
現在はすでに1173年4月。3年半の歳月にもかかわらず、活性装置を奪われ、ようやく細胞シャワーを許された「元」不死者たちは、いまだに〈それ〉の誤りを正すどころか、精神集合体との対面すら果たせずにいた。
現われては消える迷走をつづけるワンダラー....数度にわたって肉薄こそしたものの、テクマ星域でローダンが「デマロンの時代」----およそ1万1000年前のアルコン全盛期----を体験したそれは「フィクティヴ」であり、プロヴコン・ファウストでは〈トルイラウの守護者〉すなわちタウレクの妨害によってワンダラーの実体化が不完全だった。銀河全域にばらまかれたシュプールをたどって到達した1171年12月のときは、新たに活性装置を分配されるリング人たちにしか門戸が開かれず、いまのところ最後の遭遇は、人工惑星のこれまで知られざる軌道の果て....アンドロメダにまで及ぶ長駆によって実現したが、それも過去からのできごとを追体験させられただけのことだった。
かつての島の王の博物館惑星ヒストリー上空に出現したワンダラーで、エルモ・デリムなるテフローダーが、〈それ〉の使者----エルンスト・エラート!----の手から14基の活性装置を与えられる....わずか後にミロナ・テティンの手に渡り、島の王の誕生を呼ぶ永遠の生命を。
「14」----それは、新たな「選ばれし者」である、活性装置を得た調停者の数と等しい。デマロンの時代に遭難したアルコン人の末裔であることが明るみに出たリング人のエリートたち。そして〈それ〉の力の球形体の管理者をもって自認する調停者たちは、新秩序の旗印のもと、銀河系の再編へむけて活動を開始している。
この迷走に終わりはあるのか? 〈守護者〉タウレクの告白から、超知性体の異変の背後に、 700年前の〈ドリフェル・ショック〉が関係していることをつかんだローダンではあったが、解決への道はなお見いだせない。
その道は、永遠の生命の岸辺へとつづいているのだが....

幸いにも、ゾム人の横暴をこころよく思わないムリロン人たちの助けを得て脱走に成功したアラスカは、かつての盟友フェト・レブリアンの後継者----現在〈デソト〉の称号を帯びるムリロン人の統率者と対面。十二銀河を自由に往来するパーミット(通行許可証)を入手できた。
一方、オファル人の母星マルダカーンに到達した《ハーモニー》のサラーム・シーンは、おのれの種族が、永遠の戦士イジャルコルとデソト=レブリアンを助けて十二銀河再建に尽力した功績から、現在ではゾム人やムリロン人と並ぶ権勢を有することを知る。そして、デソトと対立したストーカーがいまではエスタルトゥの力の球形体から追放された身であることを! 復興の礎となった〈エスタルトゥ神殿〉存続をめぐる陰謀を、かつて自らの作曲した「死のハーモニー」に打ち克つことで排除し、マルダカーンのパニシュ・パニシャであるキオン・ラナーとの信頼関係を樹立したシーンは、「生命の讃歌」をあやつる史上最高の歌手としてかつての故郷に受け入れられた。まもなく現デソトの援助で《マザー》が合流、特別パーミットを獲得した一行は、超知性体エスタルトゥの座たる〈暗黒の天空〉をめざして出発する。
そして....転送機ブリッジの使用を許されなかったロナルド・テケナーの《ロビン》もまた、ようやくアプザンタ=ゴムに到着していた。ストーカーの残した〈ウォー・ボックス〉----実はムウン銀河の奇蹟〈失われたヘスペリデスの贈り物〉の集合体!----を乗せて。かつての網を歩む者の本星サブハルで遭遇したヴィーロノートの末裔たちは、ほとんど十二銀河の状況に関する情報を持っていなかった。かれらは依然「ゴリム」----異邦人----なのだ。そうして、やはりゴリムであるラオ・シンのタルカニウムで、テケナーとダオ・リンは猫族の支援を得ることに成功する。オーグ星系に建設された、〈暗黒の天空〉への唯一の出入口たる〈アプザンタの門〉に進出、《ハーモニー》と《マザー》とも合流を果たした遠征隊は、エスタルトゥの心臓への扉をくぐった。
ついに到達した惑星エトゥスタル。そこでストーカーの道は終わりを告げる。かれはエトゥスタルの植物たちに呑まれ、姿を消した。「不死!」という言葉を残して。そして、居合わせた者たちは、超知性体の声を聞く。
----「解答は活性装置にあり!」と。

永劫の闘争の哲学と戦士体制の崩壊後、ストーカーは永遠の戦士イジャルコルの「影」となった。ソト・ティグ・イアンとの決闘の傷が完治せぬままだったこともあろうが、やはり、かれは本質的に事態の背後にひそむ「策士」だったのだ。
十二銀河の影の支配者プテル人シングヴァ族の大粛清による惑星エトゥスタルの解放にはじまり、かれは力の球形体再建のため奔走する。超知性体エスタルトゥの残したハイテクの塊〈失われたヘスペリデスの贈り物〉の再統合や、エスタルトゥ緒族の穏和な再編のためオファル人をムウン銀河へ大量に動員することをイジャルコルに進言したのは、実はストーカーその人であった。
