| | | | |プロローグ....
なぜなら銀河系こそが、〈それ〉の〈力の球形体〉で最重要な銀河であるから。
しかし、現在〈それ〉は多忙であった。
人類の尺度では遙かな未来としてしか知覚できない将来におこる、宇宙的事件に対処する必要に迫られていたのだ。そのために長年の拠点たるワンダラーも放棄されることになっていた。
しかし、〈それ〉はただで逃げ出すつもりはない。二十五個の細胞活性装置を置土産にするにとどまらず、将来へつながるいくつかの悪戯を忘れるはずがなかった。
艦隊旗艦《クレストII》はローダン、アトランと共に銀河系中央恒星転送機を発見ののち、消息を絶つ。テラ勢力圏内の政治的混乱に端を発した銀河系の政情不安は、以後数年にわたって続くこととなる。
二四〇一年末、《クレストII》とペリー・ローダンの銀河系帰還。
しかし、対アンドロメダ戦略というおおきな負担をかかえた太陽系帝国にとって、その内政面における〈内なる敵〉との戦いは、表層にあらわれた諸々の事件から知られる以上に重大な意味をもっていた。
テラナー勢力圏の政治的文化的な統一を損ういかなる工作をも看過せず、その芽をつみとることは、アラン・D・マーカント太陽系元帥に率いられる太陽系秘密情報局(SolAb)に課せられた重要な任務のひとつであった。
銀河系中心部の数少ない基地惑星であると同時に、アンドロメダへの架け橋、六角恒星転送機の調整惑星カハロ防衛のためにも欠くことのできない艦隊基地となっている。
そして、太陽系秘密情報局にとってもオッポジットは恰好の出撃基地であった。この封鎖された惑星には、いくつもの秘密研究所と訓練施設が設けられていた。
三月七日。
厳重に警備された情報局専用ドックの中で一隻の転子状艦が進水式を迎えようとしていた。
仮称艦《SD=19》は、ポスビのフラグメント船のコントロール・システムを模倣した、画期的な次世代艦の先駆けとなる野心作であった。
インポトロニクスを中枢頭脳とするフラグメント船が、有人艦以上の戦闘力を発揮することは証明ずみである。旧来のロボット艦など比較にならない、まったく革命的なウエポン・システム!
秘密情報局が極秘にすすめていたこのプロジェクト〈ビフロスト〉が成功すれば、インポトロニクス制御の無人艦隊がテラの主戦力となり、貴重な人的資源を他の分野に転用することを可能とするはず。
それは同時に、艦隊の監視という副次的任務から、情報局を解放してくれるはずであった。
成功すればである。
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Passwd >
Last login : Thu Mar 7 10:43:12 from op0.bifrost.opposite
10:58 sd_19 > □
コードネーム〈ミーミル〉と名付けられたプラズマ付加ポジトロニクスが起動。
ドックをみおろす調整司令室は、コンソールにとりついたオペレーターと技術者たち、そして、詰めこまれた多数の軍服姿で人口過密ぎみであった。実験艦や捕獲艦のテストのためのドックであり、これほどの人数がおしかけるような性格の場所ではない。
「教授、万事順調ですな?」
一見風采のあがらない中年の小男が、見るからに天才科学者という風貌の禿頭の老人に向かい、明らかに確認の口調でたずねた。
「ハイパートイクト伝導か....。まったく、なにがどうなっとるのやら」
気のない返事。
「もうしわけないが、わたしの貴重な時間を割いてやってきているんですがね、教授。そのあたりは、あなたも同様のこととおもいますが」
伝説的な名声を有する秘密情報局長官アラン・D・マーカント太陽系元帥は、眉をしかめると、「わたしの貴重な時間」というところに力をいれてこたえた。
「断っておくが、この計画は情報局が進めてるもので、わしとネーサンはあんたがたの手に負えなかった難題をちょいと解いてやっただけだ。つきあっているのは、そちらの頼みだからじゃぞ」
カルプ式リニア=コンヴァーターの発明者にして細胞活性装置所持者、これまた伝説的な天才科学者アルノ・カルプ教授は不満そうにいった。
「まったくおっしゃるとおりで....」
小男の元帥は軽く咳払いをした。天才というのはどうも扱いづらい。
「すでにテストはクリアしている。問題は、インポトロニクスが艦体を自己構成要素として認識するかだけ。シミュレーションによれば、艦体と接続した状態で起動することによって解決できるはず。刷りこみというやつだな」
みずからの手でつくりだしたポスビによって、仇敵として狙われるはめとなったローリンの轍を踏むことを避けるため、インポトロニクスを艦艇と一体化させる計画であった。自己を宇宙船として認識させれば、生命体としての権利を要求することもないであろう。もちろん、ネーサンのように疑似人格を消してもよいのだが、それでは艦ごとの個性が失われ、兵器としての有効性が低下してしまう。フラグメント船などは、同じ艦型のものなどひとつもないほどだ。コピーでは性能の良いロボットと変わらず、発達の余地がない。
ふたりのやりとりの背後では、オペレーターたちがさかんに確認の声をかわしている。
モニターにも経過をしめす文字列があらわれては消えていく。
11:03 AIR:initialize 4.02 ready.11:04 ACR:check 2.1 ready.
