェが大きくため息をつく。
恐れ多いような距離をおいて、男は立ちどまった。「ようこそ。きょうは喜びの日だ」黄色い獣の目がきらめき、その表情は若々しい微笑みに、固さのほとんどが失われた。「ゲジル、イディニュフェ。ずっときみらを待たねばならなかった」
「タウレク....」ゲジルはつぶやいた。「他に誰がいたというの? すべてのモラルが欠如したものが? あたなははかり知れない苦しみを銀河系にもらたしたわ。それに、トルイラウに、あるいはもっと多くの銀河にも。あなたがわたしを攫った。あなたがモノスを造らせたのよ。どうしてそんなことができたの? 権力の匂いを嗅いでしまったから? そうなの?」
「もうすこしわたしのことを理解してもらいたいね」そばかす顔が怒りに歪んだ。「わたしの行動の意味を、きみは毛筋ほどの予感すら知らぬ。あるいは、理解したくないのだ。わがなしたことは、宇宙的使命の実現のためになされたのだよ。かく行動するものは、つねに正しい。たとえ、何をしようとも」
「いつもそうやって言い逃れをするのね!」
突然、タウレクがまた微笑んだ。傲岸にも、シニカルにも見える微笑。もっとも、物質の泉の彼岸の存在を、人間的尺度で判断することはできないのだが。
「多くのことが失敗に終わったよ、ゲジル。いま、きみの助けがいる。そして、きみの助けもだ、イディニュフェ。そうすれば、なにもかも良くなる。そのとき、犠牲者は犠牲でなくなる。ただ、成果だけがあるのだ。わが成果が!」

およそワンダラーに関係する情報のすべてが、ここにあった。かつて《バジス》のビック・ブラザー・チームに所属し、後にはタルカン艦隊とともに転戦した父ノトクス・カンターを、ネーサンの記憶バンクを探る〈メタライザー〉実験で失った、若き科学者マイルズ・カンターがその責任者。
すべてのデータが5次元的につきつめられていく。時間と空間、そしてストレンジネス。ワンダラー出現時にエフレム上空に観測された時空のゆらぎは、ストレンジネスの偏差から、それが「フィクティヴ」であることを明かした。パルピュロンのハンザ商館長の撮影した写真は、願望成就リサイクラーの正体が、ヒュジオトロン....細胞シャワー装置との結果を導く。
マイルズは、サトー・アンブッシュとおなじく、ストレンジネスの偏差はワンダラーの軌道からの偏差に比例すると考えていた。もうすぐ、あとわずかのデータで、もうじきに正しい軌道が算出できるはずだ。
だが、それを望まぬものがいた。〈オクトーバー69〉と称する組織が。1169年10月に、かつての不死者たちは活性装置の返還を余儀なくされた----そして、二度と生命を延長する装置をとりかえすべきでないと信ずるものたちが! かれらは有形・無形を問わず、プロジェクト〈UBI ES〉の妨害に出る。その中でも、いわば過激派に類する男が、マイルズのチームに加わっていたのだ。
凶弾は、マイルズの生命こそ奪わなかったが、かれは両足を失った。探索は頓挫するかに思えたが、死の淵から蘇ったマイルズは、あるインスピレーションを得た。テラから4万2000光年離れたサンセヴィア系ユリングでワンダラー・マニフェステイションの観測をおこなうことで、いわゆる「五角測量」によって真の軌道を算定するのだ。そして、新銀河暦1171年11月23日、マイルズ・カンターは確信を得た。かれは、ワンダラーの軌道をみつけたのだ!
やがて----12月8日、ギャロルスからの通報がもたらされた。銀河系イーストサイドに、反応あり。「真の」ワンダラーだ! そして、ジムバン宙域に集結した、かつての細胞活性装置携行者たちの眼前に、人工惑星は出現した。直径8000キロの円板は、かれらの呼びかけには応えず、ひとつの宇宙船を吐き出した。《マザー》----シーラ・コレルのロボット船! 同乗のアラスカ・シェーデレーアは、炉座銀河から一瞬にして故郷銀河に移されたことを知る。もっとも、その間に、通常宇宙では10ヵ月が過ぎ去っていたのだが。エラートは、テスターレは? やはりアムリンガルの年表は、ワンダラーにあるのか?