しかし、イジャルコルの死の前後から、もうひとりの「表の」立役者〈デソト〉との間の緊張が次第に増大してくる。細胞シャワーの効力が切れ、超知性体の帰還を見ることなくイジャルコルが世を去ると、表面的にはすべての責務はデソト=フェト・レブリアンの双肩にかかることとなった。かれは自分がストーカーの傀儡ではないかという考えを忌み嫌った。ハウリの手中に落ち、十二銀河にとり重大な脅威となったクロッツ----《ナルガ・プール》を、ストーカーが二重スパイを演じる奸計によって撃沈し、その功績のすべてをレブリアンに譲った事実さえ、不信をぬぐいさりはしなかった。
さらに、かつてのソトの〈贈り物〉に対する影響力もアダとなった。そして、確執に疲れ局所銀河群への遠征を決めたとき、疑惑の確証をつかんだと信じたデソトによって、ストーカーはトシン----エスタルトゥから追放されし者----と宣告され、オファル人の歌によって活性化されるプシオンの刻印を背負う身となった。まさにそのとき超知性体が惑星エトゥスタルに帰還したことも、かれの冤罪を解く契機とはならなかった。
エスタルトゥとの対面さえかなえば----しかし、度重なる試みはすべて失敗し、やがてクローンであるおのが寿命のわからぬことに、ストーカーは不安をおぼえた。今回も果たしえなければ、二度と〈暗黒の天空〉への到達さえかなわないのでは....と。だが、それでもなおかつすべてを隠して《ロビン》の遠征を画策したところに、ソト・タル・ケルの真骨頂がある。最期のそのときまで、かれは「陰謀の天才」であった。

そのころ、銀河の星の海を行くものすべてを恐怖させる海賊が出現していた。かれの名はロワ・ダントン! 活性装置を失い自暴自棄になったローダンの息子は、荒くれどもを集めて無法の限りを尽くしていた。しかし、そのすべてはひとつの目的を持った大芝居なのだ----活性装置を持つ調停者の側近となるための。
次第に過信の罠に陥りはじめた調停者のひとりケブ・ジャンダヴァリは、ロワの資質を惜しみ、「調停」することなく自らの腹心のサークルに加えることを望んだ。ロワは当初のもくろみどおり、リング人の中枢に参入し、その暴走を抑えつつ情報を入手するべく行動する。その最大の障害は、超重族のパイラクチャー。ロワに異常なまでの敵愾心を燃やすこの女戦士は、超重族の一派パリクチャ人の軍団を率いてケブのために汚れ仕事を一手にひきうけていた。
パイラクチャーの残虐性に対抗しつつケブ・ジャンダヴァリの動向を探るロワが、やがて行きあたったのは、ザンド・ゲナルトという男だった。自称「キーマ研究家」であるリング人は、惑星リンゴラの北半球カイボル大陸ゾナイ地方で、デマロン時代の遺跡を発掘していた。そして発見された一連の壁画----ザンドはそこに、リング人の魂〈キーマ〉の秘密を読み取ったのだ。
キーマとは何か? ひとりのリング人がこの世に生まれ落ちると、一本の苗が植樹される。キーマの植え込みである。この苗と新生児は、把握しがたい共生関係にあり、互いが互いを投影しあう。苗が健やかに伸びていくのは、リング人が正常に発育していく証であり、逆に苗が枯れるとき共生者の寿命もまた尽きるのだ。しかし、この奇妙な連体はどこから生じたもので、どんな意味を持っているのか、知るものはない。
ザンド・ゲナルトは、リング人最大の謎の解答をつかんだのだ。だが、かれはその内容をロワに明かすことはできなかった。キーマ研究家は、パイラクチャーの兵に拉致され、謀殺されてしまったのだから。「誤てる鎖と、彼岸の枝----現実との結びつき....」それが、かれの最期の言葉だった。
ザンド亡きいま、キーマの秘密を握るただひとりの存在は、キーマ研究家の旧友アドノル・キルファント。リング人にはごく稀な言語障害をもって生まれたがために調停者になれなかった、大いなる才能(タレント)の持ち主。それがアドノルであった。かれは、いわば異端を歩んだリング人。ザンドの存命中、調停者たちによってゾナイの洞窟が封鎖されるより以前に、アドノルは太古の壁画を直視した。言葉ではなく、イメージをあやつる道を選んだかれは、そこに感じとった何かを表現するために、ひとつのオブシェを創造した。
〈キーマ・ログ〉....キーマの測定装置。極彩の光の描き出すイメージの中に、リング人はおのれのキーマと対面する。キーマとは何か? またしても伸びるパイラクチャーの魔手からアドノルを救ったのはロワ・ダントンであった。しかし、アドノルの持つゾナイ壁画の写しは、テラナーの目には何の変哲もないものに映った。リンゴラに不時着したアルコン人とテフローダー。シンクロン三惑星建造の失敗によりテシャール星系を襲ったカタストロフから逃げまどう人々。そして、溺れる者のつかむ藁にも似た、一本の小枝にすがりつくリング人の祖先たち----キーマの樹である。いったいそこに、どんな秘密が描かれているというのだろうか?