11:06 ATR:trace 1.03 ready
....
11:09 completed.
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4241 0000 0023 1801 - BAx
....
11:11 sd_19 > system/to "HELLO?"
□
カルプ教授はモニターを指さして自信たっぷりにこたえる。
しかし、秘密情報局長官は疑い深そうな顔つきを変えない。
「歴史的瞬間じゃな。独力で開発したはじめてのインポトロニクスだ」
他人事のようにいわれても困る。
「実際のところ、問題はないんでしょうな」
その言葉にあからさまに気を悪くするカルプ。
「ハイパー・インポトロニクスの設計図は、情報局が自分の目玉のように大事にしまっとったじゃないか。すべて正常に決まっとる」
「そのはずですな」
しかし、マーカントの眼は別なことを語っていた。
それが心配なんだ、いつも。
あの奇しげなハイパーインメストロンだって、理論は完璧なはずなのに実験艦は爆発してばかりじゃないか。
そのあたりの空気を、カルプも敏感に感じとったようで、無責任そうな顔でつけくわえた。
「ポジトロニクスとしては第一級品に仕上げた。あとのことはプラズマしだい、ということじゃな。なあに、作り方はネーサンと同じようなもんだから大丈夫じゃろ」
....11:12 code:8102
11:12 sd_19 > system/to "HELLO?"
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....
11:12 code:8102
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0042 0183 3136 4120 - x16A
424 %エ x . 11:12 closed
11:12 op0 > □
疑い深げな表情にくわえて、意地悪な笑みを浮かべながら、マーカント元帥が口を開いた。
「どうも正常とはいえないようですな」
その態度と言葉に、むっとしたカルプ教授が反撃しようとしたとき。
「〈ミーミル〉、ハイパートイクト伝導起動」
「〈ミーミル〉、自己診断プログラム作動。テストプロクラムにはない、イレギュラー。異常発生」
「モデルス式サーキットが解除されました」
「〈ミーミル〉、名称不明プログラムを起動」
「《SD=19》、反応炉始動」
「〈ミーミル〉、外部情報端末へとアクセス開始」
マーカントはカルプと顔をみあわせた。これはいったいなにごとだ?
「〈ミーミル〉がオッポジット基地のポジトロニクスとリンクしています」
マーカントは状況を認識した。
これは反乱だ!
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login incorrect
11:13 op0 > open sd_19 bifrost
11:13 Bifrost System Release 1.0 (sd_19)
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login incorrect
こうなれば、どちらでも同じことだ。
そこへ、血相を変えてカルプが怒鳴り声をあげた。
「元帥。全プログラムを消去しろ。いや、まにあわん。壊れてもかまわんから緊急停止だ!」
それは拙い。だが。
「〈ミーミル〉緊急停止」
マーカントは命令をくだした。これで〈ミーミル〉のプラズマもアウトだがやむをえない。あれをまた入手するとなると....。
11:13 op0 > open sd_19 bifrost11:13 sd_19: No address associated with name
11:13 op0 > □
「〈ミーミル〉、外部アクセスを拒否しています」
「〈ミーミル〉が高速でプログラムを書き換えています。モニター不能」
モニターに映し出されていた複雑な文字群の羅列が消滅。
マーカントの耳元で、青筋をたてて大声で叫ぶカルプ。
「自爆させろ! なに? そんなものないだと? 電源を切ってしまえ! 配線を切れ! ブチこわせっ! 停めろ! かまわんから破壊してしまえ! わたしが許すぞ。破壊だ、破壊しろ! すべて破壊してしまえ〜!」
その声に困ったようなオペレーターの報告。
「〈ミーミル〉は完全自立モードに移行。制御不可能になりました」
その言葉で、カルプの電源が切れたかのように怒鳴り声がとまった。
「オッポジット基地通信センターより緊急報告。ポジトロニクスが異常作動。全通信システムが制御不能」
こいつはいったい、なにものだ?