東----それは〈それ〉の座たる機械都市のある方角。あえて進撃する一行とともに進んだエラートは、老いて死んだ。身をもって、4人に警告を証明したのだ。その直前、すべての記憶をとりもどしたかれは、自分が〈それ〉の意志に背いて来訪したことを明かした。ここはフィクティヴ・ワンダラー。ローダンたちに死をもらたすためだけに、真のワンダラーと重なりあって創造された罠なのだ、と!
機械都市を目前にして、いきづまったローダンたちを、〈それ〉は無慈悲にも《オーディン》へと送還する。そして、絶望した人々の前からワンダラーが姿を消したとき、探知機は、おなじポジションに14隻の宇宙船の出現を報じた。
リング人のドルフィン・シップ----調停者だ!
《シニド》の調停者ドリナ・ヴァッサーから、ペリー・ローダンに宛ててコンタクトが結ばれた。
「悲しむべき状況、とは?」ペリー・ローダンが訊ねる。
「存じております、あなたがご友人数名と、ワンダラーで虚しい時間を過ごされたことは」調停者の答える声は、あたかも一語ごとにいたましげになっていくようだった。「それから、あなたがたの旧いお仲間が、単独先行を試みて、悪しき体験をなされたことも。すべてがこうなってしまって、残念ですわ」
「ご同情、感謝する」と、ペリー・ローダンは皮肉ぬきで、「ワンダラーにおられた調停者のみなさんが、もっとポジティヴな体験をされたことを望みますよ」
「この力の球形体の超知性体にかくも近くあるというのは、ふたつとない体験でした」心酔したように、ドリナ・ヴァッサーが、「ご理解いただけると思います。あなたも初めてのときは似たようなことがあったはずですから。ほんとうに、圧倒的な」
「で、結果はいかがかな?」ローダンの肩ごしに、好戦的にアトランが訊ねる。
ドリナ・ヴァッサーは、しばしアトランの方を見やったが、まるで空気ででもあるかのように、遠くをみつめていた。アルコン人のリング人嫌いは、つとに銀河に知られている。それから、緑の瞳はふたたびローダンへと、まじまじとむけられた。
「謎です」と、彼女はアトランの問いに答えた。「ひとつの謎」
「謎?」ペリー・ローダンはくりかえした。
「そう、謎です」ドリナ・ヴァッサーは肯定して、「わたしには理解できぬ謎。また、わたしたちに定められたものでもない。〈それ〉はわたしに、それを定められたものに伝えよ、と依頼されました。あなたがたに」
「いったいどんな謎なのですか?」
ドリナ・ヴァッサーは、文章を記憶から呼び出す必要があるように、わずかに間をおいた。しかし、調停者というものをよく見知っているペリー・ローダンには、そう見せるためであることがわかった。
「〈それ〉はこのように伝えよ、とおっしゃられました」そう言って、ドリナ・ヴァッサーはもう一度間をあけてから、「汝らのなした歩みのひとつひとつが、目標にあらざる点へ、そして望まぬ状況へと、汝らに残されていると信ずるより2000倍も近づけたのだ。これが、〈それ〉から伝えるよう申しつかった正確な内容です。この言葉たちが、あなたがたにとり深い意味を授けんことを。使命は果たされましたので、動機に則った形でお別れいたしましょう」
「待て!」アトランが叫んだ。「おまえたちが〈それ〉から知ったことは、それで全部ではあるまい」
「ええ、もちろんちがいます」無邪気な顔でドリナ・ヴァッサーが答える。「ですが、他のすべてはあなたがたに定められたものではなく、わたしたちだけの問題ですから」
最後の言葉の響き終わらぬうちに、連絡は一方的にうちきられていた。《シニド》や他の調停者の船と、もう一度無線でコンタクトをつける試みはすべてが頓挫した。
それまで密集体形をとっていた14隻のドルフィン・シップが、それぞれの方角へ、速度をあげてスタートする。
「それで満足すると思うなよ」押し殺した声で、アトランが言った。「われわれが、甘んじて受けるとでもいうつもりか」