モノス失墜後まもなく、ギャラクティカムが再興された。創設当時のギャラクティカー意識が、モノスによる隔離分断政策でおそらくは雲散霧消している1147年の状況を考えてみると、再編までさまざまな紆余曲折があったことは想像に難くない。そもそも、何年にこの銀河連合国家が再結成されたのかも記述がない。しかし、1149年の議事録からの抜粋等もあるため、独裁崩壊から比較的すみやかに現体制に移行したようにも思える。
だが、モノスの方針は「分断し、雑多な文明段階に差別化し、さらに内部に抗争の芽を植えつける」徹底したものだった。それを無理に平等かつ最新の技術水準へもっていこうとしたため、いまだに軋轢が生じる因となった。トプシド問題はその典型である。
解放当時、トプシドは三国に分かれての冷戦状態にあった。それもテラの旧暦で20世紀に相当するレベルである。三国の政治体系はそれぞれ異なり、宗教問題も介在した。それらの緒事情をなおざりにしたまま、星間文明への参入を求められたのである。三国の指導層のみならず、一般のトプシダーの困惑も十二分に察せられる。しかも、先行してギャラクティカムに加盟していた種族の思惑もからみ、三国分裂状態は解消されなかった。
表面的平和の時代に突入したトプシドでは人口が爆発的に増加したが、すでにギャラクティカム頼むに足りずの意識が浸透していた三国の指導者たちは、それまでの軍事政権のやりかたそのままに、テラおよびアルコンの植民惑星を強襲・占拠する事態になるのだが....これもモノス時代のツケのひとつだろう。
クローン蔑視も重要な問題である。モノスの補助種族的存在だったカンターロが遺伝子操作に長じていたため、「治安」維持にはクローンが多く用いられた。かれらに選択の余地などなかったのだが、いろいろと悪しき経験を持ったギャラクティカーたちは、クローン=モノスの手先の図式がいまだに脳裏から去らず、存命しているクローンの多くは言われなき差別を受けているといえよう。ギャラクティカムの救済措置も充分とは言えず、そのため、各地で紛争が絶えない。
また、遺伝子実験の失敗作として、旧銀河障壁の中間星域(クロノパルス・ウォールとウィルス・ウォールのはざま....ノーマンズランドと通称される)に配流されたクローンたちは、ギャラクティカムへの参加を認められる例もあるものの、たいていは放置されれた状態にある。かれら「遺伝子廃棄物」は、概して短命であり、すでに半数以上が死亡しているらしいが、だからといって見捨てられたまま死滅を待つのが正しいわけはない。ドルムバルのように援助を拒むクローンたちもある。しかし、かれらもまたモノス独裁の犠牲者なのだ。

ティフラーは知らない----バリノルは《ロビン》の遠征を妨害した2隻の三叉船に乗っていた6体のひとり。〈暗黒の天空〉でエスタルトゥの言葉を漏れ聞いたナックたちは、いまもふたつの力の球形体のはざまに横たわる4000万光年をこなしているころ。バリノルだけが、時空褶曲を駆使して先行を試みたのだ。では、かれの狂気はその壮挙の失敗を意味するのか。それとも....
おなじころ、ヒューマニドロームにあったペリー・ローダンのもとをナックのパウナロが訪れ、奇妙な要請を告げていた。ギャラクティカムを動かし、われらに大宇宙船を貸し付けてほしい----それはノビムの事件が契機となったとも思われた。そう、ギャロルスはバリノルの出現に反応したのだ。死したナックは、おのが種族の使命、捜し求めるワンダラーの何かに、時空褶曲のかなたで接触したのではないか....?