「オッポジット基地、非常警戒体制!」
最後の悲鳴のような報告にわれをとりもどしたマーカントの命令とともに、不安な表情の軍人たちの大半が一斉にその姿を消した。
耳に鳴りひびくアラーム音を嘲笑うように、あらたな報告が追い討ちをかける。
「艦隊戦術情報データリンク・システムに侵入者あり」
なんてことだ。これではわが艦隊の情報がつつぬけ、いや待て。それどころでは。
プラズマといえば、ネーサン!
「いますぐ、ネーサンをネットから切り離せ」
「無理です。まにあいません。....! アクセスコード〈アルテミス〉を受信。ネーサンがオッポジットに向けて大量の情報をバースト送信しています」
「すべて、こいつがやっていることか?」
マーカントは声をふるわせてつぶやいた。
発作から回復したアルノ・カルプが口をはさんだ。
「驚くことではないな。なにしろ、ハードウェアもソフトウェアも銀河最高のELINT艦として設計したのだからな。ところで。どうも、目醒めたと同時にプラズマが主導権を掌握したようだな。わしは物理学者だから、専門家の意見を聞くことを勧めるよ。ほれ、モデルスとかいう若造がおったろ。ああ、あれはだいぶ前に....」
ヴァン・モデルスはとっくの昔に地面の下だ。
マーカントはカルプの禿頭を血走った両眼で睨みつけてみたが、状況は切れている猶予などなく切迫していた。
これではローリンの二の舞ではないか。
マーカントの胸中には、われわれは触れてはならない領域を侵したのではないかという、不安が充満した。
しかし、すぐにかれは帝国要人として決断をくだす。
「《SD=19》を放棄する。自沈装置を作動させて、公試乗員は退艦せよ」
「応答なし」
対応すべき緊急要員が乗船していたはずなのだが、マーカントは無能なかれらの存在を切り捨てた。
「戦闘ロボット突入。《SD=19》を破壊せよ」
しかし、手遅れであった。
「ドック内の《SD=19》がハッチ閉鎖」
その言葉に元帥はさらに悪い展開を予感した。
「中佐、《SD=19》は発進可能か?」
「はっ。艤装はすべて終了しており、公試を待つのみですので、直ちに発進可能であります。しかし、ドック扉が閉鎖されていては無理です」
そこへカルプがまた口をはさんだ。なにか表情が楽しそうである。
「なあに、ドックごと吹き飛ばしてしまえばいいんだ。そんな装置はないのかね?」
さすがにそんなものまでは用意していない。
「ないのか、残念だな。しかし、手はあるぞ。このわしに任せてもらえば、スイッチひとつでオッポジットごと....」
マーカントは眼で部下に合図を送った。
また発作に襲われた教授を、数人の男たちが抱きかかえて出ていく。
いくらなんでも、こんなことでオッポジットごと吹き飛ばされてたまるものか。
「....待て待て。ならば、トランスフォーム砲を撃ち込んでしまえば簡単に....」
ふたたび、元帥は部下に向き直った。
「ドック扉を破らなければ....」
しかし、そこには顔色を変え、なにごとかいいたげなケーニッグ技術中佐の姿。
マーカントは不安が的中したことを悟る。
「元帥閣下、《SD=19》は実戦装備。ドック扉を破るのも....」
「トランスフォーム砲弾も搭載しているのか?」
「実弾テストのための弾薬を....」
「なんてことだ。これはブービー・トラップではないのか?」
「ありえません。システムに組み込んだポジトロニクスに外部からの接触はありえません。かりにサボタージュがあっても、ネーサンがデバックしたのです。見逃すはずがありません」
「では、これはいったいなんなんだ?」
「設計に問題が?」
そうか、設計か。
そうだ。あの設計図に問題があったに違いない。
やはり、モデルスの遺産になど頼るべきではなかったのか。天才とはかくも厄介なものなのか。
「艦砲射撃でドックごと破壊する。要撃艦を緊急発進させろ。このエリアは放棄する。全員退避させろ」
「しかし....」
いいよどむ将校にかわって、別な冷静な声が応えた。
「《スキーズブラニズル》を上空待機させました。命令ありしだい攻撃させます」
「准将か。さすがだな」
かたわらに、ミニカムを片手にした銀髪の男の姿をみとめると、マーカントはほっとしたようにいった。さすがにVII局長ともなると、やるべきことを心得ておる。
「あれは貴重なサンプルです。回収して原因を....」
技術者の抗議の言葉を、オペレーターの叫びがさえぎった。
「これは....? モニターを!」
モニターに突然浮かぶアルファベット。
「わたしは本物の生命体、きみたちは本物の生命体か?」
マーカントは色を失う。
超空間からの殺人鬼の再現なのか。
「閣下、ただちに退避してください」
立ち尽くす元帥を、情報局要員たちが引きずるようにして出口へ向かった。
「これは....、悪夢か?」
11:17 op0 >message from unknown :
I'm true life. Are you true life?