「だんだんと自分でも信じる気になってきましたよ、わたしは血のめぐりが悪い、ってね」と、レジナルド・ブル。「しかし、はっきりいって、〈それ〉が伝えさせたなぞなぞ、何のことだかわかりますかい?」
「われわれ、どのくらいワンダラーにいた?」アトランが訊いた。
「ほんの4日ですが」と、ブル。
「オーケイ、では、それに2000を乗じてみたまえ。そうすれば、われわれにとってどれだけの時が過ぎ去ったのかわかる!」
「ですが----20年ですぜ!」
「ご名答だ」アトランはうなずいて、「ほぼ正確に20年。細胞シャワーの与えた62年から、〈それ〉はそれだけを抹消したのだ」
ブルが理解するまで、少しかかった。
「40年だって、まだまだ、相対的にいえば長い期間ですわ」と、ようやく言う。
「誰が保証してくれるのだね、〈それ〉がその期限をもう一度縮めたりしない、と?」

「店といわれてまず本屋が出てくるあたり、なんかなさけないなあ」
「現われては消え、かくれてはまた『いないないばあっ』と顔を出す、大宇宙の移動書店----ワンダラー」
「いやいや、ストーリーだって負けず劣らず、ぐるぐるてどろどろ迷って出るし」
「ただただ生命がかかってるローダンたちだけが、マジ」
「強壮剤と栄養剤の常用者となりはてたアトランが哀れを誘ってしまうという....」
「それにひきかえ、しょせんはヒトごとのまわりの連中....」
「遊んでるだけのサトーくんをはじめとする、マッドサイエンティストたちとか」
「ノトクスとマイルズのカンター親子。カンター(父)は、意識分離機械メタライザーでみずからネーサンのメモリ検索を試みてぼけぼけ。かたや息子は怨恨から両脚をなくしながらも、ワンダラーのばらまいたゴミを漁る執念は衰えない」
「すなわち5個の粗大ゴミ」
「〈頭の悪くなる機械〉、〈爆弾〉、〈わたしは誰?〉、〈全弾ロシアンルーレット〉....それから?」
「それから、ホムンク。実は以上が、ワンダラー位置測定の〈五角測量〉....三角測量の五次元版の基礎データ。とはいえ、こんな程度でとりあえず場所が計算できるというのでは、ワンダラーの神秘も底が浅い」
「それでも、間口をくぐるといつのまにやらフィクティヴ世界に転移させられてたとゆう....やっぱり、奥は広かったってことですかね」
「ワンルームのはずなのに、戸口の向こうは、歩いただけ生命が縮むという老化の廊下。ひっでー間取りである」
「えー....ところが、裏口からなれなれしくあがりこんで、〈それ〉と対面したヤツらなんかもいますよね」
「歓迎・リング人御一行様!」
「本日は当わんだらーを利用いただきましてありがとうございます」
「なんだかんだとワンダラーのガイドブックを欲しがったと思えば、そのうち『永遠の生命は害毒だ』とかいうお説教をぶったりして、んでも、けっきょく〈それ〉のお客さんなんなんだもんな。さすがは舌先三寸」
「さて、んなところで事態もそろそろ進んでいいころで、だからといって話がまとまりはじめると途端にスケールが小さくなるのは、もうおなじみ」
「まあ、とりあえずリング人の発祥の秘密がわかってしまう....」
「ワンダラーでありがたーいお話を拝聴した調停者たちが、それぞれの生まれ故郷へ帰るのが発端」
「そして、ついに明らかになる、禁断の林檎の惑星リンゴラとリング人のアダムとイブの物語」
「道は、ワンダラーの頭の悪い時計で登場したデマロンくんの時代、1万1000年の昔につながる」
「おーい。ところで、たーちゃんはどーなるんだ?」

"WANDERER WANDERT" / 迷走惑星ワンダラー
1991/5/15-1992/12/15 r.psytoh with y.wakabayashi
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