フルゲンが到着したときには、すでに手遅れだった。調査を進めていくうちにも、争いは激化していくばかり。暴力がアスクロを席巻しかけたそのとき、《ヴァロアル》が現われたのだ----調停者アラムス・シェーノルの船が。力強く語りかけるその声のあるところ、争いは鎮火していった。「炎の舌」の異名をもつリング人の力を、フルゲンは目の当たりにする。だが、フルゲンの調査は思わぬ結果を明らかにした。相争う二勢力の上に何者かが存在することをプロフォス人はつかんでいた。転送機を使ってアスクロに出入りしている存在。その残した髪の毛が、他ならぬアラムス・シェーノルのものであることが判明したのだ!
紛争をみずから起こし、「調停」する....銀河における影響力を拡大するために、これ以上確実な陰謀があろうか。しかも、調停者は秘密を知るフルゲンを精神的廃人にすることで、証拠の湮滅をはかった。リング人が「殺人」を犯そうとしたのだ。幸いフルゲンは助かったが、駆けつけたアトランは、しらをきる調停者を「病人」と決めつけるのだった....
一方、アスクロでの事件の後、アトランは細胞活性装置をもたぬ調停者たちとひそかにコンタクトをとっていた。中でも、リング人の歴史を知るうえでテラナーに協力的だったハギア・スコフィはアルコン人のもたらした記録に驚き、確認と状況の修正を約束するが、事態はすでにどうしようもないところまで来ていたのだ。
M−13球状星団の、アルコン植民星であるシュレノ星系第10惑星ヴォルトリーでひとつの事件が起こる。そこを支配する二大家系、ヴォレロン家とトリョラ家との間に紛争が生じた。リング人三頭支配者のひとり、調停者ドリナ・ヴァッサーが解決のため来訪するが....それは罠だった。ヴォルトリーの両家の家長以外誰も知らない、調停者をおびきよせる餌として起こされた争いだったのだ。両家長は、熱烈な皇帝復権論者。アトランがゴノツァル9世として即位することを拒んだことを嘆き、敬愛する「水晶王子」のため細胞活性装置をとりかえそうとしたのである。
急遽駆けつけたアトランは、ドリナ・ヴァッサーを解放、活性装置をうけとることも拒絶する。こんなやり方は望むところではない、と。ところが、それからまもなくケブ・ジャンダヴァリ指揮下の超重族艦隊がシュレノ星系を強襲、ドリナとアトランの制止もむなしく、ヴォルトリーを火球に変えてしまった----何も知らない人々ごと。
メディアを使用してのスキャンダル攻勢を望まなかったアトランではあったが、陰にまわっての煽動ならともかく、惑星ひとつ消してしまえばもうどうしようもない。それまで築かれてきた調停者とリング人に対する信頼は、嵐の前の木の葉のようなもの。さらに、報道統制下で事実を暴露しようとしたハギアら3名の「不死ならざる」調停者とアドノル・キルファントが、キーマ障害者の惑星テフォン送りの判決を受ける。
暴走するケブ・ジャンダバリを止めようとテシャール星系リンゴラに駆けつけるロワ・ダントンは、パイラクチャーの妨害をうける。かれの前に姿を現わしたドリナ・ヴァッサー。調停者を、そしてリング連邦を統べる3者のひとりであるはずの彼女が求めたのは----テラへの亡命であった!

ペンタスコーピア計画も、かれらがモノス時代から進めてきたプランのひとつ。ナックは「超空間を見る」種族である。それしか見えないと言っていいだろう。かれらの言う「より外なる空間」....つまり、われわれの四次元空間連続体を「見る」ためには、技術的補助手段を必要とする、不都合きわまりないその視覚も、超空間を住処とする超知性体をみつけるには最適であり、事実そのために、そのようにエスタルトゥに養成されたのも、すでに衆知のこと。それなのに、5万年を費やしていまなお〈それ〉を見出せないのは、自分たちの絶対数が不足しているからだ、とナックは考えたらしい。
モノスのもとで様々な強化クローン製造を援助したおり、ナックはある因子をDNAにもつビオントを調製した。その大半は「遺伝子廃棄物」として銀河障壁のはざまに追放された。障壁突破の際ローダンたちが不時着したキョンや、アトランとアラムス・シェーノルの火花の散らし合いの部隊となったドルムバルも、そういったスラム惑星のひとつ。そこに現在も暮らしているビオントの中に、ごくまれに「才能」をもつ者が存在する。どのような才能かは判然としない。ナック以外にそれとわかるのは、かれらにはリング人の「調停」が効かない----ちょうどナックと同じように----という一点だけだ。
ドルムバルでのようにひそかに回収されたビオントは再調製を受け、ペンタスコープ----超空間スカウトに生まれ変わる。かれらの能力は、テレポーターのそれに近い。異なるのは、ペタンスコープたちが超空間----5次元に「一定期間」滞在し、「周囲を認識」できるという点だ。その際、かれらはナックと同様の視野を持つらしい。
ただし、ペンタスコープは、ビオントの常通り、生殖能力をもたず、短命。数百年をかけて準備されたこの計画が数年もたずに終了してしまうのは明らか。エスタルトゥからの無謀なバリノルの時空褶曲移動など、どうやらナックにも焦りがあるようだ。アンブッシュの最新報告では、とうとうワンダラーの所在をつかんだらしいナックたちだが、エスタルトゥの生還も確実になったいま、この異質なる種族は、なんのために〈それ〉を捜しているのだろうか?