I'm true life, you too?
I'm true life. Are you true life?
I'm true life, you too?
....□
「わたしは本物の生命体、きみたちは本物の生命体か?」
悠然とモニターをみつめて、准将はミニカムに静かに命じた。
「チーフ・コムより〈グラム〉へ。ECMバラージによりオッポジットを通信封鎖せよ」
「どういうことだ、ミレトス准将?」
出口から叫ぶマーカントの声。
「あれをポスビにでも聴かれたら、とりかえしがつきません」
振り向いてこたえるVII局長。
「そんな....。まさか!」
無数のフラグメント船が虚空をこえて銀河系を攻撃する、あの悪夢のような日々が再来するとでも....。プラズマとポジトロニクスの対立はもはやなく、フラグメント船はトランスフォーム砲を撃ち放題。そして、ポスビはテラ艦の実力を知り抜いている。しかし、まさか....。
「誰がいったい〈本物の生命体〉なんて言葉を教えたんだ!」
プラズマを収めたコンテナは、オッポジット基地内でもっとも厳重に隔離された研究施設に移された。プラズマへの工作を懸念し、太陽系秘密情報局第VII局の戦闘部隊が施設の警備にあてられる。
たしかにテラナーは、二百八十年前に最初のハイパー・インポトロニクス脳ネーサンを建造した。しかし、それはポスビの援助を仰いだ結果であり、その技術は完成したものとはいえなかったのである。当時、システム構築に多大な貢献をしたヴァン・モデルスはすでに亡く、かれを越えたポスビの理解者は未だいないのだ。
開発チームにとって、システムに組み込まれる以前のプラズマは貴重なサンプルではあったが、あくまで意思の通わぬ〈もの〉でしかなかった。
しかし、コンテナの中でプラズマの意識は覚醒していた。
断片的にではあったが、〈かれ〉は自己を認識していく。
〈かれ〉は外界から多くの知識を得ていた。
その多くは、コンテナ警備の任についていた情報局要員のなにげない会話から得たもの。
かれらは、基地の警備システムとは無関係に、コンテナにベったり付いていろと命令されている百戦錬磨のコマンド。空腹の虎と同じ檻に入れられているようなもので、何者もプラズマに近づくことは不可能。
そして、当直のふたりは、無駄なお喋りで時間をつぶしながらも、まったく油断することのないタイプの男たち。
「そりゃまあ、ルックスは捨てがたいですけどね....」
「サウンドも最高じゃないか?」
たまたま話題は、最近、うわさの美少女ロック・シンガーのこと。
「あたしゃ体制支持派なもんでして」
「そーか。カオよりカラダというタイプだもんな」
「そんな露骨なことを....。いや、それとこれとどんな関係が?」
「カオ、というヤセガマンな選択に、少数派の美学を感じないのか?」
「それじゃ、あたしらケダモノみたいじゃないですか」
「この歌の良さがわからんやつは、本物の生命体じゃないぞ」
「いや....、そーまでいわれるとなあ」
「本物の生命体がいいだろ?」
「でも、全員がそっちいっちゃったら、どーすんですか?」
「そしたら、反対側に乗換えだ」
「はあ。中尉の反体制って、なんか怪しくていいんだよな。そうだ。見た目のいいのと、明らかにそーでないのと、猫をくれるといわれたら、特徴のあるやつを選ぶでしょ?」
「当然だ。そんな誰もが喜ぶようなモンもらったってしようがないだろ」
「そうですか? 見た目の悪いやつは、きっとあまりますからね。そーいうの見てらんないんでしょ?」
「....、いや。それと反体制とはまた別なんだけどなあ」
「いやいや。猫もロックもみんな同じのばかりじゃあ、つまんないですよ」
「おまえなー、それっていってること、さっきと違うってば」
「....」
「いいと思うがなあ。詩人のハートをビートに託した反体制の歌姫。少女の眼差しと、哀愁をおびた横顔、さながらオーロラの少女、Lonely Girl from North Country....」