「超知性体の与えた使命を果たせるほど、われわれは成熟していない。どうしても不死をとるというのなら....いざというとき、止められるのは君だけだ、ドリナ」
かれが亡くなってもうじき1年....ガリョー・カイマルはこれを予感していたのか。そして、彼女はなぜ、これまでこの言葉を忘れていたのだろう。いや、かれの墓前に立ったとき、ドリナはこの言葉をこそ愚かしいと思った。おぼえている。
活性装置が? おそるべき考えに思いいたったとき、激痛が襲った。そして、奈落に転落するような感覚----。めざめたとき、彼女は世界が変わったことを知った。いや、そうではない。彼女が変わっていたのだ----不死であったあいだ。彼女は、ワンダラーで〈それ〉の告げた言葉を思い出した。「汝らの生まれし場所へ還るのだ!」
激痛と転落は、度々訪れた。たぶん、活性装置を帯びればたちどころに直るだろう----だが、そうしてはいけない。母星リンゴラにもどったドリナは、超重族が厳重に封鎖しているゾナイの洞窟に飛ぶ。ザンド・ゲナルドが発見し、アラムス・シェーノルとケブ・ジャンダバリが封印した太古の壁画を見るために。
キーマとは何か? 確固たる大地。キーマの喪失とは、よって立つ大地を失うこと。しかし、それはキーマの本質を何も言い当てていない。壁画は語っていた。太古の舞踏言語で----「虚無に襲われしものよ、これぞ虚無をはらわん錨なり。よって立つ大地を汝にとりもどさん」と。虚無をはらう錨とは、キーマの苗木であった。では、虚無とは....壁画を子細に検分したドリナは、背景に描かれ、破局を表すグレーが虚無であることを知った。虚無とは、超空間! 11000年前のカタストロフで、リング人の祖先は超空間に対する異常な感受性を持ってしまった。かれらの精神では把握しえぬ世界を「見る」能力を知らぬまに得て、発狂する。それを救ったのがキーマの苗....やはり破局の際、超空間エネルギーの「避雷針」としての役割を負った植物。
キーマとは、リング人が生来負いつづける「病」なのだ。そして、ドリナたち調停者は愚かにも、常時高次元インパルスを発しつづける装置を、永遠の生命の源として身に帯びていた。活性装置の安定化作用によってかろうじて生きてこそいるが、いつかかれらのキーマのキャパシティを超え、正気を失うときがくる....いや、もう充分常軌を逸脱しているのだ。
ゾナイから戻ったドリナは、同僚たちの説得を試みるが、活性装置のインパルスの影響下にあるかれらには、彼女の言葉が理解できない。それどころか身の危険をおぼえた彼女は、ロワ・ダントンの《モンテゴ・ベイ》でリンゴラを脱出するしかなかった。
アラムス・シェーノルたち「不死」の調停者たちは、すでにほとんどその「タレント」を喪失していた。かれらは今後数年のあいだテフォンで療養しなくてはなるまい。そして、リング人を代表する形となったドリナ・ヴァッサーは、当分のあいだ銀河政治の舞台から身をひくことを公式に発表した。

シンクロン三惑星計画の失敗でテシャール星系を襲った破局のとき、幾名かのアルコン人ないしテフローダーが、生身のままで超空間に放り込まれ----そのうち何人かが奇蹟的に生還した。かれらの共通点は、無我夢中である植物を握りしめていたことだった。
超空間の影響を、避雷針のように流し去る、アースの役割を大自然から与えられた植物、キーマである。実はキーマも、カタストロフの際に突然変異したもので、挿し木でしか殖えることのない異形の植物なのだ。
奇蹟的に生き延びたとはいえ、高次元の影響はまぬがれなかった。かれらは超空間を、それと意識することなく「見る」能力を身につけていた。ナックとちがい、人間の悟性では5次元を「直視」できるはずもなく、狂気を避けるため、いつしかキーマの苗木との共生関係が生まれる。
宇宙線がつねに地球にふりそそいでいるように、5次元性のエネルギーも随所に存在するが、その程度のものはキーマの苗木が超空間に還元してしまう。しかし、宇宙船の遷移や転送機ジャンプなどの突発的・膨大なエネルギーは、処理しきれずに容量オーヴァーでリング人の悟性が「パンク」する。これをキーマの喪失と表現しているのだ。
そして、調停者などの能力の源「タレント」は、無意識に見える超空間の事物を、言葉によって整頓する才能なのだ。超空間では、こちらの世界でいう「魂」=精神の領域が、物質的な形態をとって存在しているから、言ってみれば「言魂」使いである。これは、現実との境界があやふやなほど発現しやすい----つまり、幼児期に。成長につれ、現実世界との結びつきが強まり、安定するほどタレントは失われていく。