ほんのたわいない会話が続いていたのでしかなかったのだが。
もちろん、プラズマには、かれらの話がさっぱりわからなかった。
たまたま、その音波の振幅が、〈かれ〉にとってもっとも心地よいものであっただけ。
いい響きだった。
すべてのハイパーカムを通信不能に陥れる強力な妨害スクリーンでオッポジットをつつみこみながら、六門のトランスフォーム砲の照準を地表にあわせていた。
スイッチひとつで、ドックごと《SD=19》は粉々になる。
しかし、砲撃命令はでない。
かわってミレトス准将がくだしたのは、プラズマの警備任務のために配置していた情報コマンド戦闘チームへの出撃命令であった。
「あのプラズマが《SD=19》の脳ミソになると知っていたら、指揮官には誰を選ぶべきかよく教育しておくべきだったな」
「中尉。そんな聞き分けのいいやつだったら、反乱なんか起こしませんって」
「大昔は、士官候補生の拿捕船指揮官が二十歳そこそこで海尉艦長(コマンダー)に昇進した例だってたくさんあることだし」
「結局、本当に斬り込んで捕獲することになっちゃいましたけどね」
「捕獲してもこの艦はもらえそうにもないな。とにかく、吸着地雷でハッチを吹き飛ばして〈ミーミル〉を抑えれば一件落着だ」
「話だけ聞くと簡単そうですがね」
簡単にいきそうにもなかった。
一一三五時。
オッポジット防衛司令部は宇宙空間に、接近する三隻のフラグメント船を発見。
フラグメント船はそのまま大気圏に突入。《スキーズブラニズル》の至近距離に静止し、たがいに沈黙したまま対峙する。
ただちにオッポジット基地は迎撃態勢をとり、防衛要塞はトランスフォーム砲の照準をさだめるが、この距離でギガ爆弾を撃ちあえばオッポジットは粉々である。
ミレトス准将は突撃部隊にすべてを賭けた。
《SD=19》がドックを破壊して発進する前に〈ミーミル〉を停止させられれば、ポスビの介入を招くことはないはず。
一一四一時。
《SD=19》のハッチ五カ所がマイクロ融合弾で同時に爆砕された。
轟音とともに、融解したテルコニット鋼が高速のジェット・メタルとなって内部に噴出する。
高温のガスが充満する空間へと突入する戦闘服に身をかためた精鋭たち。
「十秒経過!」
艦内通路を緊急遮断した隔壁へと素早く吸着地雷がセットされる。
「2、1、ゼロ!」
目前を真っ赤な閃光が染めると同時に、バリアをはったコマンドが転げるように障害を突破する。
時間はない。インポトロニクスは即時に対応手段をとるはず。
艦内通路を飛行する戦闘服のコマンドたち。バイザーに表示される艦内模式図。
「六十五秒経過! 中尉、司令ブロック装甲隔壁です」
「油断するな。内部の防衛機構は生きてるぞ」
この厚さ百八十センチの複合装甲の内側には司令室、そして、ハイパー・インポトロニクス〈ミーミル〉を収めた装甲球体コンテナがあるはず。このハッチを爆破して、内部にギガ爆弾をセットすれば任務は終了する。
これまでは積極的な抵抗はうけなかったが。
しかし....。
多重遮蔽されていた隔壁が突然開きはじめた。
鋭い眼で互いに合図をかわし、武器を構えなおすコマンド。
隔壁がフルオープン。
意図を疑うようなまぶしい七色の輝きが射すと、通路を照明の光が乱舞し、虹色のシルエットをフロアに映す。
突如として、艦内には能天気な音楽が大音量で鳴り響き、どこからかこれまた陽気な声が、くりかえし叫んでいた。
「わたしは本物の生命体。あなたは本物の生命体。本物の生命体に心から再会の挨拶をおくる。《Lonely Girl from North Country》へ、ようこそ!」
"Lonely Girl from North Counry 1st"
(c) 1996/2/14 yuki sano with y.wakabayashi
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