こうしてみると、リング人の「調停」がナックに効果がなかったのも納得がいく。ナックは超空間を「見て」「把握」する種族である。調停者の言葉の「裏」にあるものがすべて察知できたということだろう。

一方、ナックたちの計画がとうとう動き出した。超空間スカウトのひとりが、ついに求めるものを発見したのだ! ギャラクティカムから借りうけた《カタリナ・モラニ》を用いて〈最も内なるもの〉----〈それ〉のもとへ向かうのだ! 局所銀河群全域から、すべてのナックがアッカーティルに集合する。スタートは12月3日。
交換条件としてナックに同行許可をもとめたローダンたちもアッカーティルに到着。軽巡《デューヴィル》で《カタリナ》と三叉船団とともにイーストサイドへと発進する。また、連絡要員として《カタリナ》にサトー・アンブッシュ、軽巡にパウナロの同乗が定められていた。
そして、銀河中枢部。わずか数名の生き残った超空間スカウトたちの偵察によって、ワンダラーの所在は確認された! 《カタリナ・モラニ》は数百体のナックを乗せて、超空間へ突入----そして、わずか7光年の距離に出現した。バリノルのようにすべての補助機器をかなぐりすて、麻痺状態の異宇宙生命体を乗せて。通信が届く。「....こちらエルンスト・エラート。ナックを援助されたし。これは〈それ〉の苦しんでいる、同様の運命。〈それ〉は要請する....」通信は切れた。ワンダラーが狂気の泉----?
《カタリナ・モラニ》は惑星タフンのメド・センターへ移送され、ナックとサトー・アンブッシュ、そして《カタリナ》へテレポート後、同様の症状に陥ったグッキーは、治療を受ける。ようやく患者たちが小康状態になった12月24日、朗報が届いた。トルイラウから《バジス》が、そしてエスタルトゥから《ロビン》が帰還したのだ。《バジス》は思わぬ客を連れ帰った。コスモクラート・タウレクの従者、サイバークローンのヴォルタゴを!
ヴォルタゴはローダンをいざなう。すべての元凶を知るために、ドリフェルへ! パウナロの三叉船《タルファラ》は、異宇宙ウクスバターンの回廊を抜け、たちどころにエスタルトゥにたどりついた。閉鎖されたはずのドリフェルの「門」....しかし、それは一面だけのこと。超空間を知りつくしたナックには造作もない。そして、かれらは蓋然性の世界をめぐり、真相を知る。
ある確率の未来....ヴェガ星系に巨大なエネルギーが存在する。それは、物質の沼。それも、〈それ〉なのだ! タウレクが〈それ〉を物質の泉に変えるためにドリフェルを操作したとき、邪魔な情報を収めた情報量子をコスモヌクレオチドの辺境に集めた。そこはいわば廃棄物集積所。やがてプシクスはそこで消滅するはすだった....ドリフェル・ショックさえなければ。ヌクレオチドから吐き出された「負のプシクス」は、対となる存在をみつけ、殺到し....吸収された。そう、〈それ〉に! 負の情報量子の塊こそ、超知性体の時間感覚を狂わせた狂気の泉なのだ。
そして、もうひとつの確率世界。タルカン、ハンガイ、カリフ星系ナンサル。《タルファラ》はナックの母星上空に、膨大なエネルギーの凝集を探知する。超知性体エスタルトゥが、マイクロ・ブラックホールを創造しつつあるのだ....後のアナンサル、ナックの超感覚の源泉を! そしてパウナロは、知性と5次元の視界を有する最初のナックの誕生を目撃する。エスタルトゥが、かれに使命を授けている。〈それ〉を捜し、そして....
ローダンらは、2月末にテラに帰到した。〈それ〉を負のプシクスのもたらした狂気から解放しなくては----。だが、方策を求め奔走する人々を嘲笑するかのように、ギャロルスが警報を発する。新銀河暦1174年3月7日。もとの冥王星軌道の外に、ワンダラーが現われたのだ。

異宇宙タルカンでローダンが遭遇した組織ヘクサメロン。宇宙の収縮を、次なる宇宙への再生のプロセスとみなす6人の領主のうち、ローダンがまみえたのはアフ=メテム(火炎の領主)のみ。ゲジルを誘拐して、トルイラウの守護者の一方を担ったアス=レテルも領主のひとり。だが、こちらの宇宙では力のほとんどを制限されていた。かれらのさらに上位にヘプタメルなる超知性体クラスの存在がいるらしいのだが....ヴォルタゴが物語ったのは、かれら7者の歴史であった。
はるかな太古....しかし、すでに収縮の一途をたどっていたタルカンに、7人の存在があった。〈白き断裂〉の彼岸の勢力より命を受け、タルカンに生命を播種する----力強き者たちが!
だが、かれらは、ちょうどバルディォクたちのように、おのれの使命に疑念を抱いていた。そこに現われたのがクズポミュル、カオタークである。この宇宙はすでに滅びへと疾走している、音信不通の主人の言いなりに生命を育てて何になる、とカオタークは説いた。おまえたちは見捨てられたのだ、と。
7人の中でリーダーと黙されていたシリクジムが、まず屈した。かれはクズポミュルから、精神知性体としての存在と、超知性体級の能力を手に入れた。そして、同様の「パワー」を他者に与え、また奪う力を。シリクジムはつかのま、タルカンと一体となる。かれはタルカン----タルカンがかれ----死に、そして再生する。もう一度その一体感を味わうことが、かれの目標となる。
他の6名を従えたシリクジム----いまや「7日の主」シキム・マルカー----は、クズポミュルが去る直前に残した教えにならって、宗教を旗印にする。「最後の6日間」の哲学である。
そして、われわれの宇宙メーコラー。およそ1000万年前、局所銀河群のいずこか知れぬ銀河〈アムリンガル〉で開催された「公会議」にシキム・マルカー=ヘプタメルが姿を見せ、タルカンの領有を宣言したという。タルカンとこの宇宙にどのような関わりがあるか、以前明らかでないが、タウレクはこの物語が、「近い将来重要になる」と語ったとされる。
なお、ヘクサメロン構成者は以下の通り。

ようやく人々は悟る。負のプシクスは〈それ〉から時間感覚を奪っただけではなかった。情報量子中に秘められた恐怖の未来像が現実時に結実せんとしている。〈それ〉は物質の沼へと変じつつあるのだ!
ここにいたり、ローダンたちはひとつの決断を強いられる。《ロビン》遠征隊がエスタルトゥから持ちかえった唯一の回答----「解答は活性装置にあり!」----に一縷の光明を信じて、14基の活性装置を携え、ワンダラーへ行くのだ。あるいは、それが不死との永遠の訣別であろうとも。かつての不死者たちは《エイドロン》でテラをスタートする。わずか4年半前に、狂える〈それ〉に活性装置を返却するためにワンダラーにむかった、その同じ船で。
しかし、ワンダラーはかれらを拒んだ。あるいはもうすべて手遅れで、〈それ〉には救いの手に応える力さえ残されていないのではないか----戦慄とともにローダンらがそう信じかけたとき、かれらが到着する。ナックが。〈それ〉を捜す使命を帯びたものたちが。銀河中枢部での事件の後、アッカーティルに帰り、タルカンの母星と同じように衛星であるマイクロ・ブラックホールの波動を浴びて回復を待っていた異宇宙生命体たちが駆けつけたのだ。
いまは〈それ〉探求者たちの能力に望みを託すしかない。葛藤を押さえ込み、ローダンはパウナロに14基の不死を手渡した。新銀河暦1174年3月31日----局所銀河群に残る 290体のナック全員が、《カタリナ・モラニ》でワンダラーに消えた。そして、長い待機がはじまる。
ワンダラーに変化はない。本来なら数千年、数万年かかるプロセスが、〈それ〉の内で猛烈な速度で進行しつつあるはずなのに----。ローダンたちは《エイドロン》で待ちつづけていた。そして、5月15日、旧約聖書にいう「怒りの日」にも例えられる一日がはじまる。 はじめ、ローダンは細胞シャワーの効力の切れる瞬間が訪れたのかと思った。しかし、そうではなかった。〈それ〉がおのれの時間をとりもどさんとする努力が、時空そのものに影響をおよぼし、蓋然性の世界が現実と交代せんとしているのだ。あるいは、ペリー・ローダンすらいないかもしれない世界に....そして、《エイドロン》の人々は、ワンダラーが爆発するのを目撃する。
....閃光は14回、生じた。「14」! では、ナックが成功したのか....? ローダンは異時間平面の顕現化する危機がすぎさったことを本能で感じた。そして、探知機が、ワンダラーから1隻の船が離脱したことを伝える。《タルファラ》....パウナロが帰ってくるのだ。エスタルトゥから与えられた使命を果たして。

それは、エルンスト・エラートの姿をとって訪れた。超知性体の使者。「ペリー・ローダンとアトランよ。〈それ〉は15の不死を用意している。4日以内に13人の候補者を伴いワンダラーへ来たれ」と、かれは告げた。該当する存在を、ローダンは知っているはずというのだ。
誰が永遠の生命を得るのか? 決定権はローダンにある。誰が不死を欲し、また、誰が不死を獲得すべきなのか。さまざまな思惑がいりみだれたすえに選ばれた5名----10名は旧活性装置所持者----であったが、ワンダラーでは驚くべき事実が待っていた。
〈それ〉は、16の不死を与えよう、と語りはじめたのだ。ローダンとアトラン、そしてあと14名....では、15の不死とは? 謎のヒューマノイド----「名乗りをあげぬ素性不明の存在」、略してエノクスと呼ばれることになる男が、すでに第一の候補として決定していた。奇妙に道化を演じるエノクスは、自ら不死を欲したのではなく、超知性体の側に永遠の生命を与えるべき理由があるらしい....
そして二番目は、同胞たちとおなじく超知性体に統合されることを望み、ローダンらに同行してきたナックのパウナロ。さらに、超知性体は「しかるべき該当者2名がこの場にいない」とローダンに宣告する。「いま現在生まれたばかり、これから四半世紀のうちに、不死を獲得するにふさわしい存在になるはずの」者がいるというのだ。
すなわち、新たな活性装置、肩胛骨の下に埋め込む「チップ」の譲与を、サトー・アンブッシュら3名が拒まれることになる。そして、8人の旧活性装置所持者----ブリー、グッキー、トロト、ロワ、テケナー、アダムス、ティフラー、アラスカ----に加え、マイルズ・カンターとカルタン人ダオ・リン・ヘイが不死者のサークルに加わった。
不死のホールでチップを得た際、ローダンはエルンスト・エラートからひとつの物語を聞く。ナックの使命....〈それ〉を捜し、助けることが、エスタルトゥの与えた任務。時空を超越した超知性体にとり、時制の前後は重要でない。タルカンで苦境にあったエスタルトゥは、兄弟からの援助を得るために、〈それ〉を助けなくてはならなかった。すなわち、活性装置のパワーを駆使して〈それ〉の物質の沼への退行を阻止する能力をもった種族としてナックは作られたのだ....
肩に埋め込まれた2センチ角のチップ。それが、かれに永遠の生命を供給する。ひとつの環は、いま閉じた。ペリー・ローダンは思う。しかし、この新たな不死は、また運命の次なる環へと、かれをいざなうのだ....

「そのまった因果が子に報い〜っと」
「〈それ〉の因果がテラナーに報い、ついでの因果がリング人にも報い、ってわけで」
「種族の誕生から衰亡まですべてがワンダラーの副作用ってのは、報われない」
「それに輪をかけたようなナックいいかげん物語」
「種族のはじめからおわりまで、ようするにナックたちがエスタルトゥ十二銀河や局所銀河でやってきた悪事というのは、なんもかもビョーキの〈それ〉がエスタルトゥに助けを求めたところにはじまる?」
「ところが〈それ〉の病気の元凶は。エスタルトゥVSヘクサメロンがもたらしたドリフェルショックと、たーちゃんの小細工」
「因果はめぐるかざぐるま」
「ようするに、ヘクサメロンはそそのかされたんだし、エスタルトゥはいちおう女の子だし、そうしたら、けっきょく悪いのはたーちゃんか?」
「なーんだ、あいつが悪いんだ。そっかー」
「なにはともあれ、よかったよかった」
「....あれ?」
「どれ?」
「それ」
「これこれ」
「....あんねえ、なんかあんまりよくないような気がするんですけれど、気のせい?」
「シェールは亡くなったし、シドウは作家チームを脱退するしと、不安でいっぱいだった101匹ワンダラー大行進サイクルも、なんとか完結までこぎつけたわけだけれど」
「ヘクサメロンは力強き者? アスレテルが物質の泉の化身ていう話はだーれも覚えていないのかな?」
「とかまあ細かいアラはおいといて」
「アムリンガルのありがたい年表はほこりをかぶったまま、だーれも読まないまんま」
「卵型のありがたいものに目がくらんでいたような気がしないでもない」
「そして、『メーコラー』の原稿はほこりをかぶったまま、エスタルトゥの後日談が終わってしまったし」
「....ということで、めでたしめでたし」
「あのお、だから逃避してどうするんです?」
「やっぱり出版せんといかんかね」
「1400話からすでに4年半たってますからね〜」
「そんな前なら全面改稿したほうががいいかもしれんね〜」
「....」
「親の因果が子に報い〜」
「そのまった因果が子に報い〜っと」

"WANDERER WANDERT" / 迷走惑星ワンダラー
1991/5/15-1992/12/15 r.psytoh with y.wakabayashi